「椎骨動脈解離」を発症すると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!
椎骨動脈解離について、聞いたことはあるけどどのような病気なのかよく分からないと思っている方は多いのではないでしょうか。
首周辺の動脈に傷がつき、壁の中に血液が入り込んでしまうことで起こる病気です。
場合によっては脳卒中や脳梗塞といった脳の重篤な病気を引き起こしてしまう病気でもあります。
そこで、本記事では椎骨動脈解離の症状や治療法などを詳しく解説していきます。
監修医師:
郷 正憲(徳島赤十字病院)
目次 -INDEX-
椎骨動脈解離の症状と原因
椎骨動脈解離とはどんな病気ですか?
動脈の壁は3層構造で成り立っており、内側から内膜・中膜・外膜といいます。この一番内側の内膜が傷つくことによって発症する病気です。
椎骨動脈解離を発症すると、血管が狭くなったり、血管が膨らんで出血したりすることで脳卒中などの重篤な合併症を引き起こすことがあります。年代に関係なく発症する病気ですが、特に若年者や働き盛りの男性に多いといわれています。
症状として、首や胸の痛み・頭痛・めまい・脳卒中などが表れることが多いです。
主な治療は、手術・薬物療法です。手術を行い、解離した血管を修復することで血流が改善することが期待できます。
薬物療法には、血の塊を溶かす薬(抗血栓薬)や血を固まりにくくする薬(抗凝固薬)が使用されます。脊椎動脈解離は治療が遅れると、運動機能障害や筋肉萎縮、感覚障害などの重篤な合併症を引き起こす可能性があるため、早期発見・早期治療が重要です。
椎骨動脈解離にはどんな症状がありますか?
- 首の痛み
- 上肢の痛み
- 感覚障害
- 四肢の麻痺
このような症状が突然あらわれるのが椎骨動脈解離の特徴です。椎骨動脈が解離すると激しい頭痛や首の痛みを引き起こします。症状が現れてからすぐに適切な治療を受ければ、軽度の頭痛程度の症状で済むことの多い病気です。
ですが、すぐに治療を受けなかった場合は、症状が悪化し慢性化してしまうことがあるため早期の治療がおすすめです。血管の裂ける場所によっては、血栓と呼ばれる血の塊が血管を詰まらせることによって脳梗塞を起こすこともあります。
また、血管の損傷が激しく、外側の壁も避けて血管が漏れ出た場合にはくも膜下出血を引き起こすこともある病気です。
脳梗塞やくも膜下出血などの重篤な病気を引き起こすと、最悪の場合は致命傷となる可能性もあります。椎骨動脈解離を疑う症状があらわれた場合には、すぐに病院を受診するようにしましょう。
椎骨動脈解離の発症原因を教えてください。
- 首への持続的なストレス
- 首への強い衝撃
- 骨粗鬆症
- 脊椎の異常
- 血管の異常
首は長時間うつむいた姿勢をとっていると、動脈にストレスがかかります。ストレスがかかり、動脈が圧迫されることで発症することがあります。
転んだり、事故にあったりして首に強い衝撃がかかることで発症することがあります。またスポーツや日常動作の中で首へ負担がかかったことによって発症する場合もあります。
骨粗鬆症になると、骨密度とともに骨の柔軟性が低下します。これにより動脈が圧迫されて損傷し、椎骨動脈解離を発症します。
椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などに罹患している場合に、動脈が圧迫されることがあります。
血管腫や動脈瘤などがある場合に動脈が圧迫されることがあります。
これらが主な発症原因と考えられていますが、原因は人それぞれ異なり、場合によってははっきりとした原因が特定できないこともあります。椎骨動脈解離を疑う場合には、医師に相談することが大事です。
合併症が起こりやすいと聞きましたが。
- 上肢の麻痺
- 感覚障害
- 四肢の筋力低下
- 首や肩甲骨下の痛み
- 慢性疼痛
これらの合併症は、早期治療によって症状の改善が期待できます。もし脳梗塞を起こしてしまった場合には言語障害や嚥下障害などの合併症を引き起こす可能性があります。ですので、合併症を起こさないためにも早期発見・早期治療が重要です。
椎骨動脈解離の治療について
椎骨動脈解離の治療はどの診療科で受ければよいですか?
椎骨動脈解離の治療方法はどんなものですか?
椎骨動脈解離の手術では、解離した動脈を縫合します。これにより血流の改善が期待でき、症状が緩和されることが期待されています。
手術方法は、担当医師の判断や病気の進行の程度、症状によって異なります。手術を行う場合は麻酔をかけて行い、痛みを感じないようにします。術後は、数日から数週間の療養が必要です。術後、傷口の痛みや合併症予防のために薬を服用します。薬物療法には、血の塊を溶かす薬(抗血栓薬)や血を固まりにくくする薬(抗凝固薬)が使用されます。
椎骨動脈解離の治療期間はどのくらいですか?
手術が必要なほどではなくとも、動脈解離の進行がみられる場合には、1か月程の安静が必要です。脳卒中を併発し、手術が必要な場合でも1か月ほどで退院できることもあります。
椎骨動脈解離の治療に対する注意点
椎骨動脈解離の治療に対する注意点を教えてください。
必要に応じて、輸血を行う場合もあります。術後は縫合した動脈が再び出血したり、脳梗塞を発症したりしてしまう可能性があるため数日から数週間の療養が必要です。
出血や脳梗塞を予防するために、薬が処方されます。適切な薬物療法により、手術の効果が最大限に活用されます。
椎骨動脈解離の生存率はどれくらいでしょうか。
ですが、脳梗塞やくも膜下出血という合併症を併発した場合、手術ができないと死亡率は約70%です。
手術を行えた場合生存率は約80%ですが、元の生活を送れるほど状態が回復したのは約60%で、残りの20%が生活に介助が必要になったり寝たきりになったりしてしまったという研究があります。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
早期発見には、突然発症する頭痛・首や上肢の痛みなどの症状を早期に認識し、神経内科や脳神経外科に相談することが大切です。
医師は主に画像検査を用いて診断を行います。診断が確定したら治療方針を決定し、適切な治療を行ってくれます。
編集部まとめ
椎骨動脈解離は動脈の壁が傷つき、血液が入り込んでしまうことによって発症する病気です。
激しい頭痛や首の痛みなどの症状があらわれた際に適切な措置を行えば、通常は重大な問題には繋がりません。
しかし、入り込んだ血液によって血管が詰まってしまうと、脳梗塞やくも膜下出血などの重大な病気へと繋がってしまう場合もあります。
首へのストレスが原因で発症する場合や、スポーツをしていて首への強い衝撃が加わったことが原因となることもあり、日常生活の中にも発症リスクが潜んでいます。
もし突然頭痛や首に激しい痛みがおこり、数日間続いている場合にはすみやかに病院を受診しましょう。
参考文献