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【体験談】「盲腸」治療の今! モデル・佐藤あやが経験したリアル

 公開日:2023/04/28
【体験談】「盲腸」治療の今! モデル・佐藤あやが経験したリアル

かつてよく耳にした「盲腸(急性虫垂炎)」。近年では、手術を受ける人が大幅に少なくなっているそうです。そんな盲腸ですが、治療法、アプローチもかつてから比べると大きな変化を遂げています。2023年3月、モデル・タレントとして活躍している佐藤あやさんが実際に盲腸の手術を受けました。手術から1週間後(取材時)のリアルなエピソードを聞かせてもらいました。

佐藤あやさん

体験者プロフィール
佐藤 あや

プロフィールをもっと見る

モデル。最新医療に関心が高く、2021年8月から「Medical DOC」副編集長に。YouTubeチャンネル『教えてドクター・Medical DOC』でMCとして活動。一児の母としての目線にも注目。

梅村 将成

記事監修医師
梅村 将成(医師)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

手術は怖いけど腹痛の原因がわかったことに安心

手術は怖いけど腹痛の原因がわかったことに安心

編集部編集部

最初に不調や違和感を覚えたのはいつですか? どういった状況だったのでしょうか?

佐藤あやさん佐藤あやさん

数年前から謎の腹痛が度々あり、その度に内科を受診していましたが、毎回「炎症の数値が高いですね」と抗生剤を処方されるだけでした。なぜ炎症の数値が上がっているのかの原因はわからず、「食あたり」や「風邪」と言われていました。しかし、腹痛が起きると動けず生活に支障が出るレベルだったので、自分ではなんとなく、ただの食あたりや風邪とは違うと思っていましたね。

編集部編集部

追加的に調べることはしましたか?

佐藤あやさん佐藤あやさん

胃カメラやピロリ菌の検査をしましたが、ピロリ菌に関しては「抗体値は低いが陽性」(わずかにいる)ということで、除菌薬での治療も行いました。それでも腹痛はたびたび訪れました。

編集部編集部

では、どうやって盲腸の診断に至ったのでしょうか?

佐藤あやさん佐藤あやさん

診断がついたのは、昨年(2022年)10月でした。その日はランチをたくさん食べたので眠くなり、帰宅して少しウトウトしていたところ腹痛で目が覚めました。「食べてすぐ寝たからかも?」と思いそのまま過ごしていたのですが、徐々に歩くのも辛くなり、脂汗も出てきて、何も出来ないほど痛くなってしまったので、タクシーで救急外来に行きました。土曜日だったので、普段のかかりつけ医ではなく大学病院に行ったところ、血液検査や抗生剤点滴のほかにCT検査を受けて、そこで盲腸だとわかりました。

編集部編集部

どんな病気なのでしょうか?

佐藤あやさん佐藤あやさん

「盲腸」と言っていますが、正確には「虫垂炎」という病名で、盲腸からぶら下がっている「虫垂」という細長い臓器が、何らかの原因で炎症を起こしてしまう病気です。

編集部編集部

どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?

佐藤あやさん佐藤あやさん

虫垂の炎症が治まれば痛みも治まるので、抗生剤治療が一般的ですが、腹痛をくり返している私は医師から手術を提案されました。抗生剤で治療しても、3割が再発してしまうのだそうです。

編集部編集部

そのときの心境について教えてください。

佐藤あやさん佐藤あやさん

私は、採血で針をさすだけでも軽くパニックになるくらい痛みが苦手なので、手術なんて考えただけでも怖くて仕方なかったのですが、一方で「やっと正解がわかった」という安心感もありました。何度も病院に駆け込んでは原因不明と言われ、今後もいつ痛くなるかわからないという状態から「今度こそ抜け出せるのでは?」という希望の光が見えました。手術は絶望でしたが。

10月に診断がつき、手術を受けたのは3月

10月に診断がつき、手術を受けたのは3月

編集部編集部

実際の治療はどのように進められましたか?

佐藤あやさん佐藤あやさん

夫の勧めもあり、手術をすることにしました。手術には種類があり、タイミングの観点で言えば腹痛発作がある時に行う緊急手術待機的手術といって、抗生剤で炎症を鎮めてから手術をする方法があります。手術方法としては、開腹手術腹腔鏡手術があります。緊急手術の場合には、虫垂が炎症を起こしている状態であるため、周りの臓器にも負担がかかることから、開腹手術を選択せざるを得ないケースが多くなるそうです。私は待機的手術での腹腔鏡手術を希望し、まずは抗生剤治療を行いました。数日は、点滴治療のために通院し、そのあと飲み薬になりました。結果的に、その選択で良かったと思います。私が手術をした同じ日に、偶然ですが虫垂炎の緊急開腹手術をした方もいて、その方は私よりも術後の腫れや痛みが辛そうだったので。

編集部編集部

手術までの期間はどのくらいでしたか? その間腹痛は?

佐藤あやさん佐藤あやさん

10月に診断がついて、3月に手術となりました。その間にもお腹の激痛が2回ありました。駆け込んだかかりつけ医に「盲腸で痛いんだから、手術を早めてもらったら?」と言われ、手術予定の大学病院に相談しに行きましたが、「炎症の数値が上がっているから、今やるなら腹腔鏡でも、あなたが希望する単孔式(腹部には1カ所しか穴をあけずに行う方法)はできないだろう」と言われ、また抗生剤で治療しながら3月を待つことにしました。ちなみにかかりつけ医に、「今までのお腹の激痛も、盲腸だったのではないですか?」と尋ねたところ、「違うと思う」と言われました。本当のところはわかりませんが、私は絶対に過去の激痛も虫垂の炎症だったと思っています(笑)。

編集部編集部

受診から手術、現在に至るまで、何か印象的なエピソードなどあれば教えてください。

佐藤あやさん佐藤あやさん

手術室に入って麻酔を受け、身体は動かないのに耳だけ聞こえている数分間は恐怖でした。手術室の医師たちは、私の意識がないと思って、完全に素の会話をしていました(笑)。でも、体は動かないので「起きています」と伝えることもできませんでした。医療ドラマの手術シーンのような緊張感がなく、ラフな雑談をしていたのも少し怖かったですし、「このままずっと意識が保たれたまま手術が進んでいったら……」と考えると絶望的な気持ちになりました。その後、無事に(?)意識がなくなったので良かったのですが、目が覚めた時には「無事に手術が終わったんだ」ではなく「ちゃんと意識がなくなったんだ」と安心しました。

編集部編集部

術後の様子はどうでしたか?

