「環状紅斑 」の原因となる病気はご存知ですか?医師が解説!
赤い斑点が円のように拡大していく湿疹は、もしかしたら「環状紅斑」(かんじょうこうはん)かもしれません。環状紅斑とは、病名ではなく症状名で、その症状の裏には、さまざまな病気が隠れている可能性があります。
環状紅斑は、無治療で自然に消えることもあります。しかし、赤みが消えた後に色素沈着が残ってしまうことが多いのも特徴です。症状がひどくならないうちに早めに受診するのが大切です。
今回は、環状紅斑とはどのような症状なのか、原因や治療法も含めて解説します。
監修医師:
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)
環状紅斑とは
環状紅斑とはどのような病気ですか?
環状紅斑は円形に紅斑が広がっていく一方で、中心部が徐々になおっていくことから環状に広がっていきます。
環状紅斑は背景にシェーグレン症候群という膠原病や、悪性腫瘍が隠れていることがあります。
円状の赤い湿疹のことを全て環状紅斑と呼ぶのでしょうか?
- 乾癬
- 薬疹
- 蕁麻疹多形紅斑
- 体部白癬
- 扁平苔癬
- 環状肉芽腫
環状紅斑の症状
環状紅斑の症状を教えてください。
痛みや痒みといった自覚症状はありますか?
自然治癒することはありますか?
環状紅斑の原因
環状紅斑の原因を教えてください。
遠心性環状紅斑以外の環状紅斑は非常に珍しいですが、以下の病気が原因で症状が出る場合があります。
- 内臓疾患
- 悪性腫瘍
- 感染症
- 膠原病(シェーグレン症候群や全身性エリテマトーデスなど)
- マダニ刺され
シェーグレン症候群
環状紅斑の原因となるシェーグレン症候群とは、どのような病気ですか?
涙を分泌する涙腺と、唾液を分泌する唾液腺が免疫反応の標的となり、目や口などの乾燥症状が出るのが特徴です。目や口だけでなく、全身の臓器に症状が出る場合もあります。
発症年齢のピークは50歳代で、男女比は1:17と、女性に多い病気です。遺伝的な要因や、ウイルス感染などの環境要因、免疫機能の異常、女性ホルモンの影響などが原因として考えられています。
全身性エリテマトーデス
環状紅斑の原因となる全身性エリテマトーデスとは、どのような病気ですか?
男女比は1:9ほどと女性に多い病気で、特に20歳から40歳の女性で発症しやすいとされています。
病気の原因は、未だ解明されていません。
環状紅斑の受診科目
環状紅斑を疑ったときは何科を受診すればいいですか?
環状紅斑の原因となりうる膠原病に関しては全身の病気ですが、皮膚科が中心となって治療する症状も多くあります。
環状紅斑の検査
環状紅斑の診察ではどのような検査を行いますか?
環状紅斑とよく似た症状が出る病気としては以下が挙げられ、診察ではこれらの病気との鑑別も重要となります。
- 多形滲出性紅斑
- 結節性紅斑
- 蕁麻疹
- 接触皮膚炎
環状紅斑の治療方法
環状紅斑はどのような治療を行いますか?
痒みの症状がない軽度の環状紅斑は、ステロイドの塗り薬と抗アレルギー剤の飲み薬で改善する場合が多いです。痒みがあり湿疹が拡大している場合には、ステロイドの飲み薬を少量使用することもあります。
ステロイド外用療法
ステロイドの塗り薬について教えてください。
ステロイドの塗り薬は、効果の強いものから順に以下の5段階に分けられます。
- 1.ストロンゲスト(最も強い)
- 2.ベリーストロング(とても強い)
- 3.ストロング(強い)
- 4.ミディアム(普通)
- 5.ウィーク(弱い)
体のどの部位に症状があるかによって、薬の強さを使い分けることも重要です。
ステロイドの塗り薬を使用中に気をつけることはありますか?
また、皮膚が化膿している部分にステロイドを使用すると、症状を悪化させてしまう可能性があります。治療中に化膿症状が出た場合は早めに医師に相談し、対応方法について確認してください。
抗アレルギー剤内服療法
抗アレルギー剤の飲み薬について教えてください。
抗ヒスタミン薬は、第一世代と第二世代に分類されます。第二世代の抗ヒスタミン薬は、第一世代と比較して副作用が少なく効果の持続や治療効果も優れているため、頻繁に使用されています。
抗ヒスタミン薬を服用中に気をつけることはありますか?
また、眠気を引き起こす成分が重なることで、副作用の眠気が強く出やすくなります。そのため、市販の風邪薬、鼻炎薬、咳止め薬、乗り物酔い薬との飲み合わせには注意が必要です。抗ヒスタミン薬による治療中に市販薬を使いたいときには、薬剤師や登録販売者に相談してから使用しましょう。
ステロイド内服療法
ステロイドの飲み薬について教えてください。
湿疹の原因となっている過剰な免疫反応を体の内側から抑えることで、環状紅斑への効果が期待できます。
ステロイドの飲み薬を服用中に気をつけることはありますか?
ステロイドを使用すれば、環状紅斑は治りますか?
皮膚症状については引き続き皮膚科で治療を行い、合併する疾患や症状に対しては、それぞれの専門医が全身的な精査をしていくことになります。
編集部まとめ
円状の赤い湿疹を引き起こす環状紅斑は、病名ではなく症状名です。原因不明な場合が多いですが、シェーグレン症候群や全身性エリテマトーデスといった重大な病気が隠れている可能性もあります。
症状は自然に消えることもありますが、色素沈着を残してしまう場合もあります。ステロイドや抗アレルギー剤での治療が可能ですので、気になる症状がある場合は早めに皮膚科を受診しましょう。
環状紅斑は背景に膠原病や悪性腫瘍が隠れていることがあるため、環状紅斑を疑うような症状があれば、早めに皮膚科を受診し医師の診察を受けることがよいでしょう。
参考文献