「後陣痛」とは?どのくらい続くかも解説!
分娩後に、激しい痛みを伴う「後陣痛」と呼ばれる症状が出ることは珍しいことではありません。
体力を要する出産が終わったと思ったら、「この痛みは何だろう?」「大丈夫かな」と痛みを感じることに不安を覚える方もいます。
「後陣痛って何?」という方に向けて後陣痛が何故起こるのか・どのような痛みが生じるのかを解説します。
後陣痛を緩和させるセルフケアの方法も紹介するため参考にしてください。
監修医師:
前田 裕斗(医師)
目次 -INDEX-
後陣痛の痛みとは?
後陣痛は何故起こるのですか?
- 後陣痛は、子宮を元の大きさに戻すための子宮収縮によって起こります。
- 妊娠中の子宮は乳児の成長に伴って大きくなり、産後4〜8週間かけて元の大きさに戻るのです。また、後陣痛は出産の際に断裂した血管からの出血を最小限に抑える役割もあります。
- 出産時には、胎盤が剥がれた部分の血管が断裂して、出血が起こります。子宮が収縮することによって断裂した血管が締まって、大量出血を防ぐのです。
- 後陣痛は出産後の生理的現象で、産婦の体を回復させるために重要な役割を果たしています。後陣痛は産婦の命を守るために必要な「良い陣痛」といわれています
重要な役割なのですね。痛みはどのくらいなのでしょうか?
- 痛みの程度は個人差がありますが、生理痛より少し強い痛みといわれています。しかし陣痛より強い痛みで夜も眠れないという方もいるため、一概に同じような痛みとは限りません。
- 痛みを感じる部位は人それぞれ異なりますが、一般的に腰・下腹部などに痛みを感じる方が多いのが特徴です。
- 初めての出産時にはあまり痛みを感じなくても経産婦で出産した際には激しい痛みを感じることもあり、同じ人でも出産の回数によって痛みの感じ方が異なります。これは経産婦の方が子宮収縮のスピードが早くなるためです
後陣痛はどのくらいの期間続くのですか?
- 後陣痛は出産当日もしくは翌日あたりに強くなっていき、産後3日頃には痛みが和らいでいきます。中には2〜4週間痛みが続く方もいるため、後陣痛の痛みを感じる期間にも個人差があります。
- 産後4週間ほどは子宮収縮が続き、痛みがなくなったと思ったら不規則に激しい痛みを感じることもあるため心構えが必要です。
- 痛みを感じるタイミングもばらばらで、1日中痛みを伴う方もいれば、授乳中だけ強烈な痛みを感じる方もいます。
後陣痛が酷くなる人の特徴は?
後陣痛の痛みが酷くなることはありますか?
- 初産婦より経産婦の方が後陣痛の痛みが出やすいといわれています。これは経産婦の方が子宮収縮のスピードが早いためです。
- また授乳によってオキトシンという子宮収縮を促すホルモンが分泌されるため、母乳育児をしている方は痛みが強くなる傾向があります。
- 双胎妊娠や羊水過多など子宮が大きく引き伸ばされた場合にも、強い痛みが出やすいです。大きく引き伸ばされた分、子宮が元の大きさに戻ろうとする力が強まるためです。
- 産院によっては子宮からの大量出血を防ぐために子宮収縮剤を投与するところもあり、その作用によって痛みが強く出るケースもあります。
後陣痛でない場合があると聞いたのですが…
- 後陣痛と同様に痛みを感じる症状を伴う、子宮内感染を患っている可能性もあります。
- 子宮内感染とは子宮筋層炎・子宮内膜炎・子宮傍結合組織炎などの産後に起こる感染症で、細菌感染により子宮が腫れて圧痛などが起こる病気です。
- 症状は下腹部痛・発熱・悪臭を伴う分泌物・骨盤痛・蒼白・悪寒・全身のだるさ・心拍数上昇などがあります。
- 子宮内感染症にかかっているかどうかは、おりものの培養検査で、細菌の有無を確認して判断します。
痛みが増した際は受診した方が良いのですか?
- あまりにも痛みが強く夜も眠れないなど日常生活に支障をきたす場合は、受診して鎮痛剤を処方してもらいましょう症状の出方には個人差があるため、あまりにも強い痛みがある際は我慢せずに病院で診てもらいましょう。
- 鎮痛剤は内服薬や座薬があり、授乳中に使用できるものもあります。強い痛みを感じるとともに、発熱・骨盤痛・悪寒など痛みとは別の症状を伴う場合は医師に相談しましょう。
- もし後陣痛ではなく子宮内感染が確認された場合は、抗生剤の内服を行いますが、重症の場合は点滴治療や入院が必要となることもあります。
- 特に帝王切開の後の方では感染が子宮切開部分に波及する可能性もあり、注意が必要です。
後陣痛でない場合に考えられる原因は?
