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「ビタミンB12の多い食べ物」は何かご存じですか?不足すると現れる症状も解説!

 公開日:2025/11/04
「ビタミンB12の多い食べ物」は何かご存じですか?不足すると現れる症状も解説!

ビタミンB12の多い食べ物とは?メディカルドック監修医が一日の摂取量・効果・不足すると現れる症状・不足しやすい人の特徴・過剰摂取すると現れる症状・効率的な摂取方法などを解説します。

田中 志緒莉

監修管理栄養士
田中 志緒莉(管理栄養士)

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保育園、児童発達支援センターで7年勤務し、栄養管理や衛生管理、健康相談や試食会を担当。特に子どもからの味覚の形成に関わった。その後管理栄養士を取得し、母校である函館短期大学にて教育助手として3年勤務し、市役所にて現在勤務。一度子ども食堂主催の講師の経験有り。

「ビタミンB12」とは?

「ビタミンB12」とは?

ビタミンB12は水溶性ビタミンの一種で、コバルトを含有する化合物(コバラミン)が補酵素※¹として機能し、アミノ酸代謝に関与します。主に造血作用や神経機能の維持に重要な役割を果たします。ビタミンB12は基本的に動物性食品に含まれているため、菜食主義者(ビーガン、ベジタリアン)の方は欠乏に注意する必要があります。ビタミンB12の欠乏により、巨赤芽球性貧血や脊髄及び脳の白質障害、末梢神経障害が起こります。補酵素とは、酵素(たんぱく質)の働きを助けて代謝を促進する物質です。私たちが食べたものを分解し、消化・吸収・排泄といった生命活動を円滑に行うために、酵素とともに働きます。

ビタミンB12の一日の摂取量

ビタミンB12の一日の摂取量

目安量は男女同量 ・0~5か月 0.4μg/日 ・6~11か月 0.9μg/日 ・1~5歳 1.5μg/日 ・6~7歳 2.0μg/日 ・8~9歳 2.5μg/日 ・10~11歳 3.0μg/日 ・12歳以上 4.0μg/日 ・妊婦、授乳婦 4.0μg/日

ビタミンB12の効果

ビタミンB12の効果

核酸(DNA)の合成

ビタミンB12は葉酸とともに、細胞の分裂・分化には欠かせない遺伝子を構成する核酸の合成に関わっています。核酸にはDNAとRNAの2種類があります。DNAは遺伝情報を格納している部分です。RNAは遺伝情報の読み取りやたんぱく質の合成、たんぱく質の合成に必要なアミノ酸の運搬などの働きをします。ビタミンB12は葉酸とともにこのDNAの合成に関わります。

赤血球の合成に関与

赤血球は骨髄で作られ、約120日の寿命を終えると脾臓で分解されます。新しい赤血球はたえず造られていて、造血の過程で核はなくなりますが、最初は核のある細胞です。核があるという事は普通の細胞と同様に核酸(DNA)やたんぱく質も生合成されなければなりません。 赤血球の核酸の合成には葉酸が欠かせませんが、葉酸が活性型として機能するためにはビタミンB12が必要です。そのため葉酸かビタミンB12のどちらか一方でも不足すると巨赤芽球性貧血の発症の原因となります。巨赤芽球性貧血とは、赤血球が正常に作られず容積が大きくなって酸素運搬能力が低下することで起こる貧血症状のことです。

ホモシステイン濃度を下げる

血中のホモシステイン濃度が高くなると、血管壁を傷つけるとされています。ビタミンB12を摂取することでホモシステイン濃度を下げる効果があります。

エネルギー代謝に関与

エネルギー代謝経路であるクエン酸回路を構成するスクシニルCoAはイソロイシンやバリン、メチオニン、奇数鎖脂肪酸などから生成されます。その生成に関与する酵素であるメチルマロニルCoAムターゼの補酵素としてビタミンB12(アデノシルコバラミン)はエネルギー代謝に関わります。

神経機能の維持・改善

ビタミンB12には末梢神経や中枢神経の機能の維持・改善の働きがあることも知られています。神経線維の軸索を覆っている脂質膜であるミエリン鞘の生成に関与しているため、欠乏が進行すると神経細胞にも障害が起き、知覚異常を引き起こします。ビタミンB12は薬理作用の利用も進んでいて、傷ついた末梢神経の回復効果があることから、腰痛などの末梢神経障害に用いられています。また中枢神経に作用することも知られていて、活性型ビタミンB12の大量投与(1,500~3,000μg/日)により睡眠障害が改善された例も報告されています。

