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【医師が監修】「クラッシュ症候群」とは?症状・原因・治療法も解説!

 更新日:2023/04/03
【医師が監修】「クラッシュ症候群」とは?症状・原因・治療法も解説!

阪神淡路大震災をきっかけに、広く知られるようになった「クラッシュ症候群」。長い時間重量物に挟まれていたために、救助した数時間後にショック症状により死亡してしまう病気です。災害などの特殊な状況下で起こりやすいことで知られています。
今回は、クラッシュ症候群の特徴や症状、原因、治療方法、受診科目などを紹介します。

後藤 礼司

監修医師
後藤 礼司(医師)

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藤田保健衛生大学医学部(現・藤田医科大学)卒業。その後、常滑市民病院、総合大雄会病院にて循環器内科医長、感染症科部長を経て2020年4月より愛知医科大学循環器内科助教。主な研究内容は冠動脈疾患、心不全、感染症。TBS「グッとラック!」、CBCテレビ「ゴゴスマ」などテレビ出演多数。雑誌、新聞などで多くの医療情報を発信している。日本循環器学会循環器内科専門医、日本内科学会総合内科専門医、インフェクションコントロールドクター。

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クラッシュ症候群とは

クラッシュ症候群とは

クラッシュ症候群とはどのような病気ですか?

クラッシュ症候群は、重量物に挟まれ臀部(でんぶ)・腕・脚などを4〜6時間圧迫されたあと、解放されることで発症します。中には1時間以内の圧迫で発症した例もあるため、短時間でも注意が必要です。「圧挫症候群」や「挫滅症候群」ともいわれます。
倒壊した建物の瓦礫の下などから救出されたときは、意識ははっきりしていて軽傷にみえる場合もあります。しかし圧迫を解放して数時間後、急性腎障害や高カリウム血症などを発症して意識が薄れてしまうのです。

このときに適切な処置が行われないと、腎障害の進行や高カリウム血症による致死性不整脈を発症して死にいたることもあります。

クラッシュ症候群が知られるようになったきっかけを教えてください。

日本で知られるようになったきっかけは、1995年1月17日に起こった阪神淡路大震災です。阪神淡路大震災では、370名以上にクラッシュ症候群がみられたと報告されています。
世界では、第二次世界大戦でドイツ軍がロンドンに空襲を行ったとき、瓦礫の下から救出された人々が発症したものが最初の報告といわれています。

このように、戦争や地震などの特殊な状況で発症することがほとんどで、阪神淡路大震災以前の国内ではあまり知られていませんでした。

クラッシュ症候群の症状

クラッシュ症候群はどのような症状が現れますか?

クラッシュ症候群の症状は、ショックと血圧低下、損傷した四肢のひどい腫れ、圧迫された四肢の運動・感覚神経障害、褐色尿(ポートワイン尿)です。

ショック・血圧低下

ショック・血圧低下とはどのような症状ですか?

長時間圧迫されることで、血管内皮という血管の内側の層が障害を起こします。圧迫から解放されて血流が再開すると、血管内皮に障害を起こした場所から、血液中の水分が血管外へ流出します。そのため、循環する血液量が減って血圧が下がるのです。
一方で、意識やバイタルサインが正常な場合もあります。

損傷した四肢のひどい腫れ

損傷した四肢のひどい腫れとはどのような症状ですか?

先ほど解説した血管内皮の傷害によるものです。血流再開と共に血液中の水分が、損傷した四肢の血管外へ流出することで、ひどく腫れます。

四肢の運動・感覚神経障害

四肢の運動・感覚神経障害とはどのような症状ですか?

四肢が長時間圧迫されることで感覚がなくなったり、動かせなくなったりします。この場合、脊髄損傷との鑑別が必要です。脊髄損傷の場合は陰茎の持続的勃起や、肛門括約筋の弛緩が認められます。

褐色尿(ポートワイン尿)

褐色尿(ポートワイン尿)とはどのような症状ですか?

長時間の圧迫により筋肉の細胞が壊死します。圧迫から解放されて血流が再開すると、壊死した筋肉の細胞からミオグロビンなどが大量に血液中に漏出します。そのミオグロビンが尿中に排出されるため、尿が褐色や黒色になるのです。

クラッシュ症候群の原因

クラッシュ症候群の原因

クラッシュ症候群の原因は何ですか?

