目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. 病気Q&A(医科)
  4. 「複視」の症状や見え方・原因を解説!物が二重に見えることはありませんか?

「複視」の症状や見え方・原因を解説!物が二重に見えることはありませんか?

 公開日:2023/07/31
「複視」の症状や見え方・原因を解説!物が二重に見えることはありませんか?

年々デジタルデバイスの進化により眼を酷使する機会が増え、眼の疲れを感じることがある方も多いでしょう。

ときに眼がかすんだり二重に見えたりする方もいるのではないでしょうか。

物を見た際に二重に見えてしまう現象は単に眼の疲れだけではなく、「複視」と呼ばれる症状が現れている可能性があります。

本記事では複視とはどのような症状なのか、原因となる疾患についてご紹介します。

郷 正憲

監修医師
郷 正憲(徳島赤十字病院)

プロフィールをもっと見る
徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。

複視の症状や原因となる疾患

幻想的な光

複視とはどのような病気ですか?

複視とは、物を見た際に二重や三重に見える眼の症状です。眼球を動かす筋肉(外眼筋)は外直筋・上直筋・上斜筋・内直筋・下直筋・下斜筋の6つあり、これらの筋肉は動眼神経・滑車神経・外転神経の3つの脳神経により命令を受け眼球運動が行われています。
左右の眼球は脳幹(大脳からの命令や大脳に向かう情報が通る箇所)の神経細胞と視経路により共同運動が行われ、無意識に左右で見ている像を1つにします。そのため通常物を見る際は、左と右の筋肉がバランスよく揃って動くことで、左右の眼で見ている物は1つに見える仕組みです。
しかし何らかの障害が生じることで左右一方の神経が目標から外れ、眼の周辺の網膜に像が映るため、二重や三重に見えてしまうのです。
複視には片目で見ると二重に見える単眼性複視と、両目で見ると二重に見える両眼性複視があります。また、さまざまな要因が関係して引き起こされるため、小児から高齢者まで発症する可能性が考えられます。

どのような症状が出るのですか?

先述したように、物を見た際に二重や三重に見える症状が出ます。ただし、脳神経障害・先天性・外傷などの要因以外に、眼痛・視力低下・頭痛など複数の脳神経麻痺や歩行障害などの神経症状が合併しているときは、重篤な疾患の初期症状である場合もあります。
思い当たる節がなく普段と違った見え方をしている症状が現れたら、早急に医師に相談することが望ましいです。

原因となる疾患を教えてください。

複視の原因となる疾患にはさまざまあります。まず単眼性複視は乱視や白内障が要因となって起こることが多いです。乱視は角膜乱視と水晶体乱視がありますが、多くは角膜乱視です。
通常角膜は縦と横方向でほとんど同じカーブをしていますが、乱視を持っている方は縦と横で屈折が異なり、網膜ではっきりと像が結べずピントが合わないため物が二重に見えます。白内障は加齢に伴い眼球の水晶体が徐々に酸化していくことで白く濁り、複視などの症状が現れるのです。近年では若い方にも発症が増えてきています。
次に両眼性複視の場合、斜視(片目は対象となる物を見ていても、もう一方は違う方向を見ている状態)が関係しているでしょう。斜視には甲状腺の一症状としてみられる甲状腺眼症(バセドウ病)があり、外眼筋と周辺に存在する脂肪組織に炎症や神経麻痺を起こします。甲状腺の機能が正常であっても起こる場合があるのです。
また斜視には、筋肉の力が弱まる自己神経疾患で眼球運動に障害が起こることで複視を自覚する眼筋型重症筋無力症もあります。
そのほか麻痺性斜視と呼ばれる突然複視を自覚する症状も考えられるのです。麻痺性斜視の中には、上直筋・内直筋・下直筋・下斜筋が麻痺し眼の外向き以外の動きが制限される動眼神経麻痺や、外直筋が麻痺し眼の外向きの動きが制限される外転神経麻痺があります。
動眼神経麻痺は虚血・出血・梗塞など脳血管障害や脳動脈がん・脳腫瘍、外転神経麻痺は頭部外傷や脳腫瘍が原因となっている場合が多いです。また、どちらも糖尿病を患っていると起こることがあります。
ほかに突然複視が起こる要因として、脳や神経が異常をきたしている場合も多いです。外傷の例として眼窩壁骨折(がんかへきこっせつ)があります。眼球にある骨の窪みを眼窩といい、眼部に衝撃が加わることで歪みや圧力によって眼窩壁が骨折し、複視の症状が現れます。
このように複視の原因となる疾患はさまざまあり、原因によって治療方法が異なるため、原因を明確にすることは重要です。

