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「膠原病」とは?症状・原因についても解説!

 更新日:2023/03/27
「膠原病」とは?症状・原因についても解説!

膠原病という病名は聞いたことがあるけれども、具体的にどのような病気かはよくわからないという人も多いのではないでしょうか。膠原病は、多数の臓器が炎症を起こす病気をまとめた呼び名で、膠原病という一つの病気があるわけではありません。

今回は膠原病の症状や代表的な病気、男女比や好発年齢などについて詳しく解説していきます。

武井 智昭

監修医師
武井 智昭(高座渋谷つばさクリニック)

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【経歴】
平成14年慶應義塾大学医学部を卒業。同年4月より慶應義塾大学病院 にて小児科研修。平成16年に立川共済病院、平成17年平塚共済病院(小児科医長)で勤務のかたわら、平成22年北里大学北里研究所病原微生物分子疫学教室にて研究員を兼任。新生児医療・救急医療・障害者医療などの研鑽を積む。平成24年から横浜市内のクリニックの副院長として日々臨床にあたり、内科領域の診療・訪問診療を行う。平成29年2月より横浜市社会事業協会が開設する「なごみクリニック」の院長に就任。令和2年4月より「高座渋谷つばさクリニック」の院長に就任。

日本小児科学会専門医・指導医、日本小児感染症学会認定 インフェクションコントロールドクター(ICD)、臨床研修指導医(日本小児科学会)、抗菌化学療法認定医
医師+(いしぷらす)所属

膠原病とは

膠原病とはどういった病気ですか?

膠原病は一つの病気の名前ではありません。皮膚や血管、内臓の結合組織などに炎症が起こり、多数の臓器に一度に異常が生じている病気をまとめた呼び名です。
1942年に米国の病理学者であるPaul Klemperer(ポール・クレンペラー)により、提唱された病気の考え方です。
ポールは、多くの臓器が一度に障害されて、どの臓器が根源であるかを特定できない病気があることに気づいたのです。それまでは、一つの臓器が障害されて病気は起こると考えられていました。膠原病という呼び名は、人間の細胞をつなぎ合わせている膠原線維がフィブリノイド変性を起こしていることからつけられました。
膠原病は、自らの臓器を組み立てている細胞やたんぱく質に異常な免疫反応がみられるため、自己免疫疾患とも呼ばれます。
1950年に、全身性エリテマトーデス、リウマチ熱、皮膚筋・多発性筋炎、強皮症、関節リウマチ、結節性多発性動脈周囲炎の6つの病気が膠原病に含まれました。これら6つは古典的膠原病と呼ばれています。
その後に、細菌感染で起こると判明したリウマチ熱は膠原病から除かれ、混合性結合組織病、シェーグレン症候群などの複数の病気が膠原病に追加されました。

膠原病の症状

膠原病の症状

膠原病ではどのような症状がみられますか?

膠原病には多くの病気があり、症状は多彩です。
膠原病に共通する症状として、次の症状がみられます。

  • 発熱
  • 倦怠感
  • 体重減少
  • 関節の痛みや腫れ、こわばりなどの関節症状
  • 筋力低下や筋の痛みなどの筋症状
  • 湿疹、黒ずみなどの皮膚症状
  • 手の指が真っ白になるレイノー症状
  • 咳や息切れなどの呼吸器症状
  • 眼の乾燥やゴロゴロした感じ、視力異常などの眼の症状
  • 動悸、高血圧などの循環器症状
  • 腹痛、食欲低下、口内炎などの消化器症状
  • 麻痺や知覚・運動異常などの神経症状
  • リンパ節の腫れ
  • 皮下結節(皮膚の下にできるしこり)

膠原病の原因

膠原病の原因

膠原病の原因は何でしょうか?

自分の体に細菌やウイルスなどの異物が入ってきたときに、異物を追い出そうとして起こる免疫反応が、自分自身を攻撃することで起こります。通常ならば、異物のみを攻撃しますが、自分の関節や筋肉、皮膚などの組織を攻撃してしまうリンパ球や抗体が血液中にできることが膠原病を起こす原因と考えられています。
遺伝的、体質的な要因、環境因子やウイルス感染なども、膠原病の発症に関与しているといわれています。

膠原病の代表的な病気

膠原病の代表的な病気について教えてください。

膠原病には、全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎・多発性筋炎、強皮症、結節性多発性動脈周囲炎、シェーグレン症候群、関節リウマチ、混合性結合組織病(MCTD)、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(チャーグ・シュトラウス症候群)、多発血管炎性肉芽腫症(ウェゲナー肉芽腫症)、顕微鏡的多発血管炎、巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)、高安動脈炎(大動脈炎症候群)、強直性脊椎炎、リウマチ性多発筋痛症、好酸球性筋膜炎、再発性多発軟骨炎、成人スティル病、乾癬性関節炎、サルコイドーシス、ベーチェット病など、多数の病気があります。
多くの膠原病の中から、代表的な膠原病の病気として、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)、シェーグレン症候群、強皮症、皮膚筋炎・多発性筋炎が挙げられます。

全身性エリテマトーデス(SLE)

全身性エリテマトーデス(SLE)とはどのような病気ですか?

