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「ウイルス性胃腸炎」とは?症状・原因・治療法についても解説!【医師監修】

 更新日:2023/07/13
「ウイルス性胃腸炎」とは?症状・原因・治療法についても解説!【医師監修】

ウイルス性胃腸炎は子どもに多くみられる病気で、主に秋から春にかけて発生します。突然の嘔吐や下痢から症状が出ますが、ほとんどの場合は1日~2日程度でおさまります。

特別な治療方法がないため、発症した場合は脱水症状を起こさないようにこまめに水分補給を行うことが重要です。

ウイルスが体内から排出されれば数日で自然に回復します。しかし、抵抗力が弱い子どもや高齢者が発症した場合は重症化や死亡のリスクがあるため、注意が必要です。

この記事では、ウイルス性胃腸炎の症状について詳しく解説します。脱水予防・感染予防のポイントなどもみていきましょう。

武井 智昭

監修医師
武井 智昭(高座渋谷つばさクリニック)

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【経歴】
平成14年慶應義塾大学医学部を卒業。同年4月より慶應義塾大学病院 にて小児科研修。平成16年に立川共済病院、平成17年平塚共済病院(小児科医長)で勤務のかたわら、平成22年北里大学北里研究所病原微生物分子疫学教室にて研究員を兼任。新生児医療・救急医療・障害者医療などの研鑽を積む。平成24年から横浜市内のクリニックの副院長として日々臨床にあたり、内科領域の診療・訪問診療を行う。平成29年2月より横浜市社会事業協会が開設する「なごみクリニック」の院長に就任。令和2年4月より「高座渋谷つばさクリニック」の院長に就任。

日本小児科学会専門医・指導医、日本小児感染症学会認定 インフェクションコントロールドクター(ICD)、臨床研修指導医(日本小児科学会)、抗菌化学療法認定医
医師+(いしぷらす)所属

ウイルス性胃腸炎の特徴

<h2>ウイルス性胃腸炎の特徴</h2>

ウイルス性胃腸炎はどのような病気ですか?

  • 胃腸炎には、原因微生物により大きく分けて「細菌性腸炎」と「ウイルス性胃腸炎」の2種類に分かれます。
  • ウイルス性胃腸炎は子どもに多いですが、成人にも発症します。皆様ご存じのノロウイルスは主に秋から冬にかけて発生する感染症です。乳幼児に流行するロタウイルスは冬から春に多くみられる傾向があります。
  • 感染力が非常に高く、体内にわずかな量が入っただけでも感染するのが特徴です。ほとんどは数日で自然回復しますが、抵抗力が弱い子どもや高齢者の場合は重症化や死亡のリスクがあります。「お腹の風邪」「吐き下し」「嘔吐下痢」などさまざまな呼び方がありますが、症状は同じです。
  • また特効薬がないことも特徴で、特別な治療方法はなく、脱水予防や対症療法で体力の低下を防ぐしかありません。

ウイルス性胃腸炎の原因を教えてください。

  • 胃腸炎を引き起こすウイルスにはさまざまなものがありますが、主な原因は下記の5種類です。
  • ロタウイルス
  • アデノウイルス
  • ノロウイルス
  • ロタウイルスはとくに子どもの胃腸炎の原因に多いもので、5歳までの子どもは1度は感染するといわれています。感染経路は人から人へ・汚染された水・食品など、さまざまです。

どのような症状がみられますか?

  • ウイルスが胃腸に入り込むことによって胃腸の働きが悪くなり、吐いたり下痢をしたりする病気です。主に下記のような症状が起こります。
  • 下痢
  • 嘔吐
  • 腹痛
  • 発熱
  • 悪心(吐き気・不快感)
  • 発症した場合は突然の嘔吐や下痢が症状として現れます。嘔吐がおさまった後も、1日~2日程度は胃がムカムカする不快感が続くのが特徴です。

細菌性胃腸炎とは症状が異なりますか?

  • 細菌性胃腸炎は主に食べ物から感染するもので、ウイルス性胃腸炎よりも症状が強いのが特徴です。有名な細菌性胃腸炎には「O-157」があります。
  • また生の肉・生焼けの肉を食べたことで「カンピロバクター」などに感染し、細菌性胃腸炎を引き起こす事例もあるため、肉を食べるときはしっかりと加熱してください。
  • 細菌性胃腸炎には下記のような症状があります。
  • 高熱
  • 強い腹痛
  • 血便を伴う下痢
  • とくに高熱はウイルス性胃腸炎ではほとんど見られない症状です。また、ウイルス性胃腸炎の場合は1~2日で症状はほとんどおさまりますが、細菌性胃腸炎の場合は数日~1週間程度続く場合もあります。

ウイルス性胃腸炎の診断と治療

<h2>ウイルス性胃腸炎の診断と治療</h2>

ウイルス性胃腸炎はどのように診断されますか?

