「パーキンソン症候群」を疑う症状はご存知ですか?医師が監修!
パーキンソン病は手足が動かなくなったり、急に震えが止まらなくなったりする病気です。しかし、同じような症状が出たからといって「パーキンソン病」と勝手に判断してはいけません。
実は、パーキンソン病と似たような症状が発症する「パーキンソン症候群」という病気があります。
パーキンソン病もパーキンソン症候群も、似たような病名なので「同じ病気」と考えてしまうかもしれません。
しかし、パーキンソン病とパーキンソン症候群は全く違う病気であり、治療法や予防方法もそれぞれ違います。
今回はパーキンソン症候群の症状・原因・治療法・予防について解説します。パーキンソン病との違いも紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
監修医師:
武井 智昭(高座渋谷つばさクリニック)
平成14年慶應義塾大学医学部を卒業。同年4月より慶應義塾大学病院 にて小児科研修。平成16年に立川共済病院、平成17年平塚共済病院(小児科医長)で勤務のかたわら、平成22年北里大学北里研究所病原微生物分子疫学教室にて研究員を兼任。新生児医療・救急医療・障害者医療などの研鑽を積む。平成24年から横浜市内のクリニックの副院長として日々臨床にあたり、内科領域の診療・訪問診療を行う。平成29年2月より横浜市社会事業協会が開設する「なごみクリニック」の院長に就任。令和2年4月より「高座渋谷つばさクリニック」の院長に就任。
日本小児科学会専門医・指導医、日本小児感染症学会認定 インフェクションコントロールドクター(ICD)、臨床研修指導医(日本小児科学会)、抗菌化学療法認定医
医師+(いしぷらす)所属
目次 -INDEX-
パーキンソン症候群の特徴
パーキンソン症候群はどのような病気なのか教えてください。
- パーキンソン症候群は「ドパミン」という細胞が欠乏した病気の総称です。ドパミンは脳内の神経の伝達物質で、ドパミン神経細胞が生成しています。
- ドパミン欠乏によって発症する病気で有名なのが「パーキンソン病」です。
- しかし、パーキンソン病ではないものの、ドパミン欠乏が原因で起こる病気をまとめて「パーキンソン症候群」と呼んでいます。
代表的な症状が知りたいです。
- パーキンソン症候群の代表的な症状は「ふるえ」「動きの鈍化」「表情のこわばり」などです。パーキンソン症候群の症状はパーキンソン病と大きな違いはありません。
- そもそもパーキンソン病もパーキンソン症候群の1つのため、パーキンソン病と同じような症状が出るのです。
- パーキンソン症候群は、症状が出て検査をしないとパーキンソン症候群なのかパーキンソン病なのかの判断ができません。
- 手足のふるえや動きの鈍化を感じたら、迷わずに神経内科を受診して検査しましょう。
パーキンソン症候群の原因は分かっていますか?
- パーキンソン症候群が発症する原因は大きく分けると「脳に関する原因」と「脳以外の原因」の2つがあります。
- 脳に関する原因で多いのは「脳血管障害」です。運動神経を補佐する部分の機能不全がきっかけで、パーキンソン症候群になることも珍しくありません。
- 脳以外の原因は、薬による副作用(薬剤性パーキンソニズム)などがあります。メトクロプラミドやスルピリドといった成分が入った薬を処方すると、発症する恐れがあります。
- 胃腸薬や抗うつ薬や向精神薬などに入っている場合があるので注意してください。
パーキンソン症候群とパーキンソン病の違いを教えてください。
- パーキンソン病はパーキンソン症候群の1つです。パーキンソン症候群はパーキンソン病以外にも次の疾患が該当します。
- 多系統萎縮症
- 進行性核上性麻痺
- 大脳皮質基底核変性症
- 正常圧水頭症
- 薬剤性パーキンソン症候群
- 脳血管性パーキンソン症候群
- 上の疾患はどれも似た症状が出ますが、パーキンソン病ではありません。
- つまり「パーキンソン症候群の症状はパーキンソン病と類似しておりますが、左右差がないこと、転倒が早期にあること、が生じる場合がある、前方ではなく後方に転倒するなど、疾患によって異なる」と位置づけされています。
パーキンソン症候群の受診と治療方法
パーキンソン症候群を疑った時の受診の目安を教えてください。
- 次のような症状が出たら、一度受診をおすすめします。
- PCの操作がしにくくなった
- 足を引きずるような歩き方になった
- 細かい手作業ができなくなった(小銭の出し入れ、ボタンがけなど)
- 話す声が小さいと言われるようになった
- 手足が震えるようになった
- 便秘がひどい
- 歩くスピードが遅くなった
- 字が小さくなった、汚くなった
- 匂いが分からなくなった
- 肩こりが急にひどくなった
- 上の項目に心当たりがあったら、パーキンソン症候群のいずれかの可能性があります。
- 特に心当たりがある項目が複数あれば、パーキンソン症候群の可能性も高くなるので、一度神経内科を受診してください。
どのような検査がありますか?
