「盲腸」になると現れる症状はご存知ですか?医師が監修!
耳にすることも多い盲腸という病気は、正式には急性虫垂炎といいます。
大腸の一部分である虫垂が炎症を起こす病気で、盲腸になった経験のある人も少なくないかもしれません。
誰しもが発症する可能性がある盲腸ですが、実は命に関わるリスクもあります。
発症の原因・症状・治療法・セルフチェック方法など、盲腸について理解を深め、万が一の場合に適切な対応ができるように備えていきましょう。
監修医師:
郷 正憲(徳島赤十字病院)
目次 -INDEX-
盲腸の原因と症状
盲腸とは何ですか。
虫垂は大腸の一部分であり、右下腹部に位置する細く小さな臓器です。腹部の右下あたりの大腸の初めの部分を盲腸といいますが、虫垂は盲腸からぶら下がるような形で細長く飛び出しています。
この虫垂に炎症が生じた状態がいわゆる盲腸、急性虫垂炎です。
盲腸の原因を教えてください。
ストレス・ウイルス感染・疲労なども盲腸の原因として挙げられることがありますが、こちらも原因としてはっきり解明されたわけではありません。
若年者の方が発症しやすいと聞いたのですが…。
ただし、子供から大人まで発症する可能性がある病気です。2~3歳で発症する人もいれば高齢で発症する人もいます。
初期にはどんな症状があらわれますか。
初期には心窩部痛が現れることも多く、腹部を押してもあまり痛くないため胃腸炎と診断されてしまうこともあります。その後2~3日経つと、右下腹部に痛みが移動するケースが多いです。
患部を押すと痛みを感じるようになり、歩くと響くような症状が出てきます。これらが典型的な症状といえますが例外もあり、症状の現れ方に個人差があるのも盲腸の特徴です。
子供・高齢者・妊婦など、典型的な症状がみられなかったり自覚症状がなかったりする場合もあります。そのため、診断が難しいケースも少なくありません。
症状が進行するとどうなりますか。
また、症状が進行すると痛みも強くなります。盲腸が進行すると、歩いたり話したりと身体に振動が加わるだけで右下腹部に強い痛みが響くようになります。
腹膜刺激症状といって右下腹部の腹筋が緊張によってお腹が硬くなる症状がみられる場合も多いです。腹膜炎を発症すると命にも関わる重篤な状態に陥ります。盲腸を発症した場合は、腹膜炎を起こす前に治療することが重要です。
盲腸の診断法と治療法
盲腸はどうやって診断されますか。
まずは血液検査で白血球・CRP蛋白などの数値から炎症反応を確認し、レントゲン・CT検査・超音波検査などで診断していく流れが一般的です。
人によっては、胃腸のその他の疾患・子宮の病気などとの区別が難しい場合もあります。そのため、最終的に手術をして初めて盲腸と診断が確定するケースも稀にあります。特に症状を正確に伝えられない小さな子供では、胃腸炎と診断されて症状が進行してしまうケースも少なくありません。
また、子供の盲腸の穿孔率は15.9~34.8%と腹膜炎を併発しやすい特徴があります。子供の虫垂の壁は薄いため穿孔しやすく重症化する恐れがあるため注意が必要です。
薬だけで治りますか?
症状の進行程度にもよりますが、軽症~中等症の場合は薬だけで治療する保存的治療が可能です。ただし、薬だけの治療の場合、20~30%の割合で再発の可能性があります。
また、抗生物質の効果が乏しいと症状が改善しない場合もあります。薬だけで治すことは可能ではありますが、人によっては手術の回避が難しいこと・再発のリスクを理解しておくことが必要です。
どんな手術を行いますか。
開腹手術は古くから行われている手術方法で、右下腹部を5cm程度切開して虫垂を摘出します。腹腔鏡手術は、臍・腹部に1~3箇所小さな穴を開け腹腔内を映すカメラを使いながら虫垂を摘出する方法です。
虫垂を臍から引っ張り出して切除する方法では、術後の傷跡が目立ちにくいメリットがあります。また、開腹手術と比べて傷口が小さく、患者への負担が少ない点もメリットです。そのため、開腹手術よりも腹腔鏡手術で治療を行うケースが増えています。
ただし、虫垂の炎症の状態によっては腹腔鏡手術での治療が難しく、開腹手術が必要になる場合もあります。
手術後はすぐ退院できますか。
腹膜炎の併発や虫垂の炎症がひどい場合など、症状によっては7日以上の入院が必要になる場合もあります。また、抗生剤で治療を行い炎症が治まってから虫垂を切除する治療方法を待機的虫垂切除といいます。
待機的虫垂切除が必要となった場合は、1週間程度の入院が必要です。その後2~3ヶ月程度経過をみながら再入院して虫垂を切除します。
盲腸の予防法とセルフチェック方法
盲腸の予防方法はありますか。
ただし、盲腸になった場合に保存的治療ではなく手術療法を選択することで、再発を予防することはできます。
盲腸のセルフチェック方法を知りたいです。
盲腸は時間が経過するにつれて痛みが強くなる傾向があります。みぞおち付近・右下腹部の痛みが続く、痛みが強くなっていくなどの症状がみられる場合は速やかに医師に相談しましょう。また、一度診察した場合でも、症状が治らない・症状が悪化する場合は我慢せずに再度受診しましょう。
子供の盲腸での注意点を教えてください。
- 自覚症状をうまく説明できず、発見が遅れてしまう
- 虫垂の壁が大人よりも薄く、腹膜炎を併発しやすい
このように子供の盲腸は、痛みや症状をうまく説明できずに胃腸炎と診断されてしまうケースも少なくありません。そして、炎症が進行した結果腹膜炎を起こし、重篤化する恐れもあります。
子供の盲腸は、急激に症状が進行することも珍しくありません。子供が腹部の痛みを訴えてきたら、盲腸の可能性を疑い受診・検査することが大切です。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
また、盲腸は男女・年齢問わず誰もが発症する可能性があります。適切な治療を迅速に受けるためには、腹部の痛みを我慢し続けないことが大切です。
腹部の異変・吐き気・食欲不振など、盲腸と疑われる症状がみられる場合は、速やかに医師に相談しましょう。
編集部まとめ
盲腸は胃腸の病気の中で耳にすることも多く、知っている人も多い病気といえます。
盲腸を経験した人も多いため、大事に至らない病気と考えている人も少なくないかもしれません。
しかし、盲腸は放置しておくと腹膜炎につながる恐れがあり、命に関わります。
また、はっきりとした原因・予防方法が解明されていないことから、発症を防ぐことが難しい病気でもあります。
腹膜炎を起こす前に盲腸に気付き、適切な治療を受けることが大切です。腹部の異変・痛みを感じたら我慢せずに医師の診察を受けるようにしましょう。