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「手掌紅斑(しゅしょうこうはん)」ができる原因はご存知ですか?医師が監修!

 更新日:2023/03/01
「手掌紅斑(しゅしょうこうはん)」ができる原因はご存知ですか?医師が監修!

手掌紅斑(しゅしょうこうはん)とは、掌や指に赤いまだら模様が表れる症状です。
手に表れる異変だと甘く感じてしまうかもしれませんが、実は肝臓との関係があり、病気の可能性があります。

放置していると思いがけない病気を悪化させる可能性があるため、しっかりと症状や原因などを把握しておくことが大切です。

そこで本記事では、手掌紅斑とはどのような病気なのかをご紹介します。肝臓病との関係・検査・治療方法・放置するリスクについても解説するので参考にしてください。

郷 正憲

監修医師
郷 正憲(徳島赤十字病院)

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徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。

手掌紅斑はどのような病気?

疑問を持っている医者

手掌紅斑とはどのような病気でしょうか?

手掌紅斑とは、掌・親指・小指・指の基節部分に見られる赤い斑点のことです。
これらの斑点は、主に肝硬変などの病気に見られる皮膚所見のひとつです。肝疾患の場合には、特に母指球と小指球部分、すなわち親指や小指の根本に表れます。
この病気は、圧迫すると消え圧迫を解除すると再びすぐに赤くなるといった状態が大きな特徴です。
通常、手の色は心臓との位置関係で変わります。心臓よりも低い位置に手がある場合には、血流移動の影響で全体的に赤くなるのです。
また、心臓よりも高い位置に手がある場合には、全体的に白くなります。このように、常に手の色は変化しているのです。
しかし、手掌紅斑の状態となっている場合には、手の位置に関係なく赤い斑点が見られます。局所的に点在するため、普段の手の色とは異なる状態であることがわかります。

どのような症状がみられますか?

手掌紅斑の症状としては、自覚できるものはほとんどありません。
赤い斑点が掌や指に局所的に表れていることのみです。特に親指の付け根部分に赤い斑点が表れるケースが多いようです。
また、掌に赤い斑点ができるといっても、まんべんなく掌に斑点が発生するわけではありません。
他の皮膚疾患のように痛みやかゆみを伴うことも無いため、無自覚のまま症状に気づくのが遅れるケースもあります。
手掌紅斑の特徴的な見た目としては、指の付け根あたりに赤い斑点ができるため、相対的に中心部が白くなるという特徴をしています。

原因を教えてください。

手掌紅斑の主な原因は、次のようなものが代表的です。

  • 肝機能の低下
  • 自己免疫機能の低下
  • 皮膚疾患

赤い斑点は、掌の周辺にある血管が拡張したことで表れます。
そして、掌の周辺の血管が拡張する原因に考えられるのが肝機能の低下です。
肝機能の働きが悪くなると女性ホルモンが増えます。すると掌の血管の拡張が発生するのです。
また、自己免疫機能の低下や感染症にかかることでも、血管の拡張を引き起こす可能性があります。
さらに、皮膚疾患も原因となることがあります。皮膚疾患の代表的な例としては、アトピー性皮膚炎です。
乾燥などにより赤い発疹が見られ、この発疹が掌に発生するケースがあります。

肝臓病の可能性があるのですね…。

手掌紅斑の原因として肝機能の低下をご紹介しましたが、肝臓病の可能性もあることには注意が必要です。
代表的な肝臓病としては肝硬変があり、手掌紅斑が出たときにはまず肝硬変が疑われるほど密接に関係しています。
肝硬変は、肝臓の炎症が続くことで細胞が破壊されてしまい、萎縮して硬くなって肝臓の働きが低下する病気です。
また、慢性肝炎などの病気も考えられます。慢性肝炎とは、慢性的に肝臓に炎症が生じる疾患で、B型肝炎やC型肝炎などが原因となり引き起こされる病気です。

妊婦も手掌紅斑になるケースがあると聞いたのですが…。

手掌紅斑は、妊婦の方もなるケースがあります。
これは、病気によるものではありません。先述したホルモンバランスが大きく関係しています。
女性ホルモンの分泌量が増加するため、掌周辺の血管の拡張が起こり赤い斑点が表れることがあるのです。妊娠初期に出現するケースが多いです。

手掌紅斑の診断と治療

女性に何かを提案する医者

手掌紅斑がみられた場合は何科を受診しますか?

この病気が見られた場合には、すぐに内科を受診するようおすすめします。
先述したように、手掌紅斑の原因にはさまざまなものが考えられます。しかし、中でも肝臓の機能低下によって引き起こされている場合は非常に危険です。
肝硬変や慢性肝炎などが進行すると、肝機能の低下から食欲不振や倦怠感を伴う場合もあるでしょう。
肝臓病は自覚症状がほとんどないため、この手掌紅斑を発見した場合には、早期受診のタイミングといえます。

どのような検査で診断されますか?