  • 流行状況や嘔吐・下痢などの症状から診断されることが多いです。特効薬がなく、原因となるウイルスを特定しても治療方法は変わらないため、ウイルス検査も行いません。

治療方法が知りたいです。

  • 特別な治療方法はありません。治療の中心は脱水症状を起こさないように注意して、安静にすることです。症状が軽度の場合はこまめに水分補給をして自然に回復するのを待ちましょう
  • また、吐き気止めや下痢止めなどの投薬は行いません。嘔吐・下痢を無理に止めるとウイルスが体内から排出されるのを妨げ、回復が遅れる可能性があるためです。

脱水予防のためにできることを教えてください。

  • 嘔吐した直後は飲んだり食べたりせず、まずは胃腸を休めるために安静に寝かせておきましょう。嘔吐してすぐに水分をとると胃が刺激されるため、かえって吐き気を催してしまいます。
  • 吐き気がなくなった場合はティースプーン1杯程度、1回5ccの量を10~15分間隔で少しずつ水分補給してください。ウイルス性胃腸炎の水分補給は「少量頻回」が基本となります。
  • 嘔吐するのは水分だけではありません。水分をとった直後に吐いてしまった場合、摂取した水分以上に胃液が失われてしまうため、脱水状態が悪化してしまいます。
  • 飲んでは嘔吐を繰り返す状態を防ぐためにも、少しずつの水分補給を何度も繰り返してください。冷やした飲み物は胃に負担をかけるため、常温に戻しておきましょう。
  • 吐き気止めや下痢止めなどの投薬は、症状を見ながら実施されます。無理して嘔吐・下痢を止めてしまうと、ウイルスが体内から排出されるのを妨げ、回復が遅れたり重症化する事もあります。
  • 嘔吐や下痢が強い場合には、WHOの認可しており塩分(ナトリウム)が多く含有されている経口補水液で電解質の補充も必要です。

ウイルス性胃腸炎の注意点と予防

<h2>ウイルス性胃腸炎の注意点と予防</h2>

嘔吐物や排泄物の処理方法を教えてください。

  • 患者の嘔吐物や排泄物からも感染するため、片付けが終わるまでは他の人にうつさないようにできるだけ人を遠ざけてください。処理する人以外は少なくとも1m以上の距離をとりましょう。
  • 嘔吐物・排泄物の処理のために準備するものは下記の3点です。
  • 使い捨てマスク・使い捨て手袋:処理する人が感染を防ぐため
  • 消毒剤:次亜塩素酸ナトリウムなど塩素系消毒剤・家庭用塩素系漂白剤
  • 雑巾・古新聞など:嘔吐物・排泄物のふき取りのため
  • 嘔吐物・排泄物の上に雑巾・古新聞などをかぶせて、汚染場所を広げないように中心に向かってふき取ります。ふき取り後は50倍に薄めた塩素系漂白剤で浸すように床をふき取り、その後水ぶきします。
  • 処理で使用した雑巾・古新聞はすべてビニール袋に入れ、口をしっかりとしばって捨てましょう。嘔吐物・排泄物を乾燥させないことが重要です。
  • できるだけ早く処理をし、窓を開けて換気をしましょう。処理の後はしっかりと手洗い・うがいをしてください。

嘔気・嘔吐があるときの食事や水分補給はどのようにすればよいですか?

  • 嘔吐した直後は食事や水分補給を控えてください。口を軽くゆすぐ程度で、嘔吐後1~2時間後くらいからゆっくりと水分摂取を始めましょう。水分をとっても嘔気・嘔吐がなければ、少しずつ1回の量を増やしていきます。
  • 食事も胃腸に負担をかけないよう、消化のよいものを少量ずつ食べるようにしましょう。食欲がない場合は無理に食事をとる必要はありません。
  • 症状が落ち着き、食欲がわいてきたらおかゆ・柔らかく煮込んだうどん・すり野菜のスープ・すりおろしたリンゴなど、消化しやすいものを食べてください。

ウイルス性胃腸炎の予防方法が知りたいです。

  • 予防のために重要なことは手洗い・うがい・消毒です。外出先から帰ったとき・食事の前・トイレの後などはこまめに手を洗ってください。原因となるウイルスは加熱処理をすることで死滅するため、調理をするときはしっかりと火を通しましょう。
  • また、原因となるウイルスのなかで、ロタウイルスのみ予防のためのワクチンがあります。ワクチン接種によってロタウイルス胃腸炎による入院リスクを約70~90%減らすことができたという調査結果もあります。
  • ロタウイルスの予防接種は1回目の接種を生後2ヶ月から接種を開始し、遅くとも生後15週までに開始することが推奨されているため、かかりつけ医に相談してみましょう。

最後に、読者へメッセージがあればお願いします。

  • ウイルス性胃腸炎は子どもに多くみられる病気で、人から人へ感染します。原因となるウイルスはさまざまなものがあり、子どもに多い「ロタウイルス」のほか「ノロウイルス」も代表的です。
  • 非常に感染力が強いことが特徴で、少しでも体内にウイルスが侵入すると発症します。症状は突然の激しい嘔吐や下痢から始まりますが、ほとんどの場合は1日~数日で自然に回復します。
  • 特別な治療方法がないため、脱水症状を起こさないようにこまめな水分補給を行い、安静に過ごしましょう。抵抗力が弱い子どもや高齢者の場合は重症化のリスクがあるため、注意が必要です。
  • 脱水症状が強い場合・強い腹痛・血便が出た場合は点滴や入院などの処置が必要な場合もあります。ぐったりとしていて様子がおかしいと感じた場合は、すぐに医療機関に相談しましょう。
  • また、小児では容易に脱水になることが多いため、ホームケアで対応できなければ、早めに医療機関を受診してください。

編集部まとめ

<h2 class="belt-baby-motive">編集部まとめ</h2>
ウイルス性胃腸炎は主に秋から春にかけて流行する病気で、ロタウイルスノロウイルスが代表的です。

症状は急な嘔吐や下痢で始まるため「嘔吐下痢」などとも呼ばれますが、特別な治療方法はありません。投薬治療などはなく、安静にして自然に回復するのを待ちます。

嘔吐を繰り返すと脱水症状を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。

吐き気があるうちに無理に水分をとると胃を刺激するため、吐き気がおさまってから少量をこまめにとるようにしましょう。

治療方法はありませんが、手洗い・うがい・消毒で予防することはできます。とくに、外出先から戻ったときや食事の前はしっかりと手を洗いましょう。

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