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「潰瘍性大腸炎」になると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

 更新日:2023/03/27
「潰瘍性大腸炎」になると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

今回は、国が定める指定難病のひとつである「潰瘍性大腸炎」について解説します。

潰瘍性大腸炎とは、近年増加している原因不明の炎症性腸疾患です。お腹の痛み・下痢・血便といった辛い消化器症状が現れます。

症状が良くなったり、悪くなったりを繰り返し、長期にわたり付き合っていくことが必要な疾患です。

ただし、症状コントロールを行えば、発病前のように生活することは可能です。治療法や注意点を確認もお伝えするので、是非参考にしてみてください。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

プロフィールをもっと見る
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

潰瘍性大腸炎の特徴

腹痛で苦しむ女性

潰瘍性大腸炎とはどんな病気?

潰瘍性大腸炎とは、体の免疫機能に何らかの原因で異常が生じ、大腸の粘膜に炎症が起こる病気です。炎症は、大腸粘膜を直腸の粘膜から連続性におかし、潰瘍やびらんを形成します。
この炎症の広がり方によって、全大腸炎型・左側大腸炎型・直腸炎型、右側あるいは区域性大腸炎型に分類されます。炎症が進むと、下痢・粘血便・血便といった消化器症状が頻繁に現れるようになるのが特徴です。
原因不明の腸管の炎症性疾患には潰瘍性大腸炎とクローン病があります。この原因不明の炎症性腸疾患をIBD(Inflammatory Bowel Disease)と呼びます。
IBDは潰瘍性大腸炎とクローン病という病気に分類され、これらの病気はどちらも国が定める指定難病です。

潰瘍性大腸炎の症状はどんなものがありますか?

主な症状は、腹痛・下痢・粘血便・血便・発熱などです。症状はだんだんと進行する一方ではなく、症状が良くなる寛解と、再び症状が悪くなる再燃を繰り返すのが特徴になります。
重症化すると、体重の減少・貧血・全身の倦怠感といった全身症状が引き起こされ、合併症を発症することもあります。
通常、下痢や腹痛などの症状が一週間程度で治まるようであれば、細菌やウイルスによる腸炎を疑うのが一般的です。しかし、潰瘍性大腸炎の場合は、数週間以上にわたり消化器症状が続きます。
いつから、どんな症状が続いているかといった情報は、他の感染性腸炎との鑑別に役立ちますのでメモしておくようにしてください。便の回数・性状・粘血便や腹痛の有無などの情報も重要です。

潰瘍性大腸炎の原因はなんですか?

潰瘍性大腸炎のはっきりとした発症原因は未だ明らかになっていません。遺伝的な素因・食生活・ストレス・腸内細菌の乱れ・免疫システムの異常などが複雑に関係しているようです。
遺伝子については、発症に関連している可能性のある遺伝子が研究により報告されています。ただし、その遺伝子で必ず発症するわけではなく、発症原因については研究が続けられています。

どのような人が発症しやすいでしょうか?

4歳以下の乳幼児から80歳以上の高齢者まで幅広く発症する病気です。発症しやすい年齢は、男性の場合20歳から24歳、女性の場合25歳から29歳というデータが報告されています。男女で発症のしやすさに差はありません。
また、虫垂切除者は潰瘍性大腸炎の発症リスクが低いことや喫煙者は非喫煙者に比べて発症頻度が低いというデータも報告されています。

潰瘍性大腸炎は遺伝することはありますか?

遺伝子が関わっている可能性は示唆されていますが、必ずしも発症するわけではありません。様々な要因が複雑に絡み合って炎症が起こると考えられています。

潰瘍性大腸炎の診断と治療

医師の診察

どのような方法で病気の診断を行いますか?

まず行うのは、受診に至るまでの症状や病歴等の問診です。潰瘍性大腸炎以外にも下痢や血便を引き起こす感染症はあります。それらとの鑑別をするための細菌検査を行います。
この検査で他の感染症ではないと判断されれば、次に行うのはレントゲン検査内視鏡検査です。レントゲン検査や内視鏡検査により、炎症や潰瘍の深さや広がり方を確認することができます。
それらに加え、内視鏡検査で大腸粘膜の一部を採取し病理検査をすることで確定診断に至ります。

治療法にはどのようなものがありますか?

