「血痰(けったん)」とは?症状・原因・治療方法も解説!【医師監修】
更新日:2023/06/30
血痰とは、痰に血液が混じることです。突然症状が出たことがある方もいるのではないでしょうか。
血痰は実は重大な病気の可能性もあり、あらかじめ緊急性が高い症状であるかなど正しい情報を押さえておく必要があるでしょう。
そこで本記事では、血痰の原因となる病気についてご紹介します。検査方法や受診の目安・緊急性が高い症状についても解説するので、参考にしてください。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。
目次 -INDEX-
血痰の症状と原因となる病気
血痰とはどのような症状でしょうか?
- 血痰とは、気道からの出血が痰に混じっている状態のことをいいます。少量の血が痰に混じっているため赤みがかっています。通常、痰は気道を守るための粘液です。そして、気道に炎症が生じると粘液が沢山作られるメカニズムとなっています。気道にたまった粘液などの分泌物が咳で吐き出されるものを痰と呼びます。気道には普段から沢山の血管が通っていますが、炎症が起こっている場合はさらに細かい血管が増え、そこを流れる血液量も増える構造です。ここに咳などの刺激が生じると、血管が傷つきます。その結果、少量の出血が生じて、痰に血が混じり発症します。
血痰の原因となる病気を教えてください。
- 原因として考えられる病気は、次のようなものが代表的です。
- 風邪
- 気管支炎
- 肺炎
- 気管支喘息
- 気管支拡張症
- 慢性閉塞性肺疾患
- 肺結核
- 血を固まりにくくする薬を飲んでいる場合
- 原因として、最も代表的なものが風邪です。発症したものの中でも、約3分の1を占めています。次いで気管支炎・肺炎による血痰が多いです。気管支炎とは、ウイルスや細菌が気管に入り込んで炎症を起こす病気です。肺炎とは、細菌やウイルスが肺の中に入り込んで肺の中で炎症を起こす病気となります。また、気管支喘息とは気道が炎症を起こすなどの病気であり、気管支拡張は何らかの原因で、気管支が広がってしまった状態で、原因は、先天的な原因や幼小児期の肺炎、繰り返す感染などで、気管支壁が壊れたり弱くなることにより生じます。慢性閉塞性肺疾患は煙草を主な原因とする疾患で咳と痰を特徴とする病気です。肺結核は結核菌に感染することでかかる病気です。初期症状は風邪のような症状が続きますが、病気が進行することで血痰が生じます。また、直接的な気管や肺の病気ではありませんが、血を固まりにくくする薬を飲んでいる場合も血が混じりやすくなります。出血すると血が止まりにくいため、痰に血液が混じりやすいのです。
肺がんの可能性はありますか?
- 主な原因となる病気は風邪とご紹介しましたが、重い病気の可能性もあります。その1つが肺がんです。肺がんは、気管・気管支・肺胞に癌ができる病気です。初期段階では、ほとんど症状が現れないこともあり、咳や血痰が出てくるだけのことがあります。このことから、肺がんの可能性も決して無視できません。しかし、肺がんを発症する可能性が高い患者には特徴があります。その特徴とは、高齢者ではありますが、通常喫煙歴は通常1日の本数×年数(喫煙指数)で表現されます。この喫煙指数が1200をこえる人では、吸わない人に比べて6.4倍肺がんになりやすいといわれています発症した場合には、この条件に該当するかで肺がんの可能性が高いかどうかがわかります。
吐血や喀血とはどのように違うのでしょうか?
- 主な原因となる病気は風邪とご紹介しましたが、重い病気の可能性もあります。その1つが肺がんです。肺がんは、気管・気管支・肺胞に癌ができる病気です。初期段階では、ほとんど症状が現れないこともあり、咳や血痰が出てくるだけのことがあります。このことから、肺がんの可能性も決して無視できません。しかし、肺がんを発症する可能性が高い患者には特徴があります。その特徴とは、高齢者ではありますが、通常喫煙歴は通常1日の本数×年数(喫煙指数)で表現されます。この喫煙指数が1200をこえる人では、吸わない人に比べて6.4倍肺がんになりやすいといわれています発症した場合には、この条件に該当するかで肺がんの可能性が高いかどうかがわかります。
吐血や喀血とはどのように違うのでしょうか?
