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「クローン病」になると現れる症状・発症しやすい人の特徴はご存知ですか?

 更新日:2023/03/27
「クローン病」になると現れる症状・発症しやすい人の特徴はご存知ですか?

クローン病は大腸や小腸などの消化器官に炎症ができて、腹痛や下痢などを引き起こす原因不明の難病です。

悪化すると発熱・貧血・血便・体重減少などの症状が現れ、小腸がんや大腸がんになるリスクが高まるともいわれています。

クローン病とはどのような病気なのか、その特徴・治療法・病気との向き合い方などについて説明します。

郷 正憲

監修医師
郷 正憲(徳島赤十字病院)

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徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。

クローン病とは?

腹痛を訴える女性

あまり耳にしないのですがクローン病とはどんな病気ですか?

消化器官の粘膜に慢性の炎症や潰瘍ができる原因不明の病気です。口の中から肛門まで、あらゆる消化管で炎症や潰瘍ができますが、最も見られるのが小腸と大腸です。その中でも、大腸に近い小腸側でよく発症します。
この病気が発見されたのは1932年で、米国のクローン医師が初めて報告したことから名づけられました。炎症などによって腹痛や下痢などを起こすことが多いのですが、症状が悪化すると粘膜に穴が開いたり、消化器官の管が狭くなったりすることもあります。

クローン病は難病指定だと聞いたのですが…

はい、そのとおりです。クローン病は厚生労働省によって難病の1つに指定されています。クローン病は治療法が確立しておらず、患者数も少なく希少な病気です。
難病指定はされているものの、適切な治療や生活習慣に気を付けることで健康な方と同じように日常生活を送れます。患者さんの中には、病気と付き合いながら長生きされている方も少なくありません。

発症すると、どのような症状がみられますか?

多く見られるのは、慢性的な腹痛・下痢・発熱・体重が減少するなどの全身症状です。炎症や潰瘍がひどくなると、腸などに穴が開く瘻孔(ろうこう)という症状や、腸の幅が狭まり詰まってしまう(狭窄)といった症状も現れます。
また小腸や大腸以外で発症すると、肛門からの出血・関節痛・結節性紅斑などの合併症が見られることもあるのです。

クローン病の発症には何か原因があるのでしょうか?

残念ながら、はっきりとした原因はわかっていません。これまで様々な要因が挙げられました。

  • 細菌やウイルスによる感染症
  • 遺伝的な要因
  • 食べ物の中の何らかの成分による反応
  • 消化器官の微小な血管での血流障害

これほどの要因が挙がったものの、どの要因もクローン病の明確な原因として立証されませんでした。
現在では、腸内のリンパ球など免疫を担う細胞が、食べ物や細菌などへの過剰な反応が原因として挙げられています。それに加えて遺伝的な要因も関係していると考えられているのです。

発症しやすい傾向にあるのはどんな人か教えてください。

10代〜20代と若年層の方に発症しやすい傾向にあります。男女で比較すると男性は20歳〜24歳、女性は15歳〜19歳、比率で見てみると、2:1と男性が多い傾向です。
年齢以外にも、以下のような食生活や生活習慣も大きく影響すると考えられています。

  • お肉や乳製品などの動物性脂肪
  • タンパク質の多い食事
  • ファストフードといった糖質や脂質過多の食事
  • 喫煙

しかし、これらはクローン病に限らず全ての病気に共通します。多くの病気の発症や症状悪化のリスクを高める可能性があるため、なるべく控えるほうが良いでしょう。

クローン病は親族からの遺伝の可能性はある病気ですか?

一般的には親族から遺伝する可能性はないと思ってよいです。しかし、遺伝はしないものの、全く影響がないとは言い切れません。
親族内にクローン病が発症した家族と発症していない家族と比較した際、クローン病を発症した家族のほうが発症しやすいといわれています。そのようなことになるのは、遺伝的な要因に食生活や生活習慣などが複雑に関係しているということが考えられるのです。

クローン病のリスクや診断

医療イメージ

クローン病と似た症状の病気はありますか?あれば見分け方も教えていただきたいのですが…

クローン病と似た病気の1つに「潰瘍性大腸炎」があります。クローン病と同様に難病指定になっている病気で、大腸にだけ症状が見られるのが特徴です。
クローン病も潰瘍性大腸炎も「炎症性腸疾患」になり、大腸や小腸が炎症を起こし、壁がただれたり潰瘍ができたりする病気になります。どちらも症状が非常によく似ているため、パッと見て病気を確定することは難しいです。症状によっては診断が出るまで時間を要することもあるでしょう。

