「胆石症」の症状・原因・発症しやすい人の特徴はご存知ですか?医師が監修!
食後に「 右上の脇腹あたりが痛い」「 みぞおちが痛む」といった症状はありませんか。
症状が続くようであれば、もしかすると胆石症かもしれません。
胆石症には自覚症状が出る場合と無症状の場合とがあり、人間ドックなどで超音波を受けてはじめてわかるといったケースもあります。
胆石症は聞き慣れた身近な病気で、ついつい様子をみてしまうこともありますが、放置していると深刻な状態を引き起こしてしまう可能性もあるのです。
この記事では、胆石症の症状・原因・治療方法に加えて、放置した場合のリスク・注意点も詳しくご紹介しますのでぜひ最後までお読みください。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
目次 -INDEX-
胆石症の特徴
胆石症の特徴を教えてください。
結石は、胆汁の成分であるビリルビン・コレステロールなどが何らかの原因で固まってしまったものです。胆石症は、結石のできる場所によって、3つに分かれます。その3つとは、胆嚢結石(胆嚢内に結石がある状態)・総胆管結石(胆管の途中に結石がある状態)・肝内結石(肝臓内の胆管に結石がある状態)です。このうち、最も多くみられるのは胆嚢結石になります。
どのような症状がみられますか?
胆嚢結石では、発作時にみぞおちに激しい痛みが出るのが特徴です。また、胆嚢・胆管の炎症が起こると、発熱がみられる場合があります。その他には、 胆石が胆道系に詰まることで胆汁がながれにくくなるため起こる吐き気・嘔吐も多くみられる症状です。
加えて、胆石が胆嚢内に長時間留まることで、胆嚢が膨らんで腹部膨満感がみられる場合もあります。また、 胆石が胆道系に詰まり、胆汁の流れが阻害されると黄疸が生じる場合があります。この場合、皮膚や目の白い部分が黄色く変色するのが特徴です。
しかし、実際には無症状の胆石症も多く見られます。これらの症状が生じた場合は、早めに医師の診察を受けるようにしましょう。
発症する原因を教えてください。
また、胆道感染・肝硬変などのビリルビンが上昇する病気も胆石症の原因となります。
また、妊娠中・経口避妊薬の使用も原因の1つで、遺伝的な要因も関係していると考えられています。
胆石症になりやすい人の特徴を教えてください。
- コレステロールが多いカロリーの高い食事をよく食べる人
- 肥満・糖尿病などの生活習慣病を持っている人
- 急激なダイエットを行う人
- 胆嚢・胆道に炎症・感染がある人
- 過去に胆石症・胆道手術を受けたことがある人
- 女性で、特に妊娠中・経口避妊薬を使用中の人
- 遺伝的な要因がある人
胆石症になりやすい人は、これらの特徴を持っていることが多いと考えられています。必ずしも発症するとは限りませんが、特に上記の特徴に心当たりのある人は注意が必要です。
胆石症の治療方法
どのような検査で診断されるのでしょうか?
血液検査では、胆石症による炎症反応の他に、肝臓から出る酵素の値を調べて肝機能異常の有無を確かめます。胆石症が疑われる場合には、酵素の値が高くなるからです。
そして、画像検査は診断においてとても重要な役割を果たします。画像検査には、超音波(エコー)検査・CT検査(特に造影CT)・MRI/MRCP(MR胆管膵管撮影)検査・内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)などがあります。これらの画像検査で詳しく確認できることは、胆石の有無・位置・大きさなどです。
これらいくつかの検査を組み合わせて、詳しい診断を行うのです。
治療方法を教えてください。
経口溶解療法は、コレステロール結石に対して有効な方法で、胆汁中の成分を変化させて溶かします。体外衝撃波胆石破砕療法は、体の外から胆石に向けて衝撃波を照射して、胆石を砕く方法です。石が小さく、胆嚢の機能が良好な場合に適用されます。
そして、砕くことができない結石に対しては手術療法が選択されます。以前は開腹手術が行われていましたが、現在の第一選択は腹腔鏡下胆嚢摘出術です。この術式は傷口が小さく、術後の回復が早いのが特徴です。
しかし、腹腔鏡下手術で取り出せない場合・合併症がある場合には開腹手術を行います。治療方法は、医師とよく相談し、症状・全身状態に合わせて選択することが重要です。
胆石が見つかった場合は手術が必要でしょうか?
しかし、総胆管に結石が見つかった場合は無症状でも胆管炎を引き起こす可能性があるので、内視鏡を使って切除する必要が出てくるケースがあります。また、重症である場合・合併症がある場合、大きな石・複数の石がある場合も手術が必要となることが多いです。
胆石症の位置・大きさ・症状などに応じて、適切な治療法を医師と相談して選択する必要があります。
胆石症のリスク
胆石は自然に流れるのでしょうか?
また、胆石は再発することがあるため、一度発症した場合・結石のみを取り除いた場合のいずれも定期的な検査を受けることが推奨されています。治療方針は、胆石の大きさ・数・位置・症状の程度・患者の年齢・健康状態などによって異なります。
無症状の場合は経過観察する場合もありますが、胆石が見つかった場合は、医師に相談して治療方針を確認することが大切です。
放置するリスクを教えてください。
胆嚢炎・胆管炎が長期化すると、感染症を引き起こすことがあります。感染症が進行した場合、敗血症を引き起こし、生命に危険を及ぼす場合もあるので注意が必要です。
また、胆管の詰まりによって胆汁が膵臓に逆流し、膵炎を引き起こすことがあります。膵炎は、腹痛・下痢・嘔吐・発熱などの症状を引き起こし、重篤な合併症を引き起こすため注意が必要です。
さらに 胆石が長期間放置されると、胆嚢の壁が損傷を受け、胆嚢癌のリスクが増加することがあります。したがって、胆石がある場合は、痛み・炎症がなくても早期に治療を受けることをおすすめします。
食事に関する注意点はありますか?
糖分の摂りすぎも、胆嚢の動きを鈍らせるために胆汁の排出が悪くなり、胆石が詰まるリスクが高くなるのです。したがって、これら2つは特に摂取量を減らしましょう。
一方、青魚(タウリン・EPAなどを含む)・植物性蛋白の食品(豆腐など)は積極的に摂ることをおすすめします。また野菜・果物・穀物・豆類などに多く含まれる食物繊維は、腸の働きを良くして胆汁の排出を促進するため、意識して摂りたい食品です。
その他に、適度のカフェイン(コーヒー)は胆石形成を抑制する作用があるとの報告があります。食事は、栄養バランスの良いものを摂取することが重要です。バランスの良い食事を心がけ、偏食・食べ過ぎには注意しましょう。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
胆石症は基本的には治療対象となる病気で、適切な診断・状態に応じた治療を受けることが重要です。悪化して、深刻な状態に陥らないためにも、当てはまる症状がある場合には医師の診察を受けることをおすすめします。
編集部まとめ
胆石症について詳しくご紹介しました。
胆石症は無症状のことも多く、結石も数・大きさなどが長期間変化しないものもあります。
しかし、無症状の場合であっても、徐々に症状が現れて悪化してしまう可能性もあるため、定期的な検診をおすすめします。
もちろん、症状がある場合は早めに診察を受けましょう。
「胆石症ではないか」「胆石症はどんな病気なのだろう」「身近に胆石症の人がいる」などという思いから、この記事に辿り着いた皆様の参考になれば幸いです。