百日咳とは、その名の通り強い咳が長く続く症状のことをいいます。子どもから大人まで誰でもかかりうる病気ですが、小さい子どもがかかった場合には死亡するリスクもあります。症状の進み具合によって「カタル期」「痙咳期(けいがいき)」「回復期」に分けられ、重症化させないためには早期発見・早期治療が重要です。
今回はそんな百日咳の概要や原因・検査方法などを解説します。
プロフィールをもっと見る
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。
百日咳とは
百日咳とはどのような疾患でしょうか?
百日咳とは、その名の通り「咳」を伴う病気のことです。百日咳菌という病原菌から飛沫感染します。百日咳にかからないためには予防が大事といわれ、小さなころからのワクチン接種が推奨されています。
誰でもかかる可能性のある病気ですが、主に乳幼児にみられ、命に関わる場合もあります。百日咳を発症した子どものうち0.2%が亡くなっています。生後6ヶ月以内の子どもに限るとその死亡率は0.6%にのぼる少し怖い病気なのです。
百日咳にかかると、肺炎・脳症などの合併症にも注意が必要です。発症した子どもの5%、生後6ヶ月以内では12%が肺炎を引き起こしています。
百日咳の症状
百日咳の症状にはどのような特徴がありますか?
百日咳に感染してすぐに発症するのではなく、潜伏期間が1~2週間あるのが特徴です。百日咳という名の通り、まるで百日間も続きそうなほど長期間にわたって強い咳が出ます。ときには嘔吐や無呼吸発作を伴う場合もあり、体力的にも辛い病気です。
子どもの場合、「カタル期」「痙咳期」「回復期」と症状が3期に分けられます。小さい子どもは命に関わる場合があるので、なるべく初期に発見するのが好ましいとされています。状態が急変し人工呼吸が必要になるケースもあるため、入院して経過観察をすることが大切です。
大人では多くの場合、咳は長引きますが、熱症状もなく軽症で済みます。
カタル期
カタル期はどのような症状がありますか?
カタル期はそこまで強い咳などはなく、風邪のような症状がみられます。1~2週間続き、症状が進むにつれてだんだん咳が強くなってくるのです。特に生後3ヵ月未満はカタル期が短いので急速に症状が進みます。そのため少しでも気になったら早めの受診が必要です。
痙咳期
痙咳期はどのような症状がありますか?
痙咳期はカタル期よりも強い咳が出ます。期間は2~4週間といわれ、連続した咳のあと、ヒューっと息を吸い込むのが特徴です。また、強い咳のため嘔吐を伴う場合があります。
さらに、夜に咳の発作が強くなることが多く、咳による不眠で体力的にも辛くなります。ネバっとした痰が出ることにより、発作が治まっていきます。こういった痙咳期特有の症状は大人の場合はあまりみられないのも特徴です。
回復期
回復期はどのような症状がありますか?
回復期になると、ようやく咳が落ち着いてきます。徐々に咳の症状が軽くなっていき、しだいに治まってきます。百日咳の最後の2週間ほどが回復期の期間です。症状が軽くなったからといって、すぐに登園、登校はやめましょう。百日咳にかかった場合は学校保健法により、特有の咳が治まるまでは行くことができません。必ず医師の診察を受けた上で証明をもらい集団生活にもどりましょう。
百日咳の原因
百日咳の原因にはどのようなものがありますか?
百日咳菌により発症します。主な感染経路は飛沫感染によるものです。百日咳にかかっている人がくしゃみをすると、空気中に百日咳菌が広がりそれを吸い込んだ人がまた感染してしまいます。潜伏期間が1週間ほどあるためすぐには発症しませんが、保菌者になり、ワクチン接種を受けていない新生児や乳幼児に知らずにうつしてしまう可能性があります。
百日咳の受診科目
症状から百日咳が疑われる場合、何科を受診したらいいでしょうか?
内科や呼吸器科を受診しましょう。子どもの場合は小児科でも大丈夫です。周りに百日咳にかかっている人がいて、自身も咳を伴う症状が現れた場合は早めに受診して検査を受けましょう。
百日咳の検査
百日咳ではどのような検査を行いますか?
問診により周囲の感染状況を聞きとって判断します。百日咳が疑われる場合、鼻咽頭ぬぐい液から百日咳菌の培養検査を行います。さらに血液中の抗体価を測定し、白血球のなかのリンパ球が増加していないかを確認します。
成人の場合、症状が軽いため自覚症状が少なく気付くのが遅れる場合もあります。知らないうちに、ワクチン未接種の新生児や乳児の感染源になりうるため注意が必要です。
百日咳の治療
百日咳の治療には、どのようなものがありますか?
百日咳の治療には、マクロライド系の抗生物質を使用することが有効です。進行してからではなくカタル期に使用すると症状が抑えられ、多くの場合は軽症で済みます。早期の受診・治療が望ましいのですが、抗生物質を使用すればその後の菌の拡散防止になるので、気付くのが遅れたとしても受診して治療することをおすすめします。
百熱咳の予防療法
百日咳の予防療法には、どのようなものがありますか?
ワクチンの接種が有効です。予防しておくことで罹患リスクを80~85%程度減らせます。幼少期から三種混合、または四種混合ワクチンの接種が推奨されており、厚生労働省によって標準的なワクチン接種スケジュールも定められています。百日咳は、ワクチン接種により発生数がかなり減少している病気です。
ワクチン接種のスケジュール
ワクチンでの予防はいつごろするのでしょうか?
ワクチンは合計5回接種します。1期は生後3ヵ月~12ヵ月の期間に20~56日の間隔をおいて3回となります。そしてそこから6ヶ月以上たつと追加接種を行います。1期はこの4回で終了です。
2期は11~12歳の期間に1回と定められています。各市町村が実施主体となってスケジュールを出しているので、案内に沿ってワクチン接種を受けましょう。
子どものころに受けたワクチンがだんだんと減弱してしまい、ワクチンを受けていても発症することがあります。ですが、成人になってからだと症状も軽めですむので、やはりワクチン接種は有効だといえます。
百日咳の性差・年齢差
百日咳の発症に性差や年齢差はありますか?
もともとは乳幼児に多くみられる病気でした。百日咳は子どもから大人までかかる病気ですが、大人は多くの場合、軽症で済みます。子ども、特に生後6ヶ月までが重篤になりやすく死亡リスクが高いので、ワクチン接種が済んでいない子どもは周囲に感染者がいる場合は接触しないように気を付ける必要があります。
編集部まとめ
百日咳はその名の通り、強い咳が長く続く病気です。ワクチン接種によって感染しにくくなるため、しっかりと各自治体の案内に沿ってワクチン接種をすることが大切です。
万が一かかってしまったら、なるべく早期の受診をしましょう。カタル期に治療を開始すれば、多くの場合は軽い症状で治まります。ですので、咳の出方が怪しいと思ったら医師に相談してみましょう。特に子どもの場合は命に関わることもあるため、少しでも気になる症状が出たら受診してください。
たかが咳だと放置せず、周りに百日咳の人はいないか、だんだん強い症状になっていないか、など体調の変化にも気を配ってしっかりと検査し特定してもらうことが重要です。