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「トリーチャーコリンズ症候群」とは?症状・原因・検査・治療方法も解説!

 更新日:2023/06/30
「トリーチャーコリンズ症候群」とは?症状・原因・検査・治療方法も解説!

頬骨の形成不全・下顎骨発育不全・奇形・欠損などの異常を特徴とする病気を「トリーチャーコリンズ症候群」といいます。下顔面の成長不全がみられる、先天性異常症候群の一種です。治療が遅れると呼吸障害や難聴などの症状を併発することがあります。生まれたときから発生しており、その頻度は5万人に1人であるといわれています。

今回はトリーチャーコリンズ症候群の症状や原因、検査や治療方法などを紹介します。

柴原 孝彦

監修歯科医師
柴原 孝彦(東京歯科大学名誉教授)

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1979年東京歯科大学卒業、2004年東京歯科大学主任教授、2012年東京歯科大学市川総合病院口腔がんセンター長、2020年東京歯科大学名誉教授。
著書は「口腔顎顔面外科学(医歯薬出版)」「標準口腔外科学(医学書院)」「カラーアトラス コンサイス口腔外科学(学建書院)」「口腔がん検診 どうするの、どう診るの(クインテッセンス出版)」「衛生士のための看護学大意(医歯薬出版)」「かかりつけ歯科医からはじめる口腔がん検診step1/2/3(医歯薬出版)」「エナメル上皮腫の診療ガイドライン(学術社)」「薬剤・ビスフォスフォネート関連顎骨壊死MRONJ・BRONJ(クインテッセンス出版)」「知っておきたい舌がん(扶桑社)」「口腔がんについて患者さんに説明するときに使える本(医歯薬出版)」など。

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トリーチャーコリンズ症候群とは

トリーチャーコリンズ症候群とはどのような病気でしょうか?

下顎骨発育不全をはじめ、外耳・毛髪位・下眼瞼などにも奇形や異常が見られるのが特徴です。先天異常症候群の一種で、日本では5万人に1人の頻度で出生するともいわれています。

遺伝子が関わりますが、そのうち新生突然変異はおよそ6割を占める病気です。出生直後から医科・歯科を含めた他領域の専門分野での治療が必要とされています。

トリーチャーコリンズ症候群の症状は

トリーチャーコリンズ症候群はどのような症状が現れますか?

主な症状では、眼瞼裂斜下・下眼瞼の欠損症(コロボーマ)などの目の症状や、頬骨形成不全に伴う頬部の平坦化が見られます。その中でも下顎骨発育不全によって起こる起動狭窄が主な症状であるといわれています。

下顎骨発育不全に伴う気道狭窄や耳介の奇形、中耳腔の形成不全によって伝音性難聴の症状も併発しますが、内耳構造は通常正常です。寄り頻度の低い奇形として、口腔内の症状があり、口蓋裂が挙げられます。

トリーチャーコリンズ症候群の特徴

トリーチャーコリンズ症候群の特徴

トリーチャーコリンズ症候群の特徴とはどんなものですか?

トリーチャーコリンズ症候群は、目の位置や下あごが下がっていて、鼻や耳の奇形も見られます。さらに、顔に毛が生える体毛異常が起きます。手術をしないと呼吸ができない場合が多いのも特徴です。

顔面は眼瞼裂斜下や下眼瞼のノッチ状欠損、下顎骨発育不全、頬骨低形成を伴うため、Bird様顔貌ともいわれます。耳介前方の毛髪が頬まで生える毛髪位異常や、知的には正常範囲ですが5%に知的障害があります。

症状による悩み

症状による悩み

症状があることでの悩みはありますか?

トリーチャーコリンズ症候群になっている当事者の悩みは大きく分けて2つあります。まずは見た目の問題です。特徴的な顔貌の為、人との関係性作りが難しいといわれています。驚きの目で見られ、就職が上手くいかないなどの困難があります。

そして、もうひとつは、聴覚障害と発音障害についてです。気道が狭くて、呼吸困難を伴うことがあるために、人とのコミュニケーションが円滑に取れないケースがみられます。

トリーチャーコリンズ症候群の原因

トリーチャーコリンズ症候群の原因はどのようなことが考えられるでしょうか?

トリーチャーコリンズ症候群は、遺伝性疾患です。遺伝子が原因といわれています。

遺伝子が原因

遺伝子が原因とは、どのようなことがあげられますか?

トリーチャーコリンズ症候群の原因遺伝子には、TCOF1・POLR1C・POLR1Dの3つの遺伝子が挙げられます。その中でもTCOF1の変異が80%以上です。そのほか、家系間および家系内に明らかな臨床的多様性が見られる場合もあります。

中には、典型的臨床所見を有する一部の患者にはTCOF1・POLR1C・POLR1Dいずれの遺伝子変異も認められなかったという場合もあります。

トリーチャーコリンズ症候群の受診科目

トリーチャーコリンズ症候群が疑われる場合には、何科を受診すればいいのでしょうか。

遺伝子診療科・産科・小児科・形成外科・耳鼻咽喉科・口腔外科・矯正歯科を中心とした専門診療科による集学的な治療が必要です。

トリーチャーコリンズ症候群で行う検査

トリーチャーコリンズ症候群では、どのような検査を行いますか?

