「統合失調症」とは?症状・原因について詳しく解説!
更新日:2023/03/27
統合失調症は、考え方や行動などをうまくまとめることができなくなる病気です。100人に1人くらいの人がかかると言われており、決してめずらしい病気ではありません。適切な治療・リハビリを行うことで、症状を和らげることができます。
今回は、統合失調症とはどのような病気か、症状や原因、受診科目などを解説します。
監修医師:
稲川 優多(医師)
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自治医科大学勤務。医学博士、公認心理師。日本精神神経学会精神科専門医・指導医・認知症診療医、日本老年精神医学会専門医・指導医、日本医師会認定産業医、精神保健指定医。
統合失調症とは
統合失調症とはどのような病気ですか?
統合失調症は、こころや考えがまとまりにくくなることで、気分や行動、人間関係等に影響を及ぼしてしまう病気です。健康なときにはなかった状態が現れる幻覚などの陽性症状と、健康なときに合ったものが失われる陰性症状などがあります。
日本での患者数は約80万人で、決してめずらしい病気ではありません。
はっきりとした原因は分かっていませんが、本人が持って生まれたストレス耐性や環境、遺伝子的な素因が関係しているのではないかと考えられています。
早く治療を始めるほど、回復も早いと言われているため、周囲が変化に気づいたときは早めに専門機関に相談しましょう。現在では、新しい薬や治療法の開発が進んだことで、長期的には多くの患者さんの回復を期待できるようになっています。
日本での患者数は約80万人で、決してめずらしい病気ではありません。
はっきりとした原因は分かっていませんが、本人が持って生まれたストレス耐性や環境、遺伝子的な素因が関係しているのではないかと考えられています。
早く治療を始めるほど、回復も早いと言われているため、周囲が変化に気づいたときは早めに専門機関に相談しましょう。現在では、新しい薬や治療法の開発が進んだことで、長期的には多くの患者さんの回復を期待できるようになっています。
統合失調症の症状
統合失調症ではどのような症状が現れますか?
統合失調症は、脳のさまざまな働きを整理するのが難しくなります。代表的な症状は「幻覚」や「妄想」です。
幻想と妄想は何が違うのですか?
「幻覚」とは、実際にはないものを感覚として感じられる症状です。一方、「妄想」とは明らかに間違っている内容を信じてしまい、周りの人たちが訂正しても自分では受け入れられない考えのことを言います。
幻覚や妄想は、本人にとっては実際に起こっていることのように感じられるため、背景に病気が潜んでいることに気づきにくいのが特徴です。
幻覚や妄想は、本人にとっては実際に起こっていることのように感じられるため、背景に病気が潜んでいることに気づきにくいのが特徴です。
そのほかの症状を教えてください。
そのほかには、統合失調症は大きく「陽性症状」「陰性症状」「認知機能障害」の3つの症状に分けられます。
陽性症状
陽性症状について教えてください。
陽性症状には以下のような症状があります。例を交えながら説明します。
- 妄想
「テレビやネットで自分のことが話題になっている」「誰かにずっと監視されている」など、実際にはないことが起こっているように感じます。被害妄想もその一つで、誰かに後をつけられているように感じたり、見ず知らずの人に噂されているように感じたりすることもあります。 - 幻覚
幻覚では幻聴や幻視など存在しないものを、現実的な感覚として捉えることがあります。周りに誰もいないのに自分の悪口が聞こえたり、本来はないはずのものが見えたりするなどの症状が特徴です。 - 思考障害
思考障害も統合失調症の特徴です。思考が混乱してうまく整理できないため、考え方に一貫性がなくなるなどの症状が現れます。
陰性症状
陰性症状について教えてください。
陰性症状には以下のような症状があります。例を交えながら説明します。
- 感情の平板化(感情鈍麻)
感情表現が鈍くなり、喜怒哀楽の表現が乏しくなります。また、家族や友人など他人の感情表現に対して共感したり理解しにくくなったりします。 - 思考の貧困
会話の量や質が低下して、比喩などの抽象的な言い回しが使えなくなる、または理解できなくなります。また、会話が続かなくなることで、言葉のキャッチボールがうまくできなくなることがあります。 - 意欲の欠如
物事に対する意欲が低下するため、自発的に行動することができなくなってしまいます。 - 社会的引きこもり(自閉)
自分の世界に閉じこもり、社会との距離を作り他者とのコミュニケーションを取ることを避けるようになります。発症して適切な治療を行わなければ、何年・何十年と家に引きこもるようになり、社会参加を拒絶してしまうこともあります。
認知機能障害
認知機能障害について教えてください。
認知機能障害には以下のような症状があります。例を交えながら説明します。
- 記憶力の低下
人の顔や名前、道、仕事などを覚えるのに時間がかかるようになります。 - 注意・集中力の低下
目の前の仕事や作業、勉強に集中できなくなったり、自分の考えをまとめたりすることができなくなります。 - 判断力の低下
優先順位をつけて行動・判断したり、計画を立てられなくなったりします。
統合失調症の原因
統合失調症はなぜ起こるのですか?
