「月経前不快気分障害(PMDD)」の症状はご存知ですか?医師が監修!
女性には毎月やってくる月経ですが、月経前・月経中などいろいろ体や心の不調を感じる方も多いと思います。
また急に涙が出てしまったり、急な強い不安感に襲われ家から出られず、仕事を休まないといけなくなるほど社会生活に支障をきたし、苦しんでいる女性の方もいらっしゃるのではないでしょうか?
同じような症状で苦しんでいる方は少なくありません。そんな女性の方にPMDDについて詳しく紹介します。症状などの紹介の他にも、治療法や予防法についても紹介しておりますので、ぜひ参考にしてみてください。
監修医師:
郷 正憲(徳島赤十字病院)
月経前不快気分障害(PMDD)の症状とメカニズム
月経前不快気分障害(PMDD)はどんな症状がありますか?
心の症状では
- 集中力がなくなる
- 感情の起伏がとても激しくなる
- 理由もなくイライラする
- 何もやる気がなくなる
- ちょっとしたことで涙もろくなる、突然泣き出す
- 考えがまとまらない、混乱する
- 不安感、自己否定感、孤独感が強くなる
- 「死んでしまいたい」と感じることがある
- 学校、仕事、家庭などの対人関係でトラブルが起きてしまう
- 不眠や過眠などの睡眠障害
- 過食や拒食など食生活が不安定になる
など
からだの症状では
- めまい、たちくらみ、頭痛
- 目が霞んで見えにくい
- 下痢や便秘になる
- 胸の張りと痛み
- 腰痛が起こる、ひどくなる
- 吐き気、嘔吐
- お腹の張り、痛み
- からだがとても重く感じる
- むくみ
などです。
PMSとの違いを教えてください。
それに対して月経前不快気分障害(PMDD)は、上記のような症状が起こり、学校や仕事、家庭などの社会生活に大きな影響を及ぼします。例えば、不安感が強くなり仕事や学校へ行けない・家から出られないなどの影響があります。
月経前不快気分障害(PMDD)のメカニズムが知りたいです。
月経前不快気分障害(PMDD)が起きやすい人はいますか?
- PMSやPMDDの症状がある人が家族にいる:遺伝も原因の1つと言われており、30〜80%は遺伝性だと推計されており、症状の中でよく発症する症状の50%が遺伝によるものだと言われています。ですので、家族に症状がある方は起こる可能性が高いです。
- 自分や家族がうつ病などの気分障害になったことがある:PMDDはうつ障害群の1つに分類されていますので、気分障害と診断されたことのある方も起きやすいといえます。PMDDからうつ病・パニック障害などへ変化することもあり、注意が必要です。
月経前不快気分障害(PMDD)の診断方法と治療方法
診療科は何科がいいですか?
ですが、いきなり精神科や心療内科の受診がハードルが高いと感じる方、精神症状が強いか判断できない方は、まず婦人科を受診してみるといいでしょう。婦人科でも月経前不快気分障害(PMDD)の診断はできますし、その後精神科や心療内科へ希望があれば紹介していただくことも可能となります。
また、最初から精神科や心療内科を受診する場合には、伝えておくといいことがあります。「生理周期と症状が連動していること」「PMDDではないかと疑っていること」の2つを伝えるようにしましょう。
月経前不快気分障害(PMDD)の診断方法を教えてください。
どうしても過ぎたことの記憶は曖昧になりますし、いつからいつまでと変化を事細かに記憶することは難しいと思いますので、毎日忘れず日記をつけるようにしましょう。
月経前不快気分障害(PMDD)にはどんな治療法がありますか?
- 薬物療法:抗うつ剤、抗不安薬、抗精神病薬を症状に合わせて組み合わせて処方されます。中でもSSRIという抗うつ剤がうつ病と比べてPMDDには効果が早く出るといわれ、SSRIの服用で治療を進めることが多いようです。抗うつ剤は毎日服用するものですが、PPMDに限り、生理周期に合わせて排卵後から月経終了まで期間のみの間欠療法が適用されることもあります。いきなりSSRIの服用に抵抗がある方や、症状がまだ軽い方はピルの服用で治療を進めることも可能です。前述した通り、ピルには身体的症状には効果がありますが、精神症状については効果があまり期待できない可能性があります。
- 精神療法:カウンセリングや認知行動治療法薬物療法と並行しておこない、カウンセリングを通して不安を取り除いていきます。
- 漢方:症状が軽い方のなかには漢方を使うことで症状が改善されることもありますが、漢方については、個人差が大きいようです。また、漢方によって得られる効果が出るまでの時間がかかったり、体質に合わせないと逆効果になったりということもあるので、漢方だけでPMDDを改善するのは少し難しいかもしれません。
薬を使わないで治療したいのですが…。
もう1つ、薬を使わない治療法に「TMS治療」という磁気刺激による治療法があります。PMDDに関する前頭葉を磁気刺激によってケアする治療法で、副作用も少なく、効果が高いといわれています。
TMS治療がおすすめな方
- 抗うつ剤やピルの服用に抵抗がある方
- 抗うつ剤やピルの副作用が怖い
- ピルを飲んでも、精神症状が改善されない
- 妊活中でこどもに影響がある治療は避けたい
など、治療は進行状況や症状によって変わりますので、まずは診察を受け医師の指示に従いましょう。
月経前不快気分障害(PMDD)の予防法・注意すべきポイント
予防するにはどうしたらいいですか?
- 規則正しい生活を心がける:生活習慣が乱れるとホルモンバランスも崩れやすくなります。学校や仕事などで生活リズムを整えるのは難しい場合もあると思いますので、ご自身の無理のない範囲で、なるべく生活リズムを整えるようにしましょう。特に睡眠と食事のタイミングは一定になるように心がけましょう。
- 適度な運動を心がける:適度な運動は重要です。自律神経の乱れはいろいろな不調を招きます。運動することで交感神経が優位になり、運動後はゆっくりと副交感神経が優位になり、自律神経を整えることが可能です。特にPMDDには、長くゆっくりとした有酸素運動が効果的だといわれています。有酸素運動にはエアロビ、ウォーキング、エアロバイク、ゆっくり行う水泳などがあります。
- バランスのとれた食生活:栄養バランスが乱れはホルモンバランスの乱れに繋がり、イライラしたりストレスが増えたりと精神状態の悪化も考えられます。また生理前は異常に血糖値が上下してしまうので、血糖値の上昇が緩やかになる食事を心がけるようにしましょう。そしてPMDDの改善に「大豆イソフラボン」と「カルシウム」の摂取が効果的という説があります。苦手ではない方は豆乳などを取り入れてみてはいかがでしょうか?効果があるといってもそればかり摂るのは、食事バランスの乱れに繋がりますので、あくまでもバランスには注意してください。
月経前不快気分障害(PMDD)は放置しても問題ありませんか?
最後に、読者へメッセージをお願いします。
それは病気なんだと理解していただくことで気持ちも少し楽になるのではないでしょうか?そして、治療することで根本的な解決ができ、生きづらさからぜひ解放されてほしいと思います。
編集部まとめ
生理前不快気分障害(PMDD)は女性にとって、毎月社会生活に支障をきたすほどの精神症状によって生きづらいと感じる要因の1つになります。
生理前になれば多少の不調が出てしまうのは女性としてよくあることですが、社会生活までに支障をきたすようになるほどであれば治療が必要な病気です。
放置していてもいいことは何1つありません。今回当てはまるような症状があったなら、早めの受診をおすすめします。
参考文献