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「βカロテンの一日の摂取量」が足りないと体のどこに不調が出る?管理栄養士が解説!

 公開日:2025/09/02
「βカロテンの一日の摂取量」が足りないと体のどこに不調が出る?管理栄養士が解説!

βカロテンの一日の摂取量とは?Medical DOC監修医がβカロテンの一日の摂取量・男女別の摂取量・不足すると現れる症状・過剰摂取すると現れる症状・多く含む食品・効率的な摂取方法などを解説します。

久家 知子

監修管理栄養士
久家 知子(管理栄養士)

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一時期は、栄養士から離れていた時期もありましたが、双子を出産後、一念発起し管理栄養士の資格を取得。現在は病院で勤務。食を通して健康について考える日々。

「βカロテン」とは?

「βカロテン」とは?

カロテン(カロテノイド)は植物に存在する有機化合物で赤橙色の色素の一つです。経口摂取したβカロテンは小腸上皮細胞で必要な分だけビタミンAの活性を有する化合物に変換されるので「プロビタミンA(ビタミンA前駆体)」とも呼ばれます。水には溶けず、油脂やアルコールに溶ける脂溶性ビタミンであることから、油類と一緒に摂取することで吸収率が上がります。食品から体内に入ると、主に脂肪組織や肝臓に貯蔵されます。身体の機能を正常に保つ働きがりますが、摂りすぎると過剰症をおこす恐れがあります。

βカロテンの一日の摂取量

βカロテンの一日の摂取量

現在、日本の食事摂取基準では「βカロテン単体」の一日の摂取量についての具体的な記載はありません。しかし、βカロテンは体内でビタミンAに変換されるため、ビタミンAとしての必要量が目安となります。以下はビタミンA(㎍RAE/日:レチノール活性当量)の推奨量です。
  • 成人男性(18~64歳):850~900㎍RAE/日
  • 成人女性(18~64歳):650~700㎍RAE/日
  • 妊婦(後期):+80㎍RAE/日
  • 授乳婦:+450㎍RAE/日
※この推奨量は年齢や性別、ライフステージに応じて異なります。

βカロテンの効果

βカロテンの効果

βカロテンには、直接的な効果をもつものと、体内でビタミンAに変換されることで発揮される効果があります。

皮膚や粘膜の健康を維持する

皮膚や粘膜の健康維持に役立ち、乾燥や角質化を防ぐほか、シミやしわ、肌荒れの改善にも寄与します。また、細菌やウイルスに対する抵抗力を高める働きもあります。これにより、外部からの感染を防ぎ、健康な状態を保つ助けとなります。

光刺激反応に重要な役割を果たす

目における光刺激反応の調整にも重要な役割を果たします。暗い場所から明るい場所へ移動する際や、その逆の場合に、目が明暗に順応する能力をサポートします。この機能は、日常生活で視覚的な快適さを保つために欠かせません。

抗酸化作用

βカロテンには強い抗酸化作用があり、体内で発生する活性酸素を除去するとともに、その発生を抑制します。この作用により、細胞の老化を防ぎ、健康的な細胞の機能を維持することが期待されます。

上皮細胞の増殖や分化

βカロテンは、体内でビタミンAに変換されることで、上皮細胞の成長や分化を促進し、健やかな体の発育や組織の維持に貢献します。

がんの予防

一部の研究では、がんの発生やリスクを低下させる可能性が示唆されています。ただし、がん予防に関する効果については、すべてのがんに対して統一された結論が得られているわけではなく、さらなる研究が必要とされています。

βカロテンを過剰摂取すると現れる症状

βカロテンを過剰摂取すると現れる症状

緑黄色野菜(植物性食品)など食品由来のβカロテンでは過剰症のリスクはほとんどありませんが、大量摂取により過剰症が起こる可能性があります。サプリメントでは注意が必要です。ここでは、βカロテンそのものと、ビタミンA過剰症に関連する症状について説明します。

頭蓋内圧亢進症(ビタミンAの過剰症)

