「出血性ショック」ってどんな症状?後遺症についても解説!
更新日:2023/03/27
出血性ショックとは、出血によって血液量が足りなくなり、本来血液が必要な器官が機能を維持できなくなる病気です。
最悪の場合、命にかかわるケースもある恐ろしい病気となります。しかし、聞き慣れない病名であり、その症状などわからない方は多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、出血性ショックの特徴をご紹介します。原因や症状・初期症状・応急処置も解説するため、参考にしてください。
監修医師:
春日 武史(医師)
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練馬光が丘病院 総合救急診療科 集中治療部門
目次 -INDEX-
出血性ショックの原因と症状
出血性ショックの特徴を教えてください。
- この病気は、出血によって大量の血液が失われてしまった結果、必要な臓器などで血液が足らず障害が起きるという病気です。
- 血液が著しく減少すると、血液の循環が悪くなります。通常は、全身の組織や臓器に血液が十分送られることで機能を果たせています。しかし、血液の循環が行われなくなると、重大な機能障害を引き起こすのです。
- 体内の血液のうち、20%以上がなくなるとショック症状が現れるといわれています。
原因を教えてください。
- この病気の原因は、大量の出血です。大量の出血が起こる原因としては、次のようなものが挙げられます。
- 外出血
- 内出血
- 外出血とは、交通事故や手術などによる体外への出血のことです。具体的には、四肢切断・開放骨折、血管疾患の手術などが挙げられます。これらの外出血によって血液が減少すると十分な血液が臓器に運ばれず機能不全を引き起こす可能性が高いです。
- また、内出血も同様の機能不全を起こす可能性があります。内出血の具体的な例としては、子宮破裂などの周産期の異常や肺挫傷などが挙げられます。
どのような症状が現れるのですか?
- 出血量が多い場合、体内に必要な血流量が低下し、血圧の低下を引き起こします。また、それを皮切りに段階的に次のような症状が現れる傾向です。
- 意識が朦朧とした状態
- 精神への異常
- 昏睡状態
- 低酸素血症
- 過呼吸
- 筋力低下
- 脱水状態
- 多臓器不全
- 出血量が多く、血圧が低下すると脳へ十分な血液が送られなくなるため、意識が朦朧とした状態となります。朦朧とした状態が続くと、自分では動けなくなってしまい、精神への異常も出始めます。例えば、不安な状態や攻撃的になったりとさまざまです。その状態が長く続くと、昏睡状態へと変化します。
- また、血液が足らず循環不全が起きているため、低酸素血症や過呼吸を起こすようになります。同時に筋組織は低酸素状態であるため、筋力の低下も発生するでしょう。大量に血液が減り続けると脱水症状・多臓器不全へと進行します。
初期症状はありますか?
- 出血性ショックの主な症状をご紹介しましたが、ここまでの症状が現れる前に初期症状が見られます。そのため、このサインを見逃さないことが重要です。おもな初期症状には次のようなものが挙げられます。
- 皮膚が冷たく、色が蒼白になる
- 脈が早く、弱くなる
- 呼吸が早く、弱くなる
- 初期症状段階では、脳や心臓へ血液が送られているため、皮膚がだんだんと冷たくなり色が蒼白状態になっていきます。脈は早く弱くなっていき、呼吸も早く弱くなるといった変化が見られるでしょう。そのまま続くと呼吸不全になる可能性が高いです。このような初期症状は、おおよそ体内血液の15%~30%の出血で現れ始めます。
- また、初期症状だからといっても、先述したような出血性ショックの重篤な症状が出始める可能性も低くないため注意が必要です。
命に関わることもあるのですね。
- 症状が続いていき、重篤な症状が現れ始めると多臓器不全・呼吸障害・脱水症状と命に関わる状態に陥る可能性も高いです。これらを防ぐためには、早急な治療が必要です。
- 特に多臓器不全は死に直結する状態となります。体にとって重要な臓器が、複数機能低下・機能停止となっているためです。
出血性ショックの応急処置と治療方法
出血性ショックの応急処置について教えてください。
- この病気は、出血によって引き起こされるものなので応急処置にて、少しでも症状の進行を遅らせることが可能です。
- 応急処置の方法としては、外出血の場合は目に見える範囲だけでもいいので傷を止血をしましょう。止血方法としては、圧迫止血法が一般的です。また、ショック時の体位も注意が必要で、仰向けに寝かせて座布団などを足の下に敷き、両足の位置を15㎝~30㎝の高い位置に上げます。体は毛布や衣服をかけて保温しましょう。しかし、骨折や頭に怪我がある場合などは、いきなり体位を変えると全身状態の悪化を招きます。その場合は、まずは仰向けに寝かせることだけでも良いので実施しましょう。
- 内出血の場合は、はっきりとした外部への出血が見られないケースがあるため、非常にわかりにくいです。けが人の様子を見て全身状態を確認しながら、状態にあった治療を進めなければなりません。
検査にはどのようなものがありますか?
