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「早発卵巣不全」の症状・原因・日常生活で注意することはご存知ですか?

 公開日:2023/06/13
「早発卵巣不全」の症状・原因・日常生活で注意することはご存知ですか?

早発卵巣不全をご存じでしょうか?早発卵巣不全とは、40歳未満で月経が起こらなくなる症状のことです。

そもそも女性は卵子の元となる卵母細胞をもって生まれます。その数は約100〜200万個とされ、年齢とともに減少するのです。そのため一般的には50歳前後で閉経するとされています。

早発卵巣不全の発症頻度は1%程度で、症例として多くはないといえます。しかし早発卵巣不全を発症した場合、前後で不妊になっている可能性が高く、特に晩婚化した昨今において深刻な病気です。

この記事では早発卵巣不全の原因・症状・治療方法などについて解説します。予防方法や注意点についても解説するので、最後まで読んでいただければ幸いです。

馬場 敦志

監修医師
馬場 敦志(宮の沢スマイルレディースクリニック)

プロフィールをもっと見る
筑波大学医学群医学類卒業 。その後、北海道内の病院に勤務。 2021年、北海道札幌市に「宮の沢スマイルレディースクリニック」を開院。 日本産科婦人科学会専門医。日本内視鏡外科学会、日本産科婦人科内視鏡学会の各会員。

早発卵巣不全の原因や症状

病気や問題を発見する女性医師

早発卵巣不全とはどのような病気ですか?

早発卵巣不全は、40歳未満で月経が止まる病気です。いわゆる卵巣機能不全です。主に永久に閉経するもの・卵胞が少なく、たまに排卵が起こるものの2種類に分かれます。ただし判別は困難です。
発症頻度は100人に1人の割合とされています。また、早発卵巣不全は進行性があると考えられており、早期発見が重要です。

早発卵巣不全の原因を教えてください。

先述したように早発卵巣不全は発症頻度が少なく、原因がわかっているのは全体の10〜20% 程度です。中でも一番多い原因として自己抗体を保有していることが挙げられます。
自己抗体とは、ウイルスなどに対抗する免疫機能(抗体)が自分自身の細胞を有害とみなして攻撃してしまう状態になっているものです。その他、卵巣の手術・抗がん剤や放射線治療・染色体異常・喫煙なども早発卵巣不全の原因となります。

早発卵巣不全の症状は?

早発卵巣不全では初期症状として、ホットフラッシュと呼ばれる顔が赤くなる症状が見られます。また、発症から2年以内に月経不順が起こり、無月経から早期閉経となれば、妊娠が難しくなります。早発卵巣不全の不妊治療は不可能とさえいわれています。
さらに、エストロゲンと呼ばれる女性ホルモンが低下した状態が続くと、月経不順だけでなく、骨や心臓・血管などに異常をきたすことになります。

早発卵巣不全は遺伝するのですか?

早発卵巣不全は基本的に遺伝しないと考えられています。ただし一部の症例において遺伝が確認されたケースもあります。

早発卵巣不全の検査や治療

病院に来た女性(腹痛)

早発卵巣不全の検査ではどのようなことが行われますか?

早発卵巣不全の検査項目は血中下垂体ゴナドトロピン測定・血中エストラジオール測定・超音波による胞状卵胞数の測定などが一般的です。また、補助的な検査項目として問診による無月経機関の把握などもあります。
そのほか、実施している施設は多くないものの「抗ミュラー菅ホルモン測定」という排卵能力を測る検査項目もあります。ただし同検査は保険適用ができないため、相当の費用負担があるのが難点です。

どのように診断されるのですか?

