「不正咬合」の原因・放置するとどうなるか存知ですか?医師が監修!
誰一人として同じ顔の人間がいないように、歯並びも千差万別です。笑ったときや会話をするときなど、日常生活のなかで歯並びが気になるシーンは多いですよね。
最近では、マスク生活の影響で目立たずに矯正歯科治療を進められるようになったため、歯列矯正を開始した方も増えたといわれています。
今回は歯並びのなかで、歯並びや噛み合わせが良くない状態の総称を指す「不正咬合(ふせいこうごう)」について解説いたします。
不正咬合の原因や治療法についても解説しますので、この機会にご自身のお悩みに当てはまるかどうかご確認ください。
監修医師:
郷 正憲(徳島赤十字病院)
不正咬合のタイプとは?
歯並びが悪いことを言うのですね。不正咬合になってしまう原因とはなんでしょう?
一方、幼少期に指を吸ったり、唇を噛んだりという習癖が後天的な要因の一例です。ほかにも、接触嚥下や構音の機能障害や、乳歯の早期喪失も原因の一つとされています。
不正咬合には様々なタイプがあると聞いたのですがどのようなタイプがあるか知りたいです。
- 出っ歯(上顎前突)
- 受け口(反対咬合)
- 八重歯や乱ぐい歯(叢生)
- 開咬
- 手術が必要な顎変形症
以上が代表的な症例です。平成23年に厚生労働省によって12歳から20歳男女を対象に実施された「歯科疾患実態調査」によると、日本人の約44%が叢生(そうせい)に当てはまるという結果が報告されています。叢生とは、八重歯など歯が顎に入りきらず揃っていない状態です。
次に、出っ歯のように上顎が前方に出ている上顎前突が約13%、続いて歯と歯の間にすき間が空いている状態を指す空隙が約12%と続きます。日本人の多くが何らかの不正咬合に悩んでいるといえるでしょう。
やはりタイプによって不正咬合になってしまうきっかけは異なるのでしょうか?
- 骨格:上顎と下顎の大きさや位置
- 歯槽:上下の前歯の軸の傾き
- 機能:歯が咬み合わさっていない状態(安静位)から咬み合わさった状態への経路に異常がないか
この3点の組み合わせによって不正咬合が生じます。そのため、一つの症例をとっても原因は様々です。例えば受け口であっても、上下の前歯の傾き(歯槽)に問題がある場合と、上顎が小さく下顎が大きいため骨格に問題がある場合など人によって不正咬合になってしまうきっかけは千差万別です。
不正咬合のリスクと診断・検査方法
不正咬合を放置してしまうとどのような影響があるのでしょうか?
- 虫歯や歯周病リスクの増加
- 顎関節症の発症、顎の発育への悪影響
- 咀嚼機能の低下
- 構音(発音)への障害
- 見た目の劣等感による心理的影響
見た目だけへの影響だと簡単に捉えず、将来的に身体に及ぼす影響や精神的な負担も踏まえて治療を検討することをおすすめいたします。
歯並びの悪さは口内だけの問題ではないのですね…。どのタイミングでの受診がベストなのでしょう?
また矯正治療には時間がかかること、若い方が新陳代謝がよく、歯の移動スピードが早いということからもできるだけ早めの治療をおすすめします。
不正咬合の診断で行われる検査はどんなものなのか教えてください。
不正咬合の治療方法と注意点
不正咬合の治療方法を教えてください。
ワイヤー矯正は、歯にブラケットをつけて、ワイヤーの弾力性を利用して歯並びを改善する矯正方法です。1920年ごろにアメリカで開発された歴史ある方法で、近年では透明のブラケットを使用したり、歯の裏側に矯正装置をつけたりすることで目立たずに歯並びを治すことが可能になりました。
一方、マウスピース矯正は、1日約20時間以上透明のマウスピースを装着することで少しずつ歯を動かす矯正方法です。ワイヤー矯正と比較して目立ちにくいことと、マウスピースは自力で外せるため、これまで通り歯を磨いたり食事を楽しめたりすることがメリットです。不正咬合の治療にはどちらかの方法で治療を進めていくことになるでしょう。どちらの方法がご自身にあっているかどうかは矯正歯科にご相談ください。
成人している場合でも不正咬合は治りますか?
本人の意志で治療を行うため、装置の扱いや歯磨きなどのルールを守って治療が進められることや、すぐに本格的な治療を始められることは成人してから矯正を始めるメリットです。しかし、年を重ねるごとに口内のトラブルが増えてしまう傾向がありますので、歯茎や歯槽骨に問題が生じる前に治療をご検討ください。
不正咬合の治療期間は長いイメージがあるのですが…
保定に使う装置は歯を動かす際に使用した装置よりは負担が少なく、目立ちにくいものがほとんどですのでご安心ください。長い治療に思えるかもしれないですが、不正咬合による悪影響を踏まえると早めの治療をおすすめします。
不正咬合の治療中の注意点があれば教えてください。
- 歯が磨きづらいため、虫歯や歯周病に注意が必要
- 歯肉が退縮したり、骨の減少が生じたりする可能性がある
また、食事や生活にも注意が必要です
- ワイヤー矯正の場合、硬い食べ物や粘着性の食べ物は避けなければならない
- マウスピース矯正の場合、食事のタイミング以外マウスピースを装着しなければならない
- 矯正装置調整のため、ワイヤー矯正の場合は約1ヶ月に1度、マウスピース矯正の場合は約2ヶ月に1度通院しなければならない
- 結婚式など大切なイベントを控えた期間や、転居などに伴う転院が生じる可能性がある期間は極力避けたうえで治療を開始する
これらの内容は、矯正方法やライフイベントによって注意点が異なります。また、矯正治療は基本的には保険適用外の自費治療となります。治療費が足らず、矯正の途中で中断にならないよう、最終的にかかる治療費について事前に把握しておくと良いでしょう。カウンセリングの際に医師に相談しておくと安心です。
不正咬合を予防する方法はありますか?
- 指しゃぶり
- 口呼吸
- 食事の際に片方だけで噛む癖
- 乳歯の虫歯
幼少期の習慣が癖となり、将来的に不正咬合となる場合もありますので、日頃の癖を見直してみてください。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
編集部まとめ
残念ながら不正咬合は自然に改善される症状ではなく、年を重ねるごとに治療に伴うリスクも増加してしまいます。
しかし、治療することで将来的な口内トラブルの防止や、歯並び改善による見た目の自信向上にも繋がります。一生お付き合いする自分の歯だからこそ、少しでも早くお悩みを解決してはいかがでしょうか。