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「流涙症」の症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

 更新日:2023/03/27
「流涙症」の症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

流涙症という言葉を聞いたことがない方も多いのではないでしょうか。流涙症とは、目から涙が溢れて止まらなくなる状態のことをいいます。

涙が溢れるといっても、常に流れ出てしまうことで人前に出るのが恥ずかしくなったり常にハンカチが欠かせなくなったりなど、日常生活に様々な支障をきたします。

目は口程に物を言うという様に、目は人の心を表す器官であり、コミュニケーションにおいても目の健康は重要です。

今回は、流涙症の症状や原因や治療方法などをご紹介します。

竹内 想

監修医師
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)

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名古屋大学医学部附属病院にて勤務。国立大学医学部を卒業後、市中病院にて内科・救急・在宅診療など含めた診療経験を積む。専門領域は専門は皮膚・美容皮膚、一般内科・形成外科・美容外科にも知見。

流涙症はどのような病気?

考える女性

流涙症はどのような病気でしょうか?

流涙症は、少しの刺激で涙があふれてきたり、止まらなくなって日常生活に支障が出てきたりなどの症状があります。
涙は目を乾燥や細菌から守る、酵素やビタミンなどの必要な栄養を届ける役割を持っています。
通常は涙は瞼の上の方にある涙腺という器官で作られて目の表面へ流れ、溢れた分は目頭の上にある涙点という小さな穴から、涙小管涙嚢鼻涙管という鼻の器官を通って鼻へと排出されるのです。
流涙症の症状の原因には、涙腺の異常や鼻への排出が上手くいかない場合があります。

症状を教えてください。

涙が排出されずに目からあふれ出ている状態が続くため、視界がぼやける目やにが多く気になる程付着する・何もしないのに涙がこぼれる・眼鏡が曇りやすいなどがあります。
また、涙が多すぎて瞼の皮膚がただれてしまう、下を向くと涙がこぼれてハンカチが手放せないというケースもあります。

流涙症の原因を教えてください。

流涙症の原因は主に2つに分かれます。眼球や角膜の炎症によって刺激されて涙が多くなる分泌性流涙と、目から鼻腔へと繋がる涙道という涙の通り道が何らかの要因で狭くなったり、塞がってしまったりすることによって起こる流動閉塞です。
分泌性流涙の疾患には結膜炎角膜炎逆さまつ毛ドライアイ異物混入などがあり、眼球や角膜の傷・炎症・細菌感染により涙が一時的に多くなっている状態です。
逆さまつ毛が眼球にあたることによって眼球を傷つけて発生する症状を睫毛内反症(しょうもうないはんしょう)または眼瞼内反症(がんけんないはん)といいます。
一方で、流動閉塞は涙道の詰まりや狭窄により、涙が鼻への排出することが出来なくなり、目から涙が絶えず溢れた状態になります。鼻への排出経路が閉ざされてしまう疾患を鼻涙管閉塞症(びるいかんへいそくしょう)といい、狭くなっている症状は鼻涙管狭窄症(びるいかんきょうさくしょう)といいます。
これに付随して発症するのが涙嚢炎(るいのうえん)です。その原因は先述の鼻涙管閉塞症によるものが多く、排出されないまま涙嚢にたまった涙に病原微生物が繁殖し、涙嚢内に膿がたまって強い痛みを伴います。
鼻涙管閉塞症は先天性と後天性があり、赤ちゃんにみられる症状で鼻涙管が開通してない状態がそのまま残ってしまう先天鼻涙管閉塞症と、結膜炎や鼻炎等鼻や目の病気が原因で鼻涙管閉塞症になる後天鼻涙管閉塞症があります。

流涙症の治療と手術

目の診察を受ける男性

流涙症はどのように診断されますか?

まずは、瞼や目の状態を細隙灯顕微鏡を使って光を当てながら瞼や目の表面に傷や病気が無いかどうかを確認します。
続いて、涙道へ生理食塩水を流して通り具合を確認します。

治療方法を教えてください。

分泌性流涙の場合は、目の眼球や角膜などの傷や炎症の原因を改善することによって症状も治癒します。
結膜炎・角膜炎・ドライアイには点眼薬などの薬での治療が主になりますが、逆さまつげについては手術が必要な場合もあるのです。
涙道閉塞の場合は抗菌剤点眼で症状を改善させる治療をすることもありますが、根本的な治療のためには手術を行う必要があります。

手術が必要な場合もあるのでしょうか?

