にんじんなどに含まれる「αカロテン」は摂り過ぎるとどうなる?管理栄養士が解説!

αカロテンの一日の摂取量とは?メディカルドック監修医がαカロテンの一日の摂取量・男女別の摂取量・不足すると現れる症状・過剰摂取すると現れる症状・多く含む食品・効率的な摂取方法などを解説します。

監修管理栄養士:
中岡 紀恵(管理栄養士)
目次 -INDEX-
「αカロテン」とは?

αカロテンは、カロテノイドのカロテン類でプロビタミンAの一種です。プロビタミンAはビタミンA前駆体と言われ体内でビタミンAに変換されるものです。ただしビタミンAへの変換率はβカロテンより低いとされています。αカロテンはβカロテンと同様に抗酸化作用を持ち、健康効果への期待が高まっています。
「αカロテン」と「βカロテン」の違いとは?

どちらもにんじんやかぼちゃなどの緑黄色野菜に含まれる栄養素です。ビタミンAの変換効率はβカロテンの方が高く、αカロテンはβカロテンの50~60%とされています。抗酸化作用はどちらも高く、αカロテンはがんや心血管疾患リスク低下との関連が報告されています。
αカロテンの一日の摂取量

αカロテン(アルファカロテン)そのものの一日の「推奨摂取量(RDA)」は、現在のところ明確には定められていません。代わりに、体内でビタミンAとして働くレチノール活性当量(RAE)が、プロビタミンAカロテノイド(αカロテン、βカロテン、β-クリプトキサンチンなど)全体として評価され、以下のように推奨されています。
成人男性
(18~29歳):850㎍RAE/日
(30~64歳):900㎍RAE/日
成人女性
(18~29歳):650㎍RAE/日
(30~64歳):700㎍RAE/日
※妊婦(付加量)後期+80㎍RAE/日(胎児へのビタミンAの移行蓄積量として)
※授乳婦(付加量)+450㎍RAE/日(授乳中に分泌される量として)
なお、αカロテンのビタミンA換算率はβカロテンよりも低く、1μgのαカロテンは約1/24の効率でRAEとして換算されます(βカロテンは1/12)。そのため、RAEの基準を満たすためには、食品中の複数のプロビタミンAカロテノイドを組み合わせて摂取することが推奨されます。
αカロテンの効果

免疫力の向上
αカロテンは活性酸素を除去し、細胞の酸化ダメージを防ぐとされていて、免疫力の向上に繋がる効果が期待出来ます。
老化予防・寿命延長
強い抗酸化作用により、アンチエイジング効果の可能性があるとされています。
発がん抑制
米国国立がん研究所(NCI)による研究では、血中αカロテン濃度の高い人は、がんによる死亡リスクが低いとされています。これはαカロテンが強い抗酸化力を持ち、DNA損傷の抑制、細胞のがん化抑制に関与する可能性があるとされています。日本では、現時点では関係が明確化されていません。
心血管保護作用
種々のカロテノイド、抗酸化ビタミンの摂取量と高齢者の心血管疾患による死亡率との関係について15年間の追跡調査を行ったところ、αカロテンとβカロテンの食事からの摂取と高齢者の心血管疾患による死亡率との間には逆相関関係が存在することが明らかになったという米国の研究結果から、死亡リスクが低い可能性があるとされています。
感染症予防
粘膜を正常に保ち、ウイルスや細菌の侵入を防ぐ免疫力向上の効果から、感染症罹患のリスク低下が期待できるとされています。
αカロテンを過剰摂取すると現れる症状

αカロテンを含むプロビタミンA(カロテノイド)を大量に摂取しても過剰症を生じるレベルまでビタミンA(レチノイド)に変換されることはないことから、ここではビタミンAを過剰摂取すると現れる症状をお伝えします。
肝機能障害
サプリメントや動物の肝臓を大量摂取した場合、血中レチノール濃度及び血中のレチノイン酸濃度が一過性に上昇し、肝臓に負担がかかるとされています。急性過剰症に該当するため耐容上限量も定められています。
胎児へのリスク
妊娠初期に摂り過ぎると、胎児の奇形が増えることも確認されています。
骨密度の低下や骨折のリスクの上昇
ビタミンAの食事レベルでの習慣的な過剰摂取が、骨密度の低下や骨折のリスクを上昇させるという報告もありますが、否定的な報告もあり、結果は十分に一致していないとされています。
αカロテンが不足すると現れる症状

