「切迫性尿失禁」の原因や対策法を医師が解説!急な尿意に悩んでいませんか?
切迫性尿失禁は、その名の通り切迫した尿意を感じ、我慢ができずに失禁してしまう病気です。
トイレに間に合わない・我慢できないという恥ずかしさから、症状を隠して過ごしている人も少なくありません。
しかし、適切な処置を施せば、症状の改善が見込めます。本記事では、切迫性尿失禁に関する様々な情報を紹介しています。
それらの情報を活用して、症状の改善や治癒に取り組みましょう。切迫性尿失禁に悩まされたら、ぜひ本記事を参考にしてください。
監修医師:
郷 正憲(徳島赤十字病院)
目次 -INDEX-
切迫性尿失禁とは?
切迫性尿失禁とはどのような病気ですか?
強い尿意が突然に発生するため、トイレまで我慢することが難しくなる病気です。間に合わない状況ばかりではありませんが、トイレに行く回数が増えたり、トイレに駆け込まなければならなくなったりするでしょう。
自分で尿意をコントロールすることはできないため、生活に支障をきたす可能性のある厄介な病気です。生命の危険はありませんが、非常に悩まされている人も少なくないでしょう。
切迫性尿失禁の原因は?
指令が伝わらない原因が神経系の異常にある場合、「排尿筋過反射」と呼ばれます。これは脳血管障害や中枢神経の病気によって生じることが多いです。
神経系に異常がみられない場合は、「不安定膀胱」と呼ばれます。不安定膀胱では、指令が伝わらない理由が明確には分かっていません。はっきりとした原因がないにも関わらず、膀胱が脳の指令に関係なく勝手に収縮をしてしまうのです。
膀胱が活動的になって尿意が切迫することから、別名「過活動膀胱」とも呼ばれます。
切迫性尿失禁は何歳くらいの方に発症する人が多いのでしょうか?
老化は膀胱の働きが過剰に活発になる原因と考えられています。また、老化によって膀胱の筋肉が衰えることも発症の要因です。
筋肉が弱ると尿を全て排出できず、膀胱内に残ってしまうことになります。この残尿の量が多いと、失禁を起こす可能性が高くなるでしょう。その際に起きる失禁は切迫性尿失禁だけでなく、腹圧性尿失禁・溢流性尿失禁である場合も考えられます。
切迫性尿失禁になりやすいのはどんな人ですか?
男性の場合、前立腺肥大症と併発する可能性が高いです。患者さんのおよそ60%が併発するといわれています。
女性は骨盤底筋群が弱まり、骨盤臓器脱が起こることで尿失禁が起きやすくなります。
切迫性尿失禁の治療方法と検査方法
どのような検査が行われますか?
ほとんどの場合、問診と簡単な検査で診断することが可能です。行われるのは尿検査やエコー検査などです。尿検査では尿に含まれる成分、エコー検査では膀胱周辺に異常がないかを調べます。
さらに、自宅で排尿の記録が求められることもあるでしょう。排尿の量や回数などの情報を数日間記録します。
その他にも、必要に応じて行われる検査があります。尿失禁の重症度を測るパッドテスト・尿の勢いを調べる尿量測定・尿道や膀胱を内視鏡で確認する膀胱鏡検査などです。
切迫性尿失禁の場合、骨盤臓器脱によって発症していることが考えられます。そのため、骨盤臓器脱の有無を調べる検査が行われるケースもあります。行われる検査は、尿や膀胱周辺を調べるものだけではありません。
考えられる原因によっては脳の画像検査を行うこともあります。
切迫性尿失禁の診断基準は?
検査で併発する可能性がある病気や骨盤臓器脱が認められた場合、切迫性尿失禁であると診断される可能性が高いでしょう。
ただし、切迫性尿失禁は腹圧性尿失禁と合併して発症しているケースも少なくありません。その場合は混合性尿失禁と診断されます。
切迫性尿失禁の治療方法を教えてください。
また、膀胱の容量を増やすための膀胱訓練と呼ばれる治療も行います。尿を我慢する時間を設定し、尿意を感じてもその時間内は我慢するという方法です。徐々に時間設定を長くすることで、長時間我慢ができるようになる可能性があります。
加えて、骨盤底筋を強化する骨盤底筋体操も効果的です。この体操は、腹圧性尿失禁の治療にも用いられています。お腹に力を入れずに膣・肛門を締め、10秒ほどキープするなどの運動です。1日あたり50回程度行い、3ヵ月ほど継続することで症状の改善がみられます。
混合性尿失禁の場合、腹圧性尿失禁に有効な治療をすることもあるでしょう。腹圧性尿失禁では治療方法として手術を行うこともあります。混合性尿失禁と診断された方は、どちらの治療方法も知っておくと良いでしょう。
切迫性尿失禁の予防方法と注意点
切迫性尿失禁の対策法は?
治療法として行っている膀胱訓練や骨盤底筋体操は、継続して行うようにしましょう。欠かさず取り組むことで、尿失禁の対策につながります。
日常生活での注意点を教えてください。
また、外出前には必ずトイレを済ませておくことが大切です。外出時に尿意を感じるリスクを下げることにつながります。
切迫性尿失禁を発症した方はいつ尿意を感じてもおかしくないため、日ごろから注意して生活すると良いでしょう。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
切迫性尿失禁は、治療に取り組めば症状の改善や治癒が期待できます。病気になる前と同じような生活をすることも望めるでしょう。
尿失禁に悩まされたら、遠慮せずに医療機関を受診してみてください。適切な治療を受けて、尿失禁による悩みを解消しましょう。
編集部まとめ
切迫性尿失禁は、突然に切迫した尿意を感じ、我慢できずに失禁してしまうことを指します。過活動膀胱とも呼ばれる通り、膀胱が脳の指令に関係なく活動をすることが特徴です。
指令を伝える神経に異常がみられる場合もありますが、はっきりとした原因は不明であることが多いです。ただし、膀胱の老化が進んだ年配の方が発症しやすい病気になります。
切迫性尿失禁と診断されたら、薬物療法で治療を行います。有効な薬を服用することで、膀胱の過活動を抑制することが可能です。
この病気は、いつどのような状況であっても急激な尿意を生じさせるものです。外出時には慌てずトイレに行けるように、トイレの場所を必ずチェックしておきましょう。
しかし、そのような対策をしても、生活上の大きな支障になることは変わりありません。
恥ずかしいと感じるかもしれませんが、尿失禁が続くようであれば医療機関に相談しましょう。