「網状皮斑(赤色や紫色の網目模様) 」ができる原因はご存知ですか?
更新日:2023/03/27
網状皮斑(もうじょうひはん)は「リベド」「リベドー」とも呼ばれ、主に膝から足先にかけて赤色や紫色をした網目のような模様が現れる病気です。
ほとんどが冬に温度の急激な変化が原因となって起こるもので、一過性の病気です。とくに子どもや若い女性に多くみられます。
症状が一過性でなく、続く場合は感染症や中枢神経障害などの重大な病気が隠れている可能性があるため、注意が必要です。
この記事では網状皮斑の特徴から引き起こす原因となる病気・治療方法・注意点などを詳しく解説します。
監修医師:
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)
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名古屋大学医学部附属病院にて勤務。国立大学医学部を卒業後、市中病院にて内科・救急・在宅診療など含めた診療経験を積む。専門領域は専門は皮膚・美容皮膚、一般内科・形成外科・美容外科にも知見。
目次 -INDEX-
網状皮斑の特徴
網状皮斑はどのような病気ですか?
- 網状皮斑は「リベド」「リベドー」とも呼ばれる病気です。皮膚に赤色や紫色をした網目のような模様が現れるのが特徴で、とくに冬に多くみられます。網目の模様は動脈・毛細血管・静脈など皮膚の末梢循環不全によって生じるものです。
- 皮膚の抹消循環は皮膚の深部から表皮に向けて小動脈が伸び、枝分かれをしながら毛細血管となります。隣接する毛細血管同士がくっついて小動脈となり、毛細血管とくっついた部分は網のような模様で、血流が遅くて弱いという特徴があります。
- 皮膚の真皮と皮下境界部にある血管の閉塞性循環障害・血管系の器質異常・一過性の機能異常も網状皮斑の原因です。血管は気温に反応して収縮したり拡張したりしますが、反応に異常がある場合に網状皮斑として現れます。
- 症状は主に手足に出ますが、膝から下のすねから足の甲にかけて現れることが多いです。痺れや感覚の麻痺といった感覚障害が起こることもあります
症状の現れ方を教えてください。
- 温度の急激な変化によって皮膚に赤色や紫色の網目模様が現れるのが網状皮斑の主な特徴です。網目の模様の出方によって3つのタイプに分類されます。
- 網状皮斑の皮膚症状は寒さが原因で悪化する傾向があり、暖めると症状が緩和される場合があります。
- 皮膚に現れる見た目の変化は下肢に多くみられ、とくに膝から足先に現れるのが特徴です。冬場にこたつやストーブなどで赤外線を浴びすぎたときに現れる「温熱性紅斑(火だこ)」と見た目が似ていますが、別の病気です。
状態によって分類されるのですね。
- 網状皮斑は網目の状態によって3つのタイプに分類されます。それぞれの特徴は下記のとおりです。
- 大理石様皮膚
- 細網状皮斑
- 分枝状皮斑
- 大理石様皮膚は子どもに多くみられる症状で、冬の寒冷刺激によって生じます。若い女性にもみられますが一過性のものです。
- 網状皮斑と樹皮状皮斑の場合は寒冷とは関係なく起こります。網状皮斑の網状の構造は閉鎖して皮疹が生じるのが特徴で、樹皮状皮斑の場合は網状が途切れて樹皮状の構造になります。
- 細網状皮膚と樹皮状皮斑は何らかの疾患が原因と考えられるため、専門医を受診してみましょう。
どのような病気が網状皮斑を引き起こしますか?
- 網状皮斑は寒冷や基礎疾患により血液の流れが悪くなることが原因で起こる病気です。うっ血・血栓・寒栓・血管壁肥厚・血液成分異常など血管系の異常や一過性の機能異常が原因と考えられます。
- 網状皮斑を引き起こす病気は下記が挙げられます。
- 抗リン脂質抗体症候群
- クリオグロブリン血症
- 多発性骨髄腫
- プロテインC欠損症
- アンチトロンビンIII欠損症
- DIC
- その他、全身性エリテマトーデス・皮膚筋炎・慢性関節リウマチなどの膠原病(こうげんびょう)・多発性硬化症・パーキンソン病などの神経疾患・結核・C型肝炎などの感染症も網状皮斑の原因です。
- アマンタジン・ミノサイクリン・ヘパリン・メチルフェニデート・ゲフィチニブ・キニジン・ゲムシタビン・インターフェロンα/β・Nicolau症候群などの薬剤が原因となる場合もあります。
網状皮斑の診断と治療方法
網状皮斑を疑ったら何科を受診すればよいですか
- 網状皮斑の可能性がある場合はまず皮膚科を受診しましょう。
- 疾患が原因となっている場合は疾患の治療が必要です。
- 膠原病が原因の場合は膠原病内科やリウマチ科など、専門医の治療を受ける必要があります。
診断方法を教えてください。検査はありますか?