夜盲症(とり目)
暗いところで物が見えにくくなる「夜盲症」は、ビタミンAが不足することで起こる典型的な症状です。αカロテンは体内でビタミンAに変換される「プロビタミンA」のひとつであり、食事からの摂取が不足すると、結果としてビタミンAの不足につながる可能性があります。その他にも、涙の分泌が減少するなど、目の健康に関する不調があらわれることがあります。
皮膚の乾燥
上皮細胞の維持がうまくいかずに、乾燥やかさつきが生じることがあります。αカロテンを多く含む緑黄色野菜の摂取を心掛けたり、保湿クリーム等でケアしましょう。
免疫力の低下
粘膜や免疫細胞の働きが弱まり、感染症にかかりやすくなる可能性があります。
αカロテンの多い食品

にんじん
100gあたり3300㎍のαカロテンが含まれています。油をプラスすると4500㎍に増えることから、ソテーにしたり、キャロットラペにオリーブオイルを使用すると吸収率が高まります。サラダにドレッシングをかけるのもおすすめです。
さやいんげん
さやいんげんには、100gあたり約140μgのαカロテンが含まれています。加熱することで細胞壁が壊れ、体内での吸収率(バイオアベイラビリティ)が高まるとされています。そのため、茹でてから胡麻和えやお浸しにするのもおすすめです。小鉢1皿分(約70g)で、目安として105μgのαカロテンを摂取できます。
にがうり(ゴーヤ)
にがうりには100gあたりαカロテンが93㎍含まれています。ゴーヤチャンプルーなどのような油炒めにすると効率よく摂取ができます。
かぼちゃ
αカロテンは日本かぼちゃにも100gあたり49㎍含まれています。天ぷらやマヨネーズで和えるかぼちゃサラダもおすすめです。
海苔
焼き海苔には100gあたり4100㎍のαカロテンが含まれていますが、たくさん食べることは難しい食品です。焼きのり1枚(3g)を巻きずしやおにぎりで食べると123㎍摂取できます。
αカロテンの効率的な摂取方法

αカロテンと一緒に摂取すると効果を高める栄養素・食品
αカロテンは脂溶性のため、油と一緒に摂取することで吸収率が高まります。にんじん入りの野菜炒めや、緑黄色野菜たっぷりの野菜サラダにドレッシングをかけるのが効果的です。また、αカロテンは熱により細胞壁が壊れて体内で吸収されやすくなるとされています。蒸し野菜にしたり、かぼちゃの煮物もおすすめです。ただし、長時間の加熱は栄養素の損失につながるため、短時間の加熱が理想的とされています。
αカロテンと一緒に摂取すると効果を下げる栄養素・食品
αカロテンと一緒に摂取すると効果を下げる栄養素や食品の研究結果は確認できていません。しかし、αカロテンを含むカロテノイドは脂溶性のため、油脂がないと腸管での吸収率が低下します。生野菜にドレッシングやマヨネーズをかけずに食べる場合がこれにあたります。
αカロテンの効果を高める摂取タイミング
脂溶性ビタミンであるため、食事に含まれる油脂と一緒に摂ることで吸収率が高まります。サプリメントの場合も、食後に服用することで吸収されやすくなります。以上のことから食事中または食後に摂取することで効果を高めると言えるでしょう。
「αカロテン」についてよくある質問

ここまでαカロテンについて紹介しました。ここでは「αカロテン」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
αカロテンはビタミンAに変換されるのでしょうか?
中岡 紀恵
はい、変換されます。αカロテンは、体内でビタミンAに変換されます。1μgのαカロテンは、約1/24の効率でレチノール活性当量(RAE)として評価されます。βカロテンは1/12換算なので、αカロテンの換算効率は低めとなります。
まとめ
カロテンといえば「βカロテン」と思われる方も多いでしょう。αカロテンは、ビタミンAへの変換効率はβカロテンより低いのですが、がんや心血管疾患リスク低下との関連が報告されているなど、健康効果が期待できる重要な栄養素です。バランスの良い食事を心がけ、緑黄色野菜などの食品から摂取するのがおすすめです。サプリメントを利用する際は、過剰摂取のリスク等があるため、少しでも不安がある場合は医師、薬剤師、管理栄養士など専門家にご相談下さい。
「αカロテン」と関連する病気
「αカロテン」と関連する病気は4個ほどあります。各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
循環器系の病気
- 心疾患
眼科の病気
- 夜盲症
皮膚科の病気
- 乾燥肌
内科の病気
「αカロテン」と関連する症状
「αカロテン」と関連している、似ている症状は3個ほどあります。各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 肌荒れ
- 視力低下
- 感染症(風邪など)にかかりやすい