病状が進行するとどんな影響があるのか教えてください。

病状が進行すれば、仕事や学校はもちろん、日常生活を普通に過ごすことは難しいでしょう。合併症を引き起こす可能性もあり、病変部位を手術し摘出することもあります。しかし、薬や食事でコントロールすることは十分可能なので、適切な治療を受けるためにも検査をし現状を知ることが大切です。
クローン病を罹患されている方の中には、妊娠・出産への影響を心配される方もいらっしゃるでしょう。妊娠・出産と病状は基本的に関係ありません。
ただ、頻繁に症状が出ているときは妊娠しづらい可能性や流産・早産のリスクが高まるとの報告もあります。薬が胎児や母乳に影響することもありますので、主治医によく相談しましょう。

クローン病はどのような検査をして診断するのでしょう?

クローン病と診断するには様々な検査を行い、炎症具合や腸管の損傷具合などを把握します。主な検査は下記のようなものです。

  • 血液検査
  • 便検査
  • 内視鏡検査(大腸や上部消化管)
  • 腹部超音波検査
  • MRIやCT

これらに加え、医療技術の発展により検査の難しかった小腸もできるようになりました。使用するのは、小腸用の内視鏡や飲み込んで腸の内部を撮影するカプセル型内視鏡です。
重症の場合、炎症などによって腸の通りが悪くなる腸閉塞や、膿がたまった袋状のものができる膿瘍といった症状が見られるのです。

クローン病の治療方法と向き合い方

たくさんの薬

クローン病は難病指定となっていますが治療方法はあるのでしょうか?

はい、治療法はあります。内科的治療と外科的治療で治療を行います。内科的治療は主に栄養療法や薬物治療になり、栄養療法は栄養素を口から飲んだり、鼻からチューブを通して腸に直接投与するのです。患者さんの状態によっては点滴で静脈から栄養素を投与することもあります。
症状が落ち着いている方は通常の食事をすることも可能ではあるものの、良好な状態を保つためにも腸を刺激しない食事が中心です。薬物治療ではステロイド・抗菌薬・免疫調整剤などを症状に応じて投与します。
外科手術は、腸に穴が開いていたり腫瘍ができていたりするケースや出血がひどい場合のみに行う治療です。炎症によって腸が詰まっている場合も手術が必要になることがあります。しかし最近は内視鏡を入れて、バルーンを膨らませることで腸の中を広げる方法も行われるようになってきました。
最近は良い薬も開発されるなど、治療法が確立されつつあります。

クローン病を悪化させないためにはどのようなことに気をつけたら良いか教えてください。

定期的な検査に加え、粘膜への刺激を極力控えつつ規則正しい健康的な生活を心がけることが大切です。刺激が発端となり炎症を引き起こし粘膜などを傷付け、病状が悪化してしまいます。たとえ症状が現れていなくても、静かに進行している可能性が考えられます。
クローン病は日常生活と密接している部分が多く、注意すべきことが多く対応が難しいですが、小さな積み重ねがご自身の体を守ることにつながります。良い状態を長く保つためにも、体を労りましょう。

クローン病にどのように向き合ったら良いのでしょうか?

クローン病は今のところ、完治させる治療法はありません。一度発症すれば一生付き合っていく病気です。
しかし、症状を抑える治療法はあるため、症状が悪化しないよう適切に治療をすることが重要になります。腹痛や下痢と日常生活に支障をきたしたり、腫瘍などの合併症を引き起こしたりする病気ではあるものの、健康な方と同じように日常生活を送れます。
病気のことをよく知り、悲観せずにうまく病気と付き合っていくことが大切です。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

一度発症すると一生付き合うことになる上、クローン病は難病に指定されていることから、発症すると大変な病気になったと感じる方もいるでしょう。しかし、難病に指定されているということは、国を挙げて治療法などの研究に取り組み、患者さんをサポートしていることにもつながります。
日々の生活で気を付けることはあるものの、健康な方と同じ生活を送ることは可能です。腹痛や下痢など長期的に症状が現れている場合、速やかに病院へ受診するようにしましょう。少しでも早い治療で症状をコントロールすることはできます。

編集部まとめ

考える女性
クローン病は命にかかわるような病気ではありませんが、根本的な治療法が見つかっていない難病です。

食事に気を付けなくてはならないなど気を付けることはあるものの、適切な治療を受け生活習慣に注意を払えば、恐ろしい病気ではありません。

医師のアドバイスや指導に従い、上手に病気と付き合っていくことが大切です。

この記事の監修医師