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「不飽和脂肪酸を摂りすぎると現れる症状」とは?効果についても管理栄養士が解説!

 公開日:2025/08/13
「不飽和脂肪酸を摂りすぎると現れる症状」とは?効果についても管理栄養士が解説!

不飽和脂肪酸を摂りすぎるとどうなる?Medical DOC監修医が不飽和脂肪酸を摂りすぎると現れる症状・一日の摂取量・効果・多く含む食品・効率的な摂取方法などを解説します。

中岡 紀恵

監修管理栄養士
中岡 紀恵(管理栄養士)

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短大卒業後、20年以上経って栄養士の職に就く。給食受託会社に勤務しながら管理栄養士の資格を取得。栄養指導に携わりたいという思いから、病院に転職。現在は慢性期病院で栄養指導、入院患者様の栄養管理、給食管理等を担当。生涯現役で、栄養相談を通じてたくさんの人を健康に導くのが夢であり、目標でもある。

「不飽和脂肪酸」とは?

「不飽和脂肪酸」とは?

脂肪を構成している要素である脂肪酸は、分子の構造的な違いから飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分類されます。不飽和脂肪酸は、植物や魚の脂に多く含まれます。不飽和脂肪酸には、炭素間の二重結合のまわりの構造の違いにより、シス型とトランス型の2種類があります。天然の不飽和脂肪酸のほとんどがシス型で、これに対してトランス型の二重結合が一つ以上ある不飽和脂肪酸をまとめて「トランス脂肪酸」といいます。トランス脂肪酸は、工業的に水素添加された油脂や、揚げ物などの高温調理の際にも生成される場合があります。また、牛や羊の反芻動物由来の乳製品や肉にも微量含まれます。 また、不飽和脂肪酸は、一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸に分けられ、さらに、多価不飽和脂肪酸はn-3系とn-6系に分けられます。n-3系にはα-リノレン酸、DHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)があり、α-リノレン酸は体内でEPA、さらにDHAと変化します。また、n-6系のリノール酸は体内でアラキドン酸を少量作り出し、エイコサノイドという生理活性物質にもなりますが、必要量を賄うことはできません。このように、ヒトの体内で合成できないか、合成できても必要量を満たすことができず、食物から摂取しなければならないため、α-リノレン酸・リノール酸・アラキドン酸は必須脂肪酸と呼ばれています。

不飽和脂肪酸の一日の摂取量

不飽和脂肪酸の一日の摂取量

一日の摂取量は年齢、性別により異なります。 総脂質摂取量は総エネルギー摂取量の20%以上30%未満が適切とされています。 多価不飽和脂肪酸
n-6系脂肪酸  成人男性(18歳~64歳)11~12g
        成人女性(18歳~64歳)9g
         ※妊婦・授乳婦も同じ値となります。
n-3系脂肪酸   成人男性(18歳~64歳)2.2~2.3g
        成人女性(18歳~64歳)1.7~1.9g
        ※妊婦・授乳婦も同じ値となります 一価不飽和脂肪酸は、主な生活習慣病の予防にどのように影響を与えるかというエビデンスは十分には確認されていません。したがって、目標量の設定はありません。しかし総脂質摂取量の中には含まれていますので、肥満予防の観点からも過剰摂取には注意が必要です。

不飽和脂肪酸の効果

不飽和脂肪酸の効果

動脈硬化と高血圧の予防

一価不飽和脂肪酸(オレイン酸など)と多価不飽和脂肪酸(DHA、EPA)は、悪玉(LDL)コレステロールを低下させ、動脈硬化を防ぎます。

血栓症の予防

EPA、DHAは血液をサラサラにし、血流を促進させ、血栓形成を防ぎます。これにより、脳卒中や心筋梗塞のリスクを低減します。

アレルギー症状の緩和

γ-リノレン酸とEPAはアレルギー症状を緩和させる効果があります。γ-リノレン酸はアトピー性皮膚炎の改善に効果があります。

不飽和脂肪酸を過剰摂取すると現れる症状

不飽和脂肪酸を過剰摂取すると現れる症状

体重増加や肥満

不飽和脂肪酸の過剰摂取は、エネルギー過多になり、体重増加から肥満を招き、生活習慣病の発症に繋がる可能性があります。

循環器疾患のリスク増加

不飽和脂肪酸の中でトランス脂肪酸の過剰摂取は、心筋梗塞や狭心症などの循環器疾患のリスクを高める可能性があります.

