目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. 病気Q&A(医科)
  4. 「幻覚」で考えられる病気・前兆となる行動はご存知ですか?医師が監修!

「幻覚」で考えられる病気・前兆となる行動はご存知ですか?医師が監修!

 更新日:2023/03/27
「幻覚」で考えられる病気・前兆となる行動はご存知ですか?医師が監修!

幻覚は、まるで本当の出来事かのように知覚してしまう危険な症状です。

本人は幻覚で知覚している世界を「現実」と錯覚しているため、病気であることの見極めや受け止めが難しいものでもあります。

そのような幻覚を起こしているのを目の当たりにすると、周囲の人は非常に心配に感じてしまいます。

しかし、どう接すれば良いのかわからず、対応に悩まれている方は多いのではないでしょうか。

本記事では、幻覚症状のある病気の種類・見極め方・周囲の人の対応方法・向き合い方などを詳しく解説します。お悩みの方はぜひご覧ください。

伊藤 有毅

監修医師
伊藤 有毅(柏メンタルクリニック)

プロフィールをもっと見る
専門領域分類
精神科(心療内科),精神神経科,心療内科。
保有免許・資格
医師免許、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医

幻覚症状のある病気の種類とは

車椅子の男性

幻覚症状のある病気にはどんな病気がありますか?

幻覚症状のある病気には、非常に多くの種類があります。
幻覚症状があるというだけでどの病気に当てはまるかを判断することはできません。他の症状と併せて確認することで、ある程度的を絞ってみましょう。
ここでは幻覚症状を伴う主な病気を3つ解説します。

  • 認知症
    認知症とは、物忘れから始まり、日常生活に支障が出るほど認知機能が低下した状態のことです。超高齢社会が進むにつれて認知症の発症者数は年々増加しており、2025年には高齢者のおよそ5人に1人が認知症になると予測されています。
    ひとくちに認知症といっても、様々な種類があることに注意しましょう。アルツハイマー型認知症・血管性認知症・レビー小体型認知症・前頭側頭型認知症の5種類があるなかで、幻覚症状が顕著なのはレビー小体型認知症です。
    レビー小体型認知症は、鮮明で生々しい幻覚症状が特徴的で、妄想が一体となることもあります。例えば「亡くなった家族が生きて家の中で生活している」「家にいるのに自宅に帰ると言う」といった誤認妄想を伴うことが特徴的です。よく似た症状にアルツハイマー型認知症がありますが、レビー小体型認知症は認知機能の状態が日によって大きく変わります
  • 統合失調症
    統合失調症とは、脳のネットワークが上手に働かないことにより、脳内にある様々な情報や刺激に対する反応を統合(まとめる)ことが難しくなってしまう病気のことです。100人に1人は発症するといわれており、認知症には劣るものの、身近な病気であるといえます。
    主な症状は幻覚・妄想であり、幻覚の中でも特にないはずのことが聞こえてしまう幻聴が顕著です。妄想では「テレビで自分のことが報道されていて恐ろしい」といった関係妄想、「娘に嫌がらせをされている」といった被害妄想がよく見られます。
    統合失調症の他の症状には感情表現の減少・意欲の低下があり、精神的な症状から人間関係や社会生活にも影響が出てしまうのが特徴的です。
  • せん妄。
    せん妄とは、他の神経認知障害では説明できないような、急性的に発症する認知・意識障害のことを指します。高齢者が入院したり手術を受けたりした際に起こる、興奮状態・幻覚・認知障害などが典型的な症例です。せん妄が原因で病室から無断で抜け出してしまうこともあり、命に関わる事態に発展することもあります。

幻覚症状の原因はあるのでしょうか?

これらの幻覚症状は、どれも神経系に異常が及ぶことで発症するとされています。ただその直接的な原因はわかっておらず、病気の種類によって考えられる原因も様々です。
例えば統合失調症であれば遺伝が強く関連していると考えられており、発症しやすい脆弱性の高い人と低い人に分けられることがわかっています。その脆弱性が環境的な負荷(ストレス・緊張・プレッシャー等)によって崩されることで統合失調症を発症し、幻覚症状を伴うのです。幻覚症状のある病気の原因はあまり明らかにされていませんが、早期発見・早期治療が大切なことを押さえておきましょう。

幻覚症状が起こる前の前兆にみられる行動などあれば教えてください。

せん妄は急性的に発症するため前兆は見られませんが、認知症や統合失調症の疑いがある場合には何らかのサインが見られる可能性があります。それぞれのサインの例を確認してみましょう。

