「起立性低血圧」を発症すると現れる症状・発症しやすい人の特徴はご存知ですか?
立ち上がった瞬間、めまいがしたり目の前が真っ暗になったりする「起立性低血圧」をご存知でしょうか。
起立性低血圧は健康な人でも起こることがあります。しかし、最も起こりやすいのは高齢者・貧血の人・持病のある人なのです。
多くの場合、血圧を上げるお薬や生活改善により、症状が改善します。
今回は、起立性低血圧の症状・原因やなりやすい人・治療方法・予防方法・日常生活での注意点もご紹介します。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
起立性低血圧の症状と原因
起立性低血圧はどのような病気でしょうか?
要な血圧が十分に維持されず、脳に十分な血液が行き渡らなくなることによって起こります。起立性低血圧は、健康な人でも急に立ち上がったときに起こるケースがあります。しかし多くの場合、高齢者・自律神経機能障害を持つ人などでみられることが一般的です。その他にも、神経難病・心臓病・内分泌疾患・貧血・脱水症状・薬剤の副作用など、様々な疾患や原因が関与していることがあります。
治療には、原因を特定し、その原因に合わせた治療が必要です。一般的には、水分補給や塩分摂取の増加・弾性ストッキングの着用・運動療法などが有効です。また、特定の疾患によって引き起こされる場合は、その疾患に対する治療が必要になります。
症状を教えてください。
- めまい
- ふらつき
- 目の前が暗くなる
- ひどい場合は失神
以下は、立ち上がった瞬間めまいやふらつきを感じた後に起こりやすい主な症状です。
- 吐き気
- 冷や汗
これらの症状は、体が重力に逆らって血液を頭側に送り上げるために必要な血圧が十分に維持されず、心臓から全身に送られる血液が減少することで引き起こされます。もし、これらの症状がある場合には、医師に相談して適切な治療を受けることが大切です。
発症の原因を教えてください。
- 自律神経機能の異常:疲労やストレスなどで自律神経が適切に機能しなくなることが原因で、心拍数や血管の収縮・拡張がうまく調節されなくなることがあります。
- 脱水症状:運動や高温の環境下で発汗が多くなる場合や、嘔吐・下痢・尿量の減少による水分不足によって血液中の水分量が不足することも、血圧が下がる原因となるでしょう。
- 薬剤の副作用:降圧剤・抗うつ薬・抗不安薬・抗ヒスタミン薬・利尿剤などの副作用も原因の1つです。
- 神経難病:パーキンソン病や多系統萎縮症などの神経難病は、自律神経の機能が低下し、起立性低血圧を引き起こすことがあります。
- 心臓病:心筋梗塞・心不全・弁膜症などの心臓病が血液循環に悪影響を与えることで起立性低血圧が引き起こされることもあるでしょう。
- 内分泌疾患:副腎皮質機能低下や糖尿病などの内分泌疾患も血圧を下げる原因の1つです。
これらの原因によって起立性低血圧が発生することがあります。自分自身で対処できる症状でない場合は、医師に相談し、適切な治療を受けることが重要です。
迷走神経反射とどのように違うのでしょうか?
主な原因は、精神的なショック・強いストレス・痛みなどです。これらにより自律神経のバランスが崩れることで一時的な血圧低下がおこります。迷走神経反射は一過性の症状であり、短時間で自然に治まることがほとんどです。
一方、起立性低血圧は立ち上がったり起き上がったりした際、一時的な血圧低下が起こります。起立性低血圧は長期にわたって繰り返し発生するため、生活に支障をきたすこともあります。
なりやすい人の特徴を教えてください。
- 高齢者
- 低血圧の人
- 糖尿病の人
- 貧血の人
- 降圧剤や精神薬などの薬を服用している人
この他にも、様々な病気が原因で起立性低血圧が引き起こされることがあります。原因を明らかにするためにも、医療機関で詳しい検査を受けることが大切です。
起立性低血圧の検査と治療方法
どのような検査で診断されますか?