- 網状皮斑は皮膚の見た目を調べることで容易に診断できます。
- 網状皮斑は皮膚の変化だけを表す言葉であるため、引き起こす原因となっている基礎疾患を調べることが大切です。
- 原因となっている病気を特定するためには検査が必要です。血液検査・尿検査・レントゲン検査などの精密検査を行い、状況を詳しく調べるために皮膚の一部を採取して顕微鏡で確認する病理検査を行います。
治療方法が知りたいです。
- 網目模様が出る症状が冬にだけ起こり、夏には出ない一過性の場合はとくに治療は必要ありません。
- ただし、症状が重い場合は必要に応じて下記のような治療を行います。
- 保湿
- マッサージ
- 弾性包帯などでうっ血を防止
- 対症療法として血行を良くするビタミンEを飲んだり、ビタミンEを含む軟膏を塗布したりすることがあります。
- 症状が進行して皮膚潰瘍ができた場合は潰瘍の治療を行います。何らかの疾患が原因で網状皮斑が起こっている場合は病気の根本的な治療が必要です。精密検査を受けて原因を特定しましょう。
網状皮斑の注意点
症状が現れたときにやってはいけないことを教えてください。
- 多くの場合、網状皮斑は寒暖差によって起こる一時的な変化です。暖かくすることで症状が緩和される場合があるため、体を冷やさないように注意しましょう。
- 症状が一過性でない場合は自己判断をしてはいけません。重大な病気が隠れていないか原因を調べ、適切な治療を行うためにも医療機関を受診しましょう。
- 進行すると皮膚炎を起こしてかゆみを伴ったり皮膚潰瘍を生じたりと病状が悪化することもあるため、注意が必要です。
治療中の注意点が知りたいです。
- 網状皮斑の治療では下肢の血行が悪くならないように注意しましょう。長時間歩くことや立ちっぱなしの仕事もできるだけ避けてください。常に弾性包帯や弾性ストッキングを身に着け、寝るときはクッションなどを敷いて上肢を高い位置に保つなど血流をよくする工夫しましょう。
- 寒冷刺激が原因で網状皮斑が起こっている場合は患部を冷やさないことが重要です。寒い季節はスカートではなくズボンを履いて暖かくするなど、足を冷やさないように注意しましょう。
- 寒冷刺激が原因で網状皮斑が起こっている場合は患部を冷やさないことが重要です。寒い季節はスカートではなくズボンを履いて暖かくするなど、足を冷やさないように注意しましょう。
- また、冬の外出時だけでなく夏の冷房にも注意してください。冷蔵庫を開けるなど、ちょっとした冷気を受ける日常動作でも網状皮斑が悪化する可能性があります。
再発することはありますか
- 網状皮斑になる人はもともと血管系が不安定だと考えられます。
- そのため、ちょっと足をぶつけたりこすったりしただけでも内出血を起こす可能性があり、再発しやすいといえます。
- 手足に網目模様の症状がみられる場合は皮膚科専門医の診察を受けましょう。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
- 血管は温度差に対応して収縮するため、網状皮斑は寒さで一時的に起こる生理的な現象です。暖かくして緩和される症状の場合はそれほど心配することはありません。
- 網状皮斑が起こりやすい人は体を冷やさないように注意してください。
- 寒冷と関係なく症状が起こり、持続する場合はさまざまな基礎疾患(血管炎・膠原病・クリオグロブリン血症)が原因の可能性があります。症状が重篤な場合は自己判断せず、一度皮膚科を受診して詳しく検査をしてみましょう。
編集部まとめ
網状皮斑は血行が原因で起こり、冬の寒い時期に寒暖差によって症状が現れる病気です。
子どもや女性に多くみられ、一過性の場合はとくに治療も必要なく患部を暖めると緩和されることが多いです。
しかし、症状が悪化すると皮膚炎や皮膚潰瘍につながるため、網状皮斑が出やすい人は血行をよくして体を冷やさないように注意してください。
寒さに関係なく症状が現れたり持続したりする場合は注意が必要で、何らかの病気が原因となっている可能性があります。
一度皮膚科を受診して原因となっている疾患を治療しましょう。
参考文献