「ピロリ菌感染症」になると現れる自覚症状・原因はご存知ですか?医師が監修!
ピロリ菌という言葉を1度は耳にしたことがあるかと思います。
なんとなく良くないイメージがありますが、実際ピロリ菌についてどの程度知っていますか。
ピロリ菌は放っておくと、胃腸にまつわる病気を引き起こす原因になります。
幼少期に感染することが多いといわれていますが、感染するとどのような症状が出現するのでしょうか。
今回は、感染経路・治療・再発など、ピロリ菌について詳しく解説していきます。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
目次 -INDEX-
ピロリ菌感染症の症状
ピロリ菌感染症はどのような病気でしょうか?
ピロリ菌は胃の粘膜に感染する細菌のことです。ピロリ菌が胃の粘膜に感染している状態のことを「ピロリ菌感染症」といいます。炎症によって胃の防御力が弱まり、ダメージを受け続けるため胃は無防備な状態です。
胃が無防備な状態でストレス・塩分の多い食事・刺激物質・発がん物質の攻撃を受けてしまうと病気を引き起こしてしまいます。
症状を教えてください。
感染が長期間に渡り、胃腸の大きな病気を引き起こした時に症状が出現します。代表的な症状は、胃痛・食欲不振・胃もたれ・吐き気です。つまり、ピロリ菌感染症の症状は胃腸の病気の症状といえます。
胃腸の不調を感じたら、ピロリ菌の検査もあわせてしてもらえないか医師に相談してみるといいでしょう。
感染経路を教えてください。
最も有力な感染経路は経口感染です。井戸水・川の水といった不衛生な水の摂取や、家庭内でピロリ菌を保菌している大人が噛んだ食べ物をもらうことが原因とされます。
公衆衛生が整備されていない発展途上国ほど感染率が高いというデータもあります。
ピロリ菌感染症は家族にうつりますか?
親子間でのキスや食事の共有により、唾液に含まれるピロリ菌がうつってしまうためです。
親から子へうつった後に兄弟間でうつる可能性も考えられます。ピロリ菌の家庭内感染を防ぐためにも、親子間でのキスや食事の共有には注意しましょう。
ピロリ菌感染症の受診
どのような方がピロリ菌感染症になりやすいのでしょうか?
最近は離乳食期にスプーンを共有するのを避けることが一般的になっていますが、ピロリ菌を保菌している親がスプーンを共有していると感染している可能性は高いです。
また、ほとんどは幼少期に感染しますが、まれに胃の状態が悪くなって免疫が落ちていると大人でも感染します。バランスの良い食事をとり、規則正しい生活を送ることで免疫をあげると良いでしょう。
受診を検討するべき自覚症状はありますか?
大抵の感染は幼少期ですから、大人になって胃の不調に気づいた時にはすでに長い間感染している状態です。
- 胃もたれ
- 吐き気
- 食後の腹痛
- 空腹時の腹痛
- 食欲不振
上記のような症状がある時は受診を検討してみてください。
検査方法を教えてください。
- 血液または尿中抗体検査
- 尿素呼気試験
- 便中抗原検査
- 内視鏡検査で胃の粘膜を採取する検査
血液または尿中検査は最も簡易的であり、広く用いられています。また、尿素呼気試験は最も精度の高い検査です。便中抗原検査は現在ピロリ菌に感染しているかが、わかるため除菌後の検査にも使用されます。
そして、内視鏡を用いる検査には迅速ウレアーゼテストがあります。どの方法もメリット・デメリットがあり、100%正しいとはいえないため医師と話し合って検査方法を決めることが大切です。
ピロリ菌を除菌しないとどうなるのでしょうか?
胃の粘膜が悪い状態が長期にわたると、様々な病気を引き起こす原因になります。代表的なものは慢性胃炎です。
ピロリ菌感染症を患っている状態で、喫煙・不規則な食生活をしていると胃・十二指腸潰瘍や胃がんのリスクが何倍にもなるという研究結果もあります。胃の不調を感じたら、早めに受診をするのが大切です。
ピロリ菌感染症の治療期間と再発
ピロリ菌感染症の治療期間はどのくらいでしょうか?
1次除菌が終了すると4週間以上空けてピロリ菌の検査を行い、除菌できていない場合は2次除菌に移行します。2次除菌では、1次除菌と異なる抗生物質を含む3種類の薬を同様に7日間内服します。
2次除菌までいくと、80~90%以上の方が治癒可能です。1次除菌で治癒した方と合わせると2次除菌までで97%以上の方が感知します。つまり、70%以上の方は7日間で除菌に成功し、97%以上は14日間で除菌できます。
それでも除菌できない場合は、3次除菌に移行しますがまだ研究段階のためピロリ菌の専門家に相談し治療方法を考えます。
ピロリ菌感染症は自然治癒するのでしょうか?
まれに違う病気で内服した薬がたまたま効いて除菌できたというケースもありますが、基本的には除菌治療が必要です。放置していても良いことはなく、胃に悪い影響を与えて大きな病気に繋がる危険性があります。
ピロリ菌感染症を患っていると分かったら、自然治癒を期待するのではなく適切な病院を受診して適切な治療を受けることが必要です。
ピロリ菌感染症は再発しますか?
除菌してからしばらく胃の検査を受けずにいて、胃もたれや胃の不快感がある場合は再度検査を受けるのがおすすめです。
また、除菌後の検査でまだピロリ菌が存在しているのに陰性反応がでてしまう「誤陰性」には注意が必要です。
内服期間後に1か月以上の休薬期間をとらずに除菌後検査を受けると誤陰性に繋がります。検査を正しく受けて、誤陰性を防ぐことが重要です。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
その間胃の粘膜はピロリ菌に攻撃され続けているのです。長い期間攻撃されて弱った胃の粘膜は、除菌後すぐに回復せず元通りになるのに時間がかかります。
最近では、自治体によっては無料でピロリ菌検査を行っています。たとえ無自覚でも1度ピロリ菌の検査を受けてみると良いでしょう。
編集部まとめ
今回はピロリ菌感染症の症状・感染経路・治療・再発について詳しく解説しました。
ピロリ菌感染症は幼少期に感染していることが多く、無自覚・無症状がほとんどです。
衛生環境の良くなった日本では、ピロリ菌の感染者も減少傾向にあります。しかし、中高齢者層は衛生環境が良いとはいえない環境で育っている方が多いです。
そのため、祖父母や親から感染する可能性も否定はできません。感染している状態を放置すると、胃がんのリスクも高まります。
除菌は内服で簡単にできるので、気になる方はまずは検査をしてみましょう。