その他、原因となる病気が疑われる場合には、血液検査・心電図検査・MRI検査・CT検査などを用いて鑑別を行うのが一般的です。
治療方法を教えてください。
薬物療法が必要かどうかは人によって異なりますが、主治医の判断により、血圧を上げるお薬が処方されることもあります。生活指導の内容は、以下の通りです。
- 水分補給:起立性低血圧は、脱水症状によって引き起こされることがあります。そのため、十分な水分補給により血液の循環を改善することが大切です。
- 適度な運動:朝起きたときに軽度のストレッチや運動を行うことで、血圧を上昇させられます。激しい運動は逆効果になるため、適度な運動量に留めるようにしましょう。
- 日頃から適度な運動を行い筋力をつけることも有効です。
- 食事改善:バランスの良い食事を心がけ貧血を予防すれば、低血圧の改善が期待できます。過度な飲酒は控えましょう。
- 姿勢や体位変換に気を付ける:長時間同じ体勢で過ごすことは血流を停滞させる原因となります。適度に身体を動かし、血流を促進させましょう。また、急に立ち上がったり起き上がったりするのではなく、ゆっくりと体位変換することも重要です。
- 弾性ストッキングの使用:圧力の強いソックスを着用することで、血液の循環を改善できます。ただし、装着時間や強度は医師の指示に従うようにしてください。
これらの治療方法は、人によって異なりますので、必ず専門医の指示に従って行うようにしましょう。また、基本的な生活習慣の改善や十分な睡眠なども起立性低血圧の改善に役立ちます。
治療薬について教えてください。
- ミドドリン塩酸塩
- メチル硫酸アメジニウム
ミドドリン塩酸塩とメチル硫酸アメジニウムは、交感神経の働きを促進させ、血圧を上げるお薬です。ミドドリン塩酸塩は副作用として、悪心・嘔吐・高血圧などの症状が現れることがあります。メチル硫酸アメジニウムは、発疹・動悸・血圧変動などの症状が現れることもあるお薬です。
また、起立性低血圧を引き起こす原因となる病気を患っている場合には、病気によって治療薬が異なります。いずれにしても、主治医の指示通りに服用するようにしましょう。
起立性低血圧の予防方法と日常生活での注意点
起立性低血圧は完治しますか?
しかし、原因が不明のまま起立性低血圧が継続する場合には、長期的な治療の継続が必要でしょう。定期的な医師の診察を受け、適切な管理を行うことが重要です。
予防方法はありますか?
具体的には、以下のような対策が効果的です。
- 水分補給を十分に行う
- 食生活を改善する
- 適度な運動を行う
- 十分な睡眠をとる
起立性低血圧は、血管内の血液量が不足することで起こる場合があります。水分不足は血液量の減少を引き起こし、低血圧を引き起こす原因になります。水分補給を十分に行い、適度な水分バランスを維持するようにしましょう。
食事によって十分な栄養素を摂取することが、健康な体を維持するためには重要です。低血圧の人は塩分を少しだけ多めに摂ることも有効でしょう。また、血流を促進するために温かい食べ物を摂ることもおすすめです。
運動は血行を促進するため、低血圧を防ぐのに役立ちます。適度な運動を行い、体力をつけることで低血圧を予防できます。特に、下肢の筋力アップは血液を頭側に送るために有効です。ただし、急激な運動や過度の運動は低血圧を引き起こすことがあるため、適度な運動を心がけることが大切です。
睡眠不足やストレスは起立性低血圧だけでなく、迷走神経反射を引き起こす原因にもなります。十分な睡眠をとり、疲れやストレスを溜めないように心がけましょう。
以上のような方法を取り入れ、生活習慣を改善することで起立性低血圧を予防できるでしょう。
日常生活での注意点を教えてください。
- 主治医の指示に従って薬を服用する
- 起き上がるときにはゆっくりと立ち上がる
- 長時間の同じ姿勢には注意する
起立性低血圧と診断され、薬を処方された場合には、用法・用量を守って服用しましょう。しばらく症状が治まっているからといって、自分の判断で服薬を中止するのは止めてください。
また、原因となる病気を治療中の人も主治医の指示に従って治療を受けることが大切です。
起立性低血圧の人の場合、急激に起き上がると血圧が急激に低下しやすくなります。ゆっくりと起き上がり、立ち上がった後もしばらくは立ったまま静止し、様子をみてから歩くように心がけましょう。
長時間のデスクワークなどにより血流が滞った場合、急に立ち上がると低血圧の症状が出やすくなります。適度に立ち上がったり足首を動かしたり、血流を促進させることが大切です。
また、治療方法や予防法の項目でもご紹介しましたが、水分をこまめに摂ることや適度な運動も心がけるようにしましょう。特に、ウォーキングや水泳といった全身運動はおすすめです。
これらの注意点を意識することで、日常生活で起立性低血圧の症状が出るリスクを減らせます。ぜひ日常生活の中で意識してみてください。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
例えば、失神を起こして頭を強くぶつけたりしてしまう危険も考えられるでしょう。そのため、立ち上がったり起き上がったりするときには、ゆっくりと動作を行うことを心がけてください。
また、適度な睡眠・バランスの良い食事・水分摂取なども予防に役立ちます。つらいめまいや立ちくらみなどが続くようであれば、医療機関に相談しましょう。
編集部まとめ
立ち上がったときに、くらっとめまいがしたり目の前が暗くなったりする経験をしたことがある人も多いのではないでしょうか。
起立性低血圧は、健康な人でも睡眠不足や水分の摂取不足などが原因で起こることがあります。しかし、中には原因となる何らかの病気が隠れていることがあるため注意が必要です。
思い当たる症状がある場合には、一度医療機関で診てもらうようにしましょう。また、起立性低血圧の予防や治療には、生活習慣の改善が大切です。
規則的な生活やストレス発散などを行い、体への負担を減らすことを心がけてみてください。