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「ベーカー嚢腫」を発症すると現れる初期症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

 公開日:2023/04/11
「ベーカー嚢腫」を発症すると現れる初期症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

ベーカー嚢胞という言葉を聞いたことはありますか?膝窩嚢胞(しっかのうほう)のことで、膝の裏に水がたまる症状です。原因は関節が長期間受け続けた「摩擦」です。

膝裏がつっぱり、痛みがあるなど慢性的にも違和感を覚える場合は受診を検討しましょう。
ご自身の体を知ることが病気への気づきの第一歩となります。

若いから大丈夫とも限りません。小さなお子様でも罹患することがあり、50代以降の方に多くみられる症状ですので理解を深めておきましょう。

小池 達也

監修医師
小池 達也(医師)

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大阪市立大学医学部卒業。現在は白浜はまゆう病院整形外科所属、骨リウマチ疾患探索研究所所長、大阪市立大学大学院医学研究科高齢者運動器変性疾患制御講座を兼務。日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会認定リウマチ医、日本整形外科学会認定スポーツ医。

ベーカー嚢腫の症状と原因

診察をする男性医師

ベーカー嚢腫はどのような病気ですか?

膝関節の後ろにある袋に水がたまり、パンパンに腫れると痛みを生じます。膝関節へ長期の摩擦や刺激などの負担がかかることで、膝関節の炎症で増えた滑液が後方の膝窩に移動して溜まり、膝周りやふくらはぎへの圧迫感や痛みを伴う病気です。悪性の腫瘍ではありません。
主に高齢者・50代以上の女性・肥満体質の方で、変形性関節症に付随して起きるケースが多く、女性は男性の約4倍にも上るといわれています。

症状を教えてください。

初めはしびれや膝の違和感を覚えることもあり、膝裏の滑液がふくらはぎまで流れていくことで膝からふくらはぎにかけて圧迫感・痛みなどの症状が広がります。歩行に支障が出るほど痛みが進行する方もいらっしゃいます。
軟骨がすり減り関節炎が起きた際に分泌された滑液が後ろに押し出されて袋を作り、ピンポン玉程の大きさになることもあるのです。また滑液の量が急に増えると嚢胞が圧迫により破裂することがあります。
その際漏れ出した滑液により周囲の組織に炎症が起き、血栓性静脈炎のような症状が起きることもありますので注意が必要です。

初期症状はどのようなものがありますか?

正座をしたり膝を曲げたりしたときに窮屈に感じ、膝の裏側がぽっこりと腫れて圧迫を覚えやすくなります。膝を伸ばしたときも膝周りからふくらはぎへの違和感・不快感を覚えることが多くみられ、太ももの裏側にまで症状が及ぶ方もいる病気です。
階段の上り下りがしづらい、立ち上がる際に膝が固まりこわばるようになったなどもよくある初期症状で、動作開始時に痛みを感じやすく少し休むと落ち着く傾向があります。

発症する原因は何でしょうか?

滑液包に炎症が起きて分泌液が過剰に溜まることが原因です。その原因は様々で例えば転倒した際に関節に急激な負担がかかったなど膝のケガが関連しているケースや、変形性関節症関節リウマチ・長期間の膝の酷使などが考えられます。
変形性膝関節症や関節リウマチの方の合併症として症状が現れる方が多いです。50代以降の女性にも発症しやすい傾向があり、その一つに女性ホルモンの減少があげられます。
女性ホルモンの一種で軟骨や筋肉を健康に保つ役割のエストロゲンが加齢に伴い減少し、特に閉経後に膝の症状が出やすい傾向にあるのです。これにより軟骨が弱くなっていき、関節症からベーカー嚢腫の症状が現れやすいといえます。

ベーカー嚢腫の診断方法と治療

MRI

診断方法を教えてください。

整形外科で一般的には問診・視診・触診で診断されます。膝の痛みが何によるものかをきちんと知る必要があり、他の腫瘍との鑑別や嚢腫の位置や大きさを正確に把握するためにMRIやエコー検査などを行うこともあります。

治療方法を教えてください。

手術療法と保存療法の2種類があります。大きく腫れた症状に対し、注射針で穿刺して滑液を抜く穿刺吸引を行います。一度の穿刺で落ち着く場合と、何度も再発する場合があり炎症を抑える注射や飲み薬を用います。
変形性関節症、関節リウマチの症状がある方は先にその治療を行い、長時間作用型ステロイド薬を投与して滑液の産生を抑える治療も可能です。また、痛みなどの症状が軽度の方は膝に負担がかからない運動で症状の改善に期待できます。
有酸素運動は効果的で、20分以上週3回を目安に継続することが大切です。ただし膝の痛みや原因によってはご自身に合う運動療法がありますので、担当医によく相談の上、行うようにしてください。症状がない場合は治療を行う必要はありません。

手術は必要でしょうか?

