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「老眼」を疑う初期症状・対処法はご存知ですか?医師が監修!

 公開日:2023/06/08
「老眼」を疑う初期症状・対処法はご存知ですか?医師が監修!

40代頃になると気になり始める身体の変調の1つに、老眼が挙げられます。老眼は加齢に伴う生理現象で、全ての人に起こる症状です。

誰しもがいつかは付き合うことになる老眼ですが、どのような症状でどのような対処法が必要になるのかなど分からないことも多いのではないでしょうか。

この記事では、老眼の症状や原因・手術を含む治療方法・対処法について解説しています。老眼への理解を深め、自覚症状が現れた際には素早く対応できるようにしておきましょう。

郷 正憲

監修医師
郷 正憲(徳島赤十字病院)

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徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。

老眼の症状と原因

目が疲れた若い女性

老眼の症状について教えてください。

老眼に見られる主な症状には、近くの細かい文字が読みづらいことと、近くから遠くへ、遠くから近くへといった距離の違うものにピントを合わせるのに時間がかかることが挙げられます。本やスマホの文字が読みづらくなってきたり、近くを見ていてふっと遠くの景色を見たときにピントが合わせづらかったりしたら、それは老眼が始まったサインかもしれません。
また老眼の初期症状として、以下のような症状が見られることがあります。

  • 目の疲れ
  • 目のかすみ
  • 頭痛・肩こり
  • 細かい文字が読みづらい
  • 薄暗い場所で見えにくい

ただし目の疲れはドライアイや緑内障が原因となっている場合も考えられます。安易に老眼だと決めつけず、症状が続くようなら一度眼科で相談するとよいでしょう。

老眼の原因を教えてください。

老眼は目の老化であり、病気ではありません。年齢を重ねることに伴い現れる生理現象の1つです。
わたしたちの目には、レンズの役割を果たしている「水晶体」という組織があります。加齢に伴いその水晶体の弾力性が低下して硬くなってくると、近くのものにピントを合わせることができなくなってしまうのです。
また、水晶体を吊り下げる役割を果たしている毛様体小体という線維に繋がっている毛様体筋の動きが低下することでも、ピント調節機能が十分に働かなくなります。水晶体の弾力性が低下することと、毛様体筋の動きが低下することこそが、老眼の原因となっているのです。

老眼は何歳くらいから発症するのでしょうか?

一般的に老眼は40歳くらいで症状を自覚し始めて45歳くらいで老眼鏡が必要になる人が多いといわれていますが、早い人では30代で症状を自覚し始める人もいます。しかし実は、老眼自体は20代後半から始まっているといわれているのです。
普段からパソコン作業が多かったりスマホを良く見ていたりして近くも遠くも見る機会の多い人は、老眼に気付くのが早い傾向にあります。さらに元々視力の良い人(遠くのものがよく見える人や普段メガネをかける必要のない人)は、早く老眼が進行すると感じやすい人が多いといわれています。
これらのことから、老眼が始まってから実際に症状を自覚するまでの期間には、個人差が大きいといえるでしょう。

症状が進行するとどうなるのでしょうか?

老眼は進行とともにピントを合わせられる距離(近点)がどんどん遠くなっていきます。30歳での近点は14cmほどですが、50歳になると44cm、55歳になると67cmくらいにまで伸びます。
そのため老眼が進むと、人によっては手をいっぱいまで伸ばしても読んでいる本の文字にピントを合わせることができなくなってしまう可能性が出てくるのです。老眼が進行する原因は加齢です。
しかし近くのものを長時間見続ける習慣があると、症状の進行を早めてしまうので注意しましょう。

老眼の治療と手術

視力検査

老眼で受診する目安を教えてください。

以下のような自覚症状が現れたら、早めに眼科を受診してください。

  • 小さい文字が見えづらいと感じる
  • パとバ・ポとボ・3と8・5と6などの文字が判別しづらいと感じる
  • 近くのものを見続けていると目の疲れを感じる
  • 肩こりや頭痛に悩まされるようになった
  • スマホを見た後に遠くを見るとぼやけて見えることがある
  • 薄暗い場所で以前より文字が読みづらくなった

近年ではスマホを見る時間が増えたため目のピント調節機能に支障をきたし、老眼に似た症状が現れることがあります。また自分では老眼かもしれないと思っても、他の病気による視力低下の可能性も否めません。
そのため安易に自己診断をせず、専門医での検査を受けましょう。さらに老眼は年齢とともに進行していきます。今使っているメガネやコンタクトレンズが合わなくなってきていると感じたときも、早めに眼科を受診してメガネやコンタクトレンズを交換してください。

治療方法はありますか?