現時点で早発卵巣不全の診断基準は確立されていません。一般的には、高ゴナドトロピン血症・低エストロゲン血症が1ヶ月以上の期間を挟んで2回以上起こることが診断基準とされています。ただし問診などの内容によっては、2回の検査を経る前に早発卵巣不全であると総合的に診断されるケースもあります。
なお、高ゴナドトロピン血症とは性ホルモンの分泌に支障をきたしている状態のことです。先天性と後天性に分かれており、先天性には染色体異常によるものがあります。

早発卵巣不全の治療方法を教えてください。

早発卵巣不全の治療方法としてはホルモン補充療法が一般的です。不妊治療の場合には、ゴナドトロピンの注射やクロミフェンの内服によって排卵を促す方法がありますが、治療効果は限定的です。そのため早発卵巣不全に対する根本的な治療方法とはいえず、あくまで対症療法です。
唯一、効果が検証されている治療方法として卵子提供があります。海外では不妊治療の選択肢として優先的に提案されますが、日本では一般的ではありません。不妊治療とはならなくても、女性ホルモンの低下は先述した骨・心臓・血管などの将来の病気につながります。
早発卵巣不全は将来の病気を予防する視点から、長期にわたるホルモン治療が推奨されます。

早発卵巣不全の予防方法や注意点

注意する女性医師

早発卵巣不全を予防する方法はありますか?

早発卵巣不全を予防する方法は現時点で確立されていません。先述したように早発卵巣不全の原因の多くは特定できていないからです。また、特定されている数少ない原因は自己抗体・染色体異常など、いずれも先天的な要素が強い病気です。
そのため早発卵巣不全と診断された場合は、女性ホルモンの低下による体調異常を防ぐなど、その後の経過を改善する措置を講じるのが現時点における最善策といえます。
なお、手術・抗がん剤・放射線治療など早発卵巣不全を事前に想定できる場合は、卵子を事前に採取して冷凍保管することで、後々の体外受精などの選択肢を確保することも可能です。

日常生活で気を付けるべきことを教えてください。

早発卵巣不全と診断された場合、日常生活で注意すべきことは健康的な生活習慣です。特に喫煙の習慣を避けるのは必須です。喫煙は卵巣機能を低下させるので、月経不順・不妊などにおいて非常に相性が悪いといえます。
また、仮に不妊治療が奏功して妊娠できたとしても、喫煙者は胎児発育遅延・早産などのリスクが高くなります。そのほか、エストロゲンの低下による疾患などに気をつけなければなりません。
先述したように、エストロゲンが低下すると骨・心臓・血管などに異常をきたします。その結果、骨粗しょう症・動脈硬化などのリスクが高まるのです。これらを避けるにはホルモン補充療法などによってエストロゲンの低下を防ぐことが大切です。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

早発卵巣不全は40歳未満で月経不順になる病気です。最悪の場合、永久に閉経する病気なので妊娠が難しくなります。しかしながら原因が特定できていないので、明確な予防方法を確立できていないのが現状です。ただし早期発見ができれば早期の治療・卵子の事前保管などが可能となります。
初期の症状としては月経不順とともにホットフラッシュと呼ばれる、顔が赤くなる症状が伴います。日常生活において月経不順の期間が長いと懸念される場合は、早めに医療機関を受診しましょう。また、予防方法は確立されていないものの、日頃から適切な生活習慣で健康的に日常生活をおくることが大切です。
特に月経が不定期な方において、喫煙などの悪習慣は卵巣機能を悪化させる要因となります。受動喫煙による影響も同様なので、自身の生活習慣に加えて過ごす環境も意識しましょう。

編集部まとめ

窓際でカメラ目線の女性
この記事では早発卵巣不全について原因・症状・治療方法などを解説しました。早発卵巣不全は原因不明の不妊症の1つとされています。

40歳未満の女性では1%が発症するとされており、月経不順などの症状が起こります。場合によっては永久に閉経する病気です。

晩婚化している昨今において、早期閉経は重大な疾患といえます。しかしながら確固たる予防方法がないのが現状で、発症の原因がわかっているケースは先天性のものが多いとされています。

また、早発卵巣不全は遺伝しないと考えられているのが一般的ですが、進行性のある病気のため早期発見が重要です。

治療方法としては主にホルモン補充療法が採用されていることを紹介しました。しかしながらホルモン補充療法は対症療法的な治療であり、根本的な治療方法は確立されていません。

ただし早発卵巣不全においては、女性ホルモンであるエストロゲンが減少していくため、ホルモン補充療法は欠かせません。エストロゲンの減少によって骨・心臓・血管などに異常をきたすからです。

いずれにしても早期発見・早期治療が必要な病気です。月経の周期など異常を感じた場合は、早めに医療機関を受診し、適切な指示を仰ぎましょう。

この記事の監修医師