多くの場合穿刺で治まるため手術は滅多に行いません。ただし穿刺して滑液を抜く治療を試み、その後も何度も再発を繰り返し改善がみられない場合は切開切除や関節鏡手術を行うこともあります。
症例の一つに、関節にヒアルロン酸注射と嚢腫穿刺を行っても何度も再発を繰り返していた方が術後2か月で改善され、その後症状の再発もなく嚢腫が縮小した例があります。ただし、膝の裏側には大事な血管や神経などの組織が多くあり手術後も再発するケースがあるため、外科手術の決断は慎重にする必要があります。

ベーカー嚢腫の予後と放置するリスク

脚が攣った人

ベーカー嚢腫は治りますか?

ベーカー嚢腫と診断を受けて手術を行い、術後1か月程で患部の症状が良くなり3か月後には仕事に復帰され、3年以上経過しても再発がないケースがあります。手術による治療はよく担当医と相談をする必要があり、手術以外の保存療法で改善に向かうことも可能です。
滑液を吸引して取り除く治療を行い、手術をしても再発するケースはありますが、べーカー嚢腫の原因を知り改善ができれば再発する可能性も下がります。例えば高齢者の場合、長期の摩耗で減ってしまった軟骨は元に戻すことは難しいですが、膝への負担を抑え太ももの筋力を強化することで進行を抑えることが可能です。
そもそもの再発の原因が摩擦であるなら、そうならない生活を意識する必要があり、痛みを感じる動作は進行をさせていくことに繋がるためご自身の体と向き合うことが大切です。
具体的にどのような動作が進行を進めていくのかは、以下の「やってはいけないこと」にも記載していますので是非参考にしてください。

やってはいけないことはありますか?

気を付けるべき行為は下記のような膝関節に負担をかける動作です。

  • 正座をする
  • 長時間の歩行・同じ姿勢でいる
  • 重い荷物を頑張って持つ
  • 急に止まったり動いたり、体をひねる
  • 太る
  • 運動不足
  • ストレスをため込む
  • お薬やサプリメントに頼る

例えば階段の昇降は膝に体重の4~7倍、走ったりジャンプしたりする行為は膝に体重の10倍の負荷がかかります。肥満やO脚の方も膝への配慮が必要です。歩く動作も体重の2~4倍負荷がかかるため、肥満の方は1㎏減らすだけでもかなり負担を減らせます。
また、痩せすぎの場合も体を支える骨・筋肉の強度が落ちてしまうため適度な体重維持も必要です。お薬やサプリメントも大切ですが、再発のことも考慮しバランス良い食事・運動などの基本が大切です。

ベーカー嚢腫を放置するリスクを教えてください。

症状がない場合は放置しても問題はありません。症状がある場合は膝の曲げ伸ばしの邪魔になり、違和感や痛みと長期で付き合うことになります。嚢胞内に液体が溜まることでその周りの神経や血管を圧迫し続けますので、むくみが生じやすいです。
変形性関節症の方は関節の変形が進行しやすくなりますので、早めに受診をして治療することで早期回復が可能になります。悪性疾患ではないため気にならない程度であれば経過観察で良いですが、症状の進行状況次第では早めに受診をお奨めいたします。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

膝に負担がかからない運動・ストレッチがオススメです。膝が痛いからといって何もせずにいるよりは膝周りの筋力が維持され、筋肉がほぐれて血行も良くなり痛みが緩和されます。
骨を強くする食事として、カルシウムはもちろんビタミンD・ビタミンKを意識的に摂ることがお奨めです。筋肉をつける食事としてタンパク質をはじめビタミンB6を多く含むバナナ・マグロ・カツオなども積極的に採ることをお奨めします。

編集部まとめ

医師
今回はベーカー嚢胞について解説しました。ベーカー嚢腫は悪性ではないですが、誰しもが罹患する可能性があるのですね。

適切な治療を受けることで改善に向かいますので怖がる病気ではありません。

体が痛いとあらゆることに対して意欲も低下しやすくなるものです。いくつになっても自分の足で好きな場所に行けること、QOLの向上を目指したいですね。

膝が痛い方、状態によって最適な治療法がありますので、担当医師や理学療法士の方のアドバイスをもとに治療に取り組んでいきましょう。少しでもお役に立てましたら幸いです。

この記事の監修医師