英語名のSystemic Lupus Erythematosusの頭文字をとってSLEとも呼ばれます。
自己免疫反応によって、発熱、 倦怠感 などの症状や、関節、皮膚、腎臓、肺、中枢神経などにさまざまな症状がみられる病気です。
蝶が羽を広げている形にみえる蝶型紅斑と呼ばれる赤い発疹が、両頬にみられるのが特徴です。顔面や耳、首のまわりにもかさかさした丸い紅斑が現れます。
関節症状として、手指の痛みがよくみられ、数日単位で痛む関節の場所が変わる移動性の関節炎が肘や膝に出ることもあります。

関節リウマチ(RA)

関節リウマチ(RA)とはどのような病気ですか?

関節内の滑膜細胞に炎症が起こり、全身の関節が腫れて痛む病気です。
手指や手関節、足の指などの小さな関節の腫れやこわばりがみられます。関節の炎症にとどまらず、骨や軟骨が破壊されて、関節や骨の強い変形が起こることもあります。関節の変形が生じると、日常生活動作が障害され、生活の質は著しく低下します。
発熱、筋の痛み、倦怠感、体重減少、うつ症状などの全身症状もみられます。
原因として考えられているのは、自己免疫異常の関与です。

シェーグレン症候群

シェーグレン症候群とはどのような病気ですか?

涙腺と唾液腺に慢性の炎症が起こり、目や口が乾く症状がみられる病気です。病気の経過中に腎臓、膵臓、肺、血液、皮膚、末梢神経などの全身の臓器が障害されるタイプもあります。
単独でみられるのではなく、ほかの膠原病に合併して起こる場合が多い病気です。遺伝的な要因やウイルスなどの環境要因、免疫異常、女性ホルモンの関与が原因として考えられています。

強皮症

強皮症とはどのような病気ですか?

皮膚や内臓に症状が出る全身性強皮症と皮膚だけに症状が出る限局性強皮症があります。
冷たいものに触れると手指が真っ白になるレイノー症状や皮膚が硬くなっていく症状がみられます。主にみられるのは、手指の腫れやこわばり、指が曲がって伸びない症状ですが、皮膚の硬さが手背や前腕、上腕、体幹といった体の中心にも認められる場合があります。皮膚の潰瘍や、肺、腎臓、食道に症状が現れる場合もあります。
原因として考えられているのは線維芽細胞の活性化、血管障害、免疫異常の関与です。

皮膚筋炎・多発性筋炎

皮膚筋炎・多発性筋炎とはどのような病気ですか?

筋肉が炎症を起こして、筋力低下や疲れやすさ、痛みなどがみられる病気です。皮膚筋炎では、手指の関節背面、肘関節や膝関節の外側、まぶたに独特な紅斑が認められます。
自己免疫が筋肉や皮膚を攻撃することが原因で起こる病気です。

膠原病の受診科目

膠原病と思われる症状があれば何科を受診すればよいでしょうか?

膠原病の症状は病気によってさまざまです。初期症状は風邪症状にも似ているため、症状から膠原病と判断するのは困難です。体調が悪いと感じたら、かかりつけ医を受診し、検査を受けることが膠原病の早期発見につながります。
関節の痛みや腫れ、倦怠感、微熱、目や口の渇きなどの症状が1か月以上続いている場合など、膠原病が疑われる症状が継続していれば、膠原病内科やリウマチ内科などの専門外来を受診しましょう。

膠原病で行う検査

膠原病で行う検査

膠原病ではどのような検査を行いますか?

尿検査、血液検査、胸腹部や関節のX線検査などの基本的な検査と、膠原病の患者が持っていることが多い抗核抗体や、リウマチの診断に有用なリウマトイド因子、慢性炎症で増加する血清補体価(CH50)の検査も行います。
炎症マーカー、血清免疫検査、画像検査、組織検査などを実施して、疑われる病気を絞り込みます。

膠原病の性差・年齢差など

膠原病に性差や年齢差などはあるのでしょうか?

一般的に膠原病は若い女性に多くみられますが、病気によって性差や年齢差は異なります。膠原病の代表的な病気の性差・年齢差を以下に挙げます。

結節性多発動脈炎の平均発症年齢は55歳であり、男女比は男性:女性=3:1程度で男性に多く発症します。
シェーグレン症候群の男女比は男性:女性=1:9~20で、圧倒的に女性に多い病気です。発症は40歳~60歳に多くみられますが、子どもから高齢者まで発症します。
関節リウマチの男女比は男性:女性=1:4.7と女性に多い病気です。
全身性エリテマトーデス(SLE)は、20代~40代の女性に好発し、男女比は男性:女性=1:10です。
全身性強皮症の男女比は男性:女性=1:12であり、30代~50代の女性に好発します。

編集部まとめ

膠原病は多数の臓器が炎症を起こす病気の総称です。膠原病には多くの病気があり、症状もさまざまです。共通してみられる症状は、発熱や倦怠感などで、初期症状は風邪と似ています。

進行すると関節の変形や臓器の障害が出てくるので、体調不良を感じたらかかりつけ医を受診しましょう。微熱や関節炎などの症状が1か月以上続いている場合も、膠原病内科やリウマチ内科といった専門医を受診し、早めの診断と適切な治療につなげましょう。

参考文献

この記事の監修医師