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「低体温症」の症状・対処法・放置するとどうなるかご存知ですか?医師が監修!

 更新日:2023/03/27
「低体温症」の症状・対処法・放置するとどうなるかご存知ですか?医師が監修!

低体温症は寒冷の環境化で発症します。深部体温が低下し、身体機能に様々な支障が生じる病気になります。

悪化すると心肺停止などが起こることから、非常に危険性が高いです。そのため、発症を防ぐことや、初期の段階で体温を回復させることが重要です。

本記事では、低体温症の基礎知識に加え、予防方法や発症した時の対処方法などを紹介します。

低体温症は誰にでも発症する可能性があります。必要な知識を身につけ、いざという時に適切な対応ができるようにしておきましょう。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

低体温症の症状

寒がる女性

低体温症とはどんな病気ですか。

低体温症とは、深部体温が35℃以下になった状態のことを指します。深部体温とは身体の内部の体温で、食道・直腸・膀胱などの温度のことです。
深部体温が35〜32℃で軽度・32〜28℃で中等度・28℃以下で高度の低体温症と診断されます。偶発的な事故や事態の状況下で発症した低体温症は、偶発性低体温症とも呼ばれます。

低体温症の症状はなんですか。

人間は37℃前後の体温がなければ、代謝機能が正常に働きません。そのため低体温が起きると、身体の様々な機能が働かなくなります。初期の症状としては、「シバリング」と呼ばれる骨格筋の震えがみられるでしょう。骨格筋を収縮させることで熱を生み出し、体温を上げようとします。シバリングは症状が進むのにつれてみられなくなるでしょう。
また、末梢血管が収縮し、血液が手足などの末端に運ばれにくくなります。それによって指先が動かしにくくなったり、うまくしゃべれなくなったりします。さらに症状が進行すると、意識の低下が生じるでしょう。反応が鈍くなっていき、高度低体温症になると昏睡に陥ることもあります。
また、一度体温が低下すると代謝機能が働かなくなるため、自力で体温を上げることが困難です。それにより、急激に体温が低下するといった症状もみられます。治療で低体温が解消されても、合併症が起こる可能性があります。例えば、不整脈・心不全・血栓症などです。合併症によって命を落とすこともあり得るでしょう。

低体温が起こりやすいのはどんな場面ですか。

一般的に、寒い場所にいることで低体温症は発症します。冬場にみられることが多いです。しかし冬場だけでなく、日中と夜間で寒暖差のある時期に発症するケースもあるでしょう。事故で発症する場合、雪山での遭難や水難などが原因として挙げられます。特に水中では温度が奪われやすいため、水難では低体温症が起きる可能性が高いです。
運動中でも発症することがあります。そのため、スキーなどの冬季のレジャーでは注意が必要です。日常生活の中で発症する場合もあるでしょう。寒冷の環境であれば、室内であっても発症します。特に飲酒や睡眠薬の服用をしている状況下で起こりやすいです。
さらに、高齢者や乳幼児は体温調節がうまくできないため、発症する確率が高いでしょう。疾患が低体温の誘因となる場合もあるので、持病がある方も注意が必要です。

低体温症を放置するとどうなりますか。

低体温症を放置していると、どんどん病状が悪化していきます。なぜなら、下がった体温を自力で上げることは難しいからです。
身体の体温を上げるための機能が停止するため、外部から対策を行わなければ体温は自然に低下していきます。体温が28℃以下になると高度低体温症になり、24℃より低下すると心肺停止などの重篤な症状がみられます。

低体温症の診断方法と対処方法

コートの襟を立てる女性

低体温症はどうやって診断されますか。

低体温症は深部体温を測ることで診断が可能です。深部体温は普段測っている通常の体温とは数値が異なります。症状によっては通常の体温よりも深部体温が低くなることもあります。そのため、直腸温や膀胱温を測って診断する場合が多いです。