トリーチャーコリンズ症候群の診断は、臨床所見やX線画像所見に基づきます。最初に、TCOF1遺伝子のシーケンス解析と欠失・重複解析を行います。

TCOF1遺伝子に欠失や変異がなければ、次に行うPOLR1D遺伝子シーケンス解析を考慮することができます。

複数の同胞が罹患し、あるいは近親婚の家系、またはTCOF1やPOLR1D遺伝子変異を認められなかった場合は、POLR1C遺伝子シーケンス解析を考慮することができます。

出生前診断および着床前診断(PGD)もありますが、事前に家系内における病的変異が同定される必要があります。

臨床診断

臨床診断とはどんな検査ですか?

難病研究資源バンクより公開された診断基準に基づき行われる検査です。頬部低形成眼瞼裂斜下や小顎症、下眼瞼コロボーマ、小耳症・外耳奇、遺伝学的検査などの症状で診断します。

識別診断

識別診断とはどんな検査ですか?

TCOF1・POLR1C・POLR1Dにおける病的変異の存在が確定診断に役立ちます。

トリーチャーコリンズ症候群の性差・年齢差など

トリーチャーコリンズ症候群では、性差や年性差はありますか?

トリーチャーコリンズ症候群は、程度の差はありますが、原因遺伝子があれば生まれたときから性差問わずに起こります。

トリーチャーコリンズ症候群の治療方法

トリーチャーコリンズ症候群にはどのような治療方法がありますか?

患者個々のニーズに応じる治療を行い、主な管理項目は下記のとおり3つの年齢および重症度によって分かれます。
  • 生後2歳まで:気道障害と哺乳障害による治療
  • 3歳~12歳:言語療法で治療を行う言語システムの導入
  • 13歳~18歳:下顎の矯正や再建
呼吸管理のため新生児期に気管切開、乳幼児期に下顎の骨延長術を行う方法です。

口腔内では、下顎後退などの不正咬合が見られ、口蓋裂を伴う場合には口蓋形成術が施行されます。下顎後退などの不正咬合を呈します。歯の治療も同時に行うことで、口腔環境を改善をすることができます。難聴には補聴器の使用や機能改善手術が施行されます。

上下顎を含めた頬骨ならびに眼窩の再建や、出生直後から医科や小児歯科を含めた歯科でも複数の科が協力しあって多領域の専門分野で形態と機能の回復ができる治療が必要です。

眼科診療による治療

眼科診療による治療

眼科診療による治療には、どのような方法がありますか?

症例により症状が様々であるため、成長段階に合わせた診療科横断的なチームによる集約的管理・治療が必要です。

眼瞼手術には、眼瞼再建術・眼瞼挙上・眼瞼内反整復術など、眼表面の再建に関わる手術が含まれます。

耳鼻咽喉科診療による治療

耳鼻咽喉科診療による治療

耳鼻咽喉科診療による治療には、どのような方法がありますか?

気導狭窄のある場合は、気管切開を行い、小耳症・外耳道閉鎖に対しては生後早い時期から骨導補聴器を装用します。早期からの補聴器を使用した聴覚活用が、言語習得のため重要です。

外耳道狭窄例では、軟骨導補聴器手術により埋込型骨導補聴器(BAHA)を活用します。耳鼻咽喉科と形成外科で連携して耳介および外耳道の形成手術を検討します。

歯科診療による治療

歯科診療による治療

歯科診療による治療には、どのような方法がありますか?

顔貌の異常だけでなく、顎や顔面の形態異常としては「反対噛合」が見られ、歯科矯正医による咬合の改善が必要です。また、口腔外科による顎骨形態の改善が必要です。

その他障害疾患の治療

その他障害疾患の治療には、どのような方法がありますか?

特徴のある顔貌のために、幼少期からいじめの対象になることがあるために、学校教育上支援が必要です。思春期・就職・結婚などの時期や機会では精神的に困難に直面することがあり、社会の理解と支援が必要なこともあります。

頭蓋顔面異常をはじめとする、特に骨と軟骨に対しては外科治療の効果が幹細胞の移植によって改善されるかもしれないとされています。しかし、これらの術式はまだ実験段階で、まだ議論の余地が残っている状態です。

編集部まとめ

トリーチャーコリンズ症候群についてどんな病気なのか、原因や治療方法などを紹介しました。トリーチャーコリンズ症候群は、まだ一般的には知られていませんが、身近にあり、起こりうる疾患です。これを機にトリーチャーコリンズ症候群という病気を理解し、外見や見た目の問題も合わせて考えてみてください

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