「腰椎圧迫骨折」とは?症状・原因・予防法についても解説!
腰椎圧迫骨折は通常の骨折とは違い、強い力が加わることで腰椎の「椎体(ついたい)」が潰れた状態になることをいいます。
「骨粗しょう症」が原因で起こる場合が多いため、ホルモンバランスが崩れる閉経後の高齢女性に多い症状です。
骨密度が低くなると日常的な動作でも腰椎圧迫骨折を引き起こすことがあるため、注意が必要です。
転倒・転落・スポーツなどでの外傷が原因の場合もあるため、若年層や男性でも症状が起こる可能性は十分あります。
腰椎圧迫骨折の症状・治療方法・後遺症・予防方法について詳しくみていきましょう。
監修医師:
田中 栄(医師)
目次 -INDEX-
腰椎圧迫骨折とは?
腰椎圧迫骨折とは普通の骨折とどう違うのですか?
- 骨が折れたり欠けたりした状態が普通の骨折、潰れた状態が腰椎圧迫骨折です。普通の骨折の場合は骨に力が加わることで骨が完全に折れたり、ヒビが入ったり、一部が欠けたりします。
- 一方、腰椎圧迫骨折の場合は腰椎の椎体が潰れたように変形した状態です。転倒したり尻もちをついたりしたときに腰に強い力がかかることで椎体が潰されるような状態になり、骨折が起こります。
- 複数のパーツで構成されている脊椎の中でも、とくに第11~12胸椎と第1胸腰椎移行部で多発するといわれています。
腰椎圧迫骨折でみられる症状とは何ですか?
- 腰椎圧迫骨折の主な症状は強い腰の痛みで、寝返りや起き上がりなどの動作時に強い痛みが出ることが多いのが特徴です。
- 疼痛:寝返り・起き上がり・立ち上がりなど日常的な動作で痛みが発生します。
- 叩打痛:圧迫骨折を起こした部位は突起が飛び出した状態となり、骨折部分を軽く叩いただけで強い傷みを感じます。
- 後弯変形:多発的に圧迫骨折が起こっている場合、猫背のように背骨が丸く変形します。
- 神経症状:椎体の潰れ方によっては神経を圧迫するため、視力の低下やヘルニアや狭窄症に似た下肢のしびれ・筋力の低下などの症状があります。
腰椎圧迫骨折は何が原因で発症しますか?
- 若年者と高齢者では腰椎圧迫骨折の原因は異なります。若年者の場合はスポーツでの外傷や高い場所から転落するなど、強力な外力を受けることで発症することが多いでしょう。
- 高齢者の場合は骨密度の低下によって骨の強度が弱くなることが原因になりやすく、ホルモンの影響で骨密度が低下しやすい高齢の女性に多く見られます。
- また、高齢者の場合は尻もちをついたとき・転倒したとき・重い物を持ち上げたとき・くしゃみや咳をしたときなど、日常的な動作でも骨折する可能性があります。強い痛みを伴う腰痛が長引く場合は注意が必要です。
腰椎圧迫骨折の診断・検査内容は?
腰椎圧迫骨折の診断はどのように行われますか?
- 腰椎圧迫骨折の診断では主に医師による問診とレントゲン検査を行い、総合的に判断します。
- ケガをした直後は骨の形を保っているため、1回のレントゲン検査では診断がつかない場合が多いです。そのため、症状や経過を見て総合的に判断します。
- 神経症状がみられる場合はより詳細に骨折の状況を調べるため、CTやMRI検査を行うこともあります。高齢者の場合は骨粗しょう症の検査のため、骨密度の検査も必要です。
腰椎圧迫骨折の検査内容は状態によって変わりますか?
- 腰椎圧迫骨折の検査では最初に医師による診察で問診や触診を行い、痛みの強い場所や骨折の程度を確認します。
- その後の検査は状態によって変わり、圧迫骨折の可能性がある場合はレントゲン検査が必要です。
- 腰や下肢の痛み・しびれの症状がある場合や、レントゲン検査で圧迫骨折の所見はないが症状が悪化している・長引く場合には、他の疾患の可能性がないかを調べるためにMRI検査を行うこともあります。
検査は長時間かかりますか?
- 骨折の度合いが軽度の場合、検査は比較的短時間で終わります。レントゲン検査は即日受けることができるため、検査に要する時間は5分~10分程度です。診断結果も当日聞くことができます。
- 一方でMRI検査を受ける場合は予約が必要になるため、検査までに1週間程度かかることが多いです。
- 検査にかかる時間は撮影の内容にもよりますが、10分~25分程度とレントゲン検査よりも時間がかかります。
腰椎圧迫骨折の治療方法
腰椎圧迫骨折の治療はどのような方法がありますか?
