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「心筋炎」を発症すると現れる症状・原因・発症しやすい人の特徴はご存知ですか?

 公開日:2023/04/17
「心筋炎」を発症すると現れる症状・原因・発症しやすい人の特徴はご存知ですか?

心筋炎は心臓の筋肉である心筋に炎症が起こる病気で、年齢・性別にかかわらず、さまざまな原因で発症します。

軽症で治癒が早い場合もありますが、急激に重症化して、呼吸困難・ショックなどを起こして生命に危険を及ぼす場合もあるのです。

この記事では、そのような心筋炎の種類・症状・原因について詳しく解説します。

どのような人が心筋症になりやすく、心筋症を患った場合にはどのような治療を行うのかまでお伝えしますので、ぜひ最後までお読みください。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

心筋炎の症状と原因

胸を抑える女性

心筋炎とはどのような病気でしょうか?

心筋炎は、心筋(心臓の筋肉)に炎症が起こる病気です。ウイルスが原因となる場合が多く、他には細菌・真菌・原虫・毒素・薬・免疫異常・膠原病なども原因になる場合があるといわれています。
心筋に炎症が起きてしまうと、心臓の機能低下・心不全・不整脈などの症状を引き起こす場合があります。そして、呼吸困難・突然死などの生命に危険を及ぼす場合もあるのです。
心筋炎は心臓突然死の有力な原因であり、重篤な疾患の1つなので、早期診断・早期治療が重要となります。

さまざまな種類があると聞きましたが…。

心筋炎は、病因分類(発症原因)・組織分類・臨床病型分類などで細かく分けられ、さまざまな種類があります。病因分類では、ウイルス・細菌・真菌などの原因によって13つに分けられています。また、組織分類は、リンパ球性・巨細胞性・好酸球性・肉芽腫性の4つです。そして、臨床型分類では、急性・劇症型・慢性の3つに分かれています。
中でも急性心筋炎は、心筋にウイイルスなどが感染して発症する種類です。かぜ症状から始まり、そのまま回復する人も多いですが、その後に胸痛・不整脈が現れて心不全・ショックなどの重篤な症状へと移行する場合もあるのです。そして、劇症型心筋炎は心筋炎の中でも死に至るほど急激に症状が悪化します。
かぜ症状から突然、失神・ショック・呼吸困難などの症状へと進行して、重篤な急性心不全へと急激に病状が変化します。劇症型心筋炎は極めて重篤な疾患なのです。各種類によって原因や症状が異なるため、正しい診断が必要となります。

どのような症状がみられますか?

心筋炎の症状は、病気の程度によって異なります。軽度の場合は症状がない場合もありますが、先行する自覚症状としては、かぜ症状(咳・発熱・倦怠感・関節痛など)が挙げられます。その後、胃のむかつき・腹痛・下痢などの消化器症状に加え、呼吸困難・息切れ・胸痛・胸部圧迫感・不整脈・動悸・失神などがみられるのが一般的です。
しかし、先行症状がない場合もあります。また、急激に状態が悪化すると、血圧低下・意識障害などのショックを起こし、突然死に至ることもあるので注意が必要です。これらの症状がある場合には、早めに医療機関を受診することが重要です。

原因を教えてください。

心筋炎の原因には、感染性・巨細胞性・薬剤性などが挙げられますが、その多くは、ウイルスなどの感染によって発症します。感染性心筋炎の原因となるウイルスは、コクサッキーウイルス・アデノウイルスなどです。細菌では、腸球菌・ブドウ球菌・レンサ球菌などが挙げられます。
巨細胞性心筋炎は、アレルギー反応・自己免疫が原因で発生することがあり、具体的には食物アレルギー・薬物アレルギー・花粉症・アトピー性皮膚炎などです。薬剤性心筋炎は、薬を服用しているすべての人に起こりうるものですが、特に化学療法薬や心臓に影響を及ぼす薬物の副作用などが原因で発生する可能性があります。

どのような人がなりやすいのでしょうか?

心筋炎になりやすい人の特徴をご紹介します。

  • 免疫力が低下している人:感染症・免疫抑制剤の使用・過剰なストレス・栄養失調などが原因で、免疫力が低下している人は心筋炎になりやすいです。
  • ウイルス感染症を患っている人:コクサッキーウイルスなどのウイルスが心筋に感染して心筋炎を引き起こす可能性があります。ウイルス感染症を患っている人は心筋炎に移行してしまう恐れがありますので要注意です。
  • 過度な運動をしている人:過度な運動を続けていると、心臓が疲れてしまい、それが心筋炎を引き起こす原因になる場合もあります。その他には、アレルギーなどで引き起こされる免疫反応によって発症する場合もあるとされています。

心筋炎はさまざまな原因で引き起こされる病気ですが、一部は明確な原因が特定できない場合もあるのが現状です。心筋炎は年齢・性別・持病の有無にかかわらず、健康な人であっても突然発症する可能性もありますので、気になる症状がみられたら早期の受診をおすすめします。

心筋炎の治療

聴診器

心筋炎はどのような検査で診断されますか?