ビタミンB12の多い食品

ビタミンB12の多い食品

ビタミンB12はビタミンB6(マグロ、カツオ、サバ、さけ、牛レバー、ピスタチオ、ごま、のり、にんにく等)や葉酸(鶏レバー、ブロッコリー、干しシイタケ、エリンギ、ドライマンゴー、いちご、焼きのり等)と一緒に摂取することで効果が高まります。おすすめメニューは実際に保育園栄養士時代に人気だったメニューや短大教育助手時代に実習で作ったことのあるメニュー、個人的に家庭料理として作ったことのあるメニューを選びました。名前を検索するとレシピが出てくるので作ってみてほしいです。

牛レバー

53.0μg/可食部100g当たり おすすめメニュー レバニラ炒め、牛レバーの生姜醤油おろし巻き、レバーカレーコロッケ

あさり缶詰水煮

64.0μg/可食部100g当たり おすすめメニュー クラムチャウダー、あさりサラダ、あさりの酒蒸し

しじみ水煮

82.0μg/可食部100g当たり おすすめメニュー しじみの味噌汁、しじみの炊き込みご飯、しじみガーリックバター焼き

さんま(焼き)

17.7μg/可食部100gあたり おすすめメニュー:さんまの塩焼き、大根おろし添え、さんまの蒲焼き、さんまの梅煮

イクラ

47.0μg/可食部100g当たり おすすめメニュー 焼き餅とイクラのおろし和え、夏野菜と魚介のポン酢ジュレサラダ、はらこ飯

ビタミンB12が不足すると現れる症状

ビタミンB12が不足すると現れる症状

貧血

症状の特徴:息切れ、動悸、顔面蒼白 応急処置・緊急対処法が必要な貧血の症状としては、失神(一時的に意識を失うこと)やめまい、立ちくらみといった症状です。これらは全て、脳に酸素が足りていない状態で生じる症状です。これらの症状を感じたら、まず初めにできる緊急対処法は、その場にしゃがんだ体勢とすること、そしてできるだけ安静にして酸素の消費量を抑えることです。屋内など、周囲が安全で横たわれるシチュエーションなら横になり、応急処置としてショック体位の体勢とします。ショック体位とは、足を頭より15cmから30㎝ほど高くした体勢のことです。こうすることによって、下半身の血液を脳や内臓に送ることができます。貧血で立ちくらみや失神がおきているときは、血圧も下がっていることが多いのですが、その際にもこのショック体位が有効です。

神経障害

症状の特徴:手足のしびれやピリピリ感、感覚消失、筋力低下 脳神経内科を受診するようにしましょう。手足のしびれ・痛みや、力が入らない状態が急速に悪くなって、自力で病院へ行くことができない場合は救急車を呼んでください。

精神的な影響

症状の特徴:記憶障害やうつ病、集中力の低下、高齢者では認知機能の低下と誤認される可能性があります。 記憶が飛ぶ症状は、決して一人で抱え込むべき問題ではありません。上記の症状が出た際はまずは気軽に精神科・心療内科に相談してみてください。

ビタミンB12が不足しやすい人の特徴

ビタミンB12が不足しやすい人の特徴

ビーガン、ベジタリアンなど菜食主義の人

私たちの体にはビタミンB12を一定期間蓄える機能があるため、短期間の摂取不足ではすぐに欠乏状態にはなりません。しかし、動物性食品を一切摂らないビーガンや、動物性食品の摂取が限定的なベジタリアンの方は、長期的に見るとビタミンB12が不足するリスクが高くなります。 植物性食品の中でも、海苔にはビタミンB12が含まれているとされますが、その多くは体内で利用できない「類似体(擬似ビタミンB12)」である可能性があるため、信頼できる摂取源とは言えません。そのため、必要に応じてサプリメントなどで補うことが推奨されます。

胃や回腸を切除した人

ビタミンB12の吸収に必要な内因子(たんぱく質)は胃の壁細胞から分泌されます。内因子と結合したビタミンB12は小腸へ送られ、回腸で吸収されます。そのため、手術で胃や回腸を切除したりすればビタミンB12を吸収できず、欠乏する可能性があります。

胃粘膜に萎縮などの障害がある人

内因子(たんぱく質)の分泌が減少し、ビタミンB12の吸収率が低下して欠乏状態に陥る可能性があります。

胃酸の分泌が少ない人

胃酸は食べた物が胃の中に運ばれると、結合している栄養素を分解し、吸収しやすくします。ビタミンB12はたんぱく質と結合したまま胃の中に運ばれて胃酸により体内へ吸収されます。胃酸の分泌が少ないことでうまくたんぱく質から切り離すことができず体内に吸収できなくなります。日本人は胃酸の分泌量が少ないと言われており、さらに暴飲暴食、ピロリ菌感染、加齢によってその分泌量は低下します。

