「円形脱毛症」の原因や治療法はご存知ですか？医師が監修！

まだはっきりした原因は解明されていませんが、分かってきたことも色々あります。今のところ、特に有力になっている説が自己免疫疾患の可能性です。何らかの理由で免疫機能が正常に働かなくなってしまい、毛根組織に不要な攻撃を繰り返した結果、髪が抜け落ちてしまっている可能性があります。
ただ、本来自分を守ってくれるはずの免疫システムが暴走する理由は明らかになっていません。ストレスや遺伝要素など色々なことがきっかけになる恐れがありますが、1つ1つの因果関係はいまだに解き明かされていない状況です。
一般的には「円形脱毛症＝ストレス」というイメージがあるかも知れませんが、子供の発症例も一定数で報告されています。単純にストレスが原因とは決めつけることはできないようです。
重症化している乳幼児のケースもあります。現段階で「引き金になるのでは？」と考えられている要因をピックアップしました。

• 心身のストレス
• 肉体的疲労
• 感染症
• 内分泌疾患や膠原病など他の病気
• 元々の体質（遺伝要素やアトピー素因など）
• 出産前後の女性ホルモンの減少

円形状に髪が抜け落ちる症状が典型的です。ただ、部分的に抜けることもあれば複数箇所が抜け落ちることもあり、脱毛が全身に及ぶこともあります。
頭の毛は抜けていないのに、髭・睫毛・眉毛など体毛だけが抜けるパターンもありますし、毛が生えているところならどの部分でも患部になる病気です。基本的に脱毛以外の自覚症状は出にくいものの、患者さんによっては痒みなどの違和感を感じることもあります。

髪全体が薄くなる一般的な薄毛の症状とは異なり、円形脱毛症は円形に髪が抜け落ちるのが特徴的です。また、加齢などの理由で抜け毛が増える場合は徐々に進行しますが、円形脱毛症は急に脱毛部位が出現する傾向があります。
抜けるスピードも1つの目安になるかも知れません。AGA（男性型脱毛症）も抜け方に特徴があり専用の検査を受ければすぐに診断できるので、円形脱毛症とは区別できます。

たった1つだけ円形の脱毛症状が出る単発型以外にも、抜け方のパターンによっていくつかの種類があります。多発型の円形脱毛症だと、頭部に2ヶ所以上の円形脱毛部位が点在するのが特徴です。
複数箇所で脱毛が起きる場合でも、生え際を中心に帯状に脱毛部位が広がるケースだと蛇行型と診断されます。重症化すると、毛髪がほとんど抜け落ちてしまう全頭型や体毛も抜けてしまう汎発型に移行するケースが多いようです。

形脱毛症は性別や年齢を問わずに発症する病気ですが、発症率は2倍近い差で女性の方が多いことが分かっています。
また、発症しやすい年齢についても男性と女性の違いがあるようです。男性は年代による明らかなばらつきは見られなかったものの、女性は20代前半と50代前半のときに発症率が上がることも判明しています。

円形脱毛症を診断するときはまず脱毛症状を観察し、経過について質問します。円形の大きな脱毛部位が突然できた場合などは円形脱毛症の疑いが濃厚です。
爪に変化が出ることもあるので爪の様子も確認します。他にも家族歴・再発かどうか・アトピー性皮膚炎の有無・合併症など色々な角度から患者さんにお話を聞いて最終的な診断を決定する流れになるでしょう。
また、円形脱毛症の診断上、ダーモスコピーが用いられることが多く保険適用となっています。