- パーキンソン症候群を調べるにあたって次の検査を行います。
- 画像診断(CT、MRIなど)
- 臨床検査(尿検査、血液検査など)
- 薬剤反応検査(L-ドパ製剤を服用し、効果を確認
- 心筋シンチグラフィー(MIBG)検査など
- 上の検査を行い、いずれかに異常が見つかったらパーキンソン症候群のいずれかと診断されます。
治療方法が知りたいです。
- 主な治療法は「薬の治療」と「リハビリ」です。パーキンソン症候群の原因の多くは、治療法が解明されていません。
- そのため、薬のよる症状の緩和と、筋力を落とさないようリハビリで体を動かすのが治療の中心になります。
- ただし、パーキンソン症候群に該当する原因全てが「薬の治療」と「リハビリ」中心の治療というわけではありません。例えば「正常圧水頭症」が原因の場合は、手術によって症状の改善が期待されます。
- また「薬剤性パーキンソニズム」が原因の時は、薬の服用を中止や変更によって、症状が緩和されるケースも少なくありません。
- パーキンソン症候群の原因によって治療法が変わるので、担当医の指示に従って治療を進めてください。
難病なのでしょうか?
- 原因によってはパーキンソン病以上の難病もあります。特に「多系統萎縮症」「進行性格上性麻痺」「大脳皮質基底核変性症」は、薬の効果も効きにくいため、パーキンソン病以上に難病といわれています。
- また、3つ以外の原因も、特効薬が開発されていないため、地道なリハビリと薬の服用は欠かせません。
- 以上を踏まえると、パーキンソン症候群は難病といえるでしょう。
パーキンソン症候群の注意点
進行の早さについて教えてください。
- パーキンソン症候群の進行は、原因や年齢など個人差があります。一般的に症状が出てから3~5年かけて進行するといわれています。
- パーキンソン症候群の進行は、今の医学では完全に止めることはできません。
- しかし、薬やリハビリによって進行を遅らせれるので、症状が出たら早めに受診しましょう。
パーキンソン症候群を予防する方法はありますか?
- パーキンソン症候群はドパミン欠乏による病気のため、脳内のドパミンが少なくならないような生活習慣を心がけましょう。
- ドパミンを減らさないためには、次の方法がおすすめです。
- 運動
- ストレス解消
- 人との交流を増やす
- 食事の改善(乳製品・肉・果物を食べる)
- コーヒーを飲む
- 中でも「コーヒーを飲む」はおすすめ。コーヒーに含まれているカフェインはドパミン減少を抑えるはたらきがあります。
- 1日1杯飲むだけでも効果があるので、飲む習慣をつけましょう。日々の生活習慣を見直すことが、パーキンソン症候群にならない効果的な予防法です。
家族はどのようにサポートすれば良いでしょうか?
- パーキンソン症候群について理解しましょう。症状の理解があれば、変な誤解をして患者さんを傷つけることもありません。
- また、パーキンソン症候群にかかったからといって、今までできたことが急にできなくなるわけではありません。本人ができることは本人に任せて、自信をつけさせてあげてください。
- パーキンソン症候群でよくないのは「患者さんが自信を無くしてしまうこと」です。
- 自信がなくなると、体を動かさなくなって、症状の進行が早くなってしまいます。
- 「病人だから」と特別扱いせず、できることは任せ、できない部分をサポートしてあげてください。
最後に、読者へメッセージをお願いします
- パーキンソン症候群は誰もが発症する可能性がありますが、認知が低い病気の1つです。
- 効果的な治療法も開発されていないため、一度発症すると長く付き合わないといけない病気です。しかし、発症しても日常生活をガラっと変える必要はありません。
- 薬やリハビリを通して進行を症状の進行を遅らせられます。
- 日々の生活習慣を見直すことで、パーキンソン症候群の予防にもつながりますので、これを機に、パーキンソン症候群の理解を深めてください。
編集部まとめ
パーキンソン症候群は誰もが発症する可能性がある病気です。パーキンソン症候群は高齢者がなりやすい病気ですが、若い人でも発症する可能性は十分にあります。
パーキンソン症候群の症状や受診の目安も言及しているので、気になるようでしたら、一度神経内科に行って検査してもらいましょう。
パーキンソン症候群は早期発見できれば、進行を遅らせることができ、日常生活への影響も抑えられます。
また、生活習慣を見直して、パーキンソン症候群になりにくい生活を送ってください。
参考文献