「甲状腺機能亢進症」の初期症状・原因はご存知ですか?医師が監修!
甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンの過剰分泌によって自律神経が乱れ、様々な症状を引き起こすものです。
子供から高齢者まで様々な方が発症しますが、男性に比べて女性の患者が多いといわれます。
若い女性が甲状腺機能亢進症になってしまうと、妊娠・出産といった体の変化と薬・手術といった治療を両立させていかなくてはいけません。
また、甲状腺機能亢進症の症状は非常に気づきにくいため、相談できずに辛い症状に悩んでいる方が多くいます。
今回はそのような甲状腺機能亢進症の原因・バセドウ病との違い・症状・検査・治療方法・食べてはいけないものを解説します。
最後まで読んで心当たりのある方・気になる症状がある方は、お近くの医療機関にご相談ください。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
甲状腺機能亢進症の原因と症状
甲状腺機能亢進症とはどのような病気でしょうか?
- 甲状腺の腫れ
- 大量の発汗
- 体のほてり
- 食欲亢進
- 体重の減少
- 手の震え
- 動悸
- 息切れ
- 疲れやすい
これらの症状を引き起こす理由は、過剰な甲状腺ホルモンが自律神経に影響を及ぼすためです。
結果、甲状腺ホルモンが交感神経への刺激を強くしたり、体の熱産生を活発にさせたりするため、これらの症状が現れます。
バセドウ病との違いを教えてください。
バセドウ病以外の甲状腺機能亢進症で代表的なものを2つ紹介します。
- 亜急性甲状腺炎
- 無痛性甲状腺炎
亜急性甲状腺炎と無痛性甲状腺炎は、ホルモンや受容体の異常や甲状腺の炎症などによって起こる場合もありますが、原因不明な場合もあります。
また、年齢別で甲状腺機能亢進症を比べてみると、子供はバセドウ病が多く、亜急性甲状腺炎は30〜40代の女性に多くなっています。
発症の原因は何でしょうか?
- 新陳代謝を促進
- 自律神経の調節
- 体温・脈拍・エネルギー消費などの調節
これらの働きをもった甲状腺ホルモンが過剰に分泌されると、息切れ・疲れやすい・汗がたくさん出るなどの症状が現れます。
つまり、甲状腺機能亢進症は甲状腺ホルモンの過剰分泌によって、自律神経の調節機能が上手く働かないため発症してしまうのです。
初期症状はどのようなものがみられますか?
- 甲状腺の腫れ
- だるさ
- 集中力が続かない
- 汗をかきやすい
- 息切れがする
- 疲れやすい
- 肩こりや頭痛
このような曖昧な初期症状のため、更年期障害やうつ病とも間違われることが多くなっています。
ご自身でこれらの病気を見分けるのは非常に難しいため、気になる症状がある方はお近くの内科や内分泌科へ相談しましょう。
甲状腺機能亢進症の検査と治療
どのような検査を行うのでしょうか?
例えば、バセドウ病の場合は血液中の甲状腺ホルモン(FT4)の濃度が高く、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の濃度が低くなっているのです。
エコー検査では、喉に機械を当てて甲状腺の状態を診ます。甲状腺の大きさを測定し、腫れや炎症がないかをチェックします。
このように、血液検査とエコー検査によって甲状腺機能亢進症かどうか判断するのです。
治療方法を教えてください。
薬の服用や手術で甲状腺を切除することによって、甲状腺ホルモンの分泌を抑えるのです。
アイソトープ治療とは、放射線を放出するヨウ素を服用することによって、体の内側から甲状腺に放射線を当てる治療法です。
患者の多くが、薬の服用を続けながら症状を抑えて、場合によっては手術を行うという流れで治療しています。
このように、これら3つの方法を症状や患者の状況を考慮しながら選択します。
手術することもあるのでしょうか?
また、薬剤やアイソトープの服用のみで改善を図る場合も多いです。手術のメリットは、症状を抑える確実性があること・再発が少ないことです。
その反面、デメリットは入院・麻酔が必要になること・手術跡が残ること・甲状腺機能低下症になる場合があること・手術可能な医師が限られることなどがあります。
このように、甲状腺機能亢進症の手術にはメリットとデメリットがあるため、状況に応じて見極める必要があります。
甲状腺機能亢進症の注意点
甲状腺機能亢進症は治る病気でしょうか?
また、甲状腺機能亢進症の中には妊娠中や新生児期に一時的になるものもあるので、その場合は心配しすぎる必要はありません。
しかし、一般的なバセドウ病や甲状腺炎による甲状腺機能亢進症の場合は、病気と長く付き合っていく必要があります。
そのため、薬や治療なしでも日常生活を取り戻すことを寛解といいますが、甲状腺機能亢進症は完治ではなく寛解を目指す病気になります。
甲状腺機能亢進症で控えた方がいい食べ物はありますか?
- 甲状腺ホルモンの主成分であるヨウ素を含むもの(昆布・海藻・寒天など)
- 代謝を刺激するもの(辛いもの・唐辛子など)
- アルコール
- カフェインを多く含むもの
甲状腺ホルモンの主成分であるヨウ素・代謝や自律神経を過剰に刺激するものは、なるべく控えましょう。
これらを控えることで、甲状腺機能亢進症の症状が抑えられる場合があります。
日常生活で注意することを教えてください。
- ビタミンAの摂取(春菊・かぼちゃ・人参・小松菜・うなぎなど)
- ビタミンB群の摂取(玄米・大豆・そばなど)
- 亜鉛の摂取(アーモンド・納豆など)
- 水分をよく摂る
ビタミンA・B群は甲状腺ホルモンの過剰分泌によって不足になりがちな栄養素です。
そして亜鉛は甲状腺の働きを調節する役割を持っています。
また、甲状腺機能亢進症の方は汗をよくかき水分不足になりやすいので、積極的に水分を摂取しましょう。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
また、こういった症状があっても、どの病院に行ったらいいのかの判断もつきません。そのため、症状が悪化しても医療機関になかなか相談できず、苦しんでいる方が大勢いるのです。
自分が甲状腺機能亢進症かもしれないと感じたら、以下の医療機関に相談しましょう。
- 内分泌科
- 甲状腺疾患の専門病院
- 近所の内科
いきなり専門の病院や内分泌科に行くのが難しい場合は、近所の内科へ受診し、専門の病院への紹介状を書いてもらいましょう。
また、女性患者の多くが妊娠・授乳など体の変化と治療の両立が必要になる場合があります。その上、甲状腺機能亢進症は完治も難しい病気になるので、症状と上手に付き合っていく必要があります。
しかし、なるべく早めに適切な治療を受けることによって、寛解を目指せたり、症状の悪化を防げたりします。
今回紹介した症状で気になることがあれば早めに内分泌科・甲状腺疾患の専門病院・難しければ近所の内科に相談しましょう。
編集部まとめ
ここまで、甲状腺機能亢進症の原因・バセドウ病との違い・症状・検査・治療方法・食べてはいけないものを紹介しました。
甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンの過剰分泌によって自律神経が乱れ、様々な症状を引き起こすものです。
また、バセドウ病は甲状腺機能亢進症の中の1つで、自己免疫によるものだとわかりました。
エコーや血液検査での判定・患者の状況などを考慮し、薬剤・手術・アイソトープ治療の中から適切な治療を行います。
甲状腺機能亢進症は女性の患者が多いですが、子供から高齢者まで、どなたでもなる病気です。
気になる症状があれば、お近くの医療機関にご相談ください。