- 後陣痛ではないのに強い痛みが続く場合は、子宮内感染の可能性があります。
- 子宮内感染が起こる原因はさまざまですが、破水から長時間経過した後のお産など、元々感染が起こりやすいお産であった場合に起こりやすいとされています。
- 出産時には子宮の内面に多数の傷がつき、子宮口が開いた状態が長くなるため子宮やその周囲に細菌が入りやすくなってしまうのです。
- また出産後に胎盤を剥がす際、なかなか剥がれないために医師が手で剥がす処置が行われた場合も子宮内感染のリスクが高まります。
- 帝王切開による出産も子宮内感染のリスクが高いため、事前に抗生剤を投与してから手術を行います。
後陣痛の対処法
後陣痛は病院で治療してもらえますか?
- 後陣痛は病気ではなく産婦の体を回復させるために必要なものなため、特別な治療はしません。
- ただし、痛みが強くて眠れない・日常生活に支障をきたす場合には鎮痛剤を処方する場合があります。鎮痛剤を投与すると痛みが和らぎ、出産で消耗した体力を回復することにつながります。
- 必要な痛みだからと我慢しすぎず、痛みでつらくなるようであれば医師に相談してみましょう。
自分で後陣痛を和らげる方法などあれば教えてください。
- 後陣痛の痛みを和らげるセルフケアはいくつか方法があります。
- お腹を温める・楽な姿勢をとる・マッサージをするなどです。痛みが強いときは体を冷やさないように注意し、子宮周辺を優しくさすりながら温めましょう。
- カイロや湯たんぽ、シャワーなどを使って温めるのもおすすめです。
- また痛みが和らぐ姿勢を探して、楽になれる姿勢を取ることも良いです。楽な姿勢を取ればリラックスもできるため、しっかり身体を休めてください。
- 痛みを感じる箇所をマッサージすると痛みが和らぐこともあります。強く押しすぎるともみ返しで逆に痛みが増す場合があるため注意しましょう。
- 冷え症に効く三陰交というツボを押すのも効果的です。三陰交とは内くるぶしから指4本上の位置にあり、そこを3〜5秒かけてゆっくり押します。3〜5回程度行うと体が温まるだけではなく、女性特有の症状に効くといわれています。
後陣痛の治療後はどのように過ごすと良いでしょうか?
- 後陣痛の痛みが和らいだ後もなるべくゆったりと安静にして過ごしましょう。
- 産後1ヶ月以内は、後陣痛による痛みがなくなったからといって子宮収縮が終わったわけではありません。
- 痛みがないからといって身体を動かしすぎると、子宮復古不全といって子宮の戻りが悪くなる可能性があります。
- 産後に人と話したりリラックスできるような軽いストレッチをしたりする気分転換は良いですが、激しい運動などは避けて過ごしましょう。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
- 後陣痛は、陣痛よりも痛みを感じる方もいるほどつらい状況になることがあります。
- 出産で体力を使った後に再び痛みを経験するのは心身ともにつらいですが、身体が回復している証拠です。
- 子宮収縮が起こらず子宮の戻りが悪くなると大量出血を起こしたり、感染症にかかりやすくなったりします。後陣痛が生じている間はなるべく安静に過ごして、自分の身体を労ってあげましょう。
- 身体を温めたり、マッサージをしたりすることはリラックス効果もあるためおすすめです。
- 万が一強い痛みとともに発熱や悪寒などの不調がある場合は、子宮内感染を起こしている可能性があるためすぐに医師に相談してください。
編集部まとめ
後陣痛とは産後の子宮を元の状態に戻すために必要な過程です。子宮が元の大きさに戻ろうとする際に子宮収縮が起こり、その収縮が痛みとなって現れます。
子宮収縮は子宮内の出血を抑える効果もあるため、なくてはならない生理的現象です。
痛みには個人差があり、生理痛より少し痛い・陣痛より痛いなどさまざまな感じ方をするのが特徴です。
後陣痛は身体を温める・楽な姿勢を取る・マッサージをするなどのセルフケアによって痛みが和らぐことがあるため試してみてください。
後陣痛のような痛みを感じるだけではなく、発熱やだるさなど他の症状を伴う場合は子宮内感染を起こしている可能性があります。
子宮内感染症が疑われる場合はすぐに医師に相談し、対処するようにしましょう。
参考文献