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統合失調症の症状や原因、治療方法とは?

 更新日:2023/03/27

統合失調症(読み方:とうごうしっちょうしょう)とはどんな病気なのでしょうか?その原因や、主にみられる症状、一般的な治療方法などについて、医療機関や学会が発信している情報と、専門家であるドクターのコメントをまじえつつ、Medical DOC編集部よりお届けします。

この記事の監修ドクター:
遠藤佐保子 医師(陽だまりクリニック 院長)

統合失調症とは

統合失調症は、幻覚や妄想という症状が特徴的な精神疾患です。それに伴って、人々と交流しながら家庭や社会で生活を営む機能が障害を受け(生活の障害)、「感覚・思考・行動が病気のために歪んでいる」ことを自分で振り返って考えることが難しくなりやすい(病識の障害)、という特徴を併せもっています。

多くの精神疾患と同じように慢性の経過をたどりやすく、その間に幻覚や妄想が強くなる急性期が出現します。
新しい薬の開発と心理社会的ケアの進歩により、初発患者のほぼ半数は、完全かつ長期的な回復を期待できるようになりました(WHO 2001)。
以前は「精神分裂病」が正式の病名でしたが、「統合失調症」へと名称変更されました。

厚生労働省「知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス」
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_into.html

遠藤佐保子 医師 陽だまりクリニック 院長ドクターの解説
統合失調症は大きく分けて3つのタイプがあります。(1)破瓜(はか)型、(2)緊張型、(3)妄想型です。各タイプの主な症状は次の通りです。
(1)破瓜型:意欲が低下したり、感情の平板化が起こったりする
(2)緊張型:極度に緊張したり、変わった行動をとったりする
(3)妄想型:妄想や幻覚を訴える
一昔前、統合失調症が早発性痴呆と呼ばれていた頃は、若い時に破瓜型を発症して人格が荒廃し、認知症のようになってしまうケースが多くありましたが、現在では薬を飲みながら社会生活を送ることは十分可能です。統合失調症は10代後半から20代前半で発症する患者さんが多いです。それよりも年齢が低いお子さんの場合、発達障害の中に統合失調症と間違われる症状が見られる可能性もあり、診断は専門家でも困難です。

統合失調症の症状

知覚・思考・感情・意欲・認知機能など、多くの精神機能領域の症状があります。
1.陽性症状といって、幻聴や体感幻覚などの幻覚や被害妄想に代表される妄想体験など、精神の不調が外にはっきり現れるものや、
2.陰性症状といって、感情がいきいきとわかなくなったり、やる気がおきなくなったりする自発性低下、部屋に閉じこもって、他人との交流を避けるようになる社会的ひきこもりなど、気力や活力が減退した状態となったり、
3.認知機能障害といって、記憶力や、注意集中力が損なわれ、物事を段取りよく処理する作業能力が損なわれることがあります(図1参照)。

引用:地域精神保健福祉機構
https://www.comhbo.net/?page_id=8553

遠藤佐保子 医師 陽だまりクリニック 院長ドクターの解説
統合失調症の症状には、幻覚や妄想などを生じる陽性症状と、意欲の減退などを生じる陰性症状があります。統合失調症は100人に1人いると言われている病気であり、極端に珍しい病気ではありませんが、症状の重さは人それぞれです。陽性症状が活発な人は日常生活が立ち行かなくなってしまうので、最終的に入院や治療が必要になるでしょう。その一方で、治療を受けなくても「ちょっと変わっている人」として社会の中で過ごせる人も少数派ですが存在します。精神障害全般に言えることですが、病気になったり症状が重くなったりする人が多いのは「木の芽時」(冬から春への季節の変わり目)です。

統合失調症の原因

この病気の原因は十分明らかにされておらず、単一の疾患であることにさえ疑いが向けられている。
しかしながら、何らかの遺伝的な脆弱性と環境的な負荷、とくに対人的な緊張が重なって発病に至ることは、ほぼ認められている。とくに再発に関する研究では、家族のなかで、人を批判するような内容を強い口調で言い合うことが、患者の緊張を高め、再発率を上げることが知られている。ただし、親の育て方が悪かったというようなあまりにも単純な説明は、今日では受け入れられない。

引用:日本精神神経学会
https://www.jspn.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=79

統合失調症の検査法

妄想(訂正できない思い込み)や幻覚(ほとんどは、実際にない声が聞こえる幻聴が特徴的です)、脱線した話し方、行動がまとまらない、などの陽性症状と、感情がわかない、意欲がなくなるなどの陰性症状が1か月以上つづき、仕事や対人関係、自己管理に著しい支障をきたしている時に診断します。
鑑別診断としては、妄想を呈する他の精神疾患として、妄想性障害や緊張病、また気分の症状が生じるうつ病や双極性障害、さらには、乱用薬物や医薬品、その他の身体疾患による精神障害を否定する必要があります。特に、統合失調症の初期は、非特異的な不安緊張や疲労感のみが訴えられることもあり、うつ病と診断されることもあります。
また、中年期以降で突如生じた、まとまりのない言動や行動は、脳内病変や全身性疾患などの身体疾患をまず疑って、慎重に身体検査を行う必要があります。

引用:地域精神保健福祉機構
https://www.comhbo.net/?page_id=8553

遠藤佐保子 医師 陽だまりクリニック 院長ドクターの解説
統合失調症は患者さんが自分自身の病気を認識しづらいことが特徴です。家族や周囲の人が「元気がないのでうつではないか」等と心配して受診を勧め、調べてみると統合失調症だったというケースがよくあります。また、患者さんの中には、まれに脳の病気で幻聴が出る人もいます。統合失調症と鑑別するために、可能であればMRIやCTの検査を実施することが望ましいでしょう。

統合失調症の治療方法

一般に、治療では以下を目標とします。
・精神病症状を軽減する。
・症状の再発とそれに伴う日常生活機能の低下を予防する。
・日常生活機能をできるだけ高い水準で維持できるように患者を支援する
抗精神病薬、リハビリテーションと地域支援活動、および精神療法が治療の中心になります。

引用:MSDマニュアル家庭版
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/ホーム/10-心の健康問題/統合失調症と妄想性障害/統合失調症

遠藤佐保子 医師 陽だまりクリニック 院長ドクターの解説
統合失調症は、陽性症状が終わった後に必ず陰性症状が現れ、意欲が減退して無気力になりがちです。陰性症状の時はリハビリとしてデイケア施設で作業療法やレクリエーションなどを行いながら社会生活を送れるように工夫します。患者さんは幻聴や妄想に支配されることが多いため、家族や周囲の人は「患者さんの訴えは否定しないけれど、一方で病気も認めない」という態度が必要です。例えば、患者さんが「何か聞こえる」と言っていても、「私には聞こえないけれど、聞こえているあなたはとてもつらいだろうね」と返事します。統合失調症は慢性の病気のため、発症後はずっと病気と付き合いながら生きていかないといけません。しかし現在は適切な薬物療法を行えば、仕事をしたり、人と交流したりと、社会の中で生活することは十分可能になっています。患者さん本人も、家族や周囲の人も「怖い病気だ」「あの人はすべてがおかしくなってしまった」というイメージは持たず、前向きに治療に臨んでいただければと思います。

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