ビタミンB12を過剰摂取すると現れる症状

ビタミンB12を過剰摂取すると現れる症状

通常の食品を摂取している人で、過剰摂取による健康障害が発現したとの報告は見当たりません。これは、胃から分泌される内因子によって小腸からの吸収量が調節されているためと考えられています。また、サプリメント等による摂取においても、特殊な吸収機構を有し、体内への吸収量が厳密に調節されるため、健康障害の報告はありません。ビタミンB12は、胃から分泌される内因子を介した吸収機構が飽和すれば食事中から過剰に摂取しても吸収されません。また、大量(500μg/日以上)のシアノコバラミンを経口投与した場合でも、内因子非依存的に投与量の1%程度が吸収されるのみで、さらに、非経口的に大量(2.5μg/日)のシアノコバラミンを投与しても、過剰症は認められていません。このように、現時点でビタミンB12の過剰摂取が健康障害を示す科学的根拠がありません。

ビタミンB12の効率的な摂取方法

ビタミンB12の効率的な摂取方法

ビタミンB12と一緒に摂取すると効果を高める栄養素・食品

ビタミンB6や葉酸と一緒に摂取することで効果が高まります。一緒に摂取すると赤血球の合成で葉酸とともに働き、心筋梗塞や動脈硬化のリスクが高くなることで知られる血中ホモシステイン濃度を低下させる働きで、葉酸とビタミンB6とともに働きます。このように協力して働くビタミンもしっかりと摂取することをおすすめします。

ビタミンB12と一緒に摂取すると効果を下げる栄養素・食品

過剰なアルコール、高カフェイン摂取はビタミンB12の吸収を妨げることがあるため、適量に留めることが重要です。また、高脂肪・高糖分の加工食品はビタミンB12の吸収に直接的な影響を与えるわけではないですが、全体的な栄養バランスを損なう可能性があります。

ビタミンB12の効果を高める摂取タイミング

ビタミンB12は、エネルギー生成や神経機能の維持に関与する栄養素です。特定の時間帯に摂取することで効果が高まるという明確な根拠はありませんが、毎日の食事の中で継続的に摂取することが大切です。日中の活動に備えるという意味では、朝食や昼食と一緒に摂るのも一つの方法です。

「ビタミンB12の食べ物」についてよくある質問

「ビタミンB12の食べ物」についてよくある質問

ここまでビタミンB12の食べ物などを紹介しました。ここでは「ビタミンB12の食べ物」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

ビタミンB12が多く含まれているフルーツを教えてください。

田中 志緒莉田中 志緒莉

ビタミンB12は主に動物性食品に多く含まれ、野菜やフルーツなどの植物性食品にはほとんど含まれていません。フルーツは他のビタミンやミネラル、食物繊維の供給源として重要ですが、ビタミンB12の摂取を目的とするのは適切ではありません。

まとめ

ビタミンB12は水溶性ビタミンの一種で、比較的熱に強いとされていますが、調理時には煮汁に溶け出すため、調理方法に注意が必要です。主に造血作用や神経機能の維持に重要な役割を果たします。 動物性食品に多く含まれているため、菜食主義者の方は欠乏に注意が必要です。海苔や納豆などの一部の植物性食品にもビタミンB12が検出されることがありますが、含まれる型によっては体内で有効に働かない場合もあるため、確実な摂取を望む場合はサプリメントの活用が推奨されます。 また、ビタミンB6や葉酸、ビタミンCなどと一緒に摂取することで相乗効果が期待されます。反対に、アルコールやカフェインの過剰摂取は吸収を妨げる可能性があるため、控えめにすることが望ましいでしょう。

「ビタミンB12」と関連する病気

「ビタミンB12」と関連する病気は8個ほどあります。 各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

関連する病気

  • 悪性貧血(巨赤芽球性貧血)
  • 高ホモシステイン尿症
  • 高ホモシステイン血症
  • 知覚障害
  • 食欲不振
  • 倦怠感
  • メチルマロン酸血症

「ビタミンB12」と関連する症状

「ビタミンB12」と関連している、似ている症状は14個ほどあります。 各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 息切れ
  • 疲労感
  • 顔面蒼白
  • 手足のしびれ
  • 感覚消失
  • 筋力低下
  • 記憶障害
  • うつ症状
  • 集中力の低下
  • 胃酸分泌低下
  • 胃粘膜の萎縮

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