ビタミンAを過剰に摂取すると、頭痛、吐き気、嘔吐、視力障害、意識障害などが現れることがあります。これらは急性期と慢性期で異なる対応が必要です。急性期には速やかに医療機関を受診することが重要です。一方、慢性期の場合は、医師と相談しながら生活環境の調整や適切な薬剤(制吐剤や鎮痛剤、緩下剤など)を使用して症状の軽減を図ります。症状が疑われる場合は、内科や脳神経外科、脳神経内科の受診をお勧めします。

胎児奇形(妊娠初期の注意)

妊娠初期におけるビタミンAの過剰摂取は、胎児の細胞増殖や分化に影響を与え、形態的異常(胎児奇形)のリスクを高める可能性があります。特にサプリメントを利用する場合は、製品の記載事項をよく確認し、1日の目安量を厳守することが重要です。産婦人科を受診する際には、サプリメントの服用状況を医師に伝え、主治医の指示に従いましょう。

柑皮症

大量のβカロテンを摂取すると、皮膚が黄色くなる「柑皮症」という症状が現れることがあります。これは特に手のひらや足の裏に目立ちますが、無害で健康に深刻な影響を及ぼすものではありません。原因となる過剰摂取を控えることで、症状は自然に改善します。

βカロテンが不足すると現れる症状

βカロテンが不足すると現れる症状

βカロテンが不足すると、体内でビタミンAが十分に生成されなくなり、さまざまな健康障害が引き起こされる可能性があります。以下は、主な症状とその特徴です。

網膜色素形成不全症(夜盲症)

βカロテン不足によるビタミンA欠乏は、まず「暗順応の低下」という症状として現れることがあります。これは、明るい場所から暗い場所へ移動した際に目が順応できなくなり、暗闇での視力が著しく低下する状態です。この症状は、目の光刺激調整機能が損なわれることによって発生します。

角膜乾燥症

角膜乾燥症は、ビタミンA不足が進行すると発症する深刻な眼疾患です。初期段階では、涙の分泌が低下して目が乾燥し、まぶしさを感じやすくなります。進行すると、角膜が白濁し視力が大幅に低下するほか、角膜潰瘍や穿孔(角膜に穴が開く)を引き起こし、最終的には失明に至る可能性があります。

免疫力の低下

βカロテン不足により粘膜や上皮組織の健康が損なわれることで、免疫力が低下します。その結果、皮膚が乾燥し炎症を起こしやすくなるほか、鼻や喉などの粘膜が弱くなるため、風邪や下痢などの感染症に罹患しやすくなります。この状態が長期化すると、体全体の免疫防御が弱まり、健康リスクがさらに高まります。

βカロテンの多い食品

βカロテンの多い食品

βカロテンは緑黄色野菜をはじめとするさまざまな食品に豊富に含まれ、健康維持に欠かせない栄養素です。以下は、日常的に食べやすく、現実的な摂取量に基づいた食品を紹介します。

にんじん(生または加熱調理)

にんじんは手軽に手に入る緑黄色野菜で、100gあたり8,000~9,000㎍のβカロテンが含まれています。加熱調理や油を使った調理で吸収率がさらに高まります。例えば、サラダやスープ、炒め物などで日常的に取り入れられます。

かぼちゃ(西洋かぼちゃ)

かぼちゃはβカロテンを多く含む野菜のひとつで、100gあたり4,000~5,000㎍程度を摂取できます。蒸したり煮物にすることで、自然な甘みとともに栄養を効率よく摂取できます。

ほうれん草(加熱調理)

ほうれん草は100gあたり3,000~4,000㎍のβカロテンが含まれています。油を使った調理やスムージーに加えることで栄養素を効率よく摂取できます。

ブロッコリー

ブロッコリーは100gあたり700~800㎍程度のβカロテンを含んでいますが、ビタミンCや食物繊維も豊富で、栄養バランスの良い食品です。軽く茹でてサラダや副菜にするのがおすすめです。

トマト

トマトは生で食べやすい食品で、100gあたり500~600㎍程度のβカロテンが含まれています。特に加熱したトマトは吸収率が高まるため、スープやソースに活用するのも良い方法です。