- 腰椎圧迫骨折の治療は骨折の度合いや症状によって異なります。治療方法は主に保存療法・運動療法の2つのパターンがありますが、ほとんどの場合は保存療法が行われます。
- 保存療法:腰椎圧迫骨折の治療で一般的に行われるのが「保存療法」です。麻痺などの神経症状がない場合、安静と痛みのコントロールをすることが主な治療になります。コルセットやギブスを着用して、できる限り安静を保ってください。前かがみになる姿勢は腰に負担がかかるため厳禁です。
- 運動療法:骨折後1~2週間程度の急性期は安静第一ですが、痛みに合わせて可能な範囲で下肢ROM訓練や基本動作の指導など「運動療法」を開始します。骨折後2~4週間程度の回復期になると痛みが落ち着くため、歩行訓練・下肢筋力トレーニングなども行います。
完治まで治療期間はどのくらい掛かるのでしょうか?目安を教えてください。
- 腰椎圧迫骨折の治療期間の目安として、8~9割の人が3~6ヶ月で骨癒合が見られます。
- 骨折の度合いが軽度であれば、早い人なら2週間ほどで痛みが治まる場合もあります。体を動かしたときの痛みは時間の経過で徐々に治まりますが、油断はできません。
- 痛みが引いたからといってすぐに日常生活に戻ると痛みを感じたり、新たな圧迫骨折を引き起こす場合があります。
- 長期間安静を保ったことで腰の筋力が低下しているため長時間の立ちっぱなしや座りっぱなしのような状態だと腰が痛むこともあります。無理をせず、少しずつ体を慣らしていきましょう。
腰椎圧迫骨折によって後遺症などが残る場合はありますか?
- 一度潰れてしまった椎体は二度と元に戻らないため、後遺症が残る場合もあります。
- 骨折の程度が重度な場合や神経症状がある場合は痛みが残ることがあり、背骨の曲がりや歪み・神経麻痺・歩行障害・膀胱直腸障害などの症状が残ることが考えられます。
- また、圧迫骨折の原因が骨粗しょう症の場合、転倒などによる再度の受傷に注意してください。
- 背中に筋肉をつけるトレーニングやバランス感覚を養うためのトレーニングといった運動療法を続ける必要があります。
腰椎圧迫骨折の予防方法はありますか?
- 腰椎圧迫骨折は骨粗しょう症が原因となる場合が多いです。そのため、骨粗しょう症を防ぐことがそのまま腰椎圧迫骨折の予防につながります。骨粗しょう症を予防するための生活習慣を心がけましょう。
- バランスのいい食事を心がける
- カルシウムを十分に摂る
- 適度な運動をする
- 禁煙する
- すでに骨がもろくなっている場合は、投薬や注射で骨粗しょう症を改善することも重要です。腰椎圧迫骨折を発症しやすい女性は定期的に骨密度の検査を受けるのもいいでしょう。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
- 腰椎圧迫骨折は骨粗しょう症が原因である場合が多く、高齢の女性に多い症状ですが年齢・性別に関係なく誰でも発症する可能性があります。
- 高齢者の場合は気づかないうちに骨折していることもあるため、とくに注意が必要です。腰の強い痛みがなかなか取れないといった自覚症状があれば、一度病院で診察を受けることをおすすめします。
- また、腰椎圧迫骨折があるとそれだけで骨粗鬆症の診断になるので、薬物療法が推奨されています。現在は有効性の高い薬物が沢山あるので、適切な薬物療法が重要です。
編集部まとめ
腰椎圧迫骨折は骨粗しょう症が原因となる場合が多く、ホルモンバランスが崩れる閉経後の高齢女性に多く見られる症状です。
その他にも転倒や転落、スポーツなどが原因で腰に強い力が加わった場合は若年層や男性でも腰椎圧迫骨折が起こる可能性があるため、注意が必要です。
急性期には起き上がることも動くこともできないほどの激痛を伴いますが、コルセットを装着して安静を保つことで徐々に痛みは治まります。
骨密度が低くなっている高齢者の場合、とくに注意が必要です。日常的な何気ない動作やくしゃみをしただけでも骨折する場合があります。
強い痛みを伴う腰痛が長引いている場合は腰椎圧迫骨折の可能性を考慮して、一度病院で診察を受けてみましょう。
参考文献