低体温症になった時の対処方法を知りたいです。

低体温になると体温を上げるための体内の機能が働かなくなります。そのため、身体を外部から温めるようにしましょう。行える方法は、主に2つあります。
1つ目は、空気中の温度を上げる方法です。室内で行える対処方法で、暖房器具を利用することで室温を高めます。
。2つ目は、熱源となるものを身体に直接当てて温める方法です。電気毛布や温水などを利用します。また、水難によって発症した場合、濡れた服はすぐに脱がせるようにしましょう。濡れた衣類は体温を奪うため、温めても体温の上昇が起こらない可能性が高いです。

身体を温める時の注意点はありますか。

空気中の温度を上げる方法は、患者さんの身体が大気の影響を受けて自然と体温が上がるのを待つ方法になります。そのため、体温上昇の効果が表れるのは遅いです。病状が進行した患者さんには効きにくい方法でしょう。
直接温める方法では、熱源を当てられた末梢血管が温められます。その際に冷えた血液が深部に流れ込み、深部体温が下がってしまうこともあるでしょう。その際に、心室細動が引き起こされるリスクがあります。防ぐためには内部から温めることが必要なので、重症である場合は病院で処置を受けるようにしましょう。

低体温症の予防方法

ダウンジャケットを着た女性

レジャー・スポーツ時の対策を教えてください。

通常、深部体温が低下すると寒さを感じます。しかし、運動時にはその寒さが感じにくくなるという特徴があります。それゆえに、気づいたら低体温症になっていたというケースがあるのです。
寒さを感じていなくても上着を着るなどの防寒対策や、定期的に温かい部屋に入るといった行動は欠かさないようにしましょう。また、体調が万全ではないことが発症のリスクを高めます。レジャー・スポーツを行う前には睡眠をしっかり取り、体調を整えて臨むようにしましょう。

日頃からできる低体温の予防方法はありますか。

基本的な予防方法は、寒冷の環境下にいる場合は防寒をしっかり行うことです。室内だからと油断せず、暖房器具を使用するなどして体温の低下を防ぎましょう。特に高齢者や乳幼児がいる場合は注意が必要です。高齢者の方は、一人暮らしをしていて防寒が十分にできず、低体温症になってしまうというケースが多数みられます。
住居は温かい環境にすることを意識しましょう。家族や知り合いに定期的に訪れてもらうことも有効です。また、低体温症は他の疾患をもっていることによっても発症しやすくなります。持病がある方はそのことを知っておき、積極的に予防することが大切です。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

低体温症は短時間で悪化する病気です。病状が進行すると身体の様々な機能が停止し、命が危険にさらされます。そのため、軽症のうちに対処することが重要です。
対処ができる環境化であるならば、症状がみられたらすぐに身体を温めましょう。しかし、対処をすることが難しい場合や、気づいたら病状が悪化していたこともあり得ます。このことから、低体温症は予防が大切な病気であるといえます。
特に高齢者の方や、持病がある方は注意が必要です。日頃から低体温症のリスクを考え、予防を積極的に行いましょう。家族や周辺の方に発症のリスクが高い方がいるならば、発症した際に対処ができるように気を配ってあげてください。

編集部まとめ

笑顔の女性
低体温症は深部体温が低下することで発症します。深部体温が35℃以下になることが、低体温症の特徴です。

症状として、シバリング・末梢血管の収縮・意識の低下などが挙げられます。体温が低下するほど悪化し、病状が進展すると心肺停止が引き起こされるでしょう。

一度発症すると、対処をしない限り病状はすぐに進行します。そのため、軽症のうちに適切な対処方法を行うようにしてください。

また、予防をすることも大切です。室内や春・秋といった季節でも発症することがあるため、特に高齢者などの発症のリスクが高い方は積極的に予防に取り組むようにしましょう。

低体温症は命を落とす危険がある恐ろしい病気ですが、対策を講じることで命を守ることが可能です。正しい知識を身につけ、発症や悪化のリスクを回避できるようにしてください。

この記事の監修医師