「トゥレット症候群」とは?原因・治療法・症状についても解説!【医師監修】
更新日:2023/07/13
トゥレット症候群という病気を聞いたことはあるでしょうか?トゥレット症候群は、子どもに見られる特に重症なチックのことです。
目をパチパチとまばたきする、顔をしかめる、首を振る、咳払いをするといった行動は、単なる癖とみなされて放置されたり、カウンセリングで経過をみられるだけだったりということが多くあります。しかし、これらの癖はチックと呼ばれる症状で、原因は脳にあります。
今回はトゥレット症候群とはどのような病気なのか、原因や治療法も含めて解説します。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。
目次 -INDEX-
トゥレット症候群とは
トゥレット症候群とはどのような病気ですか?
トゥレット症候群には以下の3つの定義があり、チックのなかでも特に重症な病態です。
- 18歳未満で発症
- 多彩な運動チックと1つ以上の音声チックがある
- 1年以上持続している
トゥレット症候群は通常、幼児から思春期までの期間に発症します。
大人になると治る病気なのでしょうか?
長期的な経過としては、10~15歳くらいの間にチック症状が最も重症化します。その後、約80~90%の人は成人するまでに症状がなくなったり、改善したりします。
しかし、一部の人は成人まで重症なチックが続いたり、成人後に再発したりする場合もあります。
しかし、一部の人は成人まで重症なチックが続いたり、成人後に再発したりする場合もあります。
トゥレット症候群の症状
トゥレット症候群の症状を教えてください。
トゥレット症候群の主な症状であるチックは、運動チックと音声チックに分けられ、運動や発声をしたいと思っているわけではないのにしてしまうというのが特徴です。ただし、チックでよくみられる症状については、チック以外の病気でも同じような動きがみられることもあります。
また、トゥレット障害の人はADHDを併発しやすいとされています。
また、トゥレット障害の人はADHDを併発しやすいとされています。
運動チック
運動チックについて詳しく教えてください。
運動チックとは、突然起こる素早い運動の繰り返しのことをいいます。
代表的な運動チックの症状は以下の通りです。
代表的な運動チックの症状は以下の通りです。
- 目をパチパチさせる
- 顔をクシャッとしかめる
- 首を振る
- 肩をすくめる
- 全身をビクンとさせる
- 飛び跳ねる
音声チック
音声チックについて詳しく教えてください。
音声チックとは、突然起こる素早い発声のことをいいます。
代表的な音声チックの症状は以下の通りです。
代表的な音声チックの症状は以下の通りです。
- コンコン咳をする
- 咳払い
- 鼻を鳴らす
- 奇声を発する
- 汚言症(不適切な言葉を口走る)
ADHD
ADHDついて詳しく教えてください。
ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略で、日本語訳は注意欠如・多動症です。
その名の通り不注意や多動、衝動性が特徴である発達障害の1つです。ADHDの子どもは、家庭や学校生活でさまざまな困難をきたすことが多いとされています。
トゥレット症候群の子どもはADHDを併発しやすいことが知られていて、海外の報告ではその頻度が約50%にのぼるという結果も出ています。
その名の通り不注意や多動、衝動性が特徴である発達障害の1つです。ADHDの子どもは、家庭や学校生活でさまざまな困難をきたすことが多いとされています。
トゥレット症候群の子どもはADHDを併発しやすいことが知られていて、海外の報告ではその頻度が約50%にのぼるという結果も出ています。
トゥレット症候群にADHDを併発するとどうなるのでしょうか?
ADHDを併発しても、チック症状そのものについてはあまり変化がみられません。しかし、ADHDによって衝動性や攻撃性が高まるため、社会生活に更に支障をきたしやすくなることが知られています。
また、ADHDの症状として社会生活に支障をきたすような癖や行動が知られており、チックもその1つであるとされています。そのため、ADHDの子どもはトゥレット症候群を併発しやすいという見方もできるでしょう。
また、ADHDの症状として社会生活に支障をきたすような癖や行動が知られており、チックもその1つであるとされています。そのため、ADHDの子どもはトゥレット症候群を併発しやすいという見方もできるでしょう。
トゥレット症候群の原因
トゥレット症候群の原因を教えてください。
トゥレット症候群の原因は、未だ完全には解明されていません。
人間の脳内には、ドパミン神経系と呼ばれる重要な神経系が存在します。ドパミンは神経の伝達に関わる物質の1つで、大脳の発達にも重要とされています。トゥレット症候群の原因には、ドパミン神経系が発達する過程での問題が示唆されています。
人間の脳内には、ドパミン神経系と呼ばれる重要な神経系が存在します。ドパミンは神経の伝達に関わる物質の1つで、大脳の発達にも重要とされています。トゥレット症候群の原因には、ドパミン神経系が発達する過程での問題が示唆されています。
トゥレット症候群の発生頻度・性差・年齢差
トゥレット症候群は珍しい病気ですか?
一生の間にトゥレット症候群を発症する人は0.46~36.2/10000人と、調査によって結果が大きく異なります。日本では未だ正確な有病率調査は行われていません。
どのような人が発症しやすいのでしょうか?