心筋炎の診断には、症状・経過の情報・診察所見と合わせて血液検査・画像などの結果が必要です。心筋炎が疑われる際に主に行う検査所見をご説明します。
まず、血液検査で注意する内容は、炎症兆候(白血球・CRPの上昇など)の有無・心筋障害(心筋トロポニンT・CK-MBの上昇)の有無・腎臓・肝臓の機能低下です。心電図では、ST-Tの異常・心伝導障害・不整脈の有無を確認します。胸部X線検査で確認することは、心臓と肺の状態(肺うっ血・胸水・心拡大の有無など)です。
心エコー・心臓MRIでは心嚢液貯留の有無・心収縮力の低下・心筋の浮腫の有無を確認します。そして、心筋生検では心筋細胞を少量採取して病理学的検査を行い、心筋変性・心筋壊死の有無を調べます。
これらの検査結果と身体の診察で確認した心筋炎の症状とを照らし合わせて、心筋炎の確定診断を行うのです。

治療方法を教えてください。

心筋炎には、急激な悪化で生命を脅かす可能性のある劇症型心筋症などもあるので、まずは急性期を乗り切るための治療が大切です。心筋炎の診断が確定した場合やその疑いがある場合は、入院して安静を保ち、血圧・脈拍・血中酸素飽和度・尿量などの全身状態を細かく確認します。心電図モニターを装着して常に波形を確認し、急な変化にすぐに対応できるようにします。
心筋炎の治療方法は病因によって異なりますが、一般的には心不全・不整脈に対する治療が主です。強心剤・利尿剤の使用に加え、ときには人工呼吸器を使用して、心臓にかかる負担を減らす治療が行われます。
劇症型心筋症のように突然心臓の機能が悪化してしまう重症の場合は、人工心肺装置として経皮的心肺補助装置(PCPS)を使用する場合が多いです。また、原因が明らかな場合は原因に対する治療を行う場合もあります。
しかし、ウイルスについては急性期にその種類を特定することが困難な場合もあるのが現状です。抗ウイルス療法・ステロイド療法・免疫抑制療法などもありますが、その有効性はまだ確立されていないため、行うかどうかは医師と相談しながら慎重に決める必要があります。

自然治癒しますか?

心筋炎は、病因・重症度・治療のタイミングによって異なりますが、自然治癒する場合もあります
例えば、インフルエンザ・風疹・はしかなどから生じるウイルス性の心筋炎は、比較的経過が良好でかぜ症状が治まるように自然と治る場合が多いです。心筋炎が自然治癒する場合、症状は徐々に改善していきますが、完治するまでには時間がかかる場合があります。
一方、劇症性心筋炎のような重篤な心筋炎の場合、自然治癒する可能性は非常に低いため治療が必要です。また、心臓の機能が低下していると完全に元の状態に戻ることが難しい場合があり、継続的な治療を行う場合もあります。
心筋炎は、自然治癒する場合もありますが、急激な症状悪化の可能性もあるため自己判断は禁物です。どのような場合であっても、症状がみられる際は、早期受診をおすすめします。早期に医師の診断・治療を受けることが、心筋炎の治療や自然治癒の可能性を高めるためには重要です。

心筋炎の注意点

医師の手

後遺症はありますか?

心筋炎は、心筋の炎症によって引き起こされる病気です。重症の心筋炎では、心筋の損傷で心臓の機能低下が起こり、状態によって後遺症が残る場合があります
例えば、危険な不整脈や心臓の機能低下が原因で起こる心不全などです。また、心臓の収縮力が弱くなり、心臓が拡大してしまうと拡張型心筋症になります。心臓の血管が狭くなることにより、心臓に十分な酸素や栄養が届かなくなった場合には狭心症を発症する可能性もあるのです。
その他には、心筋炎が心臓の弁に影響を与え、弁膜症などの症状が残る場合があります。後遺症が残る場合とそうでない場合は、治療開始のタイミングがとても重要となりますので、発症が疑われるときには自己判断で様子を見ずに早期の受診をしてください。

心筋炎と診断された場合に注意することを教えてください。

心筋炎と診断された場合、まずはその治療方針について理解・納得した上で、 医師が指示する治療計画に従うことが大切です。基本的には炎症が治まるまで、身体を休めることが必要となります。どの程度の安静が必要なのか、日常生活以外の運動などはどのくらい可能かなどを確認しましょう。
重症度に合わせた運動制限は必要ですが、適切な指示の下で行う運動は大切です。また、心筋炎の治療には、炎症の緩和や心臓の機能改善を目的として薬物療法が用いられる場合が多いです。効果的に治療を進めるために、医師から指示された正確な用法と用量を守りましょう。
生活習慣改善も重要なポイントです。喫煙が心臓・肺に有害であることはもちろん、飲酒も避けてください。食事は、塩分量の制限が大切です。塩分を摂りすぎると、循環血流量が増して心臓に負担がかかるので注意が必要です。
また、不規則な生活・睡眠不足・ストレスなども心筋炎の治療に影響を与える場合があります。このように、禁煙・禁酒・バランスのよい食生活・十分な睡眠などの健康的な生活習慣を心がけましょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

心筋炎は、心臓の筋肉である心筋に炎症が起こる病気であり、場合によっては重篤な状態となります。しかし、早期発見・早期診断・早期治療によって回復も可能な病気なのです。
今回ご紹介した内容に当てはまる症状がある場合は、すぐに受診することをおすすめします。万が一心筋炎にかかったとしても、医師の指示に従い適切な治療を受けることで回復の可能性が高まります。
また、生活習慣を改善することで再発予防が可能です。日常の中のわずかな体調の変化を逃さないようにしましょう。

編集部まとめ

応援ポーズ
心臓は、私たちが生きていくために必要不可欠な臓器です。

心筋炎はさまざまな原因で起こる病気であり、重症化してしまうこともありますが、早期治療で回復が見込める病気でもあります。

この記事で心筋炎についての知識を深めていただき、早期発見の手助けとなれば幸いです。

心筋炎から身体を守るためには、禁煙・適度な飲酒・バランスのよい食事・適度な運動・十分な睡眠などの生活習慣を普段から心がけることが大切になります。

心筋炎だけではなく、心臓の病気に対する意識を高め、日常生活の中で心臓の健康について意識してみてください。

この記事の監修医師