- 血痰と同じような症状として、喀血と吐血の他に鼻からの出血、鼻・口腔の血管拡張なども重要な鑑別診断に挙げられますがあります。しかし、いずれも症状の内容が異なるため、区別しましょう。喀血とは血液そのものを咳と共に吐く状態のことをいいます。また、同時に息が苦しかったり、胸が痛いなどの症状をともなうことがあります。一方、吐血とは口から血が嘔吐と一緒に出るような状態で、暗い赤色やコーヒーの色をしています。喀血は吐血と比較すると、血液の赤みが強く泡が混じることが多いです。
血痰の受診と検査
受診を検討する目安を教えてください。
- 風邪などが原因でも発症するため、すぐに受診は必要ないのではないかと考える方もいるかもしれません。しかし、病院を受診する目安を把握して、万が一の際に備えましょう。受診する目安としては、ティッシュぺーパーが1枚赤く染まってしまうほどの出血を伴う出血が起きた場合です。この場合、痰が詰まってしまい窒息する可能性があります。時間を問わず医療機関を受診するようにしましょう。また、少量でも長期間症状が続くケースや、日を追うごとに出血量・回数が増える場合は肺炎・肺結核などの可能性が考えられるため速やかに受診をしましょう。
血痰が出た場合は何科を受診すればいいですか?
- 受診を検討する目安をご紹介しましたが、受診すべき診療科目は、まず呼吸器科の受診をおすすめします。必ずしも原因が呼吸器科に該当するわけではありませんが、まずは呼吸器科で受診するのが良いでしょう。受診後、呼吸器が原因ではないと分かった場合は、耳鼻咽喉科や消化器科に受診することをおすすめします。その際には、消化器科の医師から紹介される場合もあるでしょう。
血痰の原因を調べる検査はどのようなものがありますか?
- 原因を調べるためには、症状に応じて次のような検査を行います。
- 聴診
- 喀痰細胞診検査
- 胸部画像検査
- 気管支鏡検査
- 喀痰培養検査
- 血液検査
- 聴診は、医師の手によって肺の音を聞いて、肺や呼吸の状態を確認する検査方法です。特に出血が少量で呼吸に影響がないレベルと考えられる際には、この聴診と胸部画像検査・血液検査を行います。胸部画像検査はX線検査とCT検査を行い、出血している場所の特定と、出血原因を調査する方法です。しかし、肺がんなどの重い病気が考えられる場合は、検査方法も変わります。肺がんが疑われる際には、喀痰細胞診検査・気管支鏡検査を行います。喀痰細胞診検査とは、痰の中から癌細胞を探す検査方法です。気管支鏡検査は、通常の胃カメラよりさらに細い気管支鏡で気道を観察してがんが存在しないかを確認します。がんと疑わしい場所があれば、細胞や組織を採取して検査する方法です。肺炎や肺結核の可能性がある場合は、喀痰培養検査を行います。痰の中から肺炎の原因となる細菌を探し出す方法です。原因が特定できず、血痰が続いている場合などは気管支鏡検査を行います。
血痰の治療方法と注意点
血痰の治療方法を教えてください。
- 治療方法についても、検査方法同様に症状によって変化します。出血が少ない場合には、気道の表面が炎症を起こして小さな傷によって発症している可能性が高いです。そのため、そのままでも自然に治っていくでしょう。一方、気管支炎や肺炎などが原因の血痰であれば、それらの原因となっている病気の治療を行います。
放置した場合はどのようなリスクがありますか?
- 主な原因である風邪の場合は放置していてもある程度時間が経てば治る可能性が高いです。しかし、原因が重い病気の場合、放置すると恐ろしい病気の悪化を招く恐れがあります。例えば、肺がんの場合、放置しておくと各部へのがんの転移や肺からの出血も増える可能性があります。肺結核の場合であれば、症状がますます悪化してしまうため放置は決して行ってはいけません。軽度なものであればリスクは少ないかもしれませんが、目に見える症状から自分で判断するのは危険なため、受診目安をもとに医療機関に相談しましょう。
緊急性が高い症状を教えてください。
- 大量に喀血した場合は窒息する可能性があり、早期に対応が必要であるなど緊急性が高くなります。すぐに気管支鏡検査を行って出血箇所を探し、出血箇所が判明した後は止血剤を注入する方法や、窒息を防ぐための気管挿管を行います。また、出血した血液が肺の中に残ってしまっている可能性も高いです。その場合は、肺での酸素の吸収が十分に行われないため、酸素吸入や人工呼吸器によって治療を行う必要があります。さらに、場合によっては、血管に詰め物をして止血する処置が必要となるケースもあります。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
- 血痰は、風邪などから誰しも発症の可能性がある症状です。普段から、気管には沢山の血管があり血液が流れているため、少しの傷で生じる可能性があります。しかし、決して楽観視できるような症状ではなく、恐ろしい病気の症状の1つである可能性も高いです。肺がんや肺結核を代表として、多くの肺や気管支系の病気の症状である可能性があります。自己判断で放置して悪化を招かないためにも、症状が現れた段階で早いうちに医療機関へ相談しましょう。
編集部まとめ
血痰は、痰に血液が混じる症状です。主な原因は風邪であることが分かってはいますが、恐ろしい病気の症状である可能性もあります。
その判断のためには、血液の量や喀血・吐血との違いなど、正しい知識を身につけておくことが必要となります。
重大な病気を悪化させないためにも、病気の種類や受診の目安など情報を把握しておき、万が一に備えておきましょう。
参考文献