「幻聴」とは?原因・症状・対処法についても解説!【医師監修】
更新日:2023/07/13
周りに人がいないのに話し声が聞こえたり、他の人には聞こえない音が聞こえたりという症状に苦しんでいる方はとても多いです。
これらの症状は「幻聴」といわれています。風邪やケガと違い、見た目では分からないためまわりからの理解も得にくいです。
今回はそんな幻聴に注目してみていきます。なぜ幻聴が起こるのかその原因とともに、治療法・対処法を紹介します。
監修医師:
五藤 良将(医師)
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防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。現在は「竹内内科小児科医院」の院長。日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医。
目次 -INDEX-
幻聴の特徴
幻聴とはどのような病気でしょうか?
- 冒頭でもお伝えしたように、周りに人がいないのに話し声やおかしな音が聞こえるのが「幻聴」です。幻覚の一種になります。
- 原因などについては後ほど詳しくご紹介しますが、精神的に何らかのトラブルが起きて発症することが多いです。
症状について教えてください。
- 眠くなってくると声や物音が聞こえてくるという方や、悩み事・心配事があるときに誰かに何か言われたように感じるという方がいます。しかしこれらは幻聴ではありません。
- 誰かに何か言われたように感じるという方がいます。しかしこれらは幻聴ではありません。眠いときに声や物音が聞こえてくるのは、たんに寝ぼけているだけの可能性が高いでしょう。
- 悩み事・心配事を抱えているときに何か言われているというのは、そう感じているだけです。そのため、幻聴とは少し異なります。
- 人の話し声や物音がしない状況で、話し声や音がするのが幻聴です。
幻聴はどのように聞こえてきますか?
- 幻聴には次のような種類があり、それぞれに聞こえてくる声・音が異なります。
- 要素性幻聴
- 複雑性幻聴
- 言語性幻聴
- 要素性幻聴の特徴は声ではなく、音が聞こえることです。まるでベルが鳴っているような音が聞こえてきます。
- 複雑性幻聴はその名の通り、複雑な音が聞こえるのが特徴です。音楽を奏でているように、いくつもの音が複雑に絡まった音が聞こえてきます。
- 特徴です。音楽を奏でているように、いくつもの音が複雑に絡まった音が聞こえてきます。話し声・言葉が聞こえてくるのは、言語性幻聴でしょう。言語性幻聴はさらに次の3つに分けることができます。
- 対話性幻聴
- 注釈性幻聴
- 命令性幻
- 自分にとって不愉快な内容を2人の人物が話しているように聞こえたら、それは対話性幻聴です。自分の行動を実況しているような声が聞こえるのは、注釈性幻聴です。
- 自分の行動を監視されているように感じるようになってしまうこともあります。
- 命令性幻聴になると命令されているように感じ、その命令のまま自分の体を傷つける行為に走ることもあります。
原因は何ですか?
幻聴の原因となる病気を教えてください。
- 先ほどもお伝えしたように、統合失調症・PTSDが原因です。統合失調症は心の病気の代表とされています。
- 10~30代の若い世代に発症することが多いです。さまざまな精神疾患を発症し、被害妄想などの症状が出ることもあります。
- PTSDは過去のトラウマが原因で発症します。犯罪・暴力・災害・事故などのトラブルで心に傷を負うことで、心身に影響が出ることが多いです。
- 幻聴の内容としては、心に傷を負うきっかけとなった出来事・経験が蘇るような声・音が聞こえてきます。高齢者の場合、認知症によって幻聴になることもあるでしょう。
- 幻聴・幻視はよくある症例の1つです。「誰かが悪口を言っている」「子供が遊ぶ声が聞こえる」などと言うようであれば、認知症になっている可能性が高いです。
幻聴の診断基準・治療
幻聴が疑われる場合、何科を受診すれば良いですか?