複視の見え方を教えてください。

見る対象の物が二重や三重に見えますが、はっきり二重や三重に見えるのではなくぼんやりだぶって見えることが多いです。また、左右のピントが合わない・左右どちらかの方向を見るとかすむなどの症状を訴える患者もいます。
人により見え方の違いはありますが、いずれにしても何らかが要因となり複視を引き起こしているのです。
斜視が関係している場合、側から見たら眼の位置が寄っているなどの見た目となるため気づかれることはありますが、大抵は側から見て複視が起こっているとは分かりません。患者自体はつらく複視によって気分が悪くなることもあります。

複視の種類を教えてください。

先述したように単眼性複視と両眼性複視の2種類があります。両眼性複視の場合、片目を閉じるときちんと1つに見えます。複視の症状がみられる場合それぞれ原因が異なるため、まずは片目と両目で見た際に見え方の違いはないか確認してみましょう。

複視の検査や治療方法

カウンセリング

何科を受診すればよいですか?

まずは眼科専門医を受診してください。問診を行い年齢や病歴などを聴取することである程度原因が絞れます。小児は先天性や外傷、成人でとくに高齢者の場合はまずは血管障害を疑います。
また先述したように突然起こる複視は脳や神経に異常があることが多いため、脳神経外科や神経内科の受診が望ましいです。医師に相談し原因を把握し、適切な治療を受けましょう。

どのような検査が行われますか?

斜視かどうか調べる眼位ずれや、眼球運動の検査を行います。
眼位ずれはヒルシュベルグ法と呼ばれる眼に光を当て角膜に映る光の反射から斜視の強さや角度を測定したり、片眼ずつ隠し斜視の量を測定したりするカバーテストなどを行い眼位ずれを確認します。眼球運動検査では、眼でペンライトを追うことで、見る方向によって眼の動きに問題がないか確認するのです。
また脳や神経が関係している場合もあるため、MRIやCTなどの画像検査も行います。さらに外眼筋に異常がないか診る部位検査を行うなど、さまざまな検査を行うことで複視の原因を特定していきます。

複視の治療方法を教えてください。

単眼性複視で乱視の場合は眼鏡やコンタクトレンズで矯正、白内障の場合は手術を行い症状の改善を目指します。両眼性複視で斜視の場合、プリズム眼鏡(眼の位置を補正する眼鏡)で矯正や視能訓練を行い、改善がみられない場合は手術を行います。
甲状腺眼症が急性期の場合は副腎皮質ホルモン投与を行い、軽い場合は内服、症状が強い場合は多量の点滴を投与するパルス療法をとるのが一般的です。また、ストレス・喫煙・寝不足は甲状腺眼症にとって悪影響を及ぼすため、日常生活において注意が必要です。
眼筋型重症筋無力症・糖尿病・脳や神経が関係している場合は、眼科医とそれぞれの専門医が連携して治療を進めていきます。
また眼窩壁骨折が起こった場合は、しばらく様子を見てから手術するか決めます。しばらく経っても複視が改善されない場合に手術を行うのが通常の流れですが、筋肉が骨折部にはまり血流障害が生じている場合は緊急手術が必要です。

複視の予後や回復

女医

複視の予後について教えてください。

複視は挙げたようにさまざまな原因が関係していることがありますが、先述したように重篤な病気の初期症状でもあります。重症化を防ぐためには、早期発見が重要です。
眼に違和感を覚えたらまずは眼科専門医を受診し、今後の流れについて医師と相談しましょう。たとえ脳が関係していても早期に原因が分かることで適切な治療が進められ、予後もよい方向へと向かうでしょう。

複視が自然に回復することはありますか?

複視が起こる原因によっては自然に回復する場合があります。しかし、突然症状が現れた場合は脳や神経が関係していたり重篤な病気の初期症状であったりすることも多いです。
複視の症状がみられたら、放置せずに眼科専門医を受診することが望ましいです。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

物が二重や三重に見える場合、必ずしも眼の症状だけが関係しているとは限りません。複視がきっかけとなり、ほかの病気が見つかることもあります。
放置せず医師に相談し検査を行い、原因を把握してください。早期に原因を特定し適切な治療を行うことで、重症化の予防に繋がります。

編集部まとめ

微笑む女性
眼は私たちがさまざまな情報を得るうえで、重要な器官の1つです。

物が二重や三重に見えている場合、眼の疲れだけではなく複視も視野に入れ疑いましょう。複視が起こっている背景には、重篤な症状が隠れている場合もあります。

まずは眼科専門医を受診し、問診や検査を通して原因を把握し、治療に臨んでください。早期発見・早期治療を受け、いつまでも眼を大切にしましょう。

この記事の監修医師