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悲しくもないのに涙が勝手にこぼれる…これってなにが原因? 治療できるの?

 更新日:2023/03/27
悲しくもないのに涙が勝手にこぼれる…これってなにが原因? 治療方法やその費用は?

涙が出てきても、しばらくすると自然に引いていきます。涙は鼻へと流れていくのがその理由です。反対に、鼻へうまく流れていないと、涙がいつまでもたまってしまいます。今回は「ひばり中村眼科」の中村先生に、涙対策の最新事情を伺いました。

中村真太郎

監修医師
中村 真太郎(ひばり中村眼科 院長)

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新潟大学医学部医学科卒業。新潟大学医歯学総合病院や地域基幹病院での眼科診療を経た2016年、東京都西東京市に「ひばり中村眼科」開院。2020年より、東京都練馬区の「たけうちアイクリニック」副院長を兼任。専門は白内障手術、眼瞼・涙道疾患、緑内障、糖尿病網膜症など。培った診療経験を地域医療へ反映させている。日本眼科学会認定専門医。

最も顕著な原因はパイプの詰まり

最も顕著な原因はパイプの詰まり

編集部編集部

涙がしょっちゅうポロポロ流れて困っています。

中村真太郎中村先生

涙が多い症状のことを「流涙症(りゅうるいしょう)」といいます。いくつか原因が考えられるのですが、最も多いのは涙が鼻へ流れていかない「涙管閉塞(るいかんへいそく)」です。排水管の詰まりをイメージしていただければ、おおむね合っているかと思います。

編集部編集部

ほかにも考えられる原因を教えてください。

中村真太郎中村先生

加齢などの原因によって結膜にたるみが生じると、涙が「水たまり」のような状態になり、涙っぽくなります。これを「結膜弛緩症(けつまくしかんしょう)」といいます。

編集部編集部

目の乾きとの関係はどうでしょうか?

中村真太郎中村先生

ドライアイも涙目に関係することがあります。ドライアイは本来「目が乾燥する疾患」なのですが、風などの刺激を受けやすいこと、水分保持力が落ちることなどが原因で、涙が多いように感じる場合があるのです。

土木工事にも似た治療内容

土木工事にも似た治療内容

編集部編集部

流涙症は治療できるのでしょうか?

中村真太郎中村先生

もちろんできます。ドライアイなどが原因であれば、点眼などで治療をすることになります。他方、涙管の詰まりに対しては、詰まった場所を開いて広げるか、または新たに別のルートを用意してあげる必要があります。

編集部編集部

手術は怖そうなイメージがあります……。

中村真太郎中村先生

「詰まった涙管を広げる手術」については、手術は10分以内で終わることがほとんどです。痛み止めの麻酔をした後、「涙道内視鏡」という細いカメラを使って、詰まった場所を見ながら広げていきます。特にまぶたや顔を切るようなことはないのでご安心ください。涙管を広げた後、内視鏡を使って「涙管チューブ」という柔らかいチューブを入れておくことで、涙管が広がった状態を保てるようにします。そして、3カ月ほどしてからチューブを抜きます。抜くのは数秒で終わり、痛みもありません。

編集部編集部

「別のルートを用意する」方法は、どのようなことをするのでしょうか?

中村真太郎中村先生

重症の場合は、涙管の途中にある涙嚢(るいのう)から鼻へ抜けさせるバイパス手術をおこなうことがあります。配管工事というより、トンネル工事に近いイメージでしょうか。涙嚢と鼻の間の骨に小さい穴を空けて、直接涙が鼻に流れていくようにします。約1時間ほどかかりますが、非常に効果が高く、改善する可能性の高い手術です。なお、こちらも局所麻酔による日帰り手術です。

編集部編集部

一方、結膜のたるみはどうするのですか?

中村真太郎中村先生

結膜弛緩症の治療では、手術でたるんで浮き上がった結膜を糸で縫合したり熱を加えたりして、ピンと張った状態に戻します。

涙目は病気とみなされ、保険適用による治療が可能

涙目は病気とみなされ、保険適用による治療が可能

編集部編集部

パイプの詰まりによる流涙症って、ある日、突然はじまるものなのでしょうか?

中村真太郎中村先生

いいえ。時間をかけて、じわじわと進行していき、いつから発症したのかはっきりしないことも多いですね。はじめは「涙っぽい」症状のみの場合が多いですが、そのうち「目やにがたくさん出る」という症状も加わってきます。この原因は、目の表面の汚れが涙で洗い流されず、たまってしまうからです。涙管の詰まりを放置することは、衛生的にも好ましくありません。

編集部編集部

予防方法はあるのですか?

中村真太郎中村先生

涙管が狭くなってくる理由ははっきりわからない場合が多いので、特別予防法というものはないのが現状です。自覚症状がでてきてから治療を考えることになります。また、涙管が詰まりはじめてから長期間放置しておくと、詰まり方が高度になってしまいます。高度になると詰まった部分を開けるのが困難になり、場合によっては大きい手術をしないと改善できなくなってしまいます。

編集部編集部

放置すべきではないということですね。

中村真太郎中村先生

そのとおりです。大切なのは「あまり重症にならないうちに治療すること」だと思っています。早ければ早いほど、治療時間も費用もかからず、「楽に」改善させることができます。

編集部編集部

保険の適用も含めて、費用体系を教えてください。

中村真太郎中村先生

流涙症に対して点眼薬を処方する医院もありますが、涙管が詰まっている場合には効果はありません。改善には保険適用の手術が必要です。具体的な費用について、詰まった涙管を広げる手術(涙道内視鏡手術・チューブ挿入)は1割負担で片側約5000円、3割負担だと片側約1万5000円です。(チューブの費用を含む)ほか、バイパス手術(涙嚢鼻腔吻合術)は、1割負担で約2万3000円、3割負担で片側約7万円となります。

編集部編集部

結膜弛緩症の治療費は?

中村真太郎中村先生

やはり保険適用による手術となり、片目あたり1割負担で2500円前後、3割負担ですと7500円前後です。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージがあれば。

中村真太郎中村先生

涙目はほとんどの場合、適切に治療すれば改善させることができます。そして、医療保険を使った治療が可能です。涙道の治療ができる施設は少ないので、治療を受けられず我慢している人も多いと思います。涙目や目やにが続いている人は、ぜひこの機に受診を検討してみてください。

編集部まとめ

涙が多くなる原因はいくつか考えられますが、症状が続いている場合は涙管(パイプ)の詰まりをまず疑うとのことでした。気になる症状があれば、まず受診してみてはいかがでしょうか。また、涙道手術をおこなえる医師はとても少ないそうです。治療をしていない医師に相談しても、「我慢するしかない」、「そういうものだから」といわれて放置されしまうことも多いようです。 涙目の症状のある人は、こちらのような涙道治療が受けられる施設・医師に相談することをおすすめします。

医院情報

ひばり中村眼科

ひばり中村眼科
所在地 〒188-0001 東京都西東京市谷戸町3丁目9−4
アクセス 西武池袋線「ひばりヶ丘駅」 徒歩10分
診療科目 眼科

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