- 出血性ショックが進行している際には、意識・呼吸状態・血圧の評価が必要となります。そのため、次のような検査が必要です。
- 血圧測定
- 血液検査
- 画像検査
- 血圧測定では、血圧の低下具合を測ります。血液検査では、出血量がどの程度か、全身の臓器の状態を確認する内容です。輸血のための血液型の断定も行われます。画像検査はCT撮影や超音波検査を用いて出血部位の確認を行います。
- また、他の検査も適宜患者さんの状態に合わせて実施し、症状の度合いを確認する流れです。例えば、心電図・肝機能・血液ガスなどの確認が挙げられます。
出血性ショックの治療方法が知りたいです。
- 治療方法としては、おおまかに次のようなものを行います。
- 止血治療
- 血液を補う治療
- その他状態に合わせた治療
- 出血が起こっているため、そのままではいくら血液を足したところで症状は回復しません。そのため、出血源の治療を行います。内容としては、手術や内視鏡を使った止血治療です。また、点滴にて輸血や失った水分を補充する治療も行います。
- その他、患者さんの状態に合わせた適切な治療を進めていく必要があります。この病気は、あらゆる症状が早く進行する可能性が高いです。そのため、状態を随時確認し、呼吸のサポートなど必要な治療を速やかに実施していきます。
出血性ショックの後遺症
後遺症は残りますか?
- 出血性ショックの後遺症として、脳や臓器への障害が残る可能性は少なくありません。大量の出血によって、脳や臓器に十分な血液が循環されなかったため、出血が止まった後もダメージが残ったままになるケースがあるのです。また、出血原因となった外傷の位置などによっては、それが原因で後遺症が残るケースもあります。さまざまな後遺症が考えられるため、非常に恐ろしい病気です。
家族や周りの人にできることはありますか?
- 出血が確認され、すぐさま治療が必要なシーンであれば、家族の方はできるだけ早く患者さんの元まで駆けつける必要があるでしょう。これは、患者さんの状態に合わせた治療や手術を行うために、了解を得なければならないケースがあるためです。場合によっては直ちに手術や輸血が必要なケースがあります。その際に、一刻も早く対応が必要です。
- また、治療後の後遺症については、すぐに発覚するものばかりではありません。出血は止まっていながらも、この病気のために機能が低下した臓器や脳に障害が残っている可能性があります。そのため、機能低下や障害にいち早く気づけるように、まずは気にかけてサポートが必要です。より詳しく障害などの内容がわかれば、それにそった生活の送り方や治療の進め方が医療機関から教えてもらえます。家族や周りの方は、適切なサポートができるようにしましょう。
最後に、読者にメッセージがあればお願いします。
- 出血性ショックは、大量に血液が失われるだけでなく、脳や臓器機能などの低下を招く恐ろしい病気です。
- 出血量が増えれば、命にかかわる可能性もあります。そのため、万が一周りに症状が見られる方がいれば、適切な応急処置ができるようになっておきましょう。内出血の場合は、体外への出血が見られず対応に困ることもあります。その際は、表情や意識状態などから、症状を把握することが重要です。
- 応急処置でできることは限られますが、救急で運ばれる際に状態を細かく伝えることは、人命を救う大きなポイントです。正しい情報を把握しておき、いざという時に備えておきましょう。
編集部まとめ
出血性ショックは大量の出血から、多臓器不全などを起こす可能性がある恐ろしい病気です。また、出血量によっては、後遺症を残す可能性も十分あります。
そのため、早急な応急処置・治療が非常に重要です。万が一の時のためには、症状の把握や応急処置の把握を行っておきましょう。
また、身近な方がこの病気にかかった際には、少なからずサポートが必要な状態であるかもしれません。現在の症状・状態を把握し、適切なサポートができるようになりましょう。
参考文献