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「むちうち」には4種類のタイプがあるってご存知ですか?治療中の過ごし方も解説!

 更新日:2023/03/27
「むちうち」には4種類のタイプがあるってご存知ですか?治療中の過ごし方も解説!

交通事故の後に現れる「むちうち」という症状を耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。

むちうちは追突事故や転倒の衝撃が引き金となり首に過度な負担が加わることによって発症します。専門的には「外傷性頚部症候群」と呼ばれている疾患です。

首の筋肉や靭帯が損傷することにより首や肩の痛みが現れ、ときには頭痛・吐き気・めまいなどの症状に悩まされることもあります。

むちうちの症状は多種多様ですので、その特徴・治療法・注意点について一緒に確認していきましょう。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

むちうちとは?

ハンドル

むちうちとはどんな病気ですか?

むちうちとは、自動車の追突事故などにより頚部に強い衝撃が加わることによって起きる病気です。事故などにより突然強い力が身体に加わった場合、重い頭部はそのまま動かない状態で上半身のみが押し出される形になります。
このときに首がむちのようにしなるようになることから「むちうち」と呼ばれていますが専門的には「外傷性頚部症候群」と呼びます。首に大きな負担がかかり筋肉や靭帯を損傷することにより首や肩の痛みが現れるのです。
障害を受けた部位や重症度により、頭痛やめまいなどの症状がみられることもあります。また、外傷性頚部症候群は自動車の衝突事故だけでなく、スポーツでの激しい衝突や転倒によって起こることもある病気です。

発症時にみられる症状を教えて下さい。

多くは首や肩の痛みが特徴的な症状です。肩や首の重だるいような感覚として現れることもあります。軽度の場合には、事故直後に痛みはなく数時間経ってから痛みが出るのが特徴です。
重症の場合には事故直後から強い痛みを感じます。それ以外にも、損傷部位や重症度により吐き気・頭痛・めまい・手足のしびれなどの様々な症状が現れることがあります。

むちうちというと交通事故のイメージがあるのですが他が原因となるケースもあるのでしょうか?

交通事故以外での発症原因となるのはスポーツです。特にラグビー・アメリカンフットボール・レスリング・柔道など、相手とぶつかったり転倒したりする競技では発症のリスクが高くなります。また、スキーやスノーボードなどでの転倒の衝撃でむちうちを発症することも珍しくありません。それ以外にも、野球やサッカーなどの比較的身近なスポーツが原因になることもあります。

むちうちの特徴と治療方法

医師

むちうちにはタイプがあると聞いたのですが…

むちうちのタイプは、障害される部位によって主に4つに分類されています。それぞれの症状の出方が異なりますので確認していきましょう。

  • 頚椎捻挫型
  • むちうちの約8割が頚椎捻挫型です。レントゲン検査では異常はみられませんが、椎間板や靭帯が損傷している可能性があります。主な症状は、首や肩の筋肉の痛みです。肩が重い感じや動かしにくさを感じることもあります。

  • 神経根損傷型
  • 神経根損傷型のむちうちでは腕の強い痛みや知覚異常などが現れます。これは、腕の感覚をつかさどる神経が椎間板に挟まれて損傷することが原因です。腕の異常症状の他にも首を動かしたときや咳やくしゃみなどの衝撃により痛みが強く感じられることがあります。また、顔や頭の痛みや感覚異常がみられるケースもあります。

  • 脊髄損傷型
  • 脊髄損傷型での特徴的な症状は手足の麻痺やしびれです。首や腕よりも四肢の症状が現れるのが特徴的です。そして歩行に支障が出たり、排泄しにくくなったりすることもあります。

  • 自律神経障害型(バレ・リーウー型)
  • 自律神経障害型での症状は、頭痛・めまい・耳鳴り・吐き気などです。多くは後頭部の痛みを伴います。その他にも、視力や聴力に障害が出ることもあります。

むちうちはどのくらいで症状が出てきますか?

むちうちによる症状が出現し始めるのは、事故の数時間後から翌日です。安静にしているときに痛みを感じることもあれば、動かしたときに痛みを感じることもあります。筋肉の損傷のみの場合には、首や肩の重たい痛みが持続する人が多いようです。
損傷部位が靱帯組織にまで及んでいた場合には、事故の直後から自覚できる強い痛みが現れるのが特徴です。この痛みは首や肩だけでなく後頭部や腕にまで及ぶことがあります。また、障害された部位や重症度によっては頭痛・倦怠感・イライラ・めまい・吐き気などの症状が現れることもあります。

むちうちを放置してしまうとどうなるのでしょうか?