トゥレット症候群の発症は男性に多いとされ、通常は幼児から思春期の間に発症します。
1つの家系で複数人が発症するケースも多く、遺伝的な要因も指摘されています。
1つの家系で複数人が発症するケースも多く、遺伝的な要因も指摘されています。
トゥレット症候群の受診科目
トゥレット症候群を疑ったときは何科を受診すればいいですか?
トゥレット症候群は、主に小児科や小児神経科、児童精神科で診察を行っています。
チックの症状は5~6歳で始まることが多く、病気が正しく理解されないために学校に行けなくなってしまうこともあります。学校で友達とトラブルが起こっている場合や、本人が自信を失っている場合などは、早めに診察を受ける必要があります。
また、急な体の動きや大きな声が原因で日常生活に支障が出ている場合についても、早めの受診を検討しましょう。
チックの症状は5~6歳で始まることが多く、病気が正しく理解されないために学校に行けなくなってしまうこともあります。学校で友達とトラブルが起こっている場合や、本人が自信を失っている場合などは、早めに診察を受ける必要があります。
また、急な体の動きや大きな声が原因で日常生活に支障が出ている場合についても、早めの受診を検討しましょう。
トゥレット症候群の検査
トゥレット症候群の診察ではどのような検査を行いますか?
本人や保護者への問診により、以下の4つの観点から重症度を確認したうえで診断していきます。
1.チック自体の重症度(チックの強さや頻度、複雑さ、行動や発語への影響等)
2.チックによる悪影響(本人の自己評価や社会生活に対する悪影響の度合い)
3.併発症の重症度(併発症により生活に支障をきたす度合い)
4.本人や周囲の人の認識と対処能力
1.チック自体の重症度(チックの強さや頻度、複雑さ、行動や発語への影響等)
2.チックによる悪影響(本人の自己評価や社会生活に対する悪影響の度合い)
3.併発症の重症度(併発症により生活に支障をきたす度合い)
4.本人や周囲の人の認識と対処能力
トゥレット症候群の治療方法
トゥレット症候群はどのような治療が行われますか?
トゥレット症候群の治療で基本となるのは、本人や家族、学校や職場等で関わる人々に対し、病気に対する理解を促すことです。これについては、チックの重症度に関係なく行う必要があります。
そのほかには、重症度に合わせて薬物治療やカウンセリングなどが実施されます。
そのほかには、重症度に合わせて薬物治療やカウンセリングなどが実施されます。
薬物治療
トゥレット症候群の薬物治療について詳しく教えてください。
薬物療法では、基本的に抗精神病薬を使用します。
トゥレット症候群に対してはこれまでにさまざまな薬が使用されていますが、全ての患者に対して有効な薬はないとされています。
トゥレット症候群に対してはこれまでにさまざまな薬が使用されていますが、全ての患者に対して有効な薬はないとされています。
抗精神病薬の副作用について教えてください。
治療で使用される抗精神病薬は、眠気などの副作用が出ることがあります。
また、適切な薬を自己中断せずに継続して使用しないと、適切な効果が得られないことも分かっています。
抗精神病薬を使用するうえで大切なのは、副作用をやみくもに恐れるのではなく、副作用を感じたらなるべく早く医師に相談し、最も自分に適した薬を早く見つけることです。
また、適切な薬を自己中断せずに継続して使用しないと、適切な効果が得られないことも分かっています。
抗精神病薬を使用するうえで大切なのは、副作用をやみくもに恐れるのではなく、副作用を感じたらなるべく早く医師に相談し、最も自分に適した薬を早く見つけることです。
薬の飲み合わせについて注意すべきことはありますか?
抗精神病薬のなかには、他の薬やサプリメント、食品等との組み合わせによって、副作用を引き起こしたり、効果を弱めたりするものがあります。
普段から使用している薬やサプリメントがある人は、治療で使用する薬との併用について担当医に確認しましょう。また、市販品薬を購入する際には、薬局やドラッグストアで薬剤師や登録販売者に相談し、併用しても問題ない商品を選んでもらうようにしましょう。
普段から使用している薬やサプリメントがある人は、治療で使用する薬との併用について担当医に確認しましょう。また、市販品薬を購入する際には、薬局やドラッグストアで薬剤師や登録販売者に相談し、併用しても問題ない商品を選んでもらうようにしましょう。
編集部まとめ
トゥレット症候群は、子どもに見られる特に重症なチックのことをいいます。チックは、運動や発声をしたいと思っているわけではないのにしてしまうという症状です。
早い段階で正しい診断を受け、周囲の人に病気を理解してもらい、段階ごとの適切な指導や薬物治療等を行うことにより改善や治癒を目指すことが可能です。
チックは5~6歳で始まることが多く、病気が正しく理解されていないために、学校に行けなくなってしまうこともあります。
チックが原因で友達とトラブルが起こっているときや、本人が自信を失っているときなど、気になることがある場合は早めの受診を検討してみましょう。
参考文献