クラッシュ症候群は、臀部・腕・脚などを長時間圧迫されることで起こります。血流が停滞して筋肉の細胞が壊死します。目安は2時間以上の圧迫です。

圧迫から解放後、壊死した筋肉の細胞から大量のミオグロビン・カリウム・乳酸などが血流にのって全身に流れます。これらの濃度は通常の数倍から数百倍です。
高濃度のミオグロビンは腎臓の尿細管に障害を起こすことで、急性腎障害を引き起こします。高濃度のカリウムは高カリウム血症を起こして筋肉を痙攣させ、心室細動などの致死性不整脈を引き起こします。
そして高濃度の乳酸は、体内を酸性にする乳酸アシドーシスを引き起こし、酸素の働きを低下させてしまうのです。

また脚の局所では、ひどい腫れによってコンパートメント症候群を発症し、重い四肢機能障害が発生する可能性があります。

クラッシュ症候群の代表的な病気

クラッシュ症候群の代表的な病気を教えてください。

急性腎障害や心室細動、コンパートメント症候群があります。

急性腎障害

急性腎障害とはどのような病気ですか?

急性腎障害とは数時間から数日の間に、急激に腎機能が低下する病気です。腎臓は老廃物をろ過する働きがありますが、腎機能が低下すると尿から老廃物を排せつできなくなるため、身体中に老廃物が巡ってしまいます。

クラッシュ症候群では壊死した筋肉の細胞から大量のミオグロビンが血流に漏出し、腎臓の尿細管に障害を起こすことで、急性腎障害を引き起こします。

心室細動

心室細動とはどのような病気ですか?

心臓には4つの部屋がありますが、そのうち2つが心室(右心室、左心室)です。心室は全身に血液を送る働きがありますが、心室細動では心室が震えて(細動)血液を送れなくなってしまいます。
腎臓や肝臓、脳などの重要な臓器に血液が送れなくなり、いずれ心臓が完全に停止してしまうリスクがあるのです。
クラッシュ症候群では、高カリウム血症により心室細動が引き起こされる可能性があります。

コンパートメント症候群

コンパートメント症候群とはどのような病気ですか?

コンパートメント症候群は損傷部位が腫れることで、手足が痛くなったりしびれたり、血行を阻害したりする病気です。悪化すると筋肉が壊死する可能性があります。
クラッシュ症候群では四肢がひどく腫れることで、コンパートメント症候群を発症する可能性があります。

クラッシュ症候群を防ぐために

災害や事故で建物の下敷きになったときはどのように対応すればいいですか?

連絡ができる人は速やかに119番しましょう。難しい場合は近くの人に助けを求めてください。圧迫されている箇所をできるだけ早く解放することが重要です。

クラッシュ症候群の検査

クラッシュ症候群ではどのような検査を行いますか?

血液検査でクレアチンキナーゼ・ミオグロビン・カリウムなどの数値を調べます。また、心電図もチェックします。

クラッシュ症候群の治療方法

クラッシュ症候群ではどのような治療を行いますか?

急性腎障害や高カリウム血症などをモニタリングするため、集中治療室で管理します。
大量の輸血により循環血漿量を維持して、急性腎障害の進行を止めます。また高くなったカリウム値を低下させるために、重炭酸水素ナトリウムを投与します。それでもコントロールできない場合は血液透析が必要です。

編集部まとめ

クラッシュ症候群は、臀部・腕・脚などを重量物で長時間圧迫され、解放されたあとに発症する病気です。
解放された時は意識がはっきりしていて軽傷に見える場合もありますが、数時間後に意識が薄れて死にいたる場合もあるので、注意が必要です。

四肢が長時間圧迫されて筋肉細胞が壊死した場合、解放されたあと、壊死した筋肉細胞から大量のミオグロビン・カリウム・乳酸などが血流にのって全身を巡ります。これによりさまざまな症状が現れますが、特に命に関わるのは急性腎障害や高カリウム血症による心室細動です。

災害や事故で建物の下敷きになった場合、連絡ができる人は速やかに119番しましょう。難しい場合は近くの人に助けを求めてください。速やかな救急搬送が重要です。

この記事の監修医師

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