損傷した部位や重症度によっては、回復が大幅に遅れてしまうことがあるので注意が必要です。むちうちは早期に適切な治療を行っても、首・肩・背中・腕などの痛みが長期化してしまうことがあります。
回復が遅れれば日々の生活に支障が出ることもあるでしょう。また、重症度はレントゲンやMRI検査をしないと確認することができません。頚椎捻挫ではなく、頚椎の骨折や脱臼を起こしていることもあります。
この重症度によっては麻痺や視力障害などが引き起こされることもありますので、放置するのはとても危険です。肩や首の痛み・違和感がある場合はもちろん、事故の後に吐き気・めまい・頭痛などがある場合にも速やかに整形外科を受診してください。

むちうちの治療方法を教えて下さい。

発症して間もないうちは、首の安静が第一となります。首に装着するタイプの固定具で首への負担を軽減します。医師に指示された期間は装着するようにしてください。
多くの場合、2~3週間ほどで自然に痛みが治まってきますが、人によっては1〜3か月ほど痛みが続くケースもあります。痛みに対しては、痛み止めや筋肉の緊張を緩和する飲み薬・塗り薬・湿布薬で対応します。
それに加えて、リハビリテーションを行うのが一般的です。そして患部を温める温熱療法は、痛みの緩和や筋肉の緊張緩和に役立ちます。また、首や肩のストレッチ・マッサージ・体操も有効です。理学療法士とともに痛みに配慮しながら温熱療法・ストレッチ・マッサージ・体操などのリハビリテーションを行っていきましょう。

むちうちの治療中の過ごし方や注意点

首を痛めた男性

むちうちの治療中はどのように過ごしたら良いですか?

医師に指示された期間は患部を安静にして過ごしましょう。首や肩に負担のかかる激しい運動や長時間におよぶ作業は避けてください。そして温熱療法やマッサージなどのリハビリテーションは並行して進めていきます。
理学療法士指導のもと、積極的に行うようにしましょう。痛みや筋肉の緊張が強い場合や新たに症状が現れた場合は、我慢せずに相談するようにしてください。また、症状の回復には規則正しい生活も大切です。健康的な食事や睡眠を心がけ、適度にストレス発散を行いながら過ごしましょう。

治療中に注意することがあれば教えて下さい。

長い場合は3か月ほど痛みが続く場合がありますが、全く動かさずに過ごすことは逆に痛みを長引かせることになってしまいます。頚椎固定具を長期間つけ続けることは首の痛みや肩こりなどの原因にもなります。医師が指示した期間が終了すれば、過度な安静や活動制限を行う必要はありません。適度に運動するようにしましょう。

むちうちによる後遺症などはありますか?

損傷部位や程度によっては、麻痺・筋力の低下・しびれなどが後遺症として残ることがあります。また、イライラ・倦怠感・頭痛・めまいなどの自律神経症状が繰り返し現れることもあります。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

むちうちは「自動車の追突事故で起こるもの」というイメージを持っている人も多いでしょう。しかし、実際には野球・サッカー・スキー・スノーボードなどの一般的なスポーツでも起こることがあります。
首や肩に痛みが出る前に人とぶつかったり転倒したりといったことが思い当たるようであれば、外傷性頚部症候群である可能性も考えられます。痛みが軽いからといって放置してしまうと痛みが長引く原因になるので危険です。できるだけ早めに整形外科を受診しましょう。

編集部まとめ

女医
今回は自動車事故やスポーツによって引き起こされる「むちうち」について解説しました。
首や肩の痛みが日常的に続くのは、とてもつらいことです。

たとえ我慢できる痛みでも放置することは症状の長期化に繋がります。早期に受診することを心がけましょう。また、患部の安静を保つだけでなく、温めたりマッサージしたりすることも症状の緩和に役立ちます。

理学療法士とともにリハビリテーションを積極的に行っていきましょう。症状が長期化すると不安な気持ちも膨らむと思いますが、心配なことがあればひとりで抱え込まずに専門機関に相談してみてください。

この記事の監修医師