「慢性頭痛」の痛みの特徴・原因・対処法はご存知ですか?医師が監修!
頭痛は、私たちにとって大変身近な病気です。その中でも慢性頭痛で悩んでいる人は2,800万人以上いるといわれています。
身近な頭痛であるからこそ、痛みを我慢することに慣れてしまったり、市販薬を使って簡単に痛みだけを一時的に軽減させたりする人も多いでしょう。
しかし、それが症状の悪化を招くこともあります。この記事では、タイプ別の症状・原因・危険サイン・予防法など、慢性頭痛に関する情報を詳しくお伝えいたします。
監修医師:
郷 正憲(徳島赤十字病院)
目次 -INDEX-
慢性頭痛の症状と原因
慢性頭痛はどんな病気ですか?
1つは他に病気が隠れているのではなく脳の一過性の異常により起こる一次性頭痛、もう1つはクモ膜下出血・髄膜炎・脳腫瘍などの病気が引き起こす二次性頭痛です。慢性頭痛とは、慢性的に頭痛発作を繰り返す場合のことをいい、これは一次性頭痛になります。
一次性頭痛は、痛みの部位・痛み方・頭痛が起こるきっかけ・頭痛以外の症状から4タイプに分かれています。
- 片頭痛
- 緊張性頭痛
- 群発頭痛
- その他の一次性頭痛
慢性頭痛である一次性頭痛で最も多いタイプは緊張性頭痛です。
慢性頭痛の症状を教えてください。
頭の片側のこめかみから目にかけて、時には頭の両側や後頭部に痛みが生じます。頭痛以外では、目がチカチカしたり、音・光・においに敏感になったり、肩こりやめまいなどが出るのが特徴です。
緊張性頭痛は、頭が締め付けられるような痛みで、後頭部を中心に頭の両側に痛みを伴うことが多いのが特徴です。ひどいときは頭全体が痛みます。頭痛以外の症状は、首・肩のこりのほか、めまいなどです。
群発頭痛は、目の奥をえぐられるような激しい痛みが短時間続くことが特徴です。夜間または睡眠中に起こりやすく、数週間〜数ヶ月間など、ある一定の期間続きます。
片側の目の奥・目の周りから頭の前方・側面にかけて痛みが生じることもあります。頭痛以外の症状は、目の充血・瞼の垂れ下がり・涙目・鼻水・鼻づまり・顔の発汗・落ち着きがないなどです。
この片頭痛・緊張性頭痛・群発頭痛以外の一次性頭痛は、その他の一次性頭痛としてまとめられています。
慢性頭痛の原因を教えてください。
群発頭痛は、三叉神経・自律神経が刺激されて血管が拡張することで起こるとされ、頭痛が起こっている間の飲酒・喫煙などがさらなる発作の原因となります。
慢性頭痛の危険サイン
慢性頭痛の危険サインを教えてください。
- 突然の頭痛
- 今まで経験したことがない頭痛
- いつもと様子の異なる頭痛
- 頻度と程度が増していく頭痛
- 50歳以降に初発の頭痛
- 神経脱落症状を有する頭痛
- 癌や免疫不全の病態を有する患者の頭痛
- 精神疾患を有する患者の頭痛
- 発熱・項部硬直・髄膜刺激症状を有する頭痛
頭痛でこれらのサインがみられた場合は、二次性頭痛の可能性があるため、すぐ病院を受診して検査・治療を行うようにしてください。
どのような人に多く発症しますか?
緊張性頭痛は、慢性頭痛の中で一番多い頭痛です。30〜40歳代に多いとされますが、それ以降の年齢にも発症します。長時間のうつむき姿勢・ストレスなどからくる筋肉の過緊張が原因で、デスクワークの多い人・ストレスの溜まっている人などに多く発症します。
群発頭痛の発症年齢は20〜40歳代で、女性より男性に多く、その数は3〜7倍です。群発頭痛が出ている期間中は飲酒で発作が誘発されることがわかっていますので注意が必要です。
慢性頭痛は何科に行けばいいですか?
頭痛は本人の自覚症状が唯一のサインであり、その痛みに対してのつらさは本人にしかわかりません。頭痛外来などの専門外来がある病院もありますので、専門医を受診してください。
慢性頭痛の予防法
慢性頭痛は予防できますか?