- 精神科・心療内科を受診してください。地域によって名称は異なりますが、「こころの健康センター」などの精神系に特化した福祉関係の施設もあります。
- 病院へ行くのに抵抗がある・どこの病院がいいのか分からないなどの場合は、精神系に特化した福祉の専門機関に相談してみるのもおすすめです。
受診するタイミングを教えてください。
- 日常生活に影響が出ている場合は受診した方がいいでしょう。次のような症状に1つでも心当たりがあるのなら、精神科・心療内科で相談することをおすすめします。
- 朝起きるのが辛い
- 被害妄想が繰り返される
- 気力が湧かない
- 人を信じることができない
- 自分に自信がない
- 集中できない
- 食欲不振
- 生きているのが辛い
- これらの症状に当てはまる場合、統合失調症などの心の病気が考えられます。
診断基準について教えてください。
- 病院では主に次の3つの診察を行います。
- 患者さんの話を聞く
- 家族など周囲の話を聞く
- 身体検査
- 患者さんからはどんな症状があり、いつ頃から起きているのかを聞きます。また、ストレスの有無についても伺います。
- その上で家族などの周囲からの話も聞き、周りからはどのように見えているのかを聞いてから診断することが多いです。体の異常が原因の場合もあるので、血流検査・脳波検査などを行うこともあるでしょう。
- ご自身で幻聴かどうかを診断する方法もお伝えします。一番簡単なのは、自分以外の方に聞いてみることです。周りに誰もいない場合は録音してみてください。
- 録音された内容と自分が聞いた声・音が違った場合、幻聴かもしれません。
幻聴はどのような治療を行いますか
- 治療法は主に次の2つです。
- 薬を使った治療
- 精神療法・リハビリテーション
- 幻聴の主な原因とされる統合失調症の治療は、これら2つの治療を組み合わせて行います。
- 薬を使った治療では抗精神病薬を中心に、症状に併せて睡眠薬・抗うつ薬・抗不安薬・気分安定薬などが使われます。薬の服用期間は個人差があり、症状を診ながら薬の量の調整をするのが一般的です。
- 「薬の副作用が辛い」「落ち着いてきたから大丈夫」と勝手に薬の服用を止める方もいます。しかし自己判断で薬を服用するのを止めたり、量を減らしたりすると再発して重症化する恐れがあります。
- 副作用などで悩んでいる場合は、担当医師に相談しましょう。精神療法・リハビリテーションは社会生活機能のレベル低下を防ぐための訓練の1つです。
- 社会生活や対人関係を回復するための訓練などを行います。再び仕事に就けるように就労支援などのサポートもあります。
幻聴がある場合の対処法
幻聴がある場合の対処法を教えてください。
- 対処法として主に次の5つの方法があります。
- 耳栓をする
- イヤホンをはめて自分の好きな音楽を聴いたり映画を見たりする
- 家族・友人と会話をする
- テレビ・ラジオをつける
- 少し体を動かしてみる
- 聞こえてくる声・音が、実際には聞こえていないということを認識することが大事です。そうすることで、不安を和らげることができます。
- 聞こえてくる声・音に反応してしまう方もいますが、それはやめましょう。ムキになればなるほど、多発したり聞こえてくる内容が激しくなったりすることがあるためです。
- 休息を取るのもおすすめです。湯船にゆっくりと浸かったり、軽い運動をしたりするのは体の疲れを取るのにいいでしょう。
- 心の疲れを取るためには敢えて何も考えない時間を作ったり、趣味に打ち込んだりするのがおすすめです。
周りの人はどのようにサポートすれば良いですか?
- 統合失調症などの心の病気が原因となっていることが多いので、心の病気を発症した方への対応方法を紹介します。
- 患者さんが孤独にならないように、「自分たちはあなたの味方である」ということを伝えることが大事です。
- 周りの理解・接し方が治療に影響を与えるので、患者さん本人だけでなく周りの方々もどんな症状なのかを理解するようにしましょう。
- 気持ちに寄り添ってあげることで、患者さんは悩み・不安を減らすことができます。
最後に、読者へメッセージがあればお願いします。
- この記事の主たるテーマである統合失調症は以前は精神分裂病と言われていた疾患です。(2022年8月の日本精神神経学会において、「精神分裂病」という病名は正式に「統合失調症」に変更されました。 何故変更されたかと云うと、病気になった人々とその家族が、「精神分裂」という言葉のもつイメージに象徴されるような病気そのものに対する誤解や偏見から自由になりたいという強い願いからであると思います。)
- 統合失調症、双極性障害、大うつ病性障害、自閉症、ADHD、強迫性障害の6疾患について、大脳皮質の薄さのパターンと遺伝子発現パターンが類似していることが、いくつかの論文で報告されております。
- カテゴリカル分類では、異種の疾患とされている6疾患について、共通の生物学的特徴が存在することが示され、完全に異種の疾患であるとは言いがたいということです。
- この論文の結論の結語は「精神障害のこの共通の特徴は、精神科領域での “transdiagnostic approach”の重要性を裏付けるものである」となっています。単一精神病論です。
- 統合失調症はとても怖い病気と思われるかも知れませんが、うつ病も強迫性障害なども勿論、大変で辛い病気です。この病気なら大丈夫というのは原則ありません。どの病気も辛いものです。
- ただ、統合失調症もほかの精神疾患も、単一精神病論という考えでは、全く違う病気でもないとも言えるので、特別扱いして欲しくないというのが正直なところです。
- 家族など周囲の方々と一緒に相談して克服していきましょう。また『ビューティフル・マインド』(A Beautiful Mind)という有名な映画の通り、統合失調症で苦しんでいたジョン・ナッシュ氏もノーベル経済学賞を受賞した人もいます。
編集部まとめ
幻聴のように目に見えない症状は他人に理解してもらうのが難しく、SOSを出すのが難しいです。しかし1人で解決するのもなかなか大変です。
まずは自分が信頼できると思う方へ相談してみるといいでしょう。そして精神科・心療内科を受診するようにしてください。
対処法で紹介したように、聞こえてくる声・音に耳を傾けないことも大事です。対処法はさまざまあるので、ぜひ自分に合った対処法をみつけてください。
参考文献