酸化ストレスの増加

多価不飽和脂肪酸は酸化しやすいため、過剰摂取は酸化ストレスを引き起こす可能性があります。これにより細胞や血管がダメージを受け、老化や生活習慣病のリスクが高まることが懸念されます。酸化ストレスを防ぐためには、ビタミンEなどの抗酸化物質を積極的に摂取し、バランスの良い食生活を心がけることが重要です。抗酸化物質はアーモンド、アボカド、オリーブオイル、緑黄色野菜などに多く含まれています。

腹痛・吐き気・下痢

特に中性脂肪が高い場合、急性膵炎を引き起こすリスクがあり、激しい腹痛や吐き気、下痢などの症状が現れる可能性があります。

脂質異常症

不飽和脂肪酸の中でトランス脂肪酸の過剰摂取は、LDLコレステロールを上昇させ、HDLコレステロールを低下させる作用があるとされています。

不飽和脂肪酸を多く含む食品

不飽和脂肪酸を多く含む食品

油のうち、植物油は不飽和脂肪酸を多く含みます。 一価不飽和脂肪酸のオレイン酸を含むオリーブ油、なたね油、n-6系脂肪酸の紅花油、ひまわり油、ごま油、n-3系脂肪酸のしそ油、えごま油、亜麻仁油などがあります。 健康を考える場合、 調理に使う油は不飽和脂肪酸を多く含む油を選ぶことが推奨されています。n-3系脂肪酸は熱に弱く酸化しやすいため、ドレッシングなどで使うのが適しています。

魚類

マグロ類、サンマ、マイワシ、サバ、ハマチ、カツオなどの青魚にはDHA(ドコサヘキサエン酸)が多く含まれています。1日1食は魚料理にすると効率よく摂取できます。魚料理が難しい場合には、スーパーやコンビニの惣菜を利用したり、サバ缶やイワシ缶などの缶詰もおすすめです。

ナッツ類

アーモンド、ピーナッツ、カシューナッツ、クルミ、ピスタチオにも不飽和脂肪酸が含まれています。健康志向の高まりで間食に摂る方も増えていますが、食べ過ぎには注意が必要です。塩分が気になる場合は、無塩のものを選びましょう。

アボカド

アボカド100gあたり、脂質の約80%がオレイン酸やリノール酸といった不飽和脂肪酸です。アボカド1/3個(約50g)には不飽和脂肪酸が約2.5g含まれています。これらの不飽和脂肪酸は、血中コレステロールを適正に保ったり、中性脂肪を減少させる健康効果が期待できます。アボカドは1個で約230kcalですが、少量でも濃厚で満足感があります。

大豆製品

大豆製品の脂質の60%が不飽和脂肪酸です。主にリノール酸、αリノレン酸が多く含まれています。一般的な目安として、1日に大豆製品を50~100g程度摂取することで、適度な不飽和脂肪酸を摂取できると考えられます。豆腐や豆乳等、手軽に手に入るものがお勧めです。

不飽和脂肪酸を効率よく摂取する方法

不飽和脂肪酸を効率よく摂取する方法

不飽和脂肪酸を多く含む食品の摂取

サラダにアボカドやナッツを加え、ドレッシングにオリーブオイルを使用したり、定期的に魚料理を取り入れたりするなどの工夫が効果的です。ただし不飽和脂肪酸は酸化しやすいため、植物油は加熱せずにドレッシングのように生で使用すると良いでしょう。地中海食が健康に良いと注目されていますが、オリーブオイルを使用していること以外にも、新鮮な魚介類や野菜などをバランス良く摂っていることも重要です。