βカロテンの効率的な摂取方法

βカロテンの効率的な摂取方法

βカロテンを効率的に摂取するためには、調理法や食品の組み合わせが重要です。以下に、吸収率を高めるポイントや注意点を解説します。

βカロテンと一緒に摂取すると効果を高める栄養素・食品

βカロテンは脂溶性ビタミンのため、油を使用した調理法で吸収率が向上します。たとえば、にんじんやかぼちゃを油で軽く炒めたり、ドレッシングをかけたサラダとして摂取するのがおすすめです。また、細かく切る、すりおろす、ペースト状にするなどの調理法も吸収を助けます。 ただし、βカロテンは熱に弱い性質があるため、加熱調理は短時間で行うのが理想です。蒸し料理や軽い炒め物を取り入れることで、栄養価を保ちながら摂取できます。

βカロテンと一緒に摂取すると効果を下げる栄養素・食品

にんじんには、βカロテンを豊富に含む一方で、アスコルビナーゼというビタミンCを分解する酵素も含まれています。しかし、アスコルビナーゼによる影響は調理過程や他の食品との組み合わせで緩和されるため、実際の食事では栄養に及ぼす影響は限定的です。ビタミンCを含むトマトなどと組み合わせても大きな問題はありませんが、気になる場合は酢やレモン汁を加えることでアスコルビナーゼの働きを抑えることができます。

βカロテンの効果を高める摂取タイミング

βカロテンは普段の食事で油と一緒に摂取することが効果的です。朝食や昼食に取り入れることで、1日の活動に必要な栄養素を効率よく摂取できます。一方、深夜や寝る直前の食事は、自律神経の乱れを招く可能性があるため避けるのが良いでしょう。夜間は体がリラックスモードに入る時間帯のため、夕食では消化に良いメニューにβカロテンを取り入れるのが理想的です。

「βカロテンの一日の摂取量」についてよくある質問

「βカロテンの一日の摂取量」についてよくある質問

ここまでβカロテンの一日の摂取量を紹介しました。ここでは「βカロテンの一日の摂取量」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

βカロテンの一日の摂取量の上限はどれくらいでしょうか?

久家 知子久家 知子

βカロテンは、体内で必要な分だけビタミンA(レチノイド)に変換される「プロビタミンA」に分類されます。このため、食品由来のβカロテンを大量に摂取しても、ビタミンA過剰症を引き起こすことはほとんどありません。耐容上限量が設定されているのはビタミンAそのものであり、βカロテン自体に関しては耐容上限値が設けられていません。 ただし、サプリメントなどでβカロテンを過剰に摂取した場合、まれに「柑皮症(皮膚が黄色くなる)」などの症状が現れることがあります。この症状は健康に深刻な影響を与えるものではありませんが、バランスの取れた食事を心がけることが大切です。

βカロテンが体内に蓄積されると、体にどんな良い影響を与えますか?

久家 知子久家 知子

「蓄積される」という言葉には過剰摂取のイメージが伴うかもしれませんが、βカロテンは体内で有効に活用されます。皮膚や粘膜の健康を維持し、抗酸化作用によって体内の活性酸素を抑える働きがあります。この作用は、細胞の老化を防ぎ、若々しさや健康的な肌の維持に寄与します。一方で、過剰摂取による健康リスクが心配な場合は、食品ではなくサプリメントの使用量に注意してください。通常の食事から摂取する分には、ほとんど心配ありません。

まとめ

βカロテンは体内でビタミンAに変換され、皮膚や粘膜の健康維持、抗酸化作用による老化予防などに役立つ重要な栄養素です。食品由来のβカロテンは過剰症のリスクが低く、耐容上限量も設定されていませんが、サプリメントの大量摂取には注意が必要です。日常の食事から緑黄色野菜を中心に摂取することで、安全かつ効果的にβカロテンを取り入れることができます。バランスの取れた食事を心がけ、健康をサポートしましょう。

「βカロテン」と関連する病気

「βカロテン」と関連する病気は7個ほどあります。各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

眼科、皮膚科の病気

  • 角膜乾燥症
  • 網膜色素形成不全(夜盲症)

産婦人科の病気

  • 胎児奇形

内科系の病気

  • 頭蓋内圧亢進症
  • 肝臓障害
  • 骨密度及び骨折

「βカロテン」と関連する症状

「βカロテン」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 皮膚や眼の乾燥
  • 頭痛
  • 吐気、嘔気
  • 意識障害
  • 視力障害
  • 脂質代謝異常

この記事の監修管理栄養士