以下の場合は手術の必要があります。

  • 逆さまつ毛(睫毛内反症・眼瞼内反症)
  • 涙道閉塞(鼻涙管狭窄症・鼻涙管閉塞症)

逆さまつ毛の中でも、通常眼球と反対向きのカーブに生えるべきところが同じ向きに生えることによって、まつ毛が眼球に当たって傷つけてしまうことを睫毛内反症(しょうもうないはんしょう)といいます。
乳児の場合は瞼の脂肪が多いことによって下まつ毛が内側に押し込まれることが原因です。成長に伴って症状が改善されます。加齢の場合は瞼の筋肉や皮膚の垂みが原因であるため、まつ毛の方向を変える手術が必要です。
また、まつ毛の向きは正常であっても支える瞼の筋肉が緩むことによりまつ毛が眼球に刺さってしまう症状のこと、眼瞼内反症(がんけんないはんしょう)といます。下まつ毛を支える下瞼(けんばん)という筋肉が緩むこと、緩みに伴って下まつ毛の向きが内側になりまつ毛が眼球に刺さってしまって傷つけている状態のため、毛先の方向を改善するために下瞼を切開する手術が必要です。
次に、涙道閉塞の場合に手術が必要であることについて説明します。主な手術は、涙管チューブ挿入術・涙小管形成術・涙嚢鼻腔吻合術の3つありますが、狭くなった涙道を広げるもののためいずれのケースでも最初にブジーという金属の棒を入れて閉塞部の詰まりを取り除きます。涙管チューブ挿入術は、涙点から鼻腔にかけての涙の通りを良くするためにチューブを留置する手術です。
閉塞が強固な場合は涙嚢鼻腔吻合術(るいのうびくうふんごうじゅつ)を行い、涙道と鼻腔への通り道を開けます。また、涙小管形成術は涙点から涙嚢までの通り道が詰まっている場合に通りを良くするものです。
開口してもすぐにまた元に戻ることを防ぐためにチューブを2、3ヵ月間月留置して経過観察をします。

流涙症の手術費用や時間について教えてください。

逆さまつ毛の手術は埋没法と切開法の2つがあり、手術時間は10分から30分程度です。
健康保険が適用される病院で手術をうけると費用は片目で約10,000円程で収まります。保険適用されない美容整形外科の場合は片目で約100,000円程の費用がかかりますが、美容整形外科では高額な分、目頭切開術や二重形成術なども一緒に行って美容整形も同時に出来るメリットがあります。
一方で、涙道閉塞の場合は保険適応がされる病院での手術になりますが、3割負担で涙管チューブ挿入術は約15,000円・涙小管形成術は約50,000円・涙嚢鼻腔吻合術は約80,000円となっており、時間は1時間かからない程度です。

流涙症の予後とリスク

自然を感じる女性

流涙症は治る病気ですか?

先述の通り、涙が溢れる原因となっている場所によって対処方法は様々ですが、点眼薬で治るものもありますが、手術をしないと治らない場合もあります。
症状にもよりますが、手術や薬の対処で治癒は可能です。

自然治癒することもあるのでしょうか?

乳児の流涙症は先天鼻涙管閉塞といい、生まれつき鼻涙が塞がっている状態をいいます。
乳児の鼻涙管は鼻腔へ排出部分が膜で覆われているため流動閉塞の症状がみられることがあり、成長につれて鼻腔への開口部が開通し、1歳ぐらいまでに治ることが多いです。中には点眼薬や目頭をマッサージすることで治癒することもあり、自然治癒しない場合は、涙道へブジーを通して開通させる手術が必要です。
後天鼻涙閉塞・逆さまつ毛・分泌性流涙の場合は自然治癒することはなく、適切な治療を施さないと治癒することはありません。

すぐに病院へ行けない場合、市販の目薬は使用できますか?

分泌性流涙の中で、ドライアイのみ市販薬の服用で症状の改善が期待できます。涙と同じ成分で出来た点眼薬から、ビタミンやタウリンが入って疲労に効果があるものなど様々な特徴の点眼薬が市販で手に入れられます。
ドライアイ以外の症状の場合は市販の目薬で治癒することはないので早めに病院で受診しましょう。

流涙症を放置するリスクを教えてください。

流動閉塞を放置しておくと細菌感染が起こり、目ヤニが出るようになります。更に悪化すると涙嚢炎になり、最悪の場合失明の恐れも出てくるので早めの治療が重要です。
逆さまつ毛の場合は目が充血やゴロゴロした状態を放置しておくと、結膜炎角膜炎を起こしている可能性が高くなります。
更に放置すれば視力低下や角膜混濁といって透明な角膜が白く濁り、角膜の移植が必要になる場合もありますので放置せず、早めに受診しましょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

涙を司る器官は小さくて細かい様々な器官から成り立っており、どれか一つでも悪化してしまうと連鎖的に涙嚢炎にまで悪化したり治療に時間がかかってしまいます。早めに病院を受診すれば比較的簡単な手術で治療が可能です。
逆さまつ毛や先天性流動閉塞などは産まれつきであることもあり、中には手術をしないことによって何年も苦悩を続けている方もいます。早めに処置することでストレスが軽減され、煩わしさから解放された日常が始まります。
流涙症の症状がある場合は早めに受診して適切な処置を受けましょう。

編集部まとめ

PCの前で笑顔の女性
今回は、流涙症をご紹介しました。原因によって症状は様々ですが、涙が流れ続けるストレスだけでなく、涙嚢炎になると激しい痛みも伴います。

目は顔の中でも相手への印象を決めるパーツの1つであり、目の周りが腫れたり、目やにが常についていたりする状態は精神的なダメージにも繋がります。

涙が出るだけで痛みがない場合でも、失明や涙嚢炎へと進行しないように気が付いたら早めに受診しましょう。

この記事の監修医師