「橋本病」とは?症状・原因・治療法についても解説!医師が監修!
橋本病は正式には慢性甲状腺炎といい、甲状腺に慢性的な炎症が起きる病気です。20代後半以降の30代~40代の女性に多くみられます。
自己免疫異常が原因の病気ですが、異常が起きる原因は判明していません。
甲状腺の肥大による首の腫れやむくみが起こり、無気力になりボーっとした状態になることが代表的な症状です。
甲状腺機能に異常がない場合はほとんど自覚症状がありませんが、放置すると心臓に負担をかけて心不全や心筋梗塞など命に関わる病気を引き起こすリスクがあります。
この記事では、橋本病の症状・原因・検査内容・治療方法などを解説します。詳しくみていきましょう。
監修医師:
濵﨑 秀崇(医師)
目次 -INDEX-
橋本病とはどんな病気?
橋本病とはどんな病気ですか?
- 橋本病は甲状腺に慢性的な炎症が起きる病気で、正式な病名は「慢性甲状腺炎」です。
- 甲状腺はのど仏のすぐ下にある臓器で、全身の新陳代謝や成長の促進に関わる甲状腺ホルモンを分泌しています。
- 甲状腺の病気は女性がかかる割合が多いですが、とくに橋本病の男女比は約1対20~30といわれ、圧倒的に女性の患者が多い病気です。
- 年齢別では20代後半以降、とくに30代から40代の割合が高いことが特徴です。
甲状腺の病気のことなのですね。橋本病ではどんな症状がみられるのでしょうか?
- 甲状腺機能が正常な場合、とくに自覚症状はありません。
- 甲状腺ホルモンは体内の多くの組織の働きを調節しているため、不足すると全身にさまざまな症状が現れます。甲状腺機能の低下により現れる代表的な症状は無気力・疲労感・動作緩慢・むくみ・寒がり・体重増加・便秘などが挙げられます。
- ただし、橋本病の患者には必ずこれらの症状が現れるというわけではありません。ゆっくりと進行するため、自覚症状がない場合もあります。
橋本病が発症する原因は何ですか?
- 橋本病は自己免疫疾患のひとつです。自己抗体が甲状腺を攻撃することで炎症が起こりますが、細菌やウイルスによる感染症ではありません。どのようなきっかけで起こるのかはっきりと判明しておらず、現在では下記のようなさまざまな原因が考えられています。
- 強いストレス
- 妊娠・出産
- ヨードの過剰摂取
- ヨードの過剰摂取とは海藻類・薬剤・造影剤などを多量に摂取した場合です。ヨードは甲状腺ホルモンの原料となりますが、大量に摂取すると甲状腺機能を抑制します。ただし、ヨードの過剰摂取が甲状腺機能低下の原因の場合、ヨードの摂取を制限すると機能が回復します。
橋本病の兆候などがあれば教えて下さい。
- 発症すると顔・まぶた・唇にむくみが生じるため、表情が乏しくなり顔つきが変わったように見える場合があります。
橋本病を放置することで考えられるリスクは何ですか?
橋本病の検査や受診のタイミングとは
橋本病かも…と思った場合は何科を受診したら良いのでしょうか?
- 甲状腺の腫れを感じた場合はかかりつけの内科や耳鼻咽喉科を受診しましょう。下記の症状がある場合は橋本病の可能性があるため、注意が必要です。
- 全身のむくみ
- 甲状腺の腫れ
- 倦怠感
- 無気力
- 脈が遅くなる(目安:1分間に60以下)
橋本病の診断はどのように行いますか?検査内容も併せて知りたいのですが…
- 診断では問診や触診のほか、血液検査と甲状腺超音波検査を行います。
- 血液検査では甲状腺刺激ホルモンと甲状腺ホルモンを調べます。甲状腺ホルモンに異常がある場合はコレステロールや肝臓の数値にも異常が現れたり貧血になったりする場合もあるため、一般的な血液検査も行います。
- 甲状腺超音波検査では腫れ方やしこりの形状を確認し、悪性腫瘍が疑われる場合は細胞を採取して詳しい検査をします。甲状腺刺激ホルモンの数値が10µU/ml以上の場合や高コレステロール血症を伴う場合には、「チラーヂンⓇ(レボチロキシンナトリウム)」の内服を検討します。
橋本病の治療方法
橋本病は治療で完治することは可能ですか?
- 橋本病は完治することはありません。甲状腺の機能が低下している場合は、一般的に「チラーヂンⓇ(レボチロキシンナトリウム)」という薬を服用して経過観察をします。
- 橋本病と診断されても投薬の必要がない場合も多く、甲状腺の機能が低下していても薬を服用することで症状のない状態を維持している患者も多いです。
- 患者のうち7~8割は経過観察のみで、健康な方とほとんど変わらない生活を送っています。
橋本病の治療方法を教えて下さい。
- 橋本病は一生付き合っていく病気です。自己抗体を消し去るような根本的な治療は行いません。甲状腺の機能が正常であれば体に影響がないため治療は必要ありません。
- 低下している場合は不足している甲状腺ホルモンを「チラーヂンⓇ(レボチロキシンナトリウム)」で補います。1~2ヶ月ごとに甲状腺機能を測定して正常になるまでは徐々に増量し、正常になった量で継続して服用し、経過観察します。
- 甲状腺ホルモン値が正常になっても症状が治まらない場合は甲状腺以外の病気の可能性があるため、別途検査が必要です。
橋本病は予防することは可能なのでしょうか?
- 橋本病を予防することは難しいです。日常生活ではヨウ素を多く含む海藻類を多くとりすぎないように注意してください。ヨウ素を多く含む食品には下記があります。
- 海藻類:ひじき・昆布・海苔・寒天
- 市販の調味料:昆布だし
- ヨード卵
- 過剰に神経質になる必要はありませんが、栄養が偏らないようにバランスのいい食事を心がけましょう。また、イソジンなどヨード系うがい薬を使っての毎日のうがいはヨウ素のとりすぎの原因となります。
最後に読者へのメッセージをお願いします。
- 橋本病は甲状腺に慢性的な炎症が起きる病気で、20代後半以降の女性に多くみられます。
- 甲状腺は全身の新陳代謝や成長の促進に関わる「甲状腺ホルモン」を分泌する役割があるため、自覚症状があるまま放置すると心不全や心筋梗塞を引き起こすリスクがあります。
- 明確な予防方法はなく、発症した場合は完治しません。首の腫れ・むくみ・無気力など疑わしい症状がある場合は、早めにかかりつけの内科や耳鼻咽喉科を受診してください。
- 完治が難しい病気ですが難病ではなく、自己抗体価が高い場合でもほとんど生活に影響はありません。多くの場合は薬を服用すると症状が改善します。
- ただし、甲状腺機能が変化する場合があるため、半年に1度か年に1度のペースで定期検査を受けましょう。
編集部まとめ
橋本病は甲状腺の病気の代表で、女性が発症する割合が高いのが特徴です。自覚症状がない場合も多いため、気づかずに進行している場合もあります。
甲状腺の機能低下に伴い首の腫れ・むくみ・無気力などさまざまな症状が現れますが、ほとんどの患者は自覚症状がありません。
しかし、甲状腺の機能が低下した状態を放置すると心臓に負担をかけるため、心不全や心筋梗塞など重篤な症状を引き起こすリスクがあります。
健康診断で甲状腺機能の低下を指摘された場合など、橋本病の可能性が疑われる場合は早めにかかりつけの内科や耳鼻咽喉科を受診してください。