  • 認知症
    認知症のサインとして最も分かりやすいのが記憶の障害です。同じことを何度も話したり、数時間前の出来事を忘れてしまったり、いつも探し物をしたりなど日常生活に支障が出るほどの認知障害が起きていると認知症が疑われます。
    他にも怒りっぽくなったり、塞ぎ込みがちになったりなど、行動や心理的状態にも影響が出ていると認知症による幻覚症状が起きる可能性が指摘できるでしょう。
  • 統合失調症
    統合失調症の幻覚症状や妄想のサインとしては、いつも不安そう・独り言が多い・ニヤニヤすることが多いといったことが挙げられます。他にも意欲や感情的な部分の消失が気になることもあり、周囲の方が気づくことで統合失調症であると診断されることが非常に多い病気です。

幻覚症状のある人の周囲の対応方法や診断方法

医師と老人

幻覚症状が起きているかを周囲の人が見極めることは可能ですか?

可能です。ただ、本人に幻覚であるかを聞くことで見極めることはできないと思っておいてください。本人にとっては幻覚で知覚している出来事が現実なので、幻覚であることを認めることはなかなかできません。
幻覚症状を伴う認知症・統合失調症・せん妄のどの病気であっても、他に様々な症状が見られることがほとんどです。見極める際は、幻覚以外に気になる症状がないかを確認するようにしましょう。

幻覚によって暴れるケースもあると聞いたのですが…

幻覚で知覚した出来事によっては、興奮して暴れてしまうこともあります。せん妄を発症した場合には、体に繋がれているチューブを無理に抜いてしまったり、暴れてベッドから転落してしまったりすることも少なくありません。
幻覚症状が認められる場合には、もし暴れてしまっても大丈夫なように安全対策を取っておくことが大切です。

幻覚症状のある病気の診断はどのように行うのでしょうか?

幻覚症状のある病気は日常生活に支障をきたしていることが多く、その程度を問診で判断することから始まります。本人の自覚症状に加え、ご家族や付き添いの方からの情報も伺います。話がまとまりにくい場合は日記をご持参いただいても構いません。
認知症・統合失調症・せん妄のどの病気においても、診断基準が定められています。心理検査・画像検査・脳波検査・髄液検査など、患者さんの状態に応じて有用だと判断される検査方法で診断を行うことが一般的です。

何科を受診したら良いのか教えてください。

前述のように、幻覚症状は神経系に異常が生じることで起きるものです。精神科・神経科などを受診するようにしましょう。

幻覚症状のある病気の治療方法や向き合い方

話合う家族

幻覚症状のある病気は治療できるのでしょうか?

治療は可能です。しかし変性性認知症(アルツハイマー型認知症・レビー小体型認知症等)だと診断された場合は、症状を軽くし、進行を遅らせることを目的とした治療が行われます。
同じ幻覚症状を伴う病気であっても、病気の種類によって治療法も目的も変わってくることに注意してください。

幻覚症状のある家族や知人との接し方を教えてください。

幻覚症状のあるご家族やお知り合いの方に対しては、決して本人の言葉を否定しないことを心がけましょう。幻覚症状を患っている患者さんの多くは、不安や孤独感を強く感じている傾向があります。
少しでも安心できるよう、言葉に共感し、否定せずに耳を傾けることが大切です。

幻覚症状のある人との生活で気をつけることなどあれば知りたいのですが…

幻覚症状のある方と一緒に暮らしている場合は、先の接し方に加えて、安心して暮らせる環境づくりができると良いですね。幻覚症状は、生活リズムの乱れによって悪化してしまうことがあります。
日中は適度に運動し、夜に心地よい眠気が訪れるように工夫しましょう。薄暗い部屋にいると幻覚を見やすいという報告もあります。部屋の電気をつけて明るくすることや、もし幻覚で興奮してしまった時のために安全対策を施すことも忘れないでください。
また、介護者や同居人の精神的ストレスがそのまま本人の精神に影響を与えることもあります。ご自身が無理することのないよう、適切な医療機関や介護サービスの利用なども視野に入れ、リフレッシュや休息をとることも大切です。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

幻覚症状を伴う病気は、本人だけでなく周囲の方も不安・戸惑い・混乱といったマイナスな感情に支配されやすくなってしまいます。少しでも気になる症状が見られるのであれば、早めに精神科や神経科を受診し、医師の判断を仰ぎましょう。お一人で悩まないことが大切です。

編集部まとめ

説明する先生
幻覚症状を伴う病気には様々な種類がありますが、幻覚以外に見られる症状を確認すればある程度的を絞れます。

幻覚症状は、本人にとっても周囲の方にとっても精神的な負担が大きくなってしまいがちです。

もしもご家族やご友人に幻覚症状を患っている方がいるのであれば、決して否定することはせず、共感と傾聴を心がけるようにしましょう。

そして、なるべく早く医療機関を受診し、適切な治療を受けることが大切です。

この記事の監修医師