症状や重症度によって適切な治療法は異なります。通常用いられるのはステロイド外用薬や光線療法ですが、成人には効果があっても子供には副作用が強すぎる薬もあるので、患者さんの年齢も治療法を決める重要な要素の1つです。
健康保険が適用されるステロイド局所注射は単発型や多発型の改善に高い効果が期待できると考えられています。ただし副作用の面から低年齢の患者さんへの実施は推奨されていません。
また、注射針を刺すときの痛みが強いこと、注射部位が陥没する恐れがあることがデメリットです。人工的にかぶれを起こし発毛を促進させる局所免疫療法は、脱毛の範囲が広いケースに向いています。自由診療になるので公的な医療保険制度は使えませんが、子供でも受けることが可能です。
注意点として半年から1年と治療期間が長く、アトピー性皮膚炎などの湿疹が一時的に悪化する恐れがあることも覚えていて下さい。
リンパ節の腫脹など副作用を伴う治療法なので、デメリット面をよく把握した上で治療するかどうか決めなくてはいけません。他にも飲み薬・外用薬・冷却治療・紫外線療法など色々なアプローチ方法があります。患者さんの希望や予算など全体のバランスを調整しながら最善の治療法は何か、決めていくことになるでしょう。
また円形脱毛症の重症例にたいして、JAK阻害薬であるオルミエントが保険適用となっています。

円形脱毛症はまだ原因がはっきり分かっていない病気で、治るペースも本当に個人差があります。
小さいものが1つ2つできたあと自然治癒することもあるようですが、何度も再発を繰り返している患者さん、重症化してしまう患者さんもいらっしゃいます。

何度も症状が出ているようなら、受診した方が良いでしょう。特に再発する度に脱毛部分が増えている場合や脱毛部分が広がっている場合は医療機関で専門家に診て貰った方が安心です。
突然髪全体が脱毛してしまうケースでも、初期にきちんと治療を受けることで治りやすくなる可能性があります。

円形脱毛症の原因がはっきり分かっていない以上、「これをすれば予防できる」という確実な予防方法はありません。ただ、円形脱毛症に限らずすべての脱毛症に当てはまることですが、毎日頭皮環境を整える対策に励むことは本当に大切です。
頭皮は皮脂の分泌が激しく、しっかり洗わないとすぐに不衛生になってしまうので洗髪も欠かせません。毛穴に汚れが詰まると髪も抜けやすくなります。お湯で十分に予備洗いをして、よく泡立てたシャンプーで髪の毛を洗いましょう。洗浄成分が残っていると頭皮の負担になるため、すすぎも丁寧に行って下さい。
また暴飲暴食を避け規則正しい生活を送ることや睡眠時間をたっぷり確保することも、頭皮環境を整え抜け毛を予防するために必要です。膠原病など他の病気の影響で脱毛することもあるので、定期的に健康診断を受けることも予防につながる可能性があります。

必ず遺伝するとは限りませんが、患者さんの家族歴からご両親や兄弟姉妹の発症例が見つかることが多く、遺伝的要素も発症原因の1つと考えられています。また、国内で行われた調査によって、男性より女性の方が遺伝要素の影響を受けやすいことが判明しました。

少しでも早く治すためには、医療機関を受診するのが一番です。育毛剤など自己流の対処法を続けても、自己免疫疾患が原因で重症化している場合など専用の治療を受けない限り自然治癒は難しいでしょう。
漢方薬や鍼治療も、現段階では科学的根拠がないアプローチ方法なので注意が必要です。病院では科学的根拠のある治療法を選択してくれるので、まずは 皮膚科の先生に相談してみて下さい。感染症や膠原病など他の病気の有無を調べることができるのは病院だけです。アトピー性皮膚炎など持病にも考慮しながら適切な治療法を探してくれるため、早く治したい方は病院を頼りましょう。

円形脱毛症は原因不明の難しい病気ですが、症例数はとても多く昔から身近な病気の1つです。免疫機能の暴走など、医学が進みメカニズムが分かってきた部分も増えました。専用の治療法も開発されていますし、紫外線療法など健康保険が適用される治療法も増えています。
円形脱毛症は痛みがなく、帽子などで隠そうと思えば隠せる症状です。そのため自分一人で密かに悩んでしまう方も少なくありません。けれど病院に相談すれば医師と二人三脚で治療を進めることが可能です。なるべく早い段階で受診しましょう。脱毛症は皮膚科の受診になりますが、通える範囲にあるなら脱毛外来がおすすめです。