統合失調症の発症の原因は、正確にはわかっていません。しかし、脳内の情報を伝える神経伝達物質のバランスが崩れることが関係しているのではないかと考えられています。
統合失調症になりやすい要因をいくつかもっている人が、仕事や人間関係のストレス、就職や結婚など人生の転機や節目に感じる緊張などがきっかけで発症するのではないかと考えられています。また近年では、脳の感染症や遺伝子も関与していることが分かってきました。
統合失調症になりやすい要因をいくつかもっている人が、仕事や人間関係のストレス、就職や結婚など人生の転機や節目に感じる緊張などがきっかけで発症するのではないかと考えられています。また近年では、脳の感染症や遺伝子も関与していることが分かってきました。
遺伝的な素因
遺伝子が統合失調症の発症のしやすさに関係しているのですか?
遺伝的な素因も統合失調症の発症に関係していると考えられています。統合失調症を持つ親や兄弟・姉妹を持つ人は発症リスクが約10%。一卵性双生児の1人が統合失調症の場合には、もう1人の発生リスクは約50%になることが分かっています。
家族に統合失調症を持つ人がおり、兄弟や子どもにも徴候が見られたら専門機関で検査を受けましょう。
家族に統合失調症を持つ人がおり、兄弟や子どもにも徴候が見られたら専門機関で検査を受けましょう。
統合失調症の受診科目
統合失調症の疑いがあれば何科を受診すればいいでしょうか?
統合失調症の疑いがある場合は、精神科や心療内科を受診しましょう。精神科や心療内科では薬物療法や精神科リハビリテーションを行います。現在では症状を抑える薬もあり、症状を抑えられるようになってきています。
判断に迷うときは、精神保健福祉センターや最寄りの保健所などに相談したり、内科のかかりつけ医に相談したりするのも良いでしょう。
判断に迷うときは、精神保健福祉センターや最寄りの保健所などに相談したり、内科のかかりつけ医に相談したりするのも良いでしょう。
統合失調症の検査
統合失調症はどのような検査を行うのですか?
統合失調症では、基本的には問診を行います。問診では、患者さんの症状や経過、ほかに病気が潜んでいないか症状を確認します。また服薬状況や生活歴・家族歴などを総合的にみて判断します。
ほかの病気との鑑別のために血液検査やCT検査、MRI検査などの画像診断を用いることもあります。
ほかの病気との鑑別のために血液検査やCT検査、MRI検査などの画像診断を用いることもあります。
統合失調症の性差・年齢差
統合失調症には性別差や年齢差はありますか?
統合失調症は主に10〜30代で発症します。男女差はほとんどなく、女性では少し発症が遅い場合がありますが、いずれにしろ高齢で発症することは稀です。
世界的にみると、おおよそ1000人に7〜8人が発症し、日本では約80万人の患者がいます。
世界的にみると、おおよそ1000人に7〜8人が発症し、日本では約80万人の患者がいます。
編集部まとめ
統合失調症は、考え方や行動などをうまくまとめることができなくなる病気です。現在日本には約80万人の患者がおり、決してめずらしい病気ではありません。
はっきりとした原因は分かっておらず、遺伝的な素因も関係しています。症状には妄想や幻覚がありますが、適切な治療やリハビリを行うことで、症状を和らげることができます。
特に10〜30代で発症するため、周りが本人の変化に気づいてあげることも大切です。気になる症状があれば、精神科や心療内科などを受診しましょう。
参考文献