「エボラ出血熱」に感染すると現れる症状・致死率はご存知ですか?医師が監修!
エボラ出血熱はかつてニュースなどでも報道された伝染病で、記憶のある方も多いのではないでしょうか。最近では報道されることもなくなって忘れてしまった人もいるかもしれません。
現代の世界では新型コロナウイルスによるパンデミックが問題となっているため、エボラ出血熱が現在でも収束せず問題になっている地域があります。
新型コロナウイルスによる感染と同様、エボラ出血熱は感染が収束していない病気です。グローバル社会となった現代では他人事ではない病気といえるでしょう。
監修医師:
郷 正憲(徳島赤十字病院)
目次 -INDEX-
エボラ出血熱の原因と感染経路
エボラ出血熱の感染経路を教えてください。
なお通常は空気感染をすることはありません。人や猿の体液などへの接触以外でも感染の可能性があり、流行地域(主にコンゴ民主共和国などのアフリカ中央部)の洞窟に入ってエボラ出血熱に感染したコウモリと接触することでも感染します。ただしこのようなケースは日本国内ではほぼありません。
エボラ出血熱の原因となる病原体は?
またエボラウイルスに感染することが確認されている動物は、オオコウモリ・サル・アンテロープが知られています。これらの動物の中でエボラウイルスに感染した死体や生肉(ブッシュミート)に直接触れたことが、自然界から人間社会にエボラウイルスが持ち込まれた原因ではないかと考えられています。
なおエボラ出血熱はラッサ熱・マールブルグ病・クリミア・コンゴ出血熱等とともにウイルス性出血熱に分類されている病気です。
エボラ出血熱が流行しているのはどの地域ですか?
2018年にはコンゴ民主共和国の北東部で感染が確認、2019年6月にはウガンダ共和国でも感染が発生しています。2019年9月にはWHOでは非公式ながら、タンザニアで最大の都市ダルエスサラームでエボラ出血熱の疑いのある患者が出たと発表されています。なお日本では現在感染の報告はありません。
エボラ出血熱の潜伏期間はどのくらいですか?
このような症状が現れることをみると、風邪に似た症状と思われるかもしれません。しかし風邪と違って、これらの症状が突然現れ始めることがエボラ出血熱の特徴であるといえます。
エボラ出血熱の症状や治療方法
エボラ出血熱の症状は?
重症になった患者では1日に10リットルを超えることがある症状です。こうした症状はコレラの症状とよく似ています。なおエボラウイルスの感染による出血症状は以前考えられていたよりもまれな症状になってきています(2000年のウガンダの例では出血の症例は約20%)。
そのため最近ではエボラ出血熱という病名ではなくエボラウイルス病(EVD)といわれるように変わってきています。
エボラ出血熱はどのように診断されますか?
さらに熱帯雨林地域への立ち入りはなかったのかを調べることも診断の要素です。野生動物などの自然宿主から人への感染経路は現在でも不明であるため、診断には人から人への2次感染の可能性を調べることにもなります。
感染者の血液・体液・分泌物・排泄物などとの直接接触はなかったかなどの確認も行います。なおアフリカでの大流行では、注射器・ビニール手袋・マスクなどの医療用品不足に起因する院内感染が大きな要因となっていました。
エボラ出血熱の治療方法は?
感染が判明した後はできるだけ早期に治療を開始することが重要だと考えられています。しかし、少しずつではありますがエボラウイルスに対し可能性のある治療法の評価が進みつつある状況です。
エボラ出血熱の致死率について
エボラ出血熱の致死率はどのくらいですか?
データ的に致死率は25〜90%の範囲で変化しますが、おおむね50%程度です。ウイルスの種類による致死率のデータは、ザイール型が致死率約90%、スーダン型が致死率は約50%となっています。なお死に至る場合の症例では、発症後約1週間で死亡することが多いというデータがあります。
後遺症が残ることはありますか?
この他にも頻尿・頭痛・倦怠感・筋肉痛・記憶喪失・ぶどう膜炎などの症状が報告されています。
エボラ出血熱はワクチンで予防できますか?
3種類のワクチンのうちエボラDNAワクチンは、単独使用では効果が低いと思われているワクチンです。そのため他のワクチンと併用する必要性があるとされています。またアデノウイルスベクターを用いたエボラワクチンでは、十分な効果を発揮するために大量のウイルスを培養する必要があるようです。
そのためワクチン製造の効率化が課題となっています。もう1種類の水疱性口炎ウイルスベクターを用いたエボラワクチンでは、生ワクチンとして接種するために接種による副反応が問題となっているようです。それぞれの課題を克服し、副反応の可能性を抑え安全性を高めた効果的なエボラワクチンの開発が完了すれば、ワクチンでの予防が可能になります。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
感染のニュースが報道されなくなったことで、関心が薄くなってしまっていることは仕方ないのかもしれません。それでも人類の敵といえるウイルスはまだ数多く存在するということも覚えておいてほしいものです。
編集部まとめ
エボラ出血熱の現状は、現在の日本ではあまり知られることがない病気といえるかもしれません。新型コロナウイルスの感染がパンデミックとなり数年が経ちましたがいまだに収束に至っていません。
そういった状況ゆえにインフルエンザも懸念される感染症ですが、新型コロナの影響が大きくて関心が薄れてしまったように思われます。
関心がなくてもウイルスの脅威は去ったわけではありません。新型コロナウイルスではワクチンが開発されましたが、エボラ出血熱ではいまだ試験段階です。
ワクチンや治療薬の開発は非常に待たれるところです。それはやがて感染が拡大してしまうという恐れを予防するためにも期待したいところです。
参考文献