大腸でポリープが見つかったら全部切ったほうがいいの?
大腸がんの初期症状ともいえる「大腸ポリープ」。状況によって、切除する場合と要観察で済ませる場合があるようだ。その違いはどこにあるのだろう。また、がんの原因を腸内に残しておいていいのだろうか。そんな不安と疑問を、「センター南駅前内科おなかクリニック」の小川先生に投げかけてみた。
監修医師:
小川 修(センター南駅前内科おなかクリニック 院長)
滋賀医科大学医学部卒業。亀田総合病院初期研修医、国立国際医療研究センター後期研修医、昭和大学藤が丘病院消化器内科、虎の門病院消化器内科医員を経た2016年、神奈川県横浜市に「センター南駅前内科おなかクリニック」開院。胃大腸カメラを活用し、拡大観察やNBI観察による高精度な画像診断に努めている。医学博士、難病指定医、日本内科学会総合内科専門医、日本消化器病学会消化器病専門医・指導医、日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医・指導医、日本カプセル内視鏡学会認定医・指導医。
ポリープの性質と大きさが、切除か否かを左右する
編集部
そもそも大腸ポリープとは何なのですか?
小川先生
大腸の粘膜が盛り上がったものを大腸ポリープと呼びます。主に「過形成性ポリープ」と「腺腫」に分けられ、このうち「過形成性ポリープ」は、腫瘍に分類されない病変のことです。発見したとしても、小さければ経過観察でいいでしょう。場所や大きさによっては腫瘍の性格をもつので切除します。それより怖いのは「腺腫」タイプのポリープです。
編集部
「腺腫」について詳しく教えてください
小川先生
腺腫とは大腸粘膜から発生した「良性の腫瘍」です。一般的に大腸ポリープと言っているのは、この腺腫であることがほとんどです。
編集部
大腸がんに発展するのは、主に「腺腫」であると?
小川先生
そう言っていいでしょう。腺腫は良性腫瘍なのですが、中にはがん化するものがあるため、切除の検討が必要です。とくに直径6mm以上の腺腫は、がん化する危険性が高いとされています。逆に、直径5mm以下の腺腫は、がんになる可能性が少ないのです。
編集部
ポリープの切除についてまとめると、どうなりますか?
小川先生
9mm以下の「過形成性ポリープ」は、特定の疑わしき場所を除き、切除の必要性ナシ
10mm以上の「過形成性ポリープ」は、がん化の可能性こそ低いものの、場合によって切除
5mm以下の「腺腫」は、将来のがん化に備えて要観察
6mm以上の「腺腫」は、がん化のリスクが高いため切除
もちろん実際は、家族歴や生活歴を加味して判断します。医師の見解にもよるでしょう。
切除に必ずついて回るのが、出血というリスク
編集部
がん化する可能性があるんだったら、「腺腫」は全部切除しておけばいいのにと思ってしまいます
小川先生
簡単に切除と言っても、出血や大腸に穴が開くなどのリスクが伴うのです。それに、今は「拡大内視鏡」という機器があって、拡大観察で「腺腫」か「がん」なのかがわかるんです。あきらかに「腺腫」で5mm以下だったら、取らなくてもいい。そういう考え方もできますよね。
編集部
単に「切ればいい」というものでもないと?
小川先生
そういうことです。出血リスクは、患者さんが血液をサラサラにするお薬を飲んでいたりすると、高まります。一時的な止血処置に努めるものの、その後のことを考え、入院していただくこともあるでしょう。
編集部
内視鏡での切除が難しい大きさは?
小川先生
2cmを越えてくると、出血のリスクが高まります。手術するとしたら、入院できる医療機関が望ましいでしょう。内視鏡で対応すべきか、ほかの切開手術などで対応すべきか、高度医療機関の判断に委ねます。
編集部
内視鏡で切除するとしたら、どのような方法があるのですか?
小川先生
投げ縄のようにひもで縛って切除する、電気で止血しながら切る、ポリープの下に液体を注入し浮かび上がらせて切るなどさまざまです。
ポリープ切除は保険の適応が可能、気になる費用について
編集部
ポリープやがんを発見する確率はどれくらいでしょう?
小川先生
主観を交えた数字になりますが、大腸カメラの適応がある人の中で、「腺腫」は10人に2人くらい、「がん」で100人に2人くらいでしょうか。
編集部
内視鏡でポリープを切除した場合の費用は?
小川先生
保険の適応が可能で、3割負担の場合で2万円前後となっています。ポリープが複数の臓器で発見された場合、1臓器あたり3000円から4000円を加算します。自費で大腸内視鏡を受けた場合でも、ポリープが発見されれば、保険診療に切り替えられます。
編集部
ちょっと待ってください、同じ大腸なのに「1臓器あたり」とはどういうことでしょう??
小川先生
難しい話になってしまいますが、大腸の中にも「盲腸」「結腸」「直腸」などの部位があり、保険の算定においては結腸がさらに2つに分けられ、それぞれを1臓器とします。ちなみに、1臓器の中でいくつポリープを切除しても費用は変わりません。
編集部
最後にメッセージがあれば、お願いします
小川先生
特定健診に含まれる「大腸がん検診」を有効活用しましょう。便潜血検査は大腸がんの早期発見につながります。もし陽性反応が出たら、大腸内視鏡検査を受けてください。女性の患者さんでも恥ずかしがらず、女医さんのいる医院など選んで受診してはいかがでしょうか。
編集部まとめ
内視鏡でのポリープ切除については、「過形成性ポリープ」と「腺腫」の違いにより、同じ医療機関でも考え方が異なるようです。小川先生の場合、「腺腫」ならなるべく切除しておいて、「2~3年後に再検査しましょう」と提案するそうです。なるほど、大腸内視鏡の検査サイクルとも関わってくるのですね。医院選びの参考としてください。
医院情報
所在地 | 〒224-0032 神奈川県横浜市都筑区茅ケ崎中央6-1 サウスウッド3階 |
アクセス | 横浜市営地下鉄(ブルーライン、グリーンライン)「センター南駅」より徒歩2分 |
診療科目 | 内科・消化器科・内視鏡内科 |