この病気の検査方法としては、まずは視診を行います。
掌や指の付け根に発生している赤い斑点を確認し、手掌紅斑とその原因を確認するのです。
例えば、アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患によるものであれば、他の部位の湿疹などを同時に確認します。
そして、手掌紅斑の確認を行って肝臓の病気の疑いがある場合には、血液検査画像検査を行います。
例えば肝硬変が進行している場合、AST値がALT値より高くなったり血小板数が低下したりといった数値の異常を生じる可能性が高いです。
また、CT検査MRI検査などの画像検査では、肝臓の萎縮や表面がでこぼこしているなどの形状の変化も見られるでしょう。
このように検査を組み合わせて、手掌紅斑とその原因となっている病気をはっきりさせていきます。

手足口病との判別方法を教えてください。

手掌紅斑の症状が近いものに手足口病があります。
手足口病とは、ウイルスの感染によって引き起こされる感染症です。5歳以下の子供を中心に、夏に発症するケースが多い病気です。
主な原因となるウイルスは、コクサッキーウイルスA6・エンテロウイルス71・コクサッキーウイルスA10などが挙げられます。主な症状は、口の中・掌・足底・足・背中などに生じる水疱性の発疹です。
発熱などもありますが、高熱になることはほとんどありません。また、数日のうちに治ることがほとんどです。飛沫感染・接触感染・糞口感染などによって感染します。
この病気と手掌紅斑の判別方法としては、皮膚に現れる湿疹の違いと表れる場所に注目することです。手掌紅斑は、主に掌や指の付け根に見られる症状です。
一方で、手足口病の場合は口の中や足の底などにも表れます。また、水疱性の湿疹であることも特徴です。手足口病は熱も伴いますが、手掌紅斑の場合には水疱性の湿疹や熱が表れることはほとんどありません。

治療方法を教えてください。

手掌紅斑の治療方法は、赤い斑点を発生させる原因となった病気を特定し、その病気に対しての治療を行うというものです。
先述した検査方法を用いて、肝臓の機能低下の有無や皮膚疾患によるものかを確定します。
中でも肝臓の機能低下が確認された場合には、さらに詳細に調べて、B型肝炎やC型肝炎などに感染していないかをはっきりさせます。
もしも感染しているようであれば、禁酒を行って抗ウイルス剤を使って治療を行う必要があるでしょう。
また、肝硬変などの場合は、抗ウイルス剤・ステロイド・ウルソなどを使って治療を行います。

手掌紅斑の予防とリスク

絶望している男性

手掌紅斑を予防することはできますか?

手掌紅斑を予防するには、その原因となる病気を予防することが大切です。
例えば肝硬変の場合、手掌紅斑が表れている段階ではすでに肝臓機能の低下が進んでいます。
そのため、肝硬変を予防するにはさらに前段階で肝臓の状態を把握することが大切です。
そのためにも、定期的な健康診断などで肝臓の状態を知っておくことが大切です。
血液検査などで異常な数値が見られた場合には、肝臓機能の低下の可能性に気づけるでしょう。
また、栄養バランスの取れた食事などで予防することも忘れてはいけません。
アルコールの飲み過ぎ脂肪分の多い食事は、肝硬変のリスクを高めます。食事による肝臓の機能低下を起こさないようにすることが大切です。

手掌紅斑を放置するリスクを教えてください。

手掌紅斑を放置することは、原因となる病気を放置していることです。
そのため、大変危険な状態になる可能性があります。中でも危険なものが、肝硬変によって手掌紅斑が発生しているケースです。
肝硬変を放置しておくと、肝機能の低下が進むだけでなく肝臓がん・胃食道静脈瘤・肝性脳症などさまざまな病気を引き起こす可能性があります。
命にかかわる可能性もあるため、決して放置してはいけません。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

手掌紅斑は、掌や指の付け根などに赤い斑点ができる症状です。
これだけであれば、痛みやかゆみも伴わないため、問題ないのではと思う方もいるでしょう。しかし、この赤い斑点は、病気によって引き起こされている可能性が高いです。
特に肝臓の病気によるものであれば、放置しておくと取り返しがつかなくなるケースもあるでしょう。隠れた病気の悪化を防ぐためにも、少しでも違和感を覚えた場合にはすぐに専門の医療機関を受診しましょう。

編集部まとめ

提案する医師の手元
手掌紅斑は、目に見える症状が赤い斑点だけなので、気づくのが遅れたり気づいても甘く考えてしまったりすることがあります。

しかし、決して放置して良い病気ではありません。万が一、肝硬変などによって発症している場合は、さらに悪化すると命にかかわる可能性もあるためです。

病気の悪化を防ぐためにも、普段から予防を行いましょう。また、もし少しでも異変を感じた場合には、すぐに専門の医療機関に相談しましょう。

この記事の監修医師