ストレス・疲労をため過ぎず、適度に発散することが大切です。また、アルコールなどは頭痛のきっかけとなるため避けて、予防効果のあるマグネシウム・ビタミンB2などを含む食品を意識して摂取しましょう。
緊張性頭痛は、とにかく筋肉の緊張を和らげることが大切です。ストレス・疲労をため過ぎないようにし、ストレッチ・入浴・体操などで首・肩の筋肉をほぐすようにしましょう。群発頭痛は、頭痛が起こっている期間中は特に禁酒をし、次の頭痛を誘発をさせないことが大切です。
また、中には頭痛を軽減させるために鎮痛薬を服用される方もいます。現在では、市販の鎮痛薬もたくさん売られており、手軽に使用できるため、ついついすぐに飲んでしまう方も多いかもしれません。
しかし、鎮痛薬を使用しすぎることにより起こってしまう薬物乱用頭痛もありますので、注意が必要です。薬物乱用頭痛とは、緊張性頭痛・片頭痛の方が頭痛を軽減させるために飲んだつもりの鎮痛薬が過剰になってしまい、感受性の強い方には逆にそれが引き金となって起きてしまう頭痛です。
鎮痛薬が原因の頭痛とは知らずに、また鎮痛薬でその頭痛を軽減させようとしてしまい、悪循環となってしまいます。したがって、正しく鎮痛剤を服用することは予防法の1つにもなります。
慢性頭痛の治療方法について教えてください。
片頭痛の急性期治療では、痛みに対して非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)というタイプの鎮痛薬が用いられ、頭痛のメカニズムに効くトリプタン系薬剤が主な治療薬です。吐き気を伴う場合には制吐薬も処方されます。予防治療が検討されるのは、片頭痛発作が月に2回以上ある場合です。
予防治療として用いられる薬は、抗うつ薬・抗てんかん薬・カルシウム拮抗薬・β遮断薬などです。予防療法は頭痛発作の頻度・重症度・持続時間を減らし、急性期治療の効果をよくする目的があります。また、他には針治療・食事療法などを取り入れることもあります。緊張性頭痛の薬物療法で用いられるのは、鎮痛薬の非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)・消炎鎮痛剤・カフェイン・抗うつ薬・抗不安薬などです。
これらは頓服として用いられる場合が多いです。薬以外では、ストレスマネジメント・指圧・姿勢の是正・温熱療法・ストレッチ・頭痛体操などを行います。群発頭痛では、鎮痛薬の非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDs)の効果が期待できません。
そのため、発作期の急性期治療では、トリプタン系薬剤の皮下注射・点鼻薬・内服などが用いられます。予防療法薬はカルシウム拮抗薬・酒石酸エルゴタミン・副腎皮質ステロイドなどです。また、酸素吸入・神経ブロックなどを行うこともあります。
慢性頭痛になった場合の対処法を教えてください。
また、コーヒー・緑茶などを飲むことも効果的です。緊張性頭痛の場合は、筋肉の緊張を取ることが大切です。首・肩をほぐすストレッチを行ったり、温タオルなどで温めたりするのもよいでしょう。また、ストレス・疲れが溜まると筋肉に力が入り過度の緊張を招くので、気分転換の時間を設けることも大切です。
群発頭痛の場合は、痛みをひどくしない・次の痛みを起こさないことを重点的に考えましょう。頭痛の期間中は飲酒・喫煙は厳禁です。頭痛が起きてすぐであれば、深呼吸・酸素吸入が効果的です。薬物治療の場合は、トリプタン製剤の使用となるため、専門医を受診しましょう。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
ご自身の持っている頭痛のタイプをしっかりと知り、そのタイプに沿った適切な治療・対処法を行いながら、日常的に襲ってくるつらい痛みから解放された生活を送りましょう。症状が気になるときには我慢せずに専門医を受診してください。
編集部まとめ
私たちを悩ます慢性頭痛について、ご紹介しました。ご自身の頭痛に当てはまるタイプは見つかりましたか。
「頭痛持ち」という言葉は、慢性頭痛を表す代名詞のようになっています。日常的に繰り返す頭痛に慣れてしまい、市販の鎮痛薬で簡単に対処してしまいがちです。
しかし、慢性頭痛はしっかりとタイプを知って治療・対処することで、症状の軽減・痛みの予防ができることがおわかりいただけたと思います。
慢性頭痛に悩んでいるのであれば、迷わず専門医に相談し治療を受けることをおすすめいたします。