「胸水(胸水貯留)」を発症すると現れる症状・予防法はご存知ですか?医師が監修!
胸水貯留という病気をご存じでしょうか。胸水貯留とは、胸水が異常に溜まってしまう病気をいいます。胸水貯留は胸水と呼ばれることが多いです。
胸水貯留になると肺や心臓を圧迫することがあるため、早期に適切な治療を受けなければなりません。しかし、胸水貯留で表れる症状が分かっていないと早期発見は難しいでしょう。
そこで本記事では、胸水が発生するメカニズム・症状・診断方法などについて詳しく解説します。予防方法についても解説するので、ぜひ最後までご覧下さい。
監修医師:
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)
目次 -INDEX-
胸水貯留とは
胸水貯留が発症するメカニズムを教えてください。
肺がんや肺炎に罹患すると胸膜に炎症が起き、血管から水分が染み出しやすくなるために胸水貯留が発生します。漏出性胸水は、心不全や肝硬変が原因です。
心不全や肝硬変に罹患すると、血管内の水圧上昇などによって浸透圧が下がるため胸水が発生します。しかし、胸水貯留の患者の約2割は検査を行っても原因がはっきりしないこともあるため、一概に肺がんや心不全によって起こるとはいえません。
胸水貯留はどこにたまるのでしょうか?
通常であれば胸水は胸膜での産生と吸収を繰り返します。この機能によって一定の量が保たれるのです。しかし、何らかの原因で産生と吸収のバランスが崩れると胸膜に水が貯まってしまいます。
胸膜に貯まった水がレントゲンなどで確認できるほどの状態が胸水貯留です。
胸水貯留がたまるとどのような症状がみられますか?
- 胸の違和感
- 咳
- 息苦しさ
- 胸の痛み
胸水が少量の場合や胸水が貯まるスピードが遅い場合には、無症状のこともあります。急激に胸水が貯まってしまった場合には肺や心臓が圧迫されるため、上記のような症状がみられるのです。
また、心不全を原因とした胸水貯留の場合には足のむくみがみられることもあります。
心不全とどのような関係があるのでしょうか?
- 右心不全による静脈圧上昇による胸水の貯留
- 左心不全による肺静脈圧上昇による胸水の貯留
右心不全では、血液を肺に送る役割を持つ右心室の機能が低下します。そのため、体の各部位に血液が貯まってしまうのです。胸の静脈に血液が貯まると血液中の水分がしみ出し、胸水になってしまいます。
左心不全では、体の各部位に血液を送る役割を持つ左心室の機能が低下します。そのため、肺に血液が貯まってしまい胸水貯留になるのです。心不全による胸水貯留は両側性であることが多いですが、左右差がある場合もあります。
胸水貯留の治療方法
胸水貯留はどのように診断されますか?
- レントゲン
- CT
- 超音波検査
まずはレントゲン検査で胸水が貯まっているかを確認します。レントゲンで異常が見つかった場合、次に行うのがCT検査です。CT検査では肺の状態をより詳しく検査できます。
胸水の原因を明らかにするためには、胸水を採取して検査しなければなりません。胸水を採取する際には超音波検査を行い、胸水が貯まっている部位を確認します。
胸水を採取することで、滲出性か漏出性か診断できるのです。診断方法は他にも腹腔鏡を用いた方法や気管支鏡を使用した方法などがあります。
治療方法を教えてください。
また、繰り返し胸水が貯まる場合にはドレーンから2枚の胸膜を癒着させる薬剤を注入する胸膜癒着術を行うこともあります。胸水を排出しても原因疾患が治っていなければまた胸水は貯まってしまいます。
そのため胸水の排出と同時に、原因疾患の治療も行うことが重要です。肺炎が原因であれば抗生剤、肺がんなどが原因であれば抗がん剤による治療を行います。
入院期間を教えてください。
入院期間は、胸水の量や排液の状況によって個人差があるため、あくまで目安として考えておきしょう。また、胸水貯留の原因によっても入院期間は異なります。
例えば、肺がんが原因で胸水貯留となった場合には胸水の治療に加えて肺がんの治療も必要です。もし胸水貯留で入院することになった場合には、主治医に入院期間について確認すると良いでしょう。
胸水貯留のリスクと予防方法
胸水を抜くリスクはありますか?
そのため、胸水を抜く時にはゆっくり時間をかけて行います。また、ドレーンが抜けてしまったりドレーン挿入部から細菌が入ってしまう可能性もあります。そのため、頻繁に胸水を抜くことは少ないです。
死亡率は高いのでしょうか?
また、両側に胸水が貯まっていることも死亡率を高める要因の1つです。滲出性胸水でも、重症化すると胸膜に膿が貯まることがあり致命的な状態になる場合があります。
最悪の事態を避けるためにも、胸に違和感をおぼえたり息苦しさを感じたりした場合にはすぐに病院を受診するようにしましょう。
胸水貯留を予防する方法はありますか?
肺がんの予防には禁煙・節度のある飲酒・バランスの良い食事・運動・適正な体形の維持・感染予防が有効です。喫煙者であっても禁煙を始めれば、10年後には禁煙しなかった人と比べて肺がんのリスクを約半分に減らせます。
心不全は肥満・糖尿病・高血圧などがリスクファクターです。これらを予防するには肺がんの予防と同様に、生活習慣を整えることが重要です。胸水貯留は命に関わる病気ですので、しっかり予防しましょう。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
このような症状がみられた場合には、すぐに病院を受診することをおすすめします。命に関わる病気といわれると、恐ろしく感じる方もいるでしょう。
しかし、胸水貯留には治療方法も予防方法もあります。胸水貯留にならないためにも、まずは生活習慣を見直してみてはいかがでしょうか。
編集部まとめ
胸水が発生するメカニズム・症状・診断方法などについて解説しました。
胸水貯留が発生するメカニズムは滲出性か漏出性によって異なります。滲出性では主に肺がんが、漏出性では主に心不全が原因です。
胸水は胸膜という部位に貯まります。胸水が貯まると肺や心臓が圧迫され、胸の違和感・咳・息苦しさ・胸の痛みなどの症状が表れます。
胸水貯留はレントゲン・CT・超音波検査などを用いて診断し、ドレーンという管を胸に刺して胸水を排出する治療方法を行うことが多いです。
胸水貯留は肺がんや心不全に伴って発症することが多いため、原因疾患の予防が胸水貯留の予防にも繋がります。予防のためには生活習慣を見直すと良いでしょう。
本記事が少しでもお役に立てば幸いです。