軽度~中等度の場合には、薬物治療が第一選択です。5-ASA製剤と呼ばれる潰瘍性大腸炎・クローン病治療薬副腎皮質ステロイド薬を用いて炎症を抑えます。それらの薬で効果が出ない場合には、過剰な免疫反応を抑えるための免疫調整薬を使うことも選択肢のひとつです。
NUDT‐15とよばれる遺伝子多型検査をして副作用の出現のリスクが低いと判断された場合は免疫調整薬を使用します。また、薬物療法の他に用いられるのは、顆粒球吸着療法という治療法です。
白血球の成分である顆粒球は、通常の場合、体を異物から守るように働きます。しかし、顆粒球が過剰に増えてしまうと自分の体を守るどころか、逆に攻撃して組織を破壊してしまうのです。
そのため、過剰に増えた顆粒球を吸着し除去することで炎症を抑制する効果が期待できます。この方法は、長期的に薬を飲み続けることに抵抗がある患者さんにも用いられている治療です。
現在、点滴や皮下注射や内服できる様々な生物学的製剤が使用可能になり、これによって多くの患者さんがステロイドフリーで寛解を長期に維持できるようになりました。

手術が必要になる場合はありますか?

ほとんどの場合は、薬の投与により炎症が治まり、症状が改善します。しかし、重症化し薬の治療での改善が期待できない場合や薬の副作用により、継続投与が難しい場合もあるのです。その場合には手術を選択します。
一般的には、発症した時の重症度や炎症の範囲によって治療方針が決まります。他にも、潰瘍が深部にまで達して腸壁に穴が開いたり、大腸がんが疑われたりする場合も外科的な治療の適用です。
この場合、人工肛門を作る方法や肛門を温存する方法があります。

潰瘍性大腸炎は完治しますか?

現在の段階では、完治する治療法は確立されていません。しかし、継続的に薬を内服し、寛解期を長期間維持することは可能です。そのためには、薬の内服に加えて、規則正しい生活を送ることが大切です。

潰瘍性大腸炎で気をつけること

調子は快調

患者さんの日常生活で気を付けるべきことを教えてください。

暴飲暴食や激しい運動は控えてください。軽い運動は回復に効果的だといわれているので、無理のない範囲で身体を動かすのもおすすめです。
また、潰瘍性大腸炎の症状悪化を予防するためには、薬を飲み続けることが重要です。処方された薬は用法や用量を守って服用しましょう。
症状が治まっても、途中で薬を中止するのは避け、気になることがあれば主治医に相談してください。また、体と心のストレスにより、炎症が再燃する可能性はゼロではありません。
できるだけ、身体に負担がかからないように心がけることも大切です。長期の旅行など、普段とは環境や生活様式が変化する場合にも再燃しやすくなるので主治医に相談しておきましょう。

症状がなくなっても薬を飲み続ける必要がありますか?

症状が無くなっても、寛解期を維持し続けるために薬を飲み続けることが必要です。症状が良くなったからといって薬を自分の判断で中断することは避けましょう。
もしも薬を中断したい場合には、必ず主治医に相談するようにしてください。

合併症があったら教えてください。

口内炎・虹彩炎・関節炎といった腸管以外のいたる所に炎症が現れることがあります。他にも、膵炎や皮膚症状(結節性紅斑・壊疽性膿皮症)など、引き起こされる合併症は様々です。
また、ごく一部ではありますが、大腸がんを合併するケースもあります。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

「指定難病」と聞くと、怖いイメージを抱く人もいるかもしれませんが、潰瘍性大腸炎は寛解状態を長期間維持することもできる病気です。下痢や血便といった症状で受診された際には、まず問診から行います。
いつから・どんな症状が・どんなふうに続いているか、便の回数・便の性状・痛みの度合いなどが診断に役立ちます。ぜひ書き留めておくようにしてください。

編集部まとめ

元気に仕事中
今回は、潰瘍性大腸炎について解説しました。

下痢や粘血便が続くのは、とても辛いものです。思い当たる症状があれば、我慢せず、早めに受診することが重症化の回避につながります。

すでに治療中の人は、ストレスをこまめに発散し、体も心も健康に過ごせるように心がけてみてください。

もし症状が回復しても薬は途中で止めず、飲み続けることが大切です。病状や治療について不安に思うことがあれば、かかりつけ医に相談しましょう。

この記事の監修医師