佐藤あやさん佐藤あやさん

腹腔鏡手術は、視野を確保するためにお腹にガスを入れて膨らませた状態で行うのですが、それが術後すごく辛かったです。「術後、ガスは抜くから」と言われていたのですが全ては抜ききれないようで、手術翌日が肩、その後は脇腹など、体内に残ったガスでパンパンに張ったような痛みが数日間続きました。身体はキツいのに、横になることも出来なくて、ベッド上にあぐらをかいていました。そのおかげ(?)で、傷の痛みは全く気にならなかったです。

医師と一般人の「日常」のギャップを感じた

医師と一般人の「日常」のギャップを感じた

編集部編集部

病気の前後で変化したことを教えてください。

佐藤あやさん佐藤あやさん

答えがわかったことで、不安が無くなったのはとても大きいですね。それまでは「いつ起こるかわからない謎の腹痛」という爆弾を抱えながら生活していたので常に不安がありましたし、痛くなったらなったで何も手につきませんでしたから。また、明らかな異常もないのに「痛くて動けない」と病院に駆け込む私に、医師も嫌そうな顔をしているように見えました。今は「これからはもう起きないはず」という期待を持っています。

編集部編集部

今までを振り返ってみて、後悔していることなどありますか?

佐藤あやさん佐藤あやさん

人間ドックや婦人科検診も受けていたし、体調管理にも気をつけていたので後悔はありません。強いて言うなら誰かに「盲腸じゃない?」「調べてもらったら?」と言ってもらえたら、もう少し早く診断がついていたかもしれない、というのは少しだけありますね。

編集部編集部

現在の体調や生活はどうですか?

佐藤あやさん佐藤あやさん

術後1週間がたった現在、重いものを持たない、お酒・辛いものはNGなどの制限はありますが、普通に外出もできますし、いたって元気です。お腹を締め付ける服はまだ着られませんが、それももうすぐ着られるようになる感覚があります。

編集部編集部

医療機関や医療従事者に望むことはありますか?

佐藤あやさん佐藤あやさん

手術当日、まだ医療現場はコロナの影響で面会が制限されていたので、夫は「手術開始時刻の30分前に来てください」と言われていました。私は1人、病室で待機していたのですが、突然「前の手術が早く終わったので、今から行きましょう」と言われ、心の準備も出来ていないし、夫もまだ着いていないので「夫が今、向かっているんですけど……」とお伝えしたのですが、「あら、間に合わないね〜」の一言で、あっという間に手術室に搬送されてしまいました。医療従事者の方は1日にいくつも手術をされていて、お忙しいとは思います。しかも「盲腸の手術」なんて、世の中にあるたくさんの病気や手術から見たら些細なものということもわかっています。しかし、私たち家族にとってはそこまで些細なものではありません。もう少し、配慮があると嬉しかったと思います。

編集部編集部

なるほど。「日常」にギャップはあるでしょうね。

佐藤あやさん佐藤あやさん

あと現実的なところとしては、「入院時の持ち物リスト」があるとありがたかったですね。特にコロナ禍で、ご家族の面会もできなかったので、自分で動けない方は、「ウェットティッシュを買ってきて」とか、看護師さんに頼んでいました。ご本人もしくはご家族に、必要と思われる物品リストをお渡ししておけば、看護師さん自身の負担も減るのではないでしょうか。

編集部編集部

最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。

佐藤あやさん佐藤あやさん

私は、これまでもそうですが、例えば昨年10月の発作時も「ランチ食べ過ぎたから、胃もたれかな?」「食べてすぐ寝たからかな?」などと思ってしばらく我慢していました。しかし、やはり無理をしたり、我慢したりせずに、すぐに病院に行けば良かったと思っています。特に、お仕事のある方や子育てをしている方などは、体の不調があっても我慢してしまいがちだと思うのですが、何かおかしいと思ったら、早めに病院で調べてもらうことをお勧めします。

編集部編集部

ありがとうございます。

佐藤あやさん佐藤あやさん

もうひとついいですか。私たち夫婦はどちらも実家が遠方で、簡単に「お母さんちょっと子ども預かって」とは言えない環境で子育てをしているのですが、救急外来などは子どもが入れないところが多く、とても不便だと思いました。子育てをしているママさん(パパさん)には、子どもと自分しかいない状態で、もし救急車を呼ばなければならなくなった時、どういう対応をしたら良いか、普段からシミュレーションしておくと良いと思います。

編集部まとめ

盲腸というと「お腹が痛くなり、救急車で運ばれすぐに診断がつき、そのまま緊急手術」というイメージがあったのですが、かつてと違い選択肢もあるようです。「原因不明の腹痛」が、どれだけ辛かったかは、診断がついた時の「やっと正解がわかった」という言葉からも伝わってきました。医療従事者と患者側の「日常」の差は、多くの人が感じやすいギャップかもしれません。その溝が埋まっていくことを期待します。

この記事の監修医師