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「ビタミンB6」サプリメントを”過剰摂取”すると現れる症状とは?管理栄養士が解説!

 公開日:2025/12/15

ビタミンB6を過剰摂取するとどうなる?メディカルドック監修医がビタミンB6の一日の摂取量・効果・過剰摂取すると現れる副作用・対処法・効率的な摂取方法などを解説します。

長井 彩子

監修管理栄養士
長井 彩子(管理栄養士)

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2009年、管理栄養士国家試験事業スタート。2015年、(一社)管理栄養士地位向上協会を設立。2019年、日本栄養士会の認定を受け、認定栄養ケア・ステーション ファンスタディを設立。公衆栄養活動などを推進し、現在に至る。

「ビタミンB6」とは?

「ビタミンB6」とは?

ビタミンB6は、ピリドキシン・ピリドキサール・ピリドキサミンといった複数の化合物の総称で、いずれも体内でビタミンB6としての活性を持ちます。食品中では、主にリン酸化された形やたんぱく質と結合した形で存在し、調理や消化の過程で分解され、吸収されやすい形へと変化します。体内では、補酵素としてアミノ酸の代謝をはじめ、神経伝達物質の合成、赤血球中のヘモグロビンの生成、免疫機能の維持、皮膚の健康維持、脂質代謝など、さまざまな生理機能に関与しています。

ビタミンB6の一日の摂取量

ビタミンB6の一日の摂取量

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、成人男性の推奨量は1.4~1.5mg/日、成人女性は1.2mg/日とされています。妊婦・授乳婦はさらに付加量が必要です。耐容上限量(健康への悪影響が出ない最大摂取量)は45〜60mg/日とされています。

ビタミンB6の効果

ビタミンB6の効果

神経の働きをサポートする

ビタミンB6は、神経伝達物質(GABA、セロトニン、ドーパミン、アドレナリン、ノルアドレナリンなど)の合成に関与しています。これらの物質はアミノ酸から作られており、B6はその代謝に不可欠です。神経機能を整えることで、気分の安定やストレス軽減にも役立つと考えられています。

ホルモンバランスの調整

ビタミンB6は女性ホルモンであるエストロゲンの代謝に関与しており、ホルモンバランスを整える働きがあります。そのため、月経前症候群(PMS)の症状を軽減する可能性があるといわれています。

つわりの軽減

妊娠中はたんぱく質代謝の需要が増え、ビタミンB6が不足しやすくなるとされています。ビタミンB6を補うことでつわりの症状が軽減されるという研究報告もあり、医療現場でも補助的に使用されることがあります。

疲労回復のサポート

ビタミンB6を含むビタミンB群は、糖質・脂質・たんぱく質をエネルギーに変える代謝過程を助けます。特にビタミンB6はたんぱく質代謝を支えるため、日常的な疲労回復やスタミナ維持に役立ちます。

貧血の予防

ビタミンB6は、赤血球中のヘモグロビンの合成を助ける働きがあり、不足すると「鉄芽球性貧血」と呼ばれる特殊なタイプの貧血を引き起こす可能性があります。鉄欠乏性貧血とは異なる病態ですが、いずれも赤血球の機能に関与するため、ビタミンB6の適切な摂取が重要です。

ビタミンB6を過剰摂取すると現れる副作用

ビタミンB6を過剰摂取すると現れる副作用

ビタミンB6は水溶性ビタミンであり、通常の食品からの摂取によって過剰となることはほとんどありません。
『日本人の食事摂取基準(2025年版)』にも、通常の食事を摂取している場合に健康障害が発現した報告はないと明記されています。
しかし、サプリメントなどによって長期間にわたり高用量を摂取した場合、以下のような副作用が報告されています。

感覚神経障害

ビタミンB6の過剰摂取によって最もよく知られる副作用は、感覚神経障害です。手足のしびれや痛み、感覚の鈍麻、チクチクとした異常感覚が現れることがあります。 進行すると、細かい動作が難しくなったり、歩行が不安定になる場合もあります。   

歩行困難

感覚神経障害が進行すると、バランス感覚の低下や歩行障害が生じることがあります。 ビタミンB6による神経障害は、過剰摂取を中止することで徐々に改善することが多いですが、回復には時間を要する場合もあります。

発熱・蕁麻疹

一部では、過剰摂取により皮膚の発赤、かゆみ、蕁麻疹などの皮膚症状が報告されています。アレルギー反応に近い形で現れることもあります。

消化器症状・全身症状

まれに、吐き気、下痢、胃の不快感、発熱などの全身症状が現れることがあります。ただし、これらはビタミンB6特有のものではなく、サプリメントに含まれる他の成分の影響も考えられます。

腎臓結石(根拠不十分)

「ビタミンB6の過剰摂取で腎結石ができる」との記述が見られることもありますが、公的機関による明確なエビデンスは乏しく、確実な因果関係は示されていません。現時点では主な副作用としては扱われていません。

ビタミンB6を摂りすぎてしまった際の対処法

ビタミンB6を摂りすぎてしまった際の対処法

サプリメントの使用停止

ビタミンB6の過剰摂取による主な副作用は感覚神経障害です。特に100mg/日以上の摂取を数か月~数年継続した場合にリスクが高まります。 症状(手足のしびれやチクチク感など)が現れた場合は、すぐにサプリメントの使用を中止してください。多くの場合、中止により症状は徐々に改善しますが、回復までに数か月かかることもあります。