以前は老眼には治療方法が存在せず、治すことのできないものでした。しかし近年では様々な治療方法が確立されており、老眼は治せるものになったのです。
具体的な治療方法としては手術がメインとなりますが、リーディング・ドロップ治療(老眼点眼治療)のように、手術をしなくても症状を改善できる方法も存在します。ただし老眼点眼治療は、目に疾患を持っていると受けられない可能性があります。
また点眼治療は治療をやめると元に戻る特徴があり、老眼を根本的に治すものではありません。手術は怖いけれど老眼の症状を改善したいと考えている人などは、点眼治療を検討しても良いでしょう。

老眼の手術について教えてください。

老眼の手術には様々な方法がありますが、白内障の有無によって選択できる手術方法が異なります。白内障を伴わない老眼の主な手術方法は、以下の4種類です。

  • 遠近両用レーシック
  • 遠近両用フェイキック(老眼用プレミアム眼内コンタクトレンズ)
  • モノビジョンレーシック
  • カメラインレー

この4つの中でもポピュラーな手術が、遠近両用レーシックと遠近両用フェイキックです。これらは老眼の症状を改善し、長期的な効果の持続が期待できるため、裸眼での生活に期待ができます。一方のモノビジョンレーシックとカメラインレーによる老眼治療は、効果に個人差があります。
また術後の定期的な管理が必要となることが多いため、遠近両用レーシックや遠近両用フェイキックほど普及に至っていません。白内障を伴っている場合は、多焦点眼内レンズによる白内障手術が適用となります。
この手術は、老眼と白内障を一度の手術で治療できることが最大の特徴です。手術後は一定期間定期的に通院し、目の状態を確認する必要があります。

老眼は治りますか?

老眼は、加齢に伴い水晶体が硬くなるために起こる生理現象のため、根本的に「治る」ことはありません。上記で挙げた手術による老眼治療も老眼を根本的に治すものではなく、角膜のカーブを調整したり眼内にレンズを埋め込んだりして視力を矯正するための方法です。
ただし老眼はある程度進行を予防する対策が可能です。老眼を自覚した際には早めに老眼鏡などを使用して視力を矯正すると、目に過度の負担がかかりません。その結果疲れ目を防ぎ、老眼の進行速度を遅らせる期待が持てます。
毎日の生活の中でも、意識して遠くの景色を眺める習慣を付けて目をリラックスさせ、疲れ目による老眼の進行を予防しましょう。また、バランスの良い食生活を心がけることも、老眼の予防には効果的です。特にカボチャ・アーモンド・うなぎなどに多く含まれているビタミンEの積極的な摂取は、疲れ目や老眼の進行予防に効果が期待できます。

老眼の対処方法と放置するリスク

本とメガネ

老眼の対処方法を教えてください

老眼の対処方法として最もポピュラーな方法は、メガネやコンタクトレンズによる視力の矯正です。老眼対策として使用するメガネとしては、老眼鏡を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
老眼鏡は近くのものを見るために使用するメガネです。100円ショップなどでも購入できますが、眼科で検査を行い自分に合う度数を把握しておくと良いでしょう。近くも遠くも見えるように矯正したい場合は、遠近両用レンズが入ったメガネやコンタクトレンズを使用します。
1つのメガネやコンタクトレンズで近くも遠くも見えるようになる遠近両用は、見るものに合わせて老眼鏡をかけたり外したりする必要がないという利点があります。ただし、1つのレンズの中に多くの焦点を持つ遠近両用は、近くを見るときと遠くを見るときの視点の切り替えに慣れが必要です。

老眼にならない人もいるのでしょうか?

水晶体の老化は誰にでも起こる生理現象で、全ての人に起こります。ただし老眼の進行具合には個人差があるため、30代で老眼に気付く人もいれば40代後半になって老眼に気付く人もいるのです。
また、「近視の人は老眼になりにくい」という話を聞いたことがあるかもしれませんが、近視の人も等しく老眼になります。ただ近視の人は近くにピントが合いやすいため、自分が老眼であることに気付きにくい傾向にあるのです。

老眼の症状を放置するとどうなりますか?

老眼であるにもかかわらず、適切な対処をせずに放置すると眼精疲労が蓄積します。そして眼精疲労が重なると、目の周辺が重い・首や肩がこる・頭痛がする・食欲不振といった全身症状が現れる可能性があります。
症状を自覚したら、自分の症状に合ったメガネやコンタクトレンズを使用して眼精疲労を防ぎましょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

老眼は加齢に伴う生理現象のため、誰にでも起こる症状です。老眼に気付きやすい人とそうでない人の個人差はありますが、いつかは老眼を自覚する日がやって来ます。
老眼の進行を少しでも遅らせるためにも、眼精疲労を軽減するためにも、自分の目の状態に合ったメガネやコンタクトレンズを使用することが大切です。また老眼は年齢とともに進行します。
使用しているメガネやコンタクトレンズの度数が合わなくなってきていると感じた場合には、早めに自分に合った度数のものへと交換してください。

編集部まとめ

白衣を着た男性
老眼は誰にでも起こる生理現象とはいえ、なるべくなら進行を遅らせたいものです。

近くのものが見えづらいと感じたり、距離の違うものにピントを合わせるのに時間がかかったりというような老眼を疑う症状が続いたら、早めに眼科を受診し適切に対処することが重要です。

「まだ若いから」「老眼だなんて認めたくない」などと考えて老眼を放置してしまうと、進行を早めてしまう原因になります。

メガネやコンタクトレンズによる矯正をしたくないと考える人は、手術の検討も選択肢の1つです。手術を検討する際には、かかりつけの眼科医とよく相談して決めましょう。

この記事の監修医師