不飽和脂肪酸と一緒に摂取すると効果を高める栄養素・食品

脂質を効率よく摂取したいときは、ビタミンB群を積極的に摂るのがおすすめです。ビタミンB群は、不飽和脂肪酸の代謝を促進してエネルギー源として効率よく利用します。また、脂質を皮膚や髪の栄養素として利用するため、美容効果も見込めます。特に、ビタミンB2(レバー・大豆製品など)・ナイアシン(きのこ類・豚肉など)・ビタミンB6(肉類・マグロなど)を積極的に摂るとよいでしょう。きのこのソテーやマグロのカルパッチョなどがお勧めです。 脂溶性ビタミン(A、D、E、K)、カロテノイドなどの油脂に溶けやすい栄養成分は、油脂と一緒に摂取することで、体内に吸収されやすくなります。にんじんソテー、かぼちゃの天ぷら、野菜サラダにドレッシングをかけることもお勧めです。 ビタミンEは不飽和脂肪酸の酸化を防ぎ、その効果を保護します。かぼちゃ、アーモンド、アボガド、オリーブ油、くるみ、にしんなどに多く含まれています。 ヨーグルトや納豆などの発酵食品は、腸内環境を整え、不飽和脂肪酸の代謝を促進します。

不飽和脂肪酸の効果を高める摂取タイミング

活動量が維持出来る日中がおすすめです。朝食時のトーストのバターをオリーブオイルに変えてみたり、野菜サラダに亜麻仁油やえごま油をドレッシングとしてかけるのも良いでしょう。夜遅い時間や就寝前に摂取すると脂肪となり蓄積され、胃もたれ等の原因になることもありますので注意が必要です。サプリメントの場合、朝食後など忘れずに摂取できる時間をご自分のライフスタイルに合わせて設定することが大切です。短期間ではなく継続的な摂取が効果を高めるためには、重要となってきます。

「不飽和脂肪酸の摂りすぎ」についてよくある質問

「不飽和脂肪酸の摂りすぎ」についてよくある質問

ここまで不飽和脂肪酸の摂りすぎについて紹介しました。ここでは「不飽和脂肪酸の摂りすぎ」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

不飽和脂肪酸を摂りすぎると体はどんなサインを発しますか?

中岡 紀恵中岡 紀恵

体に良いとされる不飽和脂肪酸も必要以上に摂り過ぎると、エネルギー過剰となり体重増加や肥満に繋がります。余分な脂肪は中性脂肪として体内に蓄積され、生活習慣病や循環器系疾患のリスクを高めることに繋がります。

まとめ

不飽和脂肪酸は体に良いとされる脂質で、血液中のコレステロールを下げる作用等があります。オリーブ油や菜種油などに多く含まれるオレイン酸、青魚などに多く含まれるDHAやEPAなどは積極的に摂りたい栄養素です。ただし、どの脂質も1gあたり9kcalと高エネルギーであることには変わりありません。油の特性を見極めた上で、ご自分に必要な摂取量を守りましょう。食事のバランスも重要です。なお、食事だけでの摂取が難しい場合は、サプリメントなどを利用するのもひとつの方法です。ご自身のライフスタイルや食生活にあわせて選ばれると良いでしょう。

「不飽和脂肪酸」と関連する病気

「不飽和脂肪酸」と関連する病気は4個ほどあります。 各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

循環器系の病気

  • 高LDL-コレステロール血症
  • 循環器疾患(冠動脈疾患を含む)

内科の病気

  • 肥満

「不飽和脂肪酸」と関連する症状

「不飽和脂肪酸」と関連している、似ている症状は3個ほどあります。 各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 発育不良
  • 皮膚炎
  • 記憶力の低下

この記事の監修管理栄養士