医療機関を受診する

神経障害が疑われる場合は、神経内科や脳神経外科などの専門医を受診することが推奨されます。 早期の診断と対応により、後遺症を防ぐことが期待されます。

耐容上限量を守る

ビタミンB6の耐容上限量(成人の場合45〜60mg/日)は、健康な人が長期間摂取しても有害な影響が現れないとされる最大量です。 サプリメントを使用する際は、成分表示を確認し、上限を超えないよう注意しましょう。

バランスのよい食事を基本とする

食事からの摂取による過剰症の心配はほとんどありません。栄養バランスを整えた食生活を心がけることで、ビタミンB6を適切に補うことができます。 偏った食生活や過剰なサプリメント依存を避けましょう。

「水を多く飲めば排泄される」は誤解に注意

ビタミンB6は水溶性ビタミンであり、余分な分は尿中に排泄されます。ただし、高用量を長期間摂取した場合には体内に蓄積されて神経障害を引き起こす可能性があるため、水分摂取だけで解決できるものではありません。 正しい対処は、過剰摂取をやめることです。

ビタミンB6の効率的な摂取方法

ビタミンB6の効率的な摂取方法

ビタミンB6と一緒に摂取すると効果を高める栄養素・食品

ビタミンB6は、ビタミンB2やたんぱく質と一緒に摂取することで代謝が促進され、より効果的に働きます。
ビタミンB2を含む食品:レバー、うなぎ、納豆、チーズ、牛乳、卵 など
たんぱく質源として優れた食品:肉、魚、大豆製品 など
その他のビタミンB6を多く含む食品:かつお、まぐろ、バナナ、ナッツ類、モロヘイヤ、しいたけ など
ビタミンB6は水溶性で加熱や光に弱いため、刺身や蒸し料理、スープなど、加熱しすぎない調理法が適しています。また、煮汁ごと摂取できる煮物なども有効です。

ビタミンB6と一緒に摂取すると効果を下げる栄養素・食品

以下のような食品や生活習慣は、ビタミンB6の吸収や働きを妨げることがあります。
アルコール:ビタミンB6の代謝を妨げ、体外への排泄を促進します。常習的な飲酒はB6不足のリスクを高めます。
加工食品・冷凍食品:保存・加工の過程で熱や光にさらされ、ビタミンB6の含有量が減少することがあります。
極端な偏食やダイエット:必要な栄養素が不足しがちになり、B6の摂取も不十分になる可能性があります。

ビタミンB6の効果を高める摂取タイミング

ビタミンB6は基本的に1日の中で安定して摂取することが望ましいですが、以下のタイミングが推奨されます。
サプリメントの場合:食後(朝食後または昼食後)に摂取すると吸収がよく、胃腸への負担も少ないとされています。
運動前の補給:運動の30分〜1時間前に摂取することで、たんぱく質代謝やエネルギー産生をサポートする可能性があります。
夕食後・就寝前の摂取について:一般的に避ける必要はありませんが、就寝直前にサプリメントを摂ることで胃に負担がかかる人もいるため、体調に応じて調整しましょう。

「ビタミンB6の過剰摂取」についてよくある質問

「ビタミンB6の過剰摂取」についてよくある質問

ここまでビタミンB6の過剰摂取について紹介しました。ここでは「ビタミンB6の過剰摂取」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

ビタミンB6サプリの摂取は危険なのでしょうか?

長井 彩子長井 彩子

通常の用量であれば、ビタミンB6サプリメントの摂取は安全とされています。
しかし、高用量を数か月〜数年以上にわたって継続的に摂取すると、感覚神経障害(手足のしびれ、チクチク感、歩行障害など)を引き起こすリスクがあるため注意が必要です。
適切な範囲で使用し、厚生労働省が定める「耐容上限量(成人で45〜60mg/日)」を超えないようにしましょう。症状が現れた場合は、直ちに使用を中止し、医師に相談してください。

まとめ

ビタミンB6は、たんぱく質代謝や神経機能、免疫、血液の健康など、私たちの体にとって欠かせない水溶性ビタミンです。通常の食事から過剰に摂取することはほとんどありませんが、サプリメントの過剰摂取には注意が必要です。
関節リウマチなどの慢性疾患によってビタミンB6の必要量が増える場合には、医師の指導のもとで補助的にサプリメントを使用することがありますが、基本的には食品からの摂取が推奨されます。
特に妊娠期の女性は必要量が増加するため、かつお・まぐろなどの魚類、鶏肉、バナナ、ナッツ類など、ビタミンB6を豊富に含む食品を意識的に取り入れるとよいでしょう。
サプリメントの使用は必要最小限にとどめ、栄養バランスの取れた食生活を心がけることで、ビタミンB6の欠乏や過剰を防ぎ、健康的な体づくりにつながります。

「ビタミンB6」と関連する病気

「ビタミンB6」と関連する病気は9個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

ビタミンB6と関連する病気

  • ペラグラ様症候群
  • 口角症
  • リンパ球減少症
  • うつ状態
  • 錯乱
  • 脳波異常
  • 痙攣発作

「ビタミンB6」と関連する症状

「ビタミンB6」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 皮膚炎
  • 貧血
  • 神経症